あとありふれのアニメ、少し遅れましたが見ました………………うん。
とりあえずどうぞ!
ひとしきり経過し、ようやくハジメが落ち着いたころ、3人は一回ハジメが作った横穴を拠点に装備の点検、補充、そして情報交換を行う事にした。今は拠点の中で3人顔を突き合わせて座っている。ちなみに神羅の服は見事に焼き尽くされたのだが、適当な魔物の皮をはいで身にまとっている。
「それじゃあ……改めて確認するけどよ……生きてたんだな、兄貴」
「まあな」
「でも、どうして……どうやって……あの時、確かに兄貴の心臓は止まっていた。神水をいくら飲ませても傷は治ったりしなかったんだぞ?」
「神水?なんだそれは」
神羅が問うとハジメはポーチから試験管型の容器を取り出し、ふたを取って中を見せる。そこには液体が入っている。
「これだよ。欠損部位を再生させることはできないがそれ以外だったら瀕死の重傷だろうと治す代物だ」
「ほう……こんなものがあるのか……よく見つけたな」
「まあ、運良くな」
神羅はまじまじと神水を見つめる。
「ふむ……なかなかの魔力を感じる………恐らくだが再構築の際にエネルギーとして消費されたのだろう」
「再構築………?」
「ああ、その事も説明したいのだが……その前に、この娘は誰だ?敵ではないと言うのは分かっているが……」
そう言いながら神羅がユエに視線を向けると、ユエはすぐさまピン、と背筋を伸ばしながら自己紹介をする。
「……私はユエ。この奈落に封印されていた吸血鬼。ハジメに助けてもらった」
「ほう、そうなのか……封印………あれか?確か50階層ぐらいのところに人工物らしき扉があったが、そこか?」
「ん」
「そうか……どうやらお前も色々あったようだな……我は南雲神羅。ハジメの兄だ。ハジメが世話になったようだな」
神羅が手を差し出すとユエも素直にその手を握る。
「……ううん。私のほうが助けられた。これからよろしく、お義兄さん」
その言葉にハジメは盛大にぶっ!と噴き出し、神羅はん?と首を傾げる。
「お義兄さん?」
「んっ!ハジメのお兄さんだから、将来的には私のお義兄さん。これは決定事項」
「お、おいユエ!お前何をいきなり……」
ハジメが思わず叫ぶが、神羅はくっくっくっと楽しそうな笑みを浮かべる。
「なるほどなるほど。そう言う事か……ハジメ。お前もなかなかやるではないか」
「いや……まあ……ていうか、兄貴にだけは言われたくないな………」
ハジメの言葉に神羅がん?と首を傾げるが、ハジメはごまかすようにぱんっ!と右手で太ももを叩く。
「とにかく!今俺たちが知りたいのは兄貴がどうして生きているのかだ。何か秘密があるのか?なんか……特殊な技能にでも目覚めたのか?」
ハジメの問いに神羅はああ、と思い出したように皮の内側からステータスプレートを取り出す。どうやらいつの間にか回収していたようだ。
ハジメとユエは神羅が差し出したステータスプレートを覗き込む。
南雲神羅 --ーーーー---歳 男 レベルーーーーーーーーーー
天職 怪獣王
筋力:--------------
体力:--------------
耐性:--------------
敏捷:------
魔力:--------------
魔耐:--------------
技能:巨神「+巨神化」「+部分巨神化」魔力操作・魔壊・超直感・魔力炉心・適応進化・言語理解
「………………なにこれ?」
思わずユエが呆然と言った様子で呟いた。ユエにはステータスと言うのはよく分からないが、何だか異様なのだ。と言うか神と言う文字があるのだが、え、神様なのか?いや、技能だから違うか……いや技能が神ってどういう事?
ユエはハジメに聞こうと目を向けるが、そのハジメもハジメで神羅のステータスを見て呆然としていた。
表示されていない数値があるのだが、何というか、その部分の桁が明らかにおかしい。これ、もしも数字が表示されたらとんでもない数値が叩きだされるのでは……いや、だからこそ桁だけで数値は表示されていないのか。ステータスプレートでは表示しきれなかった、と言う事かもしれない
次に天職が変わっている怪獣王。そう、王である。それも怪獣。地球の特撮映画とかに出てくるあの怪獣。その王と来た。他にもなんか明らかにヤバそうな技能が追加されている。
ハジメ自身ここまで来るまでに数多くの魔物を喰らい、ステータスが強化されてきたが、それが霞んでしまう。
「あ、兄貴………これは……?」
ハジメが恐る恐る尋ねると、神羅はふうむ、とうなりながら頭を掻き、口を開く。
「何といえばいいか……我の本来の力……とでもいうべきか」
「本来の力って………どう言う事だよ?」
「ふむ………ハジメよ。お前は転生を信じるか?」
「は?いきなり何を言って……いや、待ってくれ。そこでいきなりそんな言葉が出るってことは………まさかとは思うが、兄貴は転生したことがある……と言うか、転生者なのか?」
ハジメの問いに神羅が小さく頷くと、ハジメとユエは驚いたように目を見開く。転生。それは異世界転移と並ぶぐらいファンタジーな要素。死んだ魂が別の存在に生まれ変わる事。ハジメもユエも、違いはあれど知識として知っている。だが、まさか実の兄がその転生者だったとは……
「我も最初は驚いた。まさか我が転生を自分で体験することになるとは思わなかったでな」
神羅の言葉に二人はそれはそうだろうと頷く。
「……とりあえず、兄貴が転生者だって言うのは分かった」
「………自分で言うのもなんだが、信じるのか?」
割とあっさりと信じたハジメに神羅が訝し気に問いかけると、ハジメはポリポリと後頭部を掻き、
「別に今更だろ、転生なんて。現に異世界転移なんてものに巻き込まれてるし、それにあの死んでいた兄貴がこうして目の前にいるんだ。転生って言われたほうがむしろ納得できる」
「……嘘を吐く人がどういう目をしているのか知っている。貴方はそんな目をしていないし、ハジメも信じているなら、私も信じる」
二人の言葉に神羅は小さく息を吐き、そうか、と呟く。
「で、どうしていきなりその力を?最初の時はそれなりに強かったけど、そこまでじゃなかったよな?ベヒモス殴って腕壊してたし」
「ふむ………その事を語ろうとすると、前世の事も交える必要があるが、構わんか?」
「ああ、いいぜ」
「……ん」
「そうか。では、少し長くなるが話そう」
異世界があるように、地球も一つではない。世界が複数あれば、それに伴って地球と呼ばれるものも複数存在する。彼が生まれたのもそのうちの一つだ。
その地球はハジメたちがいた地球よりもはるかに強大な力を持った世界だろう。なにせ、ハジメの世界では空想の産物である怪獣が突然変異ではない生物として無数に闊歩する所だったのだから。
だが、環境が変わり、怪獣たちが生活しにくくなると彼らは地中に逃げ込み、そこから星の力の余剰を喰らいながら生きていた。
それがどれほど続いただろうか。幾匹かの怪獣たちが再び地上に進出するようになった頃、怪獣の一種、ゴジラと言う種の中から一匹のゴジラが生まれた。
ゴジラは元々世界においては上位に位置する種族であった。だが、彼は文字通り桁外れの力を持っていた。
群を抜いた耐久力に戦闘能力。更に他の個体を超える適応能力。そして強靭なまでの意思。彼は数多の戦いを潜り抜け、傷つき、倒れながらもそのたびにさらに強くなっていき、いつしか、彼はその世界の王となっていた。
そしてその頃には既に存在していた人間達は、当時は分からなかったが、彼らを神として崇め、祀る様になっていた。
そして彼は女王と呼べる者と出会い、静かに過ごしていた。
だが、それがどれほど続いたか分からぬころ、空……いや、宇宙から一匹の怪獣が来襲した。奴は世界を破壊し、自分好みに作り替えようとした。その環境ではおそらく人間は生きられない。最悪、怪獣たちも含めた世界の生物全てが奴を除いて死に絶えるかもしれない。
そうはさせないと王は戦った。己の縄張りを守るために。奴の側についた怪獣もいたが、女王の助力もあって奴をどうにか氷の中に封じ込めることに成功した。だが、王もかなりのダメージを負っており、とどめを刺すことはできなかった。だから王は眠ることを選んだ。再び奴が目覚めた時に備え、力を蓄える道を。その頃には戦いの余波で壊滅的なダメージを負った地球も再生しきるだろう。犠牲になった命を糧に。
眠ってからどれほど経っただろうか。ある日、王の住処に謎の来訪者が現れた。見たこともない存在。それによって王は目覚め、再び活動を再開した。
世界はやはり、再生していたが、怪獣たちはいなかった。また眠ったのだろう。代わりに人間達が繁栄し、やりたい放題していた。だが、王には関係ない。その再生した世界には人間たち以上に危険な存在がいる。まずはそいつを排除する。それが王が目覚めた後の最初の仕事だった。
その仕事を終えた後も変わった環境によって目覚めた数多の怪獣と戦った。彼は王だが、決して統治しているわけではない。ただやりすぎないように目を光らせ、やりすぎた個体を排除する。それだけだ。いずれは人間もその対象になるかもしれない。
そんな時、彼は感じた。奴が目覚めようとしている事を。
王は即座に奴の元に向かい、目覚めたやつと戦った。だが、奴は以前よりも強くなっており、今の王でも苦戦した。それでも幾度となく戦ったが、人間の介入により無視できないダメージを負って心臓が停止し、奴を取り逃がした。
だが、王は生きていた。彼は傷を癒すために眠ったが、女王の言葉、そして皮肉だが人間の手によって復活し、再び奴と戦い、女王の犠牲のもとに奴を打ち倒し、本当の意味で再び彼は王となった。
その後も様々な戦いを経験し、長い時を生き王として君臨し続けた。だが、桁外れの力を持つが王も生物。いずれその命は尽きる。そしてその時が来て、王は死んだのだが………
「だと言うのに、気がついたらこのように人間として生まれていたのだ。全く予想外にもほどがある」
神羅はやれやれと言った様子で首を横に振っていたが、ハジメもユエもあんぐりと顎が外れているように口を開けていた。
何というか……壮絶だった。この奈落の魔物がただの虫けらに思えるような怪獣が普通の生物として練り歩く世界。と言うか別の地球で王として君臨していた?しかも魔力なしの状態で戦艦の砲撃でほとんどダメージを負わなかったらしい。そりゃ、魔力を得た今、レールガン程度、ただの豆鉄砲だろう。更に話を総合すれば兄はおそらく、千年……いや万年……それどころか下手したら億年も生きていたと思われる。いくら適応、進化できるとはいえ尋常ではない長生きだ。ユエなんて「私より遥かに年上……ご先祖様レベル……ご先祖様がお義兄さん?」と軽く混乱している。と言うか、砲撃喰らって無傷の兄を一時的とはいえ殺す兵器を作る世界って……地球は地球でも自分たちのところとは明らかに格が違うとハジメは思った。そっちから召喚してれば魔人族なんてまさに鎧袖一触ではないだろうか……
だが、だとするとおかしい。神羅の前世がそんなに強大で、その力を今使えるのならどうして最初から使えなかったのか……
「それはそうだろう。人間の体でそんな力を使えると思うか?」
神羅の言葉にハジメたちは少し考えて、いや、と言うように首を横に振る。
「つまりだ。以前の我の体は人間だった。故にその力を満足に振る事は出来なかった。だが、仮死状態になることによって我の体は以前の力を使えるように一から作り替えたのだ」
「仮死状態……そう言う事だったのか……」
ハジメは納得したように頷く。以前にも同じようにして復活したらしいし、そういうものなのだろう。
そこで、ハジメは小さく疑問を覚えたように首を傾げる。
「なあ、兄貴。兄貴は前世でどうして死んだんだ?やっぱり、寿命とかか?」
ユエも同様に頷いていた。前世の兄貴はそれこそ世界を作り替える存在を倒し、全世界の怪獣の王となった。それにふさわしい能力も備えている。その後の戦いでも負けなしで、何千年と生きたらしい。なのになぜ死んだのか。やはり寿命とかなのか。
「ああ、簡単に言えば………代替わりと言うやつだ」
その言葉に二人が首を傾げたので神羅は説明する。
偽りの王を倒してどれほど経過しただろう。いくら彼が進化できると言っても細胞に限界はある。彼が衰えを感じ始めたころ、生き残っていた同種の中から幼き自分と同じぐらいの力を持つゴジラが生まれた。そしてその個体はある程度成長すると彼に挑んできた。その時は返り討ちにしたが、その者は幾度も幾度も挑み、敗れ、だがそのたびに逃げて、強くなり、再び挑んでくる。
そのうちに彼は察した。潮時なのだろう。自分は長く生き、この世界に君臨し続けた。そろそろ、役割を交代するときなのだろうと。かつて、自分が認めた存在はその座を辞退したが、こいつは違う。自分こそが王だと言う、傲慢だが、奴とは違う真っ直ぐな気概を持っている。ならば………
彼は潔くそれを受け入れた。それは諦めたから、ではない。満足したからだ。もう十分すぎるほどに生きた。悔いはないから。だが、半端者に己の縄張りをあっさりと明け渡すつもりはない。神羅は幾度も幾度もその者と戦い続けた。
そしてついに、その者は神羅を打ち倒した。その頃にはその者はこの世界の王を継ぐにふさわしい力と風格を身に着けていた。そして、神羅は老いと戦いのダメージによってもう長くはなかった。
だが、神羅は満足していた。これでいい。後継者は十二分に強くなった。彼になら縄張りを任せられる。敗者は潔く去り、誰にも知られず、静かに眠ればいい。そう思っていた。
だが、神羅が人知れないところで眠りにつこうとしたところで予想外の事が起きた。女王が自分に寄り添い、共に眠る道を選んだことだ。女王は魔法など使わず自らの能力で転生できる存在だった。女王はなんとその能力は使わずに新たな命のみを生み出した。それはつまり、これまでの自分を完全に殺し、新たな女王を生み出したと言う事だ。
なぜ、と彼が問いかけると、彼女はこすりつけながら答えた。
「たとえ何があろうと、貴方よりも強い存在が現れようと、貴方が王の座を譲り渡そうと、私の王は貴方だけ……だからよ。私はずっと……ずっと……貴方と共にいるわ……」
そう言われては何も言えない。彼は彼女と共に静かに眠りについた。新たな王が、新たな女王と自分たちのようなとは言わないが、良き関係になれることを祈って。
「そう言う事で俺は死を選んだが、もう一度言うがこうして人間に転生した。あいつがいなかったのは……心残りだがな」
そう神羅は寂しそうに言う。その横顔をハジメは静かに見つめていた。
「……兄貴はさ、死ぬとき、怖くなかったのか?」
自分は怖かった。兄が死んだと思っていたのもあるが、死ぬのが怖くて怖くて仕方なかった。きっと自分は何があっても死にたくないとこれからももがき続けるだろう。だからこそ、死を受け入れた神羅の思いが分からなかった。
「………我は自分の生に満足していた。あいつを残していくことは心残りだったが、あの若造にならば託せたしな。死を恐れるのは悪い事じゃない。だが時には、己の命よりも大事なものもあると言う事だ。少なくとも、あの時の我には恐れも、後悔もなかった……」
神羅の言葉にハジメはその言葉をかみしめるように目を閉じ、そうか、と小さく呟く。
対しユエは何やら気になることがある様にそわそわしていた。神羅がン?と首を傾げながら視線を向けると、ユエは我慢できないと言うように聞く。
「……神羅。さっきから言ってる、女王って……もしかして、神羅……ううん。ゴジラの番の事?」
その言葉にハジメはあ、と小さく声を漏らす。そう言えばそうだ。神羅の過去の話によく出てくる女王。普通に考えれば彼の番だ。しかも、間違いなく今も少なからず彼女の事を神羅は想っている。だって彼女の話をするとき、神羅の表情はハジメも見たことがないほど柔らかく、そして寂しく、切なげだから。
「……いいや。番ではないよ。そもそもあいつは、我とは全く違う怪獣だからな」
「違う?それってもしかして………種族が違うって事か?」
「ああ、分かりやすく言えば、我は爬虫類で、あいつは昆虫だからな」
ハジメもユエも驚いたように目を見開く。まるで種族が違う存在。普通ならあり得ない。だが、神羅の言葉、そしてその中の彼女の言葉から考えて、互いに想い合っていたことは間違いないと思う。まさに種族を超えた愛。
「……素敵」
ユエはほう、と感嘆の息と共に呟いていた。
「………とりあえず、これが我の事だ。理解できたか?」
「ああ……やっぱすげぇな、兄貴は」
「何を言っている……我はそれだけの力を持っていただけだ。だが、お前は少しずつ痛みと共に強くなっていった……お前のほうがすごい……」
神羅の言葉にハジメは少し嬉しそうに笑みを浮かべ、
「そうだ、兄貴。これ、返さないとな」
そう言ってハジメは左腕に巻き付けていた青白い布をほどき、神羅に手渡す。
それを受け取った神羅はすぐにそれで長い黒髪を首元で一つに括る。
「ふむ、今まで何となくこうしていたが…..この髪型が我には性に会うようだ」
その言葉にハジメとユエは小さく笑みを浮かべる。
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