ところで、最近遅まきながらあつ森を買ったんですが……購入三日目でリュウグウノツカイを吊り上げたのってどうなんだろう……あとオニヤンマ捕まえた……後、生き物が大量に集まって、でも博物館がまだ開いてないからうちの前がすごい事になってます……生き物で埋め尽くされてます……
とりあえず、どうぞ!
勝利した。そう分かった瞬間、ハジメの全身をすさまじい倦怠感が襲い、そのまま神羅に体を預けてしまう。
「よく頑張ったな、ハジメ。神水を飲んでおけ」
「ああ……動くうちに飲んでおかないとな」
ハジメは宝物庫から神水を取りだすとそれを一気に煽る。見る見るうちに体の傷が治っていき、活力がみなぎってくる。それを感じ取ったハジメはすぐに覇潰を解除する。それでもかなりの疲労感だ。ハジメは大きく息を吐きながら神羅に視線を向ける。
「もう大丈夫だ。戦うの厳しいけど、一人で動ける」
「分かった。ユエとシアの様子を見てくる」
神羅はハジメから離れ、ユエとシアの元に向かう。その間にハジメは左手の調子を確かめてみる。動かそうとするとギギギ、と異質な音が響き、まともに動かない。
「これは……一から作り直さないとまずいかもな……」
ハジメが参ったなぁ、と頭を掻いている中、神羅はユエとシアに話しかける。
「二人とも大丈夫か?神水は飲めそうか?」
「私は………何とか………うん………」
ユエは息も絶え絶えの様子で答え、神水を飲もうとするが、その手はカタカタと震えてしまっている。どう考えてもまともに飲めるような状態ではない。
「無理をするな。もう少し呼吸が落ち着いてからにしろ」
「……そうする……今の状態じゃ、血もまともに飲めない………」
「そうしろ。それでシアは………」
神羅はシアに目を向ける。先ほどから何も返さないシアだが、呻くようにう、あ、と声が漏れる。身体は指一本まともに動かせないのか揺れるだけだ。
「とりあえず、生きてるな。これでは神水も飲めんだろう。すまんがしばらくはそのままだな」
「………は……の……め………ん……」
「何と言ってるのか全然分からんのだが」
そこにミレディがあはは、と笑いながら歩いてくる。
「お疲れ様。本当、よくやったよ。みんな」
そう言うと、ミレディは回復魔法を使用する。見る見るうちにシアの傷は癒えていき、体が少しずつ動くようになる。ユエも先ほどよりも顔色がよくなる。
「回復も……使えるの……?」
「まあね。まあ、闇はあんまり使えないんだけど」
本当に魔法に関しては多彩だ。ユエはむう、と悔し気に顔をしかめる。
「さて、神水を飲んで回復したなら、あとは我だけだな。ミレディ、我の試練はいつ始める?」
神水を飲んでいる二人を後目に神羅が問いかけると、ミレディはう~~~ん、と申し訳なさそうに頭を掻き、
「それなんだけど、神羅君……君の試練は後日にしていいかな?」
その言葉に神羅は小さく首を傾げるが、ハジメ達はじろりとミレディを睨みつける。
「どう言う事だ?まさか、本当に怖気づいて、兄貴との戦いは無しにしようってか?」
「ちょ、違うよ。そんなんじゃないって!ただ、私もかなり消耗しちゃったからさ。このまま連戦しても、まともな勝負にならないよ。いや、怪獣相手じゃ全開でもまともに勝負にならないかもしれないけど……それでもやっぱり試練だしさ。全力でやりたいじゃん。だからさ……」
「ふむ、なるほど……その意味では我としても、異論はない。あいつと共に戦った者。相対するならば全力でとは我も望むところだ」
神羅は異論はないと言わんばかりに頷いている。その様子をハジメ達はえ~~、と言った表情で見つめ、胡散臭げにミレディを見る。
「別に何日もかけないよ。二日ぐらいたてば私も完全に回復するから。その後に訪ねてきてくれればちゃんと相手をする。私は逃げも隠れもしないよ。なんだったら、攻略の証でショートカットを使ってもいいし」
「……ハジメ。我は一向にかまわん。それに、その腕では直るまで出発はできまい?」
その言葉にハジメはう、とうめき声を漏らして顔をしかめる。確かにこの左腕を修理しない事には出発は延期せざる終えない。その間の拠点はここから一日ほどしかかからないブルックの町だ。もちろん、その間ユエやシアの訓練につき合うだろうが、それでも神羅ならば余裕があるのは間違いない。ショートカットが許可されているならなおさらだ。
ハジメは少し考えるように唸ると、
「はあ、兄貴がいいって言うんならそれでいいさ……」
「どうも。あ、でも、結局普通の試練はクリアしたからそっちの方のご褒美はあげるし、神代魔法もあげるけど、どうする?」
「いや、お前との戦いの後で構わん」
「そっか。それじゃあ、そろそろ移動しよっか。3人とも動ける?」
「まあ、何とか」
「……ん」
「一応は……」
「ちょっと厳しそうだね。それじゃあ……」
ミレディが軽く指を鳴らせばハジメたちの体がふわりと浮き上がる。
ハジメ達は突然の事態に驚くが、ミレディはそれを無視してそのまま自分も浮かび上がり、そのまま飛行していく。そして壁面が見えてくるとその一部が発光、そのままその部分の壁が消え、白い通路が現れる。そこに着地すると、ミレディはそのまま軽い足取りで歩いていく。
本人はかなり消耗したと言っていたが、回復する必要があった自分たちと違い、未回復でまだ余裕がありそうだ。それだけでも地力にかなりの差があると認めざるを得ない。
白い通路を通った先にあったのは中央の床に魔法陣が刻まれた白い部屋だ。壁の一角に扉が設えられている。
「それじゃあ、神代魔法をあげるよ。そこの魔法陣に乗ってね。3人一緒でも問題ないよ」
その言葉にハジメたちは魔法陣の中に立つ。今回は、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。ハジメとユエは経験済みなので無反応だったが、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。
「これは……やっぱり重力操作の魔法か」
「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね…って言いたいところだけど、君とうさ耳ちゃんは適性ないねぇ~もうびっくりするレベルでないね!」
「やかましいわ。それくらい想定済みだ」
「ま、そうは言ってもそれが全てって訳じゃない。どんな力も、使い方次第さ。金髪ちゃんは適性ばっちりだね。修練すれば十全に使いこなせるようになるよ」
その言葉にハジメたちは小さく頷く。
「それじゃあ、あとは攻略の証とご褒美ってやつだが……」
「気が早いねぇ、全く……………まあ、いいけどさ。それじゃあ、もってけ泥棒!」
そう言うとミレディはハジメ達から距離を取り、首から下げているペンダントを光らせる。すると、ハジメ達の前にドンっ!!と巨大な山が出現する。
「こ、これは……!」
「ほほう、こいつは………」
ハジメはそれを目にして、驚愕の表情を浮かべる。なぜならそれは大量の鉱石だったからだ。その量たるや、まさしく小山程もある。
「まずはいろんな鉱石。アザンチウムもあるし、神結晶だっていくつかあるよ。うまく使ってね」
「あ、ああ……と言うか、こっちでも神結晶あるのか」
「オー君が作り方見つけちゃったからね……」
ミレディがアハハ、と引きつった声をあげる。彼女からしてもオスカーのそれは異常らしい。
ハジメはとりあえず鉱石を次々と宝物庫に放り込んでいく。そしてそれを全て放り込むと、
「それじゃあ、次はこっち!」
そう言ってミレディが取り出したのは数々のアーティファクトだ。
「これは全て解放者の仲間たちの固有魔法を付与した物や、みんなが使っていたアーティファクトだよ。もう君たちの物だから、好きにしていいよ。自分で使ってもよし。材料にしてもよしだよ」
「え?固有魔法って……」
「うん、そうだよ。解放者には大勢固有魔法、そして魔力操作を持っている人がいたんだ。当時は君の様な魔力持ちの亜人も結構いたよ………そう言えば、そこら辺は今どうなってるの?」
「ああ、確か魔力操作は魔物だけが持つ能力で異端とされてたな……亜人達もそうしていたが……」
ハジメの言葉にミレディはん?と首を傾げる。
「亜人も?有力な力を持った仲間を排斥しているの?」
「ああ。それでシアとその一族は樹海を追い出された。まあ、兄貴もそこら辺の事を指摘していたが……ん?ちょっと待て。つまりあれか?前は亜人達は魔力持ちを歓迎していたのか?」
「そ、それじゃあ……で、でも、どうして今は………」
そんな言葉も聞こえていないようにミレディは顎に手を当てて真面目な様子で考え込んでいる。そしてしばらくして、
「………あいつら……小細工しやがって……」
「小細工?」
「ああ、うん……そうだね。亜人がそう言った現状なら、伝えといたほうがいいか」
そう言って一つ頷き、ミレディは口を開く。
「これから旅をする中で気を付けておいたほうがいい奴がいる。神の使徒を名乗る銀髪の女。そいつらは奴らの直属の僕。普通に馬鹿強いだけでなく、洗脳……みたいな能力も持っている。しかも私は見た事ないけど、他人に成りすます事ができるみたいなんだ」
「は?どうしていきなりそんな事………」
突然の情報にハジメが首を傾げていると、
「……なるほど」
ユエが納得したような声を漏らす。
「つまりあなたはこう考えている。その使徒が亜人に成りすまして潜り込み、魔力持ちは危険だと洗脳した。その結果、亜人達は魔力持ちを排斥するようになった、と」
「うん。可能性はあるよ」
「……それじゃあ、みんなが……樹海を追い出されたのは……そいつらの………」
シアが怒りを込めるように拳を握りしめるが、
「落ち着いて、うさ耳ちゃん。君の怒りは分かる。でもそれに身を任せちゃだめだよ。それこそ連中の思うつぼだ」
「……はいっ……」
ミレディの言葉にシアは体を震わせ、しかし、少しすると小さく息を吐きながら頷く。
「とりあえず、警戒はしておいて。君たちの中じゃ、神羅君は楽勝。弟君は互角。うさ耳ちゃんは劣勢。金髪ちゃんはかなり厳しいから。知り合いが急に変な事を言い始めたり、感情が抜け落ちたような様子を見せたら要注意ね」
ミレディの忠告にハジメたちは小さく頷く。それを見たミレディはよしっ!と空気を切り替えるように軽く手を叩く。
「さて、次は……と」
そう言ってミレディが次に取り出したのは無数の書物だ。もっとも、それはかなりすり切れた様相をしている。中には一度ばらけたのをひもでまとめ直したものまである。
「これは私がいた時代……魔人族との戦争の最前線にあり、一応、私の故郷でもあった魔法大国、グランダート帝国の魔法関係の書物、そしてここにいる間に私が書き記した魔法の資料。金髪ちゃんは一度これに目を通したほうがいいかもね。まずは何をおいても地盤だよ。そこがしっかりしてないと、どんな天才でもお城は築けない」
「……いいの?これ、下手したら凄い資料なんじゃ……」
何百年も前の資料と言うだけでもかなりの物だろうに、あのミレディが書きまとめた魔法の理論。それこそ世に出回れば国書扱いされてもおかしくない代物だ。
「いいのいいの。腐らせるのももったいないし、それに、この程度じゃ、君と私との差は縮まらないよ。ごめんね、天才過ぎて!」
「……言ってろ。すぐに追いついてやる……」
ミレディがにやにやと笑いながら言うと、ユエはイラっとした表情を浮かべるが、すぐに不敵な笑みを浮かべて宣言する。
「んで、次に弟君だけど、君にはこれだ!」
そう言ってミレディはハジメの前に新しい書物を無数に出す。
「これは私の時代の様々な魔法具の設計書、及び、製造技法の理論書だよ。これがあれば、君なら色んな魔法具を作れると思うよ。まあ、オー君には及ばないだろうけどね!」
「一言余計だこの野郎……いやでも、ぶっちゃけ生成魔法なら何とかなるんじゃないか?」
「それがなくてもできる物があるんだよ。しかも、どれもアーティファクトに負けない逸品だよ。そうだね、例えば………代表的なのはやっぱり、飛空船かな」
「………なんですと?」
その言葉にハジメはキュピン!と目を光らせる。
「おい、飛空船ってあれか?空を飛ぶ船か?そうなのか?そうなんだな!?」
「お、おお?凄い食いつきだね………まあ、その通りだけど………」
捲し立てるハジメにミレディが若干引きながらも肯定すると、ハジメはよっしゃぁ!とガッツポーズを取る。
「よし!これであれの開発のとっかかりがつかめた!しかもこの資料があれば……俺の想定以上の物が作れるかもしれねぇ!」
無邪気に笑いながら言うハジメを神羅はやれやれ、と肩をすくめ、ユエは微笑ましいものを見るように優しい眼差しを向け、シアは軽く目を丸くしている。
「うさ耳ちゃんには……申し訳ないけど、個人的に役立ちそうな本はないかな。でも、さっきのアーティファクトの中にいいものがあるからそれで我慢して」
「は、はぁ……まあ、いいですけど……」
そこで一区切りついたのかふう、と息を吐いてミレディは力を抜き、
「最後に神羅君。君にこれを」
そう言いながらミレディは神羅に何かを差し出してくる。
「んん?これは……?」
それは何といえばいいのだろうか。長いコードがついた手の平サイズの小さな長方形の板。その表面にはモニターの様な区切りがある。しかもそのコードはその先端が二つに分かれ、その先にはイヤホンのようなものがついている。と言うかどう見てもイヤホンだ。どっからどう見ても携帯音楽プレーヤーだ。
「音楽プレーヤー?なんでこんなものがここに……?」
「あれ?もしかして君たちのいた世界にも似たようなのあるの?」
「ああ、そうだ。これで音楽を聴くことができるんだ」
「うわぁ、機能も同じなんだ……うん、これは音楽を記録して、自由に聴けるようにしたアーティファクトなんだ。オー君が作った物なんだよ。君のためにね」
ミレディの言葉に神羅は困惑の表情を浮かべる。
「なぜこの世界の人間が異世界の人間の我のために?」
「正確に言うなら、ゴジラが人間として生まれて、ここに来た時のために……あの子の頼みで作ったんだ」
あの子と言う言葉で、神羅の脳裏に彼女の姿が真っ先に思い浮かんだ。
「モスラの?」
「うん、そうだよ。これはモスモス……彼女から君への贈り物だよ」
その言葉に神羅は思わずミレディの手の中のアーティファクトを凝視してしまう。
「これには彼女の歌が記録されている。彼女が君のために歌った歌がいっぱい……もしも自分よりも先に私のところに来たらゴジラにこれを渡してって」
そう言ってミレディはアーティファクトを差し出す。神羅はそれをそっと受け取り、指でなぞる。
「魔力を流せば起動するから。流しすぎには注意してね……それから、もう必要ないかもしれないけど、彼女からの伝言、伝えるね」
「ん?」
ミレディは誰が見ても分かるほどに優しく、嬉しそうな笑顔と共に告げる。
「私は貴方が来るって信じて待ってる。ずっとずっと、ずっっっっっと……待ってるからって」
その言葉に神羅は息をのみ、手元のアーティファクトを見つめる。そして、優しく、しかし力強く握りしめる。
「そうか………」
神羅はアーティファクトのイヤホンを耳に嵌め、魔力を流してみる。すると、区切りに歌のタイトルが表れ、イヤホンから聞こえてくるのは幾度聞いても全く飽きない、そして今生にて何度も聞きたいと願っていた彼女の歌。人間としての歌声だが、その歌声は全く変わらない。
「ああ………あの時と何ら変わらない……美しい歌声だ……」
脳裏に浮かぶのはかつて共にあった時の光景。彼女は子供の時はどうにもいたずらが好きで、よく自分の尾の先に噛み付いていた。そして、成虫になった後は自分の肩に留まって歌うのを好んでいた。いつも自分の肩に留まって飽きもせず歌い、自分も飽きもせずそれを聞き続けた。時には何もせず共に微睡むこともあった。そんな当たり前の日々が蘇る。
「もう少し……もう少しで……会えるな………」
そう呟いて神羅はアーティファクトを優しく握りしめ、着物の内ポケットにしまう。だが、イヤホンは外さず、歌を聴き続ける。
その様子をミレディも、ハジメ達も微笑ましそうに見つめていた。
「よし、それじゃあこれで授与式は終わり!後は帰るだけだけど……聞きたいことはある?」
「……それなら………貴女はどうやって、ゴーレムの状態で、特訓を重ねたの?」
ユエの予測だが、ゴーレムに魂を定着させるのはただではないはずだ。その維持にも魔力を使うハズ。そんな状態で魔力を使うのは文字通り寿命を削るような所業だが……
「そんなの単純だよ。転生の魔法陣、そしてゴーレムに魂を移す魔法陣を複数用意して、あとはゴーレムの状態で特訓。で、それで力が少なくなったら人間に転生して、力を回復させて、そしてまたゴーレムに、って言うのを何度も繰り返したんだ……食料は時々、外に出て調達する必要があったけど……」
その言葉にハジメたちは今度こそ驚愕に目を見開く。神羅でさえ、大きく目を見開いている。その様子にミレディは軽く肩をすくめる。
「だから言ったでしょ。大したことじゃないって……私は、何度も生身の肉体を経験してるんだから……」
ああ、確かに。確かにそうかもしれない。だが、だからと言ってミレディの格が下がったかと言われればそんな事はない。彼女は文字通りこれまでの時間をひたすらに訓練につぎ込んだ。文字通り魂を削って自分を強くし続けた。それほどの覚悟、それ程の決意を抱いていた。生身とゴーレムの身体と言う想像もできないルーティーンに耐えうる魂を持っていた。いつか現れる攻略者と、王を待つために。
これがミレディ・ライセン。解放者の、神に抗った者達のリーダー……
「ちょ、ちょっと!そんな変な空気出さないでよ!これは私が望んだ事なんだし……ほ、ほら!ほかに何か聞きたいことはない!?」
ミレディは頬を赤くしながら捲し立てるように問いかけると、神羅はふう、と小さく息を吐き、
「それではオルクスとハルツィナとここ以外の大迷宮の場所を教えてくれ。場所は不明だし、モスラは教えてくれなかったのだ」
本人がそう望んでいるのならば、これ以上むやみにほじくり返すのは無粋というものだろう。
「あ、そうなんだ。全くモスモスったら……それじゃあ、教えるね」
ミレディが語る迷宮の位置をしっかりと記憶し、神羅はうむ、と頷く。
「では、あとはもう問題ない。帰還させてくれ」
「ほいほいっと。ちょっと待ってね」
ミレディが動く中、神羅はハジメ達に視線を向ける。彼らは未だに気まずげに視線を彷徨わせる。
「いい加減にしろ。本人がもういいと言っているのだ。ならばこれ以上は無粋だ」
「兄貴…………そうだな。これ以上はがらじゃねぇしな」
ハジメは気を取り直すように頬を叩き、ユエとシアも気を取り直すように息を吐く。
そうしていると、ハジメ達の前に透明なカプセルが頭上から静かに降りてくる。
「脱出は地下水脈を使うんだ。だからこれに乗ってね。制御は……神羅君、お願いできる?」
「うむ、任せろ」
その言葉にハジメたちはえ?と首を傾げながら神羅を見る。
「もともと我の縄張りは海だ。水の中の方が動ける。ちなみに呼吸もできるぞ。これでな」
そう言って神羅が首元を撫でれば、そこに複数の魚の鰓のようなスリットが現れる。
「そう言う事。まあ、神羅君が支えなくてもある程度は大丈夫だけどさ」
「ああ、そう……まあ、そう言う事なら……頼むわ……」
ハジメは困惑気味に頷き、カプセルに乗り込む。ユエとシアも軽く頭を下げながらカプセルに乗る。
そしてカプセルがしまったのを確認して神羅はカプセルの傍に立つ。
「お前はこれからどうするのだ?」
「うん。私は変わらず、ここを拠点に身を潜めるよ。私が出たら、余計な手間かけちゃうだろうし。でも、その時が来たら……私も一緒に戦うよ」
「そうか………よし、いつでもいいぞ」
「うん、それじゃあ行くね」
ミレディはふわりと浮かぶと天井から下がっている紐を掴み、
「あ、そうだ。神羅君。最後に一つだけ」
「ん?」
「……あんまりモスモスを怒らないであげて」
その言葉に神羅は小さく首を傾げ、問いかけようとするが、その前にミレディが紐を引く。
すると、神羅達がいた場所に穴が開き、そのまま落ちていった。
「……どうか君たちの未来が、自由な意志の元にあれることを、祈ってるよ……」
地下水脈の中を神羅はカプセルを支えながら泳いでいた。その泳ぎは力強く、そして繊細だ。現にカプセル内のハジメ達はほとんど揺れも感じず、快適な水中遊覧を楽しんでいた。
「あ、魚です……」
目の前を通り過ぎた魚を見て、シアは嬉しそうにうさ耳を動かす。ハジメとユエはまだ疲れが取れないのか息を吐きながら座り込んでいる。流石は身体能力特化と言ったところか。
と、
「ん!?」
外を見ていたシアは驚愕に目を見開く。
目があった。
魚と。いや、魚ではあるが人間のそれもおっさんの顔の目と。つまる所シアと目があった魚は人面魚だったのだ。どこかふてぶてしさと無気力さを感じさせるそのおっさん顔の人面魚は、あの懐かしきシー〇ンを彷彿とさせた。
驚愕に大きく目を見開くシア。そして視線を逸らすことができない。それからどれほど経ったか。不意にシアの頭に声が響く。
(何見てんだよ)
舌打ち付きだった。
「ぶっほぉっ!?」
我慢しきれずシアは噴き出し、人面魚はそのままいずこかへと泳ぎ去って行った。
「どうした?シア」
ハジメが問うとシアは慌ててハジメとユエの方に振り返り、
「は、ハジメさん、ユエさん!あ、あれ、あれ、あれ!!」
「あれって……どれ?」
ユエが首を傾げ、シアが振り返ればすでに人面魚の姿は無し。
シアは慌てて神羅の元に向かい、
「神羅さん!神羅さんは見ましたよね!?あれ!」
それをしっかりと聞き取った神羅だが、あれが何なのか分からず、首を傾げる。そのリアクションにシアはええ!?と声をあげる。
その後、シアが人面魚を見たと言うが、それらしき姿もなく、ハジメ達はシアの疲れもまだ抜けきっていないのだろうと軽く流した。
しばらく泳ぐと目の前に光が見え始める。神羅はそのまま静かに加速して光に向かって突き進む。
そしてついに外に出る。大量の水が穴から飛び出し、巨大な水しぶきが上がるが、神羅にとってはへでもない。それからハジメたちを守り切り、カプセルを持ち上げながら水面から顔を出す。
周囲を見渡せば、どうやらここは湖のようだ。どのあたりかは分からないが。
神羅はざぶざぶとカプセルを押しながら湖から上がり、カプセルのふたを開けてハジメたちを出す。
「だから、シアが見たのは幻覚だって。まだ疲れてんだよ」
「……仮に人面魚が本当にいたとしても、流石にしゃべったって言うのはないと思う……」
「いや本当なんです!本当にいたんですよ!喋りかけてきたんですよ!」
シアがぶんぶんと手を振り回しながら叫ぶのを後目に神羅はここはどこだと首を巡らせる。と、
「ん?」
こちらを見て固まっているソーナと目が合った。更にその周囲には冒険者風の男3人、そしてなぜかクリスタベルがいた。
どういう組み合わせだ?と首を傾げながら神羅は一応挨拶として軽く片手をあげる。それに対し、一応ソーナ達も軽く頭を下げる。
その後、話を聞くとソーナは隣町の親戚に見舞いの品を届けに、クリスタベルさんは服の素材集めの為に、冒険者3人は任務を終えてブルックの町に帰るついでに二人の護衛を引き受け、今はその帰り道の休憩だったらしい。そのまま神羅達は折角だからと5人と一緒にブルックの町に戻る事にした。
ここのモスラの歌は皆さんのお好きなように。ちなみに自分はKOMの日本語版主題歌、Prayですね。英語?深く気にするな。声は………よし、水樹奈々様で行こう。それに伴い、モスラの声優も水樹奈々様に決定しました。
ちなみに、2巻はここで終了。ここからは幕間が2話ほど入る予定です。
内容は、一つはクラスメイトsid。もう一つはゴジラとモスラの出会い、そしてユエさん、吹っ切れるを予定しています。