ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 と、言うわけで考えた結果、やっぱり映画の個体にしたほうがおもしろくなりそうと言う事で変えました。旅立ちの方も少し変えてあります。

 と、言う訳で、今後はゴジラVSコングのネタバレにもご注意ください。基本的な流れは変わっていないので、ネタバレが嫌な人は見なくても問題はありません。


第18話 樹海に居座る者

 「そ、それじゃあ、3人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

 「ああ、そうなるな」

 「……ん」

 「うむ」

 

 ユエが年上と知ってシアが土下座した後、早速ハジメたちはハウリア族を救うために移動を開始した。ちなみにシアはハジメのシュタイフの後ろに乗っていた。ユエはハジメの前に乗っている。

 普通は神羅のところに乗せるべきなのだろうが、あいにくと神羅のシュタイフはオフロードバイク型。しかも一人乗りを想定したモデルだった。流石にそれでは乗せられないので、仕方なくハジメのシュタイフに3人乗りをしている。乗り方はハジメの前にユエ、後ろにシアとなっている。

 今度神羅のシュタイフも二人乗り用に改造しようと決めながら移動する中、シアが3人の事を聞いてきたのでハジメは、道中、魔力駆動二輪の事やなぜそう言ったものが扱えるのかなどを話した。と言っても神羅の前世、そして力の本質に関してはまだ話すことはできないが。

 ちなみにシアの固有魔法は未来視。この選択をしたらどうなるか?と言う仮定の未来を見ることができるものだ。その未来が絶対という訳ではないが、シアは神羅達の方角に逃げたら神羅達が自分と家族を守る未来が見えたからこちらに来たようだ。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動するようだ。なぜ追放の時に見えなかったのかは、友人の恋路を覗き見るのに使って、しばらく使えなかったかららしい。残念である。

 しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。

 

 「ちょ、おいおい……いきなり泣きべそかいてどうした?今の話しに泣くところあったか?」

 「いえ、すいません……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

 「「「……」」」

 

 どうやらずっと、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、他とは異なる自分に余計孤独を感じていたのかもしれない。

 その言葉に、ユエは何となく境遇を重ねてしまう。ユエもまた、この世界において異質な力を持っており、ハジメたちと出会うまで同胞と呼べる者はいなかった。更に言えばユエにはシアのように愛してくれる家族がいなかった。シアの境遇はまあ、恵まれているだろう。

 そして、神羅もまた、似たようなものだった。前世で神羅は強大な力を持っていた。だが、それ故に同族達と共に過ごすことはできず、彼女と会うまで、一匹だった。それに寂しさを感じたことはないが、それでも彼女と出会ってからは寂しさを感じ取っていた。それと似たものをシアも感じていたのだろう。

 神羅がちらりと隣に目をやると、ハジメがユエの寂しさに気づいたのだろう。今は一人ではないと言うようにユエの頭をポンポンと撫でている。ユエは全身の力を抜いてハジメに甘えるように身を預ける。

 

 「あの~、私のこと忘れてませんか?ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは?私、コロっと堕ちゃいますよ?チョロインですよ?なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作っているんですか!寂しいです!私も仲間に入れて下さい!」

 「無駄だ、シア・ハウリアよ。こいつらは時に我の事も忘れるときがあるからな」

 「そ、そうなんですか……神羅さんも大変ですね………」

 

 神羅の言葉にシアは顔を引きつらせて苦笑する。その目を見て、神羅は小さく目を細める。

 と、しばらく進んだところで、遠くで魔物の咆哮が幾重にも重なって聞こえた。

 

 「ハジメさん!もう直ぐ皆がいる場所です!あの魔物の声……ち、近いです!父様達がいる場所に近いです!」

 「どうやらそうみたいだな。兄貴、飛ばすぞ!」

 「おう!」

 

 瞬間、ハジメと神羅はシュタイフを加速させる事数分、ドリフトしながら大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。

 彼らは岩陰に隠れているのだが、そのうさ耳だけが隠しきれず、ちょこんと出ている。

 その彼らを襲っているのは奈落の底でも滅多に見なかった飛行型の魔物だ。姿は俗に言うワイバーンというやつが一番近いだろう。体長は三~五メートル程で、鋭い爪と牙、モーニングスターのように先端が膨らみ刺がついている長い尻尾を持っている。

 

 「ハ、ハイベリア……」

 

 肩越しにシアの震える声が聞こえた。ハイベリアは全部で6匹で、獲物を品定めするように上空を旋回している。

 

 「兄貴!今まで通り殺気で追い払えるか!?」

 「微妙だな。奴らは獲物を前にして興奮している。下手に脅せば逆に暴れかねん。仕留めるぞ!」

 「あいよ!」

 

 ハジメがドンナーを構えると同時に一匹のハイベリアがその尻尾でハウリア族が隠れている岩を破壊し、何人かをいぶり出す。そのまま襲い掛かろうとするが、ドパンッ!と言う発砲音と共にドンナーからレールガンが放たれ、ハイベリアの眉間を貫き、頭部を爆散させて這い出たハウリア族の脇に墜落する。

 更に神羅はシュタイフから飛び降りると、地面を踏みしめてから轟音と共に跳躍。一匹のハイベリアの尾を掴むとそのまま勢いよく振り回し、別のハイベリアに叩きつける。ぐしゃりと言う音と共に2頭のハイベリアは肉塊に成り果て、地面に叩きつけられる。

 

 「な、なにが……」

 

 突然の事にハウリア族の面々が呆然としていると、乗り手を失ったシュタイフがそのまま彼らの前を駆け抜けてから倒れ込む。

 思わずそれを視線で追ってからシュタイフが来た方角に目を向けると、

 

 「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

 似たような見慣れない乗り物に乗っている3人組。しかもそのうち一人は家族の少女である。ハウリア族はそろって目を丸くして驚いている。そのど真ん中に神羅はずん、と着地する。

 

 「とっとと隠れろ!」

 

 いきなり現れた神羅にハウリア族は目を丸くするが、怒声にびくりと体を震わせると慌てて岩陰に隠れる。

 その神羅に向かってハイベリアが襲い掛かってくるが、一匹に赤い閃光が襲い掛かり、翼を引きちぎり、地面に叩きつけられる。神羅はすぐにその頭部を踏み潰すと、近くに転がっている拳大の岩の欠片を拾い上げて上空の2頭に向かって投げつける。

 無造作に投げられたそれはしかし音速を容易く超える。ハイベリアの体を貫き、粉砕、絶命させ、地に落とす。

 そのまま周囲を見渡して敵がいないことを確認すると同時にハジメたちが合流する。

 

 「悪い、兄貴。仕留めそこなった」

 

 ハジメが言っているのは翼を引きちぎった個体の事だろう。

 

 「いや、別に構わんが……お前らしくないな。どうした?」

 「ああ……ちょっとな……」

 

 ハジメが憎々し気に後ろのシアを睨みつける。そのシアは頭を抱えて痛い、痛いよ~と呻いていた。それだけで分かった。どうやら何らかの手段でシアがハジメの邪魔をしてしまったのだろう。それで制裁を喰らったのだ。この程度……と神羅が呆れていると、危険が無くなったことを察したのかハウリア族がぞろぞろと出てくる。

 

 「シア! 無事だったのか!」

 「父様!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。どうやらシアの父親のようだ。

 

 「ハジメ。我は周囲を警戒しておく。奴の親が来るかもしれんからな。話は任せる」

 「了解」

 

 神羅が移動すると同時に、シアの父親がハジメの元に歩いてくる。

 

 「ハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

 そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 実はシアがお姫様的ポジションだったことにハジメは内心驚きながらも口を開く。

 

 「気にすんな。樹海の案内が引き換えだし、ギブアンドテイクってやつだ。しかし、随分とあっさりと俺たちを信用するんだな?亜人は人間にはいい感情なんて持ってないだろうに……」

 「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

 その言葉にハジメは呆れ半分、感心半分だった。一人の少女のために一族ごと追放を故郷を出ていくのだから情が深いと思っていたが、警戒するべき人間相手にこれは人が良すぎるぐらいだ。

 

 「ふむ、話合いは問題なさそうだな」

 

 どうやら今後の話し合いは問題なさそうだと判断し、神羅が近づいてくる。

 

 「おお、貴方が神羅殿ですな。この度は助けていただきありがとうございます」

 「そう言う約束だ。それとは別に、お前に聞きたいことがある」

 「聞きたい事……ですか。何ですかな?」

 

 カムが首を傾げていると、神羅は目を細めながら問う。

 

 「お前たちの住んでいたハルツィナ樹海に………山のような巨体を誇る猿がいるだろう?」

 

 その言葉にハジメたちはえ?と首を傾げるが、カムも同様に小さく首を傾げる。

 

 「え、ええっと……まあ、はい。確かに最近……数か月ほど前に樹海に恐ろしく巨大な猿の魔物が住み着きましたが……」

 「兄貴……それって……」

 「ふむ、どうやら間違いないようだ………樹海の方角から気配を感じたからな」

 

 その言葉にハジメたちは目を見開き、シアたちは何のことか分からず、首を傾げている。巨大な魔物。それは恐らく、いや、間違いなく怪獣の事だ。それも猿型。それは確か神羅の話ではゴジラ種と長きにわたり戦い続けていた存在ではないか。

 

 「それってつまり……樹海には神羅と同格の存在がいるって言う事?」

 「まあ、そう言う事だ」

 「それって……大丈夫なのか?もしも襲ってきたらはっきり言って、俺達じゃまだ手も足も出ないぞ。勝てるのは兄貴だけ「ああ、それなら問題ないかと」どう言う事だ?」

 

 カムの言葉にハジメが問うと、

 

 「確かに最初の時は我々も非常に怯えたのですが、彼は特に我らに危害を加えようとせず、ただ樹海の中で静かに過ごしていました。近づいても特に何もせず、それどころかフェアベルゲンの領域には近寄ったりもしませんでした。まるでそこが何かの安住の地であると知っているかのように。ですが、樹海を荒らすものには容赦はせず、排除します。ですから最終的には彼には干渉せず、放っておこうという方針で落ち着きました。ですから、樹海を不用意に荒らさなければ襲ってはきません。まあ、あとは踏まれないように気を付けるだけですな」

 「……ただの偶然じゃ?」

 「いえ。何でも聞いた話では一人の有翼族の者が彼の前を飛び回ってみたようですが、はたき落そうともせず、むしろ手を差し出してきて……思い切って手の上に着地してみたら興味深そうに見つめてきて、有翼族が飛び立った後、何やら身振り手振りをしていたようですが、最終的には何もせずにそのまま帰してあげたとか……」

 

 その話にハジメたちは思わずうなり声を上げる。まるで人間のような仕草をしている。だがそうなると、そいつは樹海を破壊したりしなければたとえ近くにいたとしても襲ってはこないのだろうか。

 神羅は軽く鼻を鳴らして腕を組み、

 

 「まあ、奴は人間と馴れ合っていたようだし、人間の亜種であるお前らに興味を持ったとしてもおかしくはないだろう」

 

 その言葉にハジメはん?と違和感を覚える。なんだか、今の神羅の言葉、若干棘があったような……

 

 「とにかく、それならば大人しくしていれば問題はない。一々相手をするのもばからしいし。ハジメたちもそれでいいな?」

 「まあ……それで回避できるなら問題はないけど……」

 「……ん」

 「それじゃあ、話がまとまったならば、出発するとしよう」


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