ではどうぞ!
目の前で見事なまでのポーズを決めている少女の名前にハジメたちは今度こそ驚愕に目を見開き、動きを止めてしまった。
それはそうだ。ミレディ・ライセンは人間のはず。それも数百年前の。生きている事には驚いたが、それでも何らかの方法で魂の様なものをゴーレムに定着させているのだと思っていた。少なくとも、生身でいるなど絶対にありえない事のはずだ。だと言うのに、彼女は今、目の前にいる。ゴーレムなどでは絶対にありえない、生身の肉体を持って。
しばし呆然とその姿を見ていると、ミレディがいやん、というように腰を振る。
「あれれ~~?どうしちゃったの黙っちゃって。もしかしてミレディちゃんに見とれてた?ごめんね!恋人がいようとみんなを魅了しちゃう超絶美少女でごめんね!」
そのウザい言葉に皮肉にもショックが抜け、ハジメ達はじろりとミレディを睨む……いや、ユエがハジメを視界の端で少し睨んでいた。
「そんなわけあるか。俺達は少なくとも肉体を持っているわけがない存在が肉体を持っていることに驚いたわけだ……どうなってやがる……」
「………なるほど、モスラか」
そんな中、神羅は何かに気づいたようにそう呟く。
「モスラって……どう言う事ですか?」
「モスラは転生能力を有しているだろう?それは今生でも同じだ。恐らくだが、その転生能力を使ったのだろう」
神羅の推測にミレディはお~~、と感心したように声を漏らす。
「本当に流石だね、ゴジラ君。その通り。モスモスが有していた転生能力は、こっちに来て固有魔法に変化したんだ。その固有魔法を頑張って魔法陣に起こして、発動させるための魔力を用意しておいたんだよ。まあ、そのために神結晶を使うとは思わなかったけどね」
あはは、と頭を掻くミレディの言葉にハジメたちは目を見開く。そりゃ、転生と言う大魔法だ。それ相応の魔力が必要だとは思うが、まさか神結晶が必要だとは……いや、オスカーは神結晶を自作していたが……
「なるほどな……全く大したものだ。何も感じないゴーレムの身体で、よく生身の誘惑に耐えれたものだ……」
何も感じない、それはまさしく地獄だ。人のぬくもり、肌の感触、空気の流れ、太陽の温かさ、土のにおい、食物の味、他にも様々な、生を実感させる物全てを奪われた状態で、それを取り戻す術を目の前にぶら下げられるなど、拷問そのものだ。それに耐え抜いたミレディの精神力はもはや人知を超えている。
すると、ミレディはどこか気まずそうにあはは、と苦笑を浮かべ、
「いや……そんな大したものじゃないよ……さて、まあ、お話は……これぐらいでいいでしょう」
そう呟くと同時にミレディがパン、と柏手を打つ。その瞬間、空間内部の何かが変わった。ハジメ達が突然の事に目を見開き、警戒した瞬間、ミレディはその両手を開く。
「さあ、始めようか、獣級試練を。対象はもちろん、この私、ミレディ・ライセン。君たちの今持てる全力をぶつけてほしい。そのためにこの空間内限定で魔力分解効果を無力化したんだから」
「……はっ、そうかよ……そいつはずいぶんと舐められたもんだ……!」
ハジメはすぐさまドンナーとシュラークを構え、纏雷を流す。確かに、魔力分解効果は働かず、いつもの出力で放てる。これなら十分に戦える。
ユエも気付いたのか、黒盾を取り出し、シアもドリュッケンを構え、神羅はごきりと指を鳴らす。
「ああ、そうだ、言い忘れてた。ゴジラ……いや、いい加減こっちで呼ぼう。神羅君。君は最初は参加しないでほしい」
「ん?どう言う事だ?」
「……怖気づいた?」
「私はまず、人間である彼らの実力が見たいんだ。君の力無しの彼らの力を。だから最初は手を出さないでほしい……まあ、怖気づいたって言うのも間違ってはいないかな」
その言葉に神羅はふむ、と顎を撫で、ちらりとハジメたちを見る。ハジメ達はどうする?とこちらを見つめている。そしてその視線の奥には自分への自信がちらついている。怪獣じゃないなら、自分達でも大丈夫と言うように。シアは若干不安そうだが、それでも自信はある。
それを見た神羅は少し考えた後、
「まあ、そう言う事ならばいいだろう。ただし、3人の命に危険が迫ったら、割り込ませてもらうぞ」
「いいよ、それぐらいだったら」
頷くと神羅はその場から離れ、手近な足場の上に腰掛ける。すぐにその足場が離れていく。
「さて……それじゃあ、始めようか」
「兄貴がいないからって、舐めるなよ」
「……ん、私たちは最強。何が来ても負けない」
「よし、私も覚悟を決めました!ドンと来いですぅ!」
ハジメ達が戦意を滾らせているのをミレディは若いね~~、と微笑ましいものを見るように頷いている。
「凄い自信だねぇ……うん、分かるよ。モスモスから聞いたけど、オー君の迷宮を突破したみたいだしね。あそこは他の6つの大迷宮を攻略したこと前提の難易度だからね……でもさ、一つ言わせてもらうよ。
その程度で調子に乗るなよ未熟者共が」
ミレディが低い声でそう呟いた瞬間、
天井が音もなく消失し、空が現れた。
そう錯覚するほど、空間の一部が蒼穹の輝きに包まれる。それがミレディが発した魔力だと気づいた瞬間、ハジメ達は言葉に詰まる。
なぜなら、その魔力の量は、どう考えても、神羅を除けば、最も魔力量があるハジメのそれを超えていたからだ。
「解放者が一人にして、処刑人一族ライセン家が一人、ミレディ・ライセン。参る」
その瞬間、それは起こった。
「雷炎槍・千輪」
一瞬でミレディの背後から夥しい量の螺旋を描く雷と炎で構成された槍がハジメたち目掛けて豪雨のように降り注ぐ。
動き出しが遅れたハジメ達だったが、次の瞬間即座に動く。ハジメはユエを抱えて即座にその場から飛びのき、シアも慌てて飛ぶ。ハジメははなから迎撃なんて頭になかった。隠れ家での訓練の時にユエが放った弾幕すら超える、まさしく魔法の壁ともいうべきそれをドンナーとシュラークで迎撃するなんて不可能だ。
だが、ミレディは魔法を回避されても顔色一つ変えず動く。
「緋槍・千輪」
視線を向けもせず片手をハジメとユエの方向に向け、螺旋の炎の槍を無数に射出、シアの方には巨大なブロックを豪速で上空から落下させる。
シアは大急ぎでその場から飛んでブロックを回避し、ハジメは宝物庫からオルカンを取り出し、一斉に発射、ミサイルが炎の槍に直撃して幾らかを吹き飛ばすが、それでもまだ弾幕は衰えない。が、
「氾渦浪!」
ユエが巨大な津波を生み出して炎の槍の一軍に叩きつけようとする。これで一気に迎撃できると思った瞬間、
「懐劫」
そうミレディが呟いた瞬間、超重力場が津波のみを一瞬で押しつぶし即座に霧散、炎の槍は影響を受けた様子もなくそのままハジメたちに襲い掛かる。
「っ!聖絶!」
ユエは即座に全力の聖絶を展開し、その直後に無数の炎の槍が次々と聖絶に直撃する。
ミレディがダメ押しと言わんばかりにさらに魔法を放とうとした瞬間、
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シアが雄たけびを上げながらドリュッケンを振りかぶり、更に激発、その反動を利用した渾身の一撃を繰り出す。相手が生身だとかそんな考えはない。シアの、兎人族として本能が察知したのだ。ここいるミレディは絶対的な強者であると。手を抜いた瞬間、自分が死んでしまうと。
故に全力の一撃。だが、気づいているはずのミレディは振り向きもせず、代わりにミレディがまとう羽衣が戦槌を受け止めるようとするかのように動く。
その程度!とシアはそのままドリュッケンを振りぬく。その一撃は見事にミレディの脇を捉えたが、
「………嘘………」
シアは愕然とした様子で呟いていた。なぜならそれは神羅が指一本で受け止めるよりもあり得ない光景だったからだ。なにせシアの必殺の一撃は、その羽衣でしっかりと受け止められていたからだ。たった一枚の、布切れで!
護天羽衣。金属糸で編まれたオスカー謹製のそのアーティファクトはあらゆる魔法、衝撃を柔軟に受け止め、そのまま受け流してしまう。更に魔法による障壁を組み合わせれば、
「威力は十分、気迫も見事。だけど圧倒的に………技が追い付いていない!」
そんな未熟な一撃、受け止めることなど造作もない。ミレディはかざした左手から黒い重力球を発射。
「ごっ……!?」
呆然としていたシアは腹部にそれをまともに喰らい、体をくの字に曲げながら吹き飛ばされてしまう。身体強化がなければ今の一撃で戦闘不能になってもおかしくない一撃を叩きつけられたシアは激痛に動きを止め、激しくせき込む。
だがミレディは容赦しない。
「極大・天雷槍」
天灼を3発纏めて圧縮、槍の形に変えた一撃がシアに襲い掛かる。シアは痛みをねじ伏せて急いでその場を退避するが、槍はそのまま地面に着弾し、周囲に強烈な雷撃を拡散、それに巻き込まれたシアはそのまま吹き飛ばされてしまう。
ミレディはさらなる攻撃を繰り出そうとするが、素早くその場から退避する。瞬間、先ほどまでミレディがいた場所をレールガンが貫く。
視線を向けると同時にさらに5条の閃光がミレディを貫かんと襲い掛かるが、ミレディの体が一瞬で上空に飛翔して回避してしまう。そのままミレディは自分の周囲に10を超える黒い衛星を生み出す。そこにさらに無数の赤い閃光と炎弾が襲い掛かるが、その全てが黒い守護衛星に飲み込まれ、ミレディには届かない。
その光景を見てハジメは忌々し気に顔を歪める。そのそばではユエが息を切らせながら魔晶石を使って魔力を回復させていた。ミレディの緋槍の乱舞は想像以上の破壊力だった。幸いにもユエの聖絶を破られることはなかったが、その維持にかなりの魔力を消費してしまったようだ。
ユエは悔し気にミレディを見上げると、再び無数の炎弾、更には氷の槍、風の刃を生み出し、ミレディ目掛けて一気に解き放つ。それはミレディに劣るが、凄まじい弾幕。これならば回避するにしろ、無力化するにしろ、幾らか隙ができる。ハジメならそこをつける。そう思っていた。
が、次の瞬間、ミレディは防御も回避も無力化もせず、逆に衛星を従えた状態でそのまま弾幕に真正面から突っ込む。当然ながら無数の魔弾がミレディを襲うが、その全てが守護衛星によってのみ込まれ、無力されていき、結果としてミレディは無傷で弾幕を突破してハジメとユエの前に躍り出る。
その事に二人は目を見開くが、ユエは即座に黒盾をハジメと己の前にかざすが、ミレディが軽く指を振るった瞬間、黒盾とユエの体が明後日の方向にぶっ飛んでいく。
「おまけだよ」
そう言うとミレディは守護衛星を一斉にユエの方に向かって射出する。
「ユエ!くそ、舐めるなぁ!」
ハジメはユエが吹っ飛んでいった方角に目を向けるが、すぐに頭を振ってミレディとの距離を詰める。ここまで戦闘から、ミレディは恐らくユエのような魔法戦特化型。だからこそ、ハジメは接近戦を選ぶ。ハジメは至近距離からミレディにドンナーを突き付け、ためらいなくレールガンを放つ。だが、ミレディの体が僅かに横にスライドし、回避される。即座にシュラークによる連続発砲がなされるが、それもミレディは最小の動きで回避、ハジメが蹴りを繰り出し、それに合わせて風爪を繰り出すが、その軌道すら見切っているかのようにミレディは涼しい顔でよけ、髪が数本宙を舞う。
ハジメは更に連撃を繰り出す、レールガン、固有魔法、足技、格闘、義手のギミック、これまで培ったすべての技を全てつぎ込んだ猛攻。それは常人であれば成すすべなく蹂躙し、たとえどれほどの魔物に囲まれようと、その全てを駆逐し、突破できるだろう。
だが、
(くそっ!こいつ………!?)
ミレディには傷一つつけられない。ミレディはその猛攻を全て紙一重で回避している。風爪は髪を数本切るだけで皮膚には届かない。纏雷もその範囲を見切っているかのように肌を焼かない。レールガンも狙っているはずなのだが、掠りもしない。時折混ぜる通常銃撃すら回避し、義手の機構を使った攻撃も分かっているかのように避けられる。しかもそれは体捌きだけでなされているわけではない。ミレディが重力を操り、自身を動かしてなしているのだ。その制御能力はもはや化け物と言う言葉すら生ぬるい。
「ふうん……中々だね。でもまだまだ……未熟だね、新人君」
そう言った瞬間、ハジメは屈辱に顔を歪め、即座にドンナーとシュラークをリロードしようとした瞬間、
「そこ」
瞬間、ドンナーとシュラークに凄まじい重力が一瞬だけ仕掛けられる。ガンスピンの最中で不安定な状態の二丁と空中の弾丸はその重力であっさりと地面に叩き落される。指が巻き込まれなかったのは幸いか。ハジメが目を見開いた瞬間、ミレディはその隙を見逃さず、その懐に潜り込む。当然ハジメは回避しようとするが、
「っ!?」
突如として利き足にほんの一瞬重力が加わって動かなくなり、回避が遅れる。
その隙にミレディの拳がハジメの腹部にドっ!と鈍い音と共に突き刺さる。
「が……はっ……!」
それは彼女の華奢な腕から考えられないほどの破壊力を秘めており、ハジメは血を吐きながら打ち出された砲弾のように吹き飛んでいく。
ミレディがふう、と髪をかき上げ、服の乱れを正した瞬間、
「蒼天!」
その頭上に蒼い灼熱の火球が生み出され、ミレディに襲い掛かるが、彼女が何も言わずに指を鳴らせば超重力場が蒼天を一瞬で飲み込み、消し去る。
視線を向ければ、服はボロボロだが、無傷のユエがこちらを睨みつけていた。
「もしかしてあれを凌ぎ切ったの?君、中々やるね……と思ったけど、違うか。何らかの、再生関係の固有魔法かな?吸血鬼ってそう言う魔法に目覚めやすいのかな?それとも……」
「……御託は言い。これ以上、好きにはさせない!」
そう言った瞬間、ユエの全身から黄金の魔力が立ち上る。それを見たミレディもなるほど、と声を漏らした瞬間、
「緋槍、砲皇、凍雨、崩岩、雷蛇!」
ユエの背後から炎の槍、風の塊、氷の針、岩の塊、蛇のように動く雷撃が無数に現れる。それはミレディの弾幕にも負けずとも劣らない魔弾の壁。
それを見たミレディはへえ、と感心したように声を漏らす。そしてそれら全てがミレディに牙を剥き、蹂躙せんと襲い掛かる。
が、ミレディも即座に動く。
「緋槍、砲皇、凍雨、崩岩、雷蛇」
同様に魔法を生み出し、それで魔弾を迎撃していく。空中で無数の魔法がぶつかり合い、相殺し、魔力と火花の華が咲き乱れる。
そのまま両者は次々と魔法を撃ち合い続けるが、先に異変に気付いたのはミレディだった。
僅かに彼女は顔をしかめる。ユエの魔法の構築速度、制度、威力がが上がっていき、ミレディの構築速度に迫り始めたのだ。
ユエは自他ともに認める魔法の天才だ。そのユエはミレディの魔法を見て、その技を見て、分析し、理解し、盗み、最適化し、実行しているのだ。
少しずつ己の魔法がミレディに迫り始めた事実にユエは内心笑みを浮かべる。魔力量では絶対的な差があるが、この分ならば、少なくともハジメとシアが態勢を立て直す時間は稼げる。そう思った瞬間、
「凄いね、君。これほどの魔法の才能には私も会ったことがない。もしかしたら私を超える……千年、いいや、万年に一人の逸材かもしれない……」
突然の誉め言葉にユエが訝しげな表情を浮かべた瞬間、
「やっぱり若い才能、外からの刺激はいいね。それじゃあ……私ももう少し本気でいこうかな」
そう言った瞬間、今度はミレディの魔法の構築速度と制度が加速し、込められる魔力の量も上がり、弾幕の密度と威力を上昇させる。
「こ、ここに来てさらに上がるの!?」
ユエも負けないと言うようにさらに魔法の構築速度を上げるが、ミレディのそれはユエをも超える勢いで上昇していき、ユエの弾幕を正面から押しのけていく。
おかしい。成長速度では自分が勝っているはず。ならばこんなにも一方的に押し負けたりはしないはず。
「私を超える速度で成長……いいや、違う。まさか、今までは本気じゃなかった!?」
その事実にユエが気付いた瞬間、ついにミレディの弾幕がユエの弾幕を押し切り、ユエに魔法が殺到する。
ユエがとっさに黒盾を構え、聖絶を展開、防御しようとした瞬間、
「ユエさん!!!」
そこに雷による蚯蚓腫れの様な火傷痕を負いながらも復帰したシアがドリュッケンを連続で激発させ、その勢いで飛び込み、更にその勢いを利用してドリュッケンを勢いよく薙ぎ払う。
その一撃は大量の弾幕を一息に薙ぎ払い、更に連続でドリュッケンを繰り出して次々と魔法を薙ぎ払っていくが、ミレディはそれを超える勢いで大量の魔法を繰り出す。そしてついにドリュッケンの勢いが減衰、それによってシアの動きが遅れ、
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
無数の魔法が炸裂し、それに巻き込まれたシアは悲鳴と共に吹き飛ばされ、さらにその弾幕が聖絶を打ち破り、ユエに殺到、黒盾は受けた魔法を放出するが焼け石に水。炸裂した魔法によってユエは大きく吹き飛ばされていく。
ミレディがふう、と魔法を撃ち終わり、手を下ろして息をつく。そして周囲を見渡そうとした瞬間、夥しい量赤い閃光がミレディに殺到する。
ミレディは即座に巨大な重力球を生み出し、その全てを飲み込んでいく。
それをメツェライを構えたハジメは忌々しげに顔をしかめるが、再びメツェライを解き放ち、夥しい量のレールガンを放つが、そのどれもが重力球に飲み込まれる。
「本当に面白いアーティファクトだね。オー君が見たらはしゃぎそう……それじゃ、返すね」
ミレディがそう呟いた瞬間、重力球から今まで飲み込んできた弾が尋常ではない量の弾幕としてハジメに向けて解き放たれる。
「っ!」
ハジメはメツェライをしまって瞬光を発動させる。爆発的に加速した知覚能力と反射能力を用いてハジメは弾幕の僅かな綻びに風爪をねじ込んでこじ開けながら回避していく。そして弾幕を切り抜けると同時にオルカンを取り出し、ミサイルを放つ。
だが、それもミレディが手をかざせばすべて空中で静止し、逆にハジメ目掛けて撃ち返される。ミサイルの雨を掻い潜りながらハジメはミレディとの距離を詰める。ミレディが迎撃しようと雷を放った瞬間、ハジメは義手のショットシェルを発射。激発の反動で一気に加速、雷を紙一重で回避し、一気にミレディとの距離を詰める。
ミレディが一瞬瞠目した隙に、今度こそ一撃を叩きこもうと剛腕を発動させた右腕を振りぬき、
「崩陣」
瞬間、ハジメの体が重力の楔から解き放たれ、そのまま上空に向かって吹っ飛んで行ってしまう。そのまま明後日の方向に吹き飛ばされ、ハジメは受け身も取れずに地面に叩きつけられる。
そこまで来てミレディは足元に転がっているドンナーとシュラークを見やると、それを浮かばせ、そしてハジメの元に吹っ飛ばす。目の前に跳んできた相棒にハジメが目を見張り、顔を起こす。ユエとシアも、よろよろとよろめきながら起き上がり、ミレディを見やると、
「もう終わりかな?挑戦者の諸君」
そう言ってかかって来いと手招きをする。
ちょいとした説明を。
ミレディ・ライセン(生身)
モスラの転生魔法を魔法陣として使い、肉体を取り戻した解放者のリーダー。怪獣と言う絶対的脅威に対し、原作以上に厳しく、モスラの手を借りながら己を鍛えあげ、更に迷宮内にいるときもただひたすらに己を鍛え続け、知識を蓄え、錬磨し続けてきた。その結果、人知を超えた魔力と処理能力を備えている。全ての魔法の威力、制度が凄まじく、重力魔法の秘奥にも今では自在にたどり着けるまでになっている。
なお、どうしてミレディがそんな無茶ができたかはまた後程……ちょいとやりすぎたか?