ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 はい、スカルクローラー戦です。皆さんが期待していた展開とは違うかもしれませんが、ご容赦ください。

 ではどうぞ!


幕話 髑髏の亡者

 最初に動き出したのはやはりと言うか義憤に燃える勇者、光輝だった。

 

 「万翔羽ばたき 天へと至れ 天翔閃!」

 

 聖剣を振り上げて光の斬撃を放つが、スカルクローラーは軽快な動きでその一撃を回避するとそのまま咆哮を上げながら突進する。

 即座に前衛組は散開するが、後衛組はその場で魔法の準備を始める。スカルクローラーは後衛組に標的を定め、一直線に襲い掛かるが、

 

 「させないよ!ここは聖域なりて、神敵を通さず、聖絶!」

 

 鈴が再び聖絶を展開。巨体が轟音と共に激突するが、今度は弾き飛ばされず、スカルクローラーは狂ったように両腕を叩きつけ、大口を開けて聖絶に食らいつき、破ろうとする。そして、右腕を思いっきり叩きつけた瞬間、聖絶に罅が走り、鈴は思わず息をのむ。あれから2ヵ月。鈴の能力は大きく上昇しており、聖絶の強度も上がっている。にも拘わらずスカルクローラーは聖絶を破ろうとしている。

 そのまま罅を攻撃しようとするスカルクローラーだが、その隙を彼らは見逃さない。

 

 「喰らいやがれ!」

 

 龍太郎が懐に潜り込み、渾身の力を込めてアッパーカットを繰り出す。それはスカルクローラーの顎を捉えるが、巨体は一瞬揺れるだけだった。

 龍太郎が目を見開くと同時に、スカルクローラーはぎょろりと側面についた小さな眼で睨みつけると龍太郎を喰らおうと口を開ける。

 目の前にずらりと牙が並び、蛇のような舌が蠢く大口が開き、そこから鼻が曲がりそうな腐臭が漂い、それは否応なく龍太郎に死を連想させ、体が強張らせる。

 だが、

 

 「抑する光の聖痕、虚ろより来りて災禍を封じよ、縛光刃!」

 

 その眼前に光の十字架が放たれ、スカルクローラーは思わず顔を逸らす。その隙に反対側から雫が飛び込むと抜刀の一閃でスカルクローラーの前足を切り裂く。

 スカルクローラーはうめき声を上げて身を僅かに捩ると龍太郎から視線を外して雫目掛けて腕を勢いよく振るう。雫は慌ててしゃがみ込むことでその一撃を回避して急いで距離を取る。

 追撃しようとスカルクローラーが動こうとした瞬間、その後ろから近藤と檜山が斬りかかるが、スカルクローラーはそれに気づくと軽く尾を振るう。二人は慌てて動きを止めるが、鞭のようにしなる尾に引っ掛けられ、吹っ飛ばされる。それを見た香織は忌々しげに顔を歪めるが、

 

 「周天」

 

 ほとんど無詠唱と言う速さでオートリジェネの回復魔法を二人にかける。一応まだ死なれては困るが、あれならこの程度大丈夫だろう。

 その隙に距離を取った雫は苦々しい表情を浮かべる。なぜなら雫の一撃は確かにスカルクローラーの前足に傷をつけた。だが、そこからは血は流れていない。恐らく、皮膚を浅く切っただけだなのだ。前足の切断は無理でも傷つけようと思っていたのだが、想像以上の強度だ。

 スカルクローラーは唸り声を上げながら周囲を睥睨すると再び雫に目を向け、両腕で勢いよく地面を抉りながら飛び掛かる。

 巨体に反してかなり素早いと言わざる終えないが、雫は即座に横に跳んで回避する。だが、着地と同時にスカルクローラーは即座に雫目掛けて尾を振り下ろす。

 その光景にぎょっと目を見開いた雫は着地の事など考えず再び跳ぶ。瞬間、勢いよく地面に尾が叩きつけられ、轟音と共に衝撃で雫は吹き飛ばされてしまう。

 スカルクローラーは雫に追撃しようと再び両腕に力を籠めるが、

 

 「雫から離れろ!刃の如き意志よ、光に宿りて敵を切り裂け。光刃!」

 

 そこに光輝が聖剣に光の刃を纏わせながら飛び込み、聖剣を振るい、胴体を切り裂く。雫の一撃より深いそれは傷口から血を流させる。だが、それでもずっと浅く、かすり傷のようなものだろう。

 だが、攻撃を受けたスカルクローラーは咆哮と共に標的を光輝に変更。腕を伸ばして光輝を捉えようとするが、胴体の真下でまともに確認もできないせいか狙いは雑。光輝はあっさりと回避し、距離を取る。その隙に香織は雫に回復魔法を放つ。

 スカルクローラーは吠えながら光輝に向き直ると大きく口を開ける。

 また突進か、と光輝が身構えた瞬間、口内の舌がまるでカメレオンのように勢い良く伸ばされる。

 予想外の行動に光輝は目を見開き、慌てて体を捻る。ギリギリで回避自体はできたが、舌はそのまま彼の手の聖剣に巻き付く。

 

 「しまっ!?」

 

 そのまま光輝を無理やり引き寄せられ、丸呑みにされると思われた時、

 

 「光輝!」

 「させん!」

 「あぶねぇ!」

 

 光輝の足を永山重吾、浩介、メルドの三人がつかみ、引き寄せまいと踏ん張る。

 一瞬止まるも、スカルクローラーは構わず4人まとめて飲み込もうとするが、

 

 「光輝君を放せ!ここに燃激を望む!火球!」

 

 恵理が詠唱を切り替えて放った火球が口内を直撃。痛みと衝撃でスカルクローラーは悲鳴を上げて頭を激しく振るい、それによって振り回された舌で4人は明後日の方向に投げ飛ばされ、建物の残骸に突っ込む。

 舌を回収して勢いよく顎を閉じたスカルクローラーは後衛組に向き直ると怒りで双眸を滾らせながら勢いよく突進し、薙ぎ払おうとするが、

 

 「無駄だよ!聖絶!」

 

 三度鈴が聖絶を展開、スカルクローラーは再び激突する。と、その瞬間、スカルクローラーは唸り声を上げるとそのまま追撃せずあっさりと身をひるがえす。それによって背後から繰り出された雫の攻撃は空を切る。

 

 「っ!こいつ……!」

 

 雫が歯噛みしたと同時にスカルクローラーは雫を睨みつけるが、その背後から光の斬撃が放たれ、スカルクローラーを直撃、轟音が起こると同時に巨体がたたらを踏む。

 スカルクローラーが振り返れば、瓦礫から光輝が立ち上がって聖剣を振るっていた。遠藤たちも無事なようだ。

 甲高い咆哮を上げて襲い掛かろうとした瞬間、

 

 「「「「炎天!」」」」

 

 途中で中断した恵理以外の術者が炎系上級魔法を放つ。スカルクローラーの上に作られた直径6mの火球がそのままスカルクローラーに落下、爆炎がその身を呑み込む。

 スカルクローラーは絶叫を上げて身をよじるが、それで振り払われることなんてなく、そのままスカルクローラーは炎に飲み込まれていく。その様子を見て全員が勝利を確信した。ベヒモスすら焼き尽くした炎だ。あいてが何であれ、これに耐えられるはずがない。

 

 そう思った。

 

 次の瞬間、スカルクローラーは爆炎を突き破る様に飛び出し、再び後衛組に襲い掛かる。

 

 「うそっ!?」

 

 その光景にほとんど全員が目を見開き、動きが止まる。その隙にもう目の前まで巨体は迫っていた。回避も防御も間に合わない。騎士たちがせめて盾になろうと前に出た瞬間、

 

 「聖絶!」

 

 凛とした声と共に光のドームが発生し、スカルクローラーの突進を防ぐ。だが、巨体が激突すると同時にドーム全体に罅が走る。

 その様にほぼ無詠唱と言うべき早さで聖絶を展開した香織は忌々しげに顔を歪めると、

 

 「鈴ちゃん!呆けてないでもう一度展開して!」

 「う、うん!ここは聖域なりて 神敵を通さず、聖絶!」

 

 香織が張った聖絶の内側に鈴の聖絶が展開されると同時にスカルクローラーは香織の聖絶を粉砕し、鈴の聖絶を殴りつけるが、鈴の聖絶は見事に耐え抜く。

 と、スカルクローラーはその小さな目で鈴を睨みつけるとすぐさま身をひるがえし、態勢を整えた光輝達を睨みつける。全身に深い火傷が刻まれているが、それでも動くのに支障はないようで苛立たし気に尾を地面に打ち据える。その隙に鈴は聖絶を解除。大きく息を吐きながら魔力回復薬を服用する。流石に魔力が厳しくなってきたのだ。

 

 「これ以上好きにはさせない!みんな、いくぞ!」

 

 その号令と共に前衛がスカルクローラーに殺到する。

 その光景を見ながら香織は頭を巡らせる。

 相手は想像以上に強大な相手だ。ベヒモスすら焼き尽くした一撃を受けながら火傷で済ませている。しかもその動きにはほとんどダメージを感じさせない。他のみんなは魔法の準備に入っているが、それも効くかどうか怪しい。あれ(・・)を試したいが、まだ練習ですら成功していないためリスキーすぎる。となると、獄絶鎖しかない。そう判断した香織は即座に準備に入る。

 一方、前衛組は先ほどまでとは大きく状況が変わっていた。光輝が聖剣で切りかかるが、スカルクローラーは即座に跳んでその一撃を回避する。そこを狙って龍太郎が衝撃波を飛ばし、直撃するが巨体は何事もなかったように身を捻って尾を薙ぎ払う。龍太郎は即座に回避するが、尾の先端が引っ掛かり、そのまま吹っ飛ばされる。追撃はさせまいと入れ替わる様に雫が切りかかるが、スカルクローラーは龍太郎には目もくれずそのまま器用に跳んで回避する。更に他のメンバーも攻め込むが、スカルクローラーは回避しながら適度に攻撃していく。

 その一連の動きを見て、雫は疑問を感じたように顔をしかめる。先ほどまでと明らかに動きが違う。さっきまでは明らかにこちらを殺そうとしていたのに急にその気配が無くなった。明らかに回避に主体を置き、過剰に攻めてきていない。いきなりどうしたと言うのだ……

 雫が首を傾げていると、

 

 「下がって!」

 

 後衛から合図がかけられ、光輝達が動きを止めるためにスカルクローラーに一撃を叩きこみ、そのタイミングで後衛組が魔法を放とうとした瞬間、スカルクローラーはぎょろりと後衛組を睨みつけると前衛組を無視して一気に後衛組に向かって突進する。

 後衛組は目を見開きながらも慌てて魔法を発動させる。火球と風の刃を伴った竜巻、石の槍に氷柱が襲い掛かるが、スカルクローラーは魔法が降り注ぐのもお構いなしに突進し、魔法が直撃するが、その巨体は一瞬で魔法を突き破り、後衛組に肉薄する。その身は明らかに傷ついているが、被害は想像以上に少ない。

 鈴が慌てて聖絶を張ろうとするが、もう目の前まで来ている。とてもじゃないが展開は間に合わない。今度こそ蹂躙される。そう思った瞬間、

 

 「獄絶鎖!」

 

 香織の声と共に魔法陣から無数の鎖が放たれ、それがスカルクローラーの体に侵入、次々と内臓、筋肉、関節、骨に透過しながら絡みつき、強固に絡みつく。

 強制的に動きを止められ、バランスを崩したスカルクローラーは激しく転倒、轟音と共に地面がめくり上げられ、後衛の生徒たちはそれに巻き込まれて吹き飛ばされる。

 

 「っ……!」

 

 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられながらも香織は即座に体勢を立て直して立ち上がる。

 目の前ではスカルクローラーが咆哮を上げながら獄絶鎖を破ろうともがいているが、流石の奴も内部を直接縛られては思うように動けていない。

 だが、スカルクローラーが全身に力を籠めると想像以上の力による負荷で鎖が軋みを上げ始める。

 香織は即座に魔力を籠めて鎖の強度を底上げするが、スカルクローラーは力づくで破ろうと更に全身に力を籠め、再び鎖がミシミシと悲鳴を上げる。

 最後の天絶を発動させようにも鎖の維持に力を注いでしまい、うまくできない。両者とも互いを上回ろうと完全な力比べになっているが、当然と言うべきか、力ではスカルクローラーのが上だった。香織はすでに大量の脂汗を掻き、額に青筋が浮かぶほどに力を籠めるが、拮抗を破ることができない。それどころかスカルクローラーのほうが勝り始め、鎖が悲鳴を上げている。

 そうしていると、ついに数本の鎖が音を立てて砕けちり、その光景に思わず香織が息をのんだ瞬間、

 

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 雫が勢いよく突進し、スカルクローラーの目に剣を突き刺す。

 瞬間、スカルクローラーの口から絶叫が響き渡り、一瞬力が弱まり、拮抗が破れる。

 

 「!命よ、絶たれろ!」

 

 その隙を見逃さず、香織は最後の一節を叫ぶ。

 瞬間、ゴギャリ!と言う音と共にスカルクローラーの全身が一瞬痙攣すると、そのまま崩れ落ち、動かなくなる。

 荒い息を吐きながら香織が獄絶鎖を解除すると全身から血が流れていく。

 

 「………なんとか………なった………」

 「香織、大丈夫!?」

 

 雫が慌てて駆け寄ってくるのを見て、香織は軽く片手を振って答える。

 吹き飛ばされた後衛たちも何とか立ち上がり、死体を見てほっと胸をなでおろす。

 そこに前衛組が合流してくる。

 

 「皆大丈夫か!?」

 

 メルドが真っ先に全員の無事を確認する。全員酷く疲弊しきり、傷を負っているが、どうやら幸運にも犠牲者はいなかったようだ。

 

 「手こずったけど、倒せてよかった……あとは魔人族だけだ。どこにいる!魔人族め!お前の使役している魔物は俺たちが倒した。諦めて投降しろ!」

 

 光輝がそう声を張り上げるが、村からは何の返事も聞こえてこない。その事に周囲のみんなが首を傾げると、

 

 「光輝……もしかしたらだが……こいつは魔人族は関係ないかもしれん」

 「なん……!どういうことですか!?」

 

 光輝が思わずメルドに問い詰めると、

 

 「村の中に魔人族の痕跡はなかったし、ここに残る理由もない。恐らく、こいつは野生の、新種の魔物だ」

 

 そんな、と光輝達が戸惑う中、永山はじっとスカルクローラーの死体を見つめる。

 最後のあの突進。偶然とは思えなかった。奴は間違いなく、後衛が魔法を放つタイミングで突進していた。

 それはどうしてか?少し考えるが、すぐに分かった。その最中は聖絶が張れないからだ。奴は聖絶の特性を把握して聖絶を張れず、多少傷ついても確実に襲い掛かれるタイミングを計っていたのだ。自分にダメージを与える後衛を確実に排除するために。そうとしか考えられないタイミングだった。だが、もしもそうだとすると恐るべき知能だ。

 そうしていると、騎士たちがスカルクローラーの体から魔石を取り出す作業を始める。

 だが、少しすると騎士たちは困惑の表情を浮かべ、その体をより丹念に調べ始め、そして信じられないと言った表情を浮かべる。

 

 「お前たち、どうした?」

 

 メルドが問いかけると、騎士の一人が振り返り、衝撃の事実を告げる。

 

 「団長……魔石が………どこにも見当たりません……!」

 「な、なんだと!?そんなバカな!?」

 

 まさかの報告に全員が驚愕に目を見開く。魔石がない。それはつまり、目の前のこいつは魔物ではないと言う事だ。

 

 「ありえん!こんな巨体の生物が……砕けただけじゃないのか?」

 「いいえ!魔石の欠片もありませんでした!間違いなく、こいつには魔石がありません!こいつは………魔物ではありません!」

 「嘘だろ………魔物以外にもこんな化け物がいるのか………?」

 

 重吾が愕然とした様子で呟き、生徒や騎士たちがそろって顔を引きつらせる。魔物ではない、つまり固有魔法を持っていないのに、自分たちをここまで追い詰めた怪物……

 

 「皆、大丈夫だ!そんな怪物も俺たちは倒した!俺たちなら何が来てもきっと勝てる!」

 

 そんなみんなを鼓舞するように光輝が言うが、それでも簡単に衝撃は抜けきらず、彼らは顔を見合わせる。

 そんな中、香織は静かに息を吐く。

 相手が何であれ、この程度ではまだ足りない。まだだ。もっと、もっと、もっと強くならなければ……

 香織は決意を新たにするように強く拳を握る。




 感想、評価、どんどんお願いします。

 ここで犠牲者を出すのは………何というか、どう頑張っても、目の前で人が丸呑みに食い殺されるの見たらあの子らのほとんどが心折れて、魔人族戦が問題になってくると思ったのでこうなりました。

 あと、これは私的なお願いですが、感想、メッセージにURLを張るのをやめてください。以前の経験から非常に強い不安感や不信感を覚えてしまいますので。何か情報があるときはこういうのがあると教えてくれるだけでお願いします。
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