ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 ではどうぞ!


第26話 ブルックの町

 「え~~と、確か次の目的地はライセン大峡谷でしたっけ?」

 「ああ、そうだけど、シアに話したっけ……って、兄貴か」

 

 キングコングとの邂逅後、神羅達はハウリア族の見送りを受けながら樹海を後にし、魔力駆動二輪を駆使して平原を疾走していた。位置取りは、ユエ、ハジメ、シアの順番である。訓練中を利用して神羅の二輪を二人乗りに改造したのだが、シアが断固としてハジメと一緒に乗ると抗議したため、このような運びとなった。

 

 「一応、ライセンも七大迷宮があると言われているからな。シュネー雪原は魔人国の領土だから面倒な事になりそうだし、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだが、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれないだろ?」

 「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」

 「と言っても、油断はするなよ。あの赤ん坊蜘蛛程度ならハジメ達でもなんとかなるが、親が出るとなると手も足も出ない。それに、いくら格下の魔物だとしても、油断していると、手痛いしっぺ返しを食らうかもしれんぞ」

 「ああ、分かってるよ」

 

 神羅が忠告すると、ハジメたちは小さく頷くが、その光景に神羅は少々難し気な表情を作る。一見すると神羅の忠告をちゃんと聞いているように見えるが、だが、それは恐らく、自分たち怪獣に対する忠告ぐらいだろう。同じ人間や原生の魔物に関しては慢心していると言っていいだろう。シアは今のところ大丈夫だが、今後どうなるか定かではない。勝ちが続けば、どこかに慢心は生まれる。そして、こればっかりは神羅ではどうしようもない。神羅も怪獣側だからどうしたって警戒しろと言ったってそれは怪獣に関する物だけと思われてしまう。

 神羅は知っている。この世に最強とは存在しない。どんな存在だって敗北する可能性を孕み、戦いでは全ての存在が薄氷の上。些細なことから命を落とす事なんてざらだ。だが、恐らく神羅ではその事を本当の意味で彼らに教えられない。

 

 (何事もなければいいが……)

 

 神羅の心配をよそに平原の道を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進んでいくことしばらく、視界の先に町が見えてきた。本当ならすぐにでもライセン大峡谷に行ってもいいのだが、その前に近くの町によることにしていたのだ。目的は食料と調味料系の補充だ。

 オルクスの隠れ家にいるとき、3人の食事を一手に引き受けていたのは神羅だ。元々神羅は南雲家の家事を引き受けていた。手が空いていたと言うのもあるが、元々料理に興味があったこともあって料理関係は神羅が受け持つことが多かった。そうして鍛えあげたその腕をいかんなく発揮し、限られた材料の中でうまい料理を作ってきたのだが、いい加減ちゃんとした材料が欲しいと思っていたところだった。

 

 (とりあえず、塩と砂糖は欲しいな。他にはできれば香辛料系……ここら辺は実際に見てみないと何とも言えんが……)

 「神羅さんは何を買うか決めているんですか?」

 

 騒ぎになるのは不味いと考えて二輪から降りて街に向かって歩いていく最中、神羅が頭の中で何を買うか考えていると、シアが袖を引っ張りながら問いかけてくる。

 

 「ああ、基本料理関係は我が引き受けてきたから我は食材などだな。器具はハジメが作った物やオスカーの物がある」 

 オルクス大迷宮攻略組はみな宝物庫を持っており、それぞれ己の私物のほか、ハジメはアーティファクトやその材料関係、ユエは自分用のアーティファクト、神羅はもっぱら食料関係を入れるようになっていた。

 そう言って神羅はシアに目を向ける。その首には黒く、しっかりとした作りで小さな水晶が目立たない位置に取り付けられている首輪が取り付けられている。

 人里にいる亜人族は基本的に奴隷として見られている。首輪は誰かの所有物であると言う証明だ。その首輪がないと言う事は誰のものでもないと言う事、そしてそれが愛玩用として人気の高い兎人族で、更にその中でも物珍しい白髪で、容姿もスタイルも抜群であるならば。間違いなく町に入って即座に目を付けられ、絶え間無い人攫いの嵐になるだろう。それを防ぐためにも首輪はつけなければならない。更に言えば、この首輪には念話石と特定石と言う、言ってしまえば、通信機とビーコンとしての機能も備えている。

 最初にこれをつけるときは説明を受けてもシアは納得しがたい感じだったが、ハジメとユエの説得もあって今では納得している。

 そうして歩いていくこと少し、町の門にたどり着き、そこで門番をしていると思わしき冒険者風の男に呼び止められる。

 

 「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

 規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。ハジメは、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。

 

 「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 

 ふ~んと気のない声で相槌を打ちながら門番の男がハジメのステータスプレートをチェックする。そしてそのまま問題なしとステータスプレートを返す。ハジメの異常なステータスもまた騒ぎの要因となるため、きちんと隠蔽してある。

 

 「それで、その3人は……」

 

 門番は神羅達に視線を向けるが、ユエとシアを見た瞬間、硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目でユエとシアを交互に見ている。ユエは言わずもがな、精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だ。そして、シアも喋らなければ神秘性溢れる美少女である。見惚れてしょうがないだろう。

 

 「道中で魔物の襲撃にあってな、こっちの2人はステータスプレートを無くしてしまってな。もう一人の兎人族は……分かるだろう?」

 

 神羅の場合、ステータスはまだ隠せるが、天職のところは隠すことができない。怪獣王なんてぶっ飛んだ職業、一体どうなるか見当もつかない。なので、最初からステータスプレートを持っていないユエとシアと共に失くしたことにするのが最善と考えたのだ。

 その言葉に門番はなるほど、と納得したように頷き、ハジメと神羅に羨望の眼差しを向ける。

 

 「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? あんたらって意外に金持ち?」

 

 ハジメは何も答えず肩をすくめ、神羅は何も言わず鼻息を漏らす。

 

 「まぁいい。通っていいぞ」

 「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」

 「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

 「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

 門番から情報を得て、神羅達は門の中に入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。町中は、それなりに活気があった。かつて見たオルクス近郊の町ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるものだ。ハジメとシアだけでなく、ユエも楽しげに目元を和らげている。一方神羅は早くも商品の質を見始めている。

 

 「兄貴。まずは冒険者ギルドで換金をしないと」

 「そうだな……ハジメ。一応言っておくが、出すのなら奈落の魔物以外のものにしておけよ?」

 「分かってるって……」

 

 神羅の言葉にハジメは若干肩を落としながら答え、4人はメインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 こういう冒険者と言うのは荒くれというイメージがあり、中は薄汚れた雰囲気だと思ったが、意外にも清潔だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。

 中の冒険者たちは神羅達に一度視線を向け、その後にユエとシアを見つけて、ぼーとする者や、見惚れる者、そして恋人に殴られる者が続出した。

 そんな視線の中歩いていき、カウンターにたどり着くとそこにいたのは……顔を浮かべたオバチャンがいた。恰幅がよく、横幅がユエ二人分はある。どうやら美人の受付というのは幻想のようだ。その事実にハジメがこっそり落胆していると、

 

 「両手に花を持っているのに、まだ足りなかったのかい? 残念だったね、美人の受付じゃなくて」

 

 おばちゃんがニコニコ笑いながら言ってくる。

 

 「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ? 男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。まあ、そっちの兄ちゃんはそんなこと考えなかったようだけどね。そっちの兄ちゃん見習わないと、いつか愛想尽かされちまうよ?」

 「……肝に銘じておこう……」

 

 神羅がその通りだと言うように頷きながらチラリと食事処を見ると、冒険者達が「あ~あいつもオバチャンに説教されたか~」みたいな表情でハジメを見ている。どうやらおばちゃんのおかげで冒険者たちは大人しいようだ。

 

 「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

 「ああ、素材の買取をお願いしたい」

 「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

 ハジメの疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

 「あんたら冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 「そうだったのか」

 

 他にも冒険者になると色々な特典があるらしい。ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引きが利き、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするようだ。

 

 「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 「可愛い子二人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」

 「すまぬな、手間をかけて」

 「若いのに細かい事なんて気にしてんじゃないよ。あんたはいいのかい?」

 「ああ、我は特に気にしないから、大丈夫だ」

 

 そう言うとおばちゃんはそうかい、とそれ以上言ってこなかった。ユエとシアも同様だ。

 ハジメがステータスプレートを差し出し、少ししておばちゃんが返すと、職欄の横に職業欄が出来ており、そこに冒険者と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 青色の点は、冒険者ランクで、上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。

 ちなみに、この世界の貨幣、ルタだが、冒険者ランクと同じ青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。

 つまり、青とはお前は一ルタ程度の価値しかねえよ。と言われているのを同じだ。これを考えた人間は性格がねじ曲がっているとしか思えない。

 

 「男なら頑張って黒を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪ところ見せないようにね」

 「ああ、そうするよ。それで、買取はここでいいのか?」

 「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

 オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。ハジメは、あらかじめ宝物庫から出してバックに入れ替えておいた樹海の魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石を取り出す。カウンターに取り出されていく素材を見て、オバチャンが驚愕の表情をしながら素材を手に取る。

 

 「こ、これは……!とんでもないものを持ってきたね…………樹海の魔物の奴だね?」

 「うむ」

 「樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ……でも、いいのかい?中央ならもっと高く売れるよ?」

 「いや、中央に行くのも手間だし、さっきも言ったが路銀がない。ここで構わん」

 

 そうかい、とおばちゃんは全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は四十八万七千ルタ。中々ではないだろうか。神羅は51枚の貨幣を受け取る。

 

 「ところで、門番の奴に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。

 

 「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

 「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 「……なぜお前はこんなところで受付をやっているのだ?」

 「いい女には秘密が付きものさ。あんまり詮索するもんじゃないよ?」

 

 まあ、確かに。神羅から見て、こういう女性の方が下手に容姿だけの女よりも好みではある。

 

 「それじゃあ、いろいろありがとうな」

 「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

 ハジメは苦笑しながら「そうするよ」と返事をし、神羅達と共に入口に向かって踵を返した。

 

 「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

 後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きが残された。

 

 




 今作のハジメは現状原作並みの精神力を持っていますが、ぶっ飛んだ強さを持つ存在を知り、それの中でも最強格が仲間にいるためか怪獣関係には一切の慢心はありませんが、原作と比べて魔物や人間に対し、いささかの慢心を持っています。
 これが今後どうなるか………

 
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