ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 長らく更新停止して申し訳ない。オリジナル作品にちょっと……本格的に取り組んでまして……

 とはいえ、何とか今年度中に投稿できてよかった……では、今年最後の投稿、どうぞ。


第101話 一つの恋の話

 太陽が西に沈みこもうとしている。空は抜けるような青色から深い群青に変わっていき、星が瞬き始める事、神羅達はハイリヒ王国の王城に戻ってきていた。

 

 「意外と楽だったな、神山の大迷宮」

 「そうだな。まぁ、我らとの相性が良かったと言うのもあるんだろうが」

 

 神羅の言葉にユエ達も同意するように頷く。

 神山の大迷宮はモスラが張り巡らした結界によって熱線の被害を受けなかったが、それは大迷宮の心臓部のみであり、実は他の迷宮らしい部位は軒並み吹き飛んでいた。

 モスラ曰くここの試練は実戦的な物ではなく精神的な物だから必要な物を心臓部に詰め込むことができ、そこだけを守れる様にしていたかららしい。

 それでいいのかと思わなくもないが、まあ楽ができたと考えようとハジメ達は切り替える事にした。

 神山の大迷宮の神代魔法の習得方法は大迷宮の攻略の証を二つ以上持っている事、神に対する信仰心を持っていない事、神の力が作用している何らかの影響に打ち勝った者であることだった。

 神羅はそれら全てをクリアしていた。ハジメ、ユエ、シア、ティオ、香織は最後の一つはクリアできていなかったのだが、洗脳や魅了、意識の誘導、無意識の刷り込みなど挑戦者の精神と価値観に働きかけながら過去の教会の戦士たちと幻想世界で戦うという試練があったのでそれをクリアして、彼らは無事神代魔法を習得した。

 手に入れた神代魔法は魂魄魔法。その名の通り魂に干渉する類の魔法だった。ミレディがゴーレムに魂を定着させるのに使われたのもこの魔法だろう。

 

 「さて、では早速魂魄魔法の特訓といくか」

 「神羅、付き合って」

 「あ、でしたら私も混ぜてもらっていいですか?」

 「妾からもお願いしたい」

 

 神羅がそう言うと即座にユエとティオが彼に共同特訓を申し出る。神羅の魂魄魔法の適正は高いというのもあるが、彼は一度転生を経験している。その経験から自分達にはない新たな知見が得られると考えてのものだった。

 

 「まぁ……しょうがない……俺、魂魄魔法の適正あまり高くないし」

 

 目の前で恋人を始めとした仲間たちが一斉に自分の兄に特訓相手をお願いする光景にハジメは大きく肩を落としながらため息を吐く。

 それに気づいたユエが慌ててハジメのフォローに入り、神羅が困ったようにその様子を眺めていると、小さく苦笑を浮かべていた香織がふう、と息を吐きながら神羅に顔を向け、

 

 「ねぇ、神羅君」

 「うん?どうした、白崎」

 「後で少しだけ時間……いいかな?二人だけで、話したいことがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜空に星が瞬き、月光に照らされた王城の城門を複数の人影がくぐっていく。ライセン大迷宮から戻ってきたモスラ達だ。事前にリリアーナが根回ししてくれていたのかすんなりと通る事が出来た。

 

 「ここにハジメ君たちがいるんだよね?」

 「ええ。今日は神山の大迷宮に行ってるけど、もう戻ってきてるはずよ」

 「そっかぁ……随分と揉まれてきたみたいだし、どれぐらい成長してるかなぁ、みんな」

 

 楽しみでしょうがないと言うようにスキップをするミレディに反して光輝達は複雑そうな表情を浮かべている。全員がそれぞれ大迷宮でミレディに言われた事を気にしているのだろう。

 その中で雫は戻ってこれたことに安堵するように小さく息を吐いてから口を開く。

 

 「とりあえずサロンに行きましょう。みんなそこに集まっているでしょうし」

 「じゃあ、そうしよっか。案内してくれる?」

 

 雫に先導されてモスラ達は城の中を進んでいき、サロンに辿り着く。

 

 「おお、ここがサロンか。結構広いね」

 

 ミレディが周囲を見渡しながらへぇ、と感心したように呟いていると、

 

 「ミレディ?」

 

 不意に名前を呼ばれ、ミレディが顔を向ければ驚いた表情を浮かべたユエが立っていた。それを見たミレディはにっこりと笑顔を浮かべて彼女に駆け寄る。

 

 「ユエちゃん、久しぶりだね。元気そうで良かったね」

 「う、うん。久しぶり……モスラが連れてくるとは言ってたけどもう来るなんて………」

 

 すぐに平静を取り戻したユエは改めてミレディの姿に目を向け、ん?と首を傾げる。

 

 「ミレディ、髪の毛どうしたの?なんか白くなってるけど………」

 「ああ、これ?ミレディさんも女の子だからオシャレにも気を使ってるいるんだよ。どう、似合ってる?」

 

 そう言ってミレディは得意げに白髪交じりの金髪を軽く手で払う。

 だが、ユエはその問いに答えず、訝しげに彼女の髪を眺めながら首を傾げている。

 

 「あ、ミレディさんに皆さん!戻ってたんですか?」

 

 そこにシアが合流し、驚いたような声が上がる。その声でサロンにいた他の生徒たちもミレディたちに気づいたのかぞろぞろと集まってくる。

 そんな彼らの姿を見て、ミレディは彼らがハジメや神羅と同じ異世界から召喚されてきた者達だと気づき、ユエに耳打ちをする。

 

 「ねぇ、彼らが異世界から召喚された子達?」

 「ん、その通り。最近一人死んで、一人神の使徒に連れ去られたけど、大半がここに集まってる」

 

 そっか、とミレディは小さく唇を噛み、黙祷を捧げるように目を伏せていると、初対面のティオが前に出てくる。

 

 「其方がミレディ殿かの」

 「あ、うん。そうだけど、君は?」

 「妾はティオ・クラウス。竜人族の一人じゃ」

 「竜人族………そっか。まだ生き残ってたんだね……私はミレディ・ライセン。解放者の一人だよ。よろしくね」

 「うむ、よろしく頼む」

 「お、戻ってきたか」

 

 ティオとミレディが軽く握手をしていると、更にハジメが親衛隊メンバーと一緒に合流する。

 

 「あ、ハジメ君。モスモスから神山の大迷宮に挑んでるって聞いたけどどう?神代魔法はちゃんと獲得できた?」

 「ああ、魂魄魔法、きっちり習得してきたよ」

 

 ハジメの報告にミレディはそっか、と小さく呟き、

 

 「モスモスから聞いてるけど、これで君たちは生成、重力、空間、再生、魂魄と5つの神代魔法を手に入れた。残りあと二つ、昇華と変性だけだよ」

 「それらを手に入れれば………概念魔法って言う世界の境界を飛び越えられる可能性がある魔法が手に入るんだな」

 「そうだね。そしてそれは神に届きうる魔法でもある………でも、過信はしちゃだめだよ。魔法って言うのは万能じゃない。例え神の御業でも、出来ない事って言うのはあるから」

 「ああ、分かってるよ」

 

 神妙な表情で頷くハジメを見て、ふんふんと頷いていたモスラだが、不意に周囲を見渡し、

 

 「ねぇ、ゴジラはどこ?ここにいないの?」

 

 瞬間、ハジメ、ユエ、シア、ティオの表情が一変、何とも曖昧な表情を浮かべ、視線を泳がせる。その様子にモスラは小さく首を傾げると、ハジメが頭を掻きながら口を開く。

 

 「あ~~~兄貴はその………ちょっと……白崎と……な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイリヒ王国の王宮の敷地の中には美しく整えられた中庭があり、色とりどりの花が月光の中に咲き誇る様は見惚れるほどに美しい。

 その一角で神羅は静かに顔を上げて月を見ていた。

 月光を浴びながら長髪を翻して佇む姿は不思議な気高さがあり、見る者の目を引き付ける。

 そうしていると、神羅の耳に静かな足音が届く。目を開けながら小さく鼻から息を漏らして振り返る。

 

 「お待たせ、神羅君」

 

 そう言って香織は小さく微笑む。

 

 「いや、大丈夫だ。俺も今来たところだからな」

 

 神羅のセリフに香織は小さく笑みを浮かべて問いかける。

 

 「それ、本当?」

 「………本当は少し待ったが、こういう時はそう言うのがお約束であろう?」

 「まぁ、そうだけどさ………」

 

 そう言いながら香織は神羅に向かって歩いていくと、隣に立ち、先ほどの神羅と同じように月を見上げる。神羅もそれに釣られるように顔を上げ、月を見る。

 柔らかく吹く風が花の香りを運んできて鼻孔を擽り、思わず目を細めてしまう。

 どれほど経っただろうか。口を開いたのは香織だった。

 

 「何か………こっちに来てから、こんなに静かに過ごしたのって初めてかも」

 「ま、そうかもしれんな。こちらに来てから地球と全く違う生活を強いられてきたんだ。気が休まらないのも無理はない」

 「あはは……そうかもね………」

 

 小さく苦笑を浮かべて香織は小さく息を吐く。

 

 「モスラさん………綺麗な人だね」

 「ああ。怪獣の時から綺麗な奴だと思っていたが、人間になっても欠片も美しさは陰っていない」

 「べた褒めだね……しかもすごく気さくで優しくて………」

 「あれは気さくと言うよりも距離の詰め方に遠慮がないと言ったほうがいいかもしれんがな。全く……ああいう所は初めて会った時から変わっていない」

 「ああ、そう言えば二人が初めて会った時はモスラさんの方から話しかけてきたんだっけ?」

 「ああ。お前と同じでな」

 「そう言えばそうだった………」

 

 神羅がくつくつと笑うと、それに釣られるように香織も小さく笑みを浮かべる。

 

 「あの時は驚いた。顔も知らない女子がぐいぐい距離を詰めてきたのだ。どこで会ったか必死に記憶を探ったぞ」

 「あはは………改めて考えるとちょっと無遠慮だったかな………」

 「ま、いいのではないか?我は気にせんよ。我以外がどう思うかは知らんがな」

 

 そう言いながら神羅が肩をすくめていると、香織があ、と声を上げる。

 

 「驚いたと言えば、神羅君を少女漫画のコーナーで見かけた時は本当に驚いたなぁ、私」

 「よく言われるが、そんなにか?我はただ面白いと感じたモノを読んでいるだけなのだが」

 「う~~~ん、まぁ、意外と言えば意外とは思うけど……」

 「そもそもらしい、らしくないなどくだらん。我は我が読みたいものを読んでるだけだ。それを他人にとやかく言われる筋合いはない」

 「それっぽいこと言ってるけど、中身は少女漫画についてなんだよね……」

 

 それからも二人は滔々と語り合っていく。地球で出会ってからの事、このトータスに来てからの事、一緒にいなかった時に起きた事、一緒にいた時に起きた事を一つ一つ、ああだった、こうだった、実はこうだったと懐かしみながら、笑い合いながら語り合っていく。

 

 「本当…………神羅君と出会ってから、毎日が楽しいよ……」

 

 そう言って香織は後ろに手を組みながら歩き出す。その様を神羅は静かに目を細めて見つめる。

 

 「神羅君と話をして、笑って、旅をして………私が知らない色んな事を知って………それでも、私の想いは変わらない。神羅君がゴジラであっても、揺るがない」

 

 香織は振り返ると神羅の目を真っ直ぐに見据えながら口を開く。

 

 「神羅君、好きだよ。貴方の事が、好き」

 

 放たれた言葉は穏やかに庭園に響く。

 

 「モスラさんが好きでも構わない。私は………貴方と一緒になりたい。私を………貴方の物にしてくれませんか?」

 

 怪獣であることも、全く違う存在であること全てを本当に受け入れたうえで、迷いなく放たれる言葉には彼女の想いが詰まっている。

 その真っ直ぐな想いをぶつけられた神羅は小さく息を吐きながら一瞬目を伏せると、すぐに香織の目を見据え、

 

 「すまん」

 

 ただ一言、そう告げる。

 たった一言。故に何よりも明確な拒絶の言葉に香織の顔がくしゃりと歪む。

 

 「…………ダメ?やっぱり、モスラさんがいるから?」

 「………いいや、ちがう。モスラがいるから、ではない」

 

 神羅は頭を掻き、口元を曲げながらも言葉を続ける。

 

 「モスラとかそう言うのは関係なく、我はお前を女として見れなかったのだ。女と言うも分かっている。友として見ることもできる。だがそれまでだ。お前を伴侶と………番と、女として見ることは終ぞできなかった。我にとって、お前はどこまでも異性の友人だ」

 「………そっか………そっか………」

 

 香織は泣き出しそうな表情を浮かべながらその言葉を呑み込もうとするかのように何度も何度も頷き、

 

 「あ~~あ、結構頑張ったんだけどなぁ。私もまだまだって事かなぁ」

 

 そう言いながら顔を上げた香織の顔には歯をむき出しにした笑みが浮かんでいた。

 

 「でも、本当にいいの?私を恋人にするチャンスなんて今だけだよ?これからは私、もう恋をするつもりなんてないから」

 「おいおい………何を言って……」

 「だって、神羅君以上の男の人っているとは思えないんだもん。神羅君に振られた以上、私はずっと独り身だよ」

 「いや、流石にそれは言い過ぎでは……」

 「言い過ぎじゃないよ。私にとって、神羅君以上の人なんていないよ。ひどいよね、本当。女の子を悲しませて、人生を滅茶滅茶にしちゃってさ……これはちゃんと責任取らないと」

 

 香織がそう言えば、神羅は困ったように頭を掻き、

 

 「…………分かった。どうすればいい?」

 

 そう問うてくる。

 

 「忘れないで」

 

 だから香織は最後の望みを彼に告げる。

 

 「これから神羅君がゴジラとして生きる時間がどれほどか分からないけど……何百、何千年経とうと、貴方に恋をした、白崎香織と言う少女の事を忘れないで。それで私を振った事はチャラにしてあげるから」

 「…………ああ、分かった。と言っても、お前みたいな濃い友人、そうそう忘れんと思うがな」

 

 そう言って肩をすくめる神羅を見て、香織は満足げに頷き、

 

 「それじゃあ、私は先に戻ってるね。また後でね、神羅君」

 

 そう言って、香織はそのまま歩き出し、神羅をすれ違いながら庭園を歩いていく。その後を追いかけたりせず、神羅はその場に静かに立って顔を上げると静かに目を閉じ、

 

 「………忘れられるか」

 

 苦笑と共に零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 香織は無言で、静かに城の中を歩いていく。

 ゆったりとしているようで、その足取りは普段の彼女にしては早足だ。

 その足のまま歩いていくと前から別の足音が聞こえてくる。

 顔を上げれば廊下の先からユエ達女性陣が歩いてくる。その中には戻って来た雫の姿もある。

 香織に気づいた彼女たちは彼女目掛けて駆け寄ってくる。とりわけ雫は不安げな表情で前に出てくる。

 

 「香織!」

 「雫ちゃん………戻ってきてたんだね」

 「え、ええ………」

 「光輝君たちは?」

 「サロンに押し込んでおいた。碌でもない事を言ってたし」

 

 ユエが呆れた表情でそう言うと香織は小さく苦笑を浮かべる。雫は何か言おうと口を開こうとする。だが、言葉が出ない。何かを言おうとしても喉が引きつって言葉にならず、あ、う、と小さくうめき声を上げる。

 

 「………どうだった?」

 

 その雫の代わりに口を開いたのはユエだった。

 

 「………あはは、ダメだったよ………女として見れなかっただってさ……結構頑張ったんだけど……」

 

 小さく苦笑を浮かべながら言う香織を見て雫はさらに顔を歪めていき、ユエ、シア、ティオは何も言わずに香織を見つめている。

 

 「まぁ、仕方ないかな。色々迷惑かけちゃったし……モスラさんなんて綺麗な彼女さんもいて……本当……」

 

 最初こそ苦笑を浮かべていた香織だったが、次第にその目からポロポロと涙がこぼれ始める。

 

 「あ、あれ?おかしいな………さっきまで、全然大丈夫だったのに……なんで………」

 

 香織は涙を拭っていくが、涙はとめどなく溢れていき、彼女の頬を濡らす。

 その様を前に雫は悲痛そうに顔を歪めていると、ユエが静かに一歩前に出ると、そのまま香織を抱きしめる。

 その胸の中で香織は静かに涙を流し続け、シアとティオは彼女の背中を静かにさすっていた。

 

 「頑張ったね、香織」

 

 そしてそっと紡がれた言葉に雫が驚いたようにユエに顔を向ける。

 

 「………頑張ったかな、私」

 「うん、凄い頑張った。そして凄く偉いね。ちゃんとフラれられて偉いね」

 

 雫が絶句する中、ユエは背を伸ばして香織の頭を撫でる。

 その声に嘲りや見下すような声はない。あるのは友を案じる心と労わる思いに溢れていた。

 

 「うん………頑張ったよ、私」

 「うん」

 「振り返らないって分かってた。私を選ぶことはないって分かってた………でも、でもさ。ちゃんと伝えたかった。ちゃんと………向き合いたかったんだ……」

 「そうだね……だから頑張ったんだよね、香織は」

 「うん………」

 「本当……お疲れ様、香織」

 

 そう言ってユエは何度も何度も涙を流し続ける香織の頭を撫でる。香織は撫でられながら、泣き続ける。それをユエ達は何も言わずにひたすらに慰め続けていた。

 その光景を雫は所在なさげに見つめていたが、ぎこちなく香織の傍に寄り添うとそっと香織の肩を抱いた。




 自分はハーレムは嫌いではありません。むしろ好きです。

 でも、バースのゴジラにはそんなイメージが一切湧かなかったんです。いや、ゴジラという種族で見たら違うのかもしれませんが、彼に関してはそう言う感じはしなかったので。
 で、完全にフラれて、一切脈が無いのにアタックし続けると言うのは自分は嫌いです。なので、ここできっちり終わらせました。

 完全に自分の好みで展開しましたが、ご容赦を。
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