ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 更新しますね。

 もうすぐコミケですね……今年はどうなるかなぁ……

 ではどうぞ!


第21話 フェアベルゲン

 「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか亜人の戦士たちを誤魔化そうと弁明を試みるが、その前に隊長格と思しき虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

 「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め!長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは!反逆罪だ!もはや弁明など聞く必要もない!全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

 隊長格が攻撃命令を下そうとした瞬間、ハジメがドンナーを引き抜いて纏雷を使わずに発砲。弾丸はそのまま隊長格の頬をかすめ、背後の樹にめり込む。

 頬の擦過傷によってそれが攻撃というのは分かるが、その原理の一切が不明で理解不能な一撃に隊長含め全員が硬直していると、ハジメが威圧を放ちながら口を開く。

 

 「今の攻撃は俺が放つ中でも最弱の一撃だ。だが、それでも人間一人十分に殺せる。しかも俺はそれを刹那の間に数十発放てる。周囲を囲んでいる奴らの位置も把握している。お前らはすでに俺のキルゾーンにいる」

 「なっ……詠唱が……」

 「全く……いきなり発砲する必要もあるまい。まあ、レールガンで無いだけマシか……ああ、我の左後ろにいる3人よ。そのまま何もしなければこちらも何もしない。だが何かするなら……こちらも相応の対応をするぞ」

 

 神羅が腕を組みながらさりげなく告げる。その言葉に霧の中から動揺する気配が伝わる。その言葉だけでハジメの言葉が嘘ではなく、神羅達がハジメと同格と言う事を知らしめる。

 

 「もしもこいつらを殺るというのなら容赦はしない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺達が保障しているからな……ただの一人も生かしはしない……」

 

 そう言うとハジメは威圧感と共にすさまじい殺気を放つ。その圧に隊長は大量の冷や汗を流す。本当なら今すぐにでも逃げ出したいのだろうが、必死にそれを押さえつける。

 そんな中、ハジメはだが、と前置きと共に殺気を少し緩める。

 

 「兄貴も言っていたが何もしないのならこちらも何もしない。巨大魔物の注意をひきつけたくないしな。この場を引くのなら追いもしないし、なにもしない。これから出会う亜人にも危害は加えないと約束する。さあ、どうする?」

 「……その前に、一つ聞きたい。何が目的だ?」

 

 少しすると、隊長格がかすれた声でそう問いかける。だが、その声にはこちらの返答次第では、不退転の覚悟で戦うと言う決意が込められている。

 

 「樹海の深部、大樹の下へ行きたい」

 「大樹の下へ……だと? 何のために?」

 「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

 「本当の迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

 「いや、それはおかしい」

 「なんだと?」

 「大迷宮は解放者の者達が残した試練だ。亜人族は深部に行けるらしいがそれでは亜人族が挑戦者の時、試練にならん。そもそもたかだが道に迷う程度の事を試練にするなどまずあり得ん。だから、樹海自体が大迷宮というのは辻褄が合わん」

 

 しかも大迷宮は対怪獣も想定している。あいつは途中から合流したから迷宮とは一切関係ない。そうなるとこの樹海程度では試練にすらなりもしないのだ。

 隊長は困惑を隠せなかったが、すこしすると、

 

 「……お前達が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すということが異例だからだろう。

 神羅達の言葉には聞き覚えのない事ばかりであり、戯言と切り捨てるのは容易だが、今この場で圧倒的に優位な神羅達にこちらを騙す理由はない。つまり、彼らには本当に大樹が目的で、フェアベルゲンには危害は加えないのだろう。ならばさっさと目的を果たして帰ってもらうほうがいいと判断したのだ。

 

 「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前達の話も、長老方なら知っている方もがおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 「………ふむ、それが妥当だろうな」

 「そうだな。いいぞ。曲解せずに伝えろよ」

 「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

 「了解!」

 

 隊長の言葉と共に霧の中の気配の一つが遠ざかっていく。それと共にハジメはドンナーをホルスターにしまい、殺気を霧散させる。それと同時に亜人達はほっと息を吐く。今のうちに攻めようとはする者は意外にもいなかった。神羅がいるからだろう。

 そのまま待つこと数時間。霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。特に目を引くのは彼等の中央にいる初老の男。美しい金髪に深い知性を備える碧眼、容姿は人間にそっくりだが、耳は尖っている。その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせるが、威厳に満ちた容貌をしている。年のせいで幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。長老と呼ばれるにふさわしい威厳をしている。

 

 「ふむ、お前さんが問題の人間族かね? 名は何という?」

 「我は南雲神羅」

 「南雲ハジメ。あんたは?」

 

 ハジメの言葉遣いに、周囲の亜人が長老に何て態度を! と憤りを見せる。それを、片手で制すると、森人族の男性も名乗り返した。

 

 「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。解放者とは何処で知った?」

 「オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ。そこでモスラっていう解放者の一人にも出会った」

 

 その言葉にアルフレリックは軽く目を見開くが、すぐにそれを打ち消す。やはり、長老は事情を知っているとみて間違いないだろう。

 

 「ふむ、奈落の底か……聞いた事がない。証明できるか?」

 「それならばこれでどうだ?」

 

 神羅がそう言うと懐からオルクスの指輪を取り出し、それをアルフレリックに渡す。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て目を見開くと、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

 「なるほど……確かに、お前さん達はオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 「ちょっと待て。何勝手に俺達の予定を決めてるんだ? 俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに用事もない。歓迎されてないみたいだし、問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらいたい」

 「いや、お前さん。それは無理だ」

 「なんだと?」

 

 どう言う事だ?とハジメが首を傾げると、アルフレリックは困惑したように口を開く。

 

 「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

 その言葉にハジメたちはぽかん、とした後、ハウリア族に一斉に視線を向ける。

 

「あっ」

 

 カムがまさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメの額に青筋が浮かぶ。

 

 「カム?」

 「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」

 「……まあ、いいであろう。仮に思い出していたとしても、結局早くたどり着けるわけでもなし。ならば多少でもその時間を情報収集に使えるようになったと考えよう」

 「……まあ、確かにいろいろ情報は欲しいしな……今回は見逃してやる」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 濃霧の中を部隊長のギルの先導で進む。隊列は神羅とハジメとユエ、ハウリア族、そしてアルフレリックを中心に周囲を亜人達で固めて既に一時間ほど歩いている。どうやら、先のザムと呼ばれていた伝令は相当な駿足だったようだ。

 そこからさらに数時間、突如、霧が晴れた場所に出た。晴れたといっても全ての霧が無くなったのではなく、一本真っ直ぐな道が出来ているだけで、まるで霧のトンネルのような場所だ。よく見れば、道の端に誘導灯のように青い光を放つ拳大の結晶が地面に半分埋められている。

 ハジメが、青い結晶に興味を向けていることに気が付いたのかアルフレリックが解説してくれた。

 

 「あれは、フェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも、この水晶で囲んでいる。まぁ、魔物の方は比較的という程度だが」

「なるほど。そりゃあ、四六時中霧の中じゃあ気も滅入るだろうしな。住んでる場所くらい霧は晴らしたいよな]

 

 そうこうしている内に、眼前に巨大な樹や木材を加工した防壁と入り口である巨大な門が見えてきた。飾り気のない武骨な10mはあろうかという門に40mはあろうかという城壁と言うにふさわしい重厚さの防壁は並みの魔法では破ることは不可能だろう。

 その防壁の下部には木を加工した巨大な武骨な槍が無数に並べられている。しかもそのほとんどが先端をどす黒く変色させている。

 

 「こいつはまた……随分と物々しいな……」

 「ここは国境のようなものだ。魔物の中にはフェアベルゲンに侵攻しかねない存在もいる。これぐらいの備えは当然だ。フェアベルゲンはこのさらに奥にある」

 

 なお、アルフレリックは言わなかったが、フェアベルゲンに入りきれない亜人達の村もこの防壁内の敷地に点在している。

 ギルが門番に合図を送ると重そうな音を立てながら門が開いていく。周囲の樹の上から、ハジメ達に視線が突き刺さっているのがわかる。人間が招かれているという事実に動揺を隠せないようだ。アルフレリックがいなければ、ギルがいても一悶着あったかもしれない。

 門の向こうには今までとさほど変わらない樹海の景色が広がっている。再びギルの先導の下歩いていく。

 そのまま歩いていくことしばらく、目の前に再び門が見えてくる。今度は太い樹と樹が絡み合って作られたアーチに木製の十メートルはある両開きの扉が鎮座していた。

 再びギルが合図を送るとこれまた門が開いていく。そして先ほどよりも強烈な殺気が向けられる。ここからがフェアベルゲン本国なのだろう。

 門をくぐると、そこは別世界だった。直径数十メートル級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人で渡れるであろう極太の樹の枝が空中で絡み合い回廊を形成している。樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路まであるようだ。樹の高さはどれも二十階くらいありそうである。

 神羅がほう、と感心したように顎に手を添えながら頷き、ハジメとユエがポカンと口を開け、その美しい街並みに見蕩れていると、ゴホンッとアルフレッドが咳払いをして、ハジメ達を正気に戻す。

 

 「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 

 アルフレリックの表情が嬉しげに緩んでいる。周囲の亜人達やハウリア族の者達も、どこか得意げな表情だ。ハジメは、そんな彼等の様子を見つつ、素直に称賛した。

 

 「ああ、こんな綺麗な街を見たのは初めてだ」

 「ん……綺麗」

 「自然と見事に共存している……大したものだ……」

 

 掛け値なしのストレートな称賛に、亜人達は少し驚いた様子を見せる。だが、やはり故郷を褒められたのが嬉しいのか、皆、ふんっとそっぽを向きながらもケモミミや尻尾を勢いよくふりふりしている。

 神羅達は、フェアベルゲンの住人からの好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を受けながら、アルフレリックが用意した場所に向かった。




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 後お知らせが。ありふれ零最新刊が出たことで、またどこかの話に手を加えるかもしれないので、その時はご了承ください。
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