ではどうぞ!
東の空が白み始めた夜明け。ハジメ、神羅、ユエ、シアの4人はすっかり旅支度を終えて、水妖精の宿の直ぐ外にいた。そして準備を終えると、朝靄が立ち込める中、ハジメ達はウルの町の北門に向かう。そこから北の山脈地帯に続く街道が伸びているのだ。馬で丸一日くらいだというから、魔力駆動二輪で飛ばせば三、四時間くらいで着くだろう。
ウィルたちが消息を絶って早5日。生存は絶望的だが、それでもまだギリギリ可能性はある。急いだほうがいいだろう。
幾つかの建物から人が活動し始める音が響く中を進み、やがて北門が見えてきたところで、ハジメはその北門の傍に複数の人の気配を感じ目を細める。特に動くわけでもなくたむろしているようだ。神羅に目を向ければ、彼も気付いたようで視線が重なり、軽く眉根を寄せる。
朝靄をかきわけ見えたその姿は……愛子と生徒六人の姿だった。その後ろには人数分の馬もいる。
「……何となく想像つくけど一応聞くが……何してんの?」
ハジメ達が半眼になって愛子に視線を向ける。一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、毅然とした態度を取るとハジメと正面から向き合った。ばらけて駄弁っていた生徒達も愛子の傍に寄ってくる。
「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです」
「却下だ。行きたいなら止めはしないが、一緒は無理だ」
「な、なぜですか?」
「単純に足の速さが違う。先生達に合わせて進んでいられないんだよ。こっちは人命がかかってるんだ」
そう言いながらハジメと神羅は宝物庫から魔力駆動二輪を取り出す。突然、虚空から大型のバイクが出現し、ギョッとなる愛子達。
「ちなみに最高速度は馬を軽く超えるし、悪路も何のそのだ。ちなみにサイドカーはなく、頑張って互いに二人乗りだが、シアとユエで潰れるから無理だろ?それに、手なら足りている」
何を言って、と愛子たちが首を傾げた瞬間、ピィー、と上から声がする。顔を上げれば、一匹のタカに似た鳥が飛んでいたが、それはそのまま降下してくると、バンダナを身に着けた神羅に向かう。神羅が右腕を上げれば、そのまま腕に留まる。
すると神羅は鳥と目を合わせながらうなり声のような、しかし一定の抑揚を持つ鳴き声を発する。それに答えるように鳥がピィ、ピィ、と鳴く。その鳴き声に対し理解を示すように神羅が頷くと、再び鳴き声を発し、宝物庫から何かの肉片を取り出すと、それを空に向かって投げる。それを追いかけて鳥は空に向かって羽ばたき、肉片をキャッチすると、そのまま頭上を旋回する。
一連の行動に愛子たちが首を傾げる中、ハジメが神羅に問う。
「結果は?」
「うむ。山の一角に何らかの戦闘痕を発見したらしい。ひとまずをそこを調べよう」
「なるほど……そうですね。鳥さ~~ん、案内お願いしま~~す!」
シアが声を張り上げると鳥が答えるように鳴く。
「え、何あの鳥……もしかして、言葉が分かるの?」
「正確には違うな」
そう言って神羅は頭のバンダナを指ではじく。
アーティファクト、鳥獣愛護。ミレディが所持していたアーティファクトの一つで、普通の鳥獣を魔物並みに強化し、仲間にできるというものだ。
ミレディたちはこれを連絡手段として使用していたようだが、神羅はこれを使い何匹かの鳥を仲間にし、この山を事前探索させていたのだ。本当の人外である神羅は鳥の言葉もある程度なら理解できるので報告も問題ない。ハジメは索敵ドローンを作っていたのだが、利便性ではこちらのほうが上だ。自分で操る必要もないため眠っている間に捜索させることができるし、怪しまれることもないと言っていいため隠密性も高い。しかも道案内もできる。至れり尽くせりだ。もっとも、神羅でなければ内容がくみ取れないという欠点があるが……
「とにかく、そう言う事だ。それじゃあ俺たちは行くな」
そう言ってハジメたちが出発しようとするが、それでもなお愛子が食い下がる。愛子としては、是が非でもハジメ達に着いて行きたかった。
理由は二つ。一つは昨日の話の続きだ。昨日、神羅とハジメがした話は愛子としては決して無視できない。今後のためにももっと詳しく話を聞いておく必要があったのだ。
そしてもう一つは行方不明になっている清水幸利だ。周囲の人里では目撃情報がなかったが、人がいない北の山脈地帯に関しては、まだ碌な情報収集をしていなかったと思い当たり、ハジメ達の人探しのついでに清水の手がかりも探そうと思ったのだ。
「ハジメ君、神羅君。先生は先生として、どうしても南雲君からもっと詳しい話を聞かなければなりません。だから、きちんと話す時間を貰えるまでは離れませんし、逃げれば追いかけます。お二人にとって、それは面倒なことではないですか? 移動時間とか捜索の合間の時間で構いませんから、時間を貰えませんか?」
愛子の瞳に宿る決意の光にハジメはううむ、と小さくうめき声を上げ、どうする?と神羅に視線を向ける。
神羅は小さく鼻を鳴らすと、
「却下だな」
そう切り捨てる。その言葉に愛子は息を詰まらせるが、それでもすぐに気を取り直し、
「そうはいきません。連れて行ってください。お願いします」
そう再び頼み込むと、神羅ははあ、とため息を吐き、
「では、一つ質問だが………お前らその装備で山を登る気か?」
え?と愛子たちが思わずと言うように自分たちの姿を見下ろす。身に着けているのはこの町に来た時と同じ装備。ぶっちゃけ言ってしまえば山登りを想定していない軽装だ。荷物だって少ない。
「そんな装備で魔物がいる山を登るとかふざけてるのか?我らは装備を持ってるし、身に着けているのも丈夫なもので、自衛もできる。だがお前らはどう見ても山に登る装備ではない。そんな登山初心者丸出しの連中を連れて行方不明者の捜索だと?二重遭難まっしぐらではないか」
ド正論だった。愛子達は一斉に言葉に詰まる。
「で、でも、調べる場所が分かってるなら……」
「当然そこ以外も調べるだろうが。何を言ってるのだ本当に……お前たちを連れて行ったとしても、我らには何のメリットもない。むしろ事態を悪化させかねない状況がそろい踏みだぞ?連れていくわけがなかろう」
確かに、もしも愛子たちを連れて行って、それでもしも彼女たちに何かあれば護衛騎士達が黙っておらず、厄介なことになる事は間違いない。彼女たちに目を割けばその分捜索の範囲は狭まるのは必然なわけで、連れていくメリットが本当にないのだ。
「話がしたいのなら帰ってからでいいだろう。その間に寝ておけ。そんな不眠丸出しの顔ではろくに話を理解することも、交わすこともできないであろうが。山登りなどもっての他だ。徹夜明けのテンションなんぞ碌な事にならん」
寝不足なのを見切った神羅の言葉に愛子は小さくうめき声を漏らし、徹夜常連のハジメが小さく「はい、すいません……」と謝罪と共に気まずげに顔を逸らす。
「とにかく連れていくことはできん。せめて何らかのメリットがあれば別だが、それもないしな。大人しく待ってろ。そしてその間に寝て頭をすっきりさせろ。話はそれからだ」
神羅はそう言いながら二輪に乗り込む。ハジメ達も同意なのか二輪に乗り込んでいく。ハジメにユエとシアが密着すると男子が殺気立つがそれをスルーして出発しようとする。愛子が何とか待ってくれるよう口を開こうとした瞬間、
「メリットがあれば……連れてってくれるの……?」
その声に全員が顔を向ける。
優花はごそごそと荷物から一つの手帳を取り出す。
「それじゃあ、これ。あんたたちは知らないでしょうけど、この辺り一帯には神獣伝説って言うのがあるの」
その言葉に神羅とハジメは一斉に目を細める。食いついた、と優花は息を吐く。本当はこんなことする資格はないだろう。それでも、先生のために何かしようと罪悪感を飲み込む。
「もしも連れて行ってくれるなら、アタシが今まで調べてきたこの世界、そしてその伝説の情報をあげる。もしかしたら帰還の手がかりになるかもしれないわよ?これでどうかしら?」
優花の問いに神羅たちは少し考えたのち、一旦二輪から降りて顔を突き合わせる。
「神獣って………もしかして……」
「怪獣の可能性は高いな………そうなると是が非でも知っておいたほうがいい。下手に刺激しないためにもな」
「では、連れて行きます?なんだかんだでいい人達みたいですし……」
「……でも神羅の言う事ももっとも。リスクが大きすぎる」
「そうだな。無理やり聞き出す……と言うのはさすがにあれだな」
「園部だからなぁ……あいつにそう言う真似をするのは……地球でそこそこ仲良かったし」
「……それじゃあどうする?」
4人はそのままぼそぼそと話をしていき少しするとため息を吐きながら振り返り、
「分かった。その情報を対価に同行を許可しよう」
その言葉に愛子たちはほっとした様子を見せる。
「だが、その代わり、こちらの指示に従う事。基本自分の身は自分で守る事。そして畑山教諭は移動の間に寝る事。話は帰った後にする。これに同意できないのであれば誰も連れて行かん。半端に連れて行っても悪化しかしないからな。いいな?」
愛子は一瞬複雑そうな表情を浮かべるが、それでもついて行こうとするのか頷く。周りの生徒たちも頷いている。
同意を得るとハジメは二輪を宝物庫に納め、代わりに魔力駆動四輪を取り出す。ポンポンと大型の物体を消したり出現させたりするハジメに、おそらくアーティファクトを使っているのだろうとは察しつつも、やはり驚かずにはいられない愛子達だった。その様子を頭上の鳥は旋回しながら見ており、まだ~~?と言わんばかりに長く鳴いた。
前方に山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を、魔力駆動四輪が爆走する。それを先導するのは空を飛ぶ鳥だ。ハジメは適宜鳥の位置を確認しながら走行している。
座り方は運転席にハジメ、隣にユエ。後ろのベンチシートの一角では愛子が眠っていた。最初は起きようとしていた彼女だったが、走行による揺れと柔らかいシートが眠りを誘い、愛子はいつの間にか夢の世界に旅立った。そのそばには管原とシアが世話をしている。
一方、荷台には残りの神羅、優花、宮崎、玉井、相川、仁村が乗っている。そこで神羅は報酬である神獣に関する情報を優花から聞いていた。
「なるほどな……そう言った伝承が各地にある……か……」
「ええ。一応詳しく調べたのはここのだけだけど、他にもあるみたいよ」
曰く、ある場所には海を呑み込む毒獣が、ある場所には全てを凍てつかせる大蜘蛛が、他にも大なり小なり何らかの怪物の伝承が各地にあるようだ。
(やはり相当前に怪獣たちはこちらに渡ってきたようだな………だが何故?エヒトが玩具として連れてきたか?それとも、この世界がエヒトに対する抗体として呼び寄せたか?どちらも考えられるが果たして……いや、今はそこはいいか。優先すべきはこの地の個体だな………)
この地域に伝わる伝承は地を潤す巨獣というものだったが、果たしてどいつか。せめて外見の特徴があればよかったのだが………
「なるほど。分かった。確かに有益な情報だった………」
そう言いながら神羅はそのまま背中を荷台に預ける。優花も頷きながら手帳を懐に納める。
そこでその場を沈黙が支配した。クラスメイト達は様々な負い目から神羅に話しかけることができず、神羅もまた彼らに話しかける必要性を感じず、黙ったままだ。クラスメイト達が居心地悪そうにきょろきょろと視線を彷徨わせたり、流れる景色に目を向ける中、神羅は宝物庫から音楽プレーヤーを取り出すとイヤホンを耳にはめ、歌を流す。
「あれ?それプレーヤー……え?それ、使えるの?」
優花が驚いたように目を丸くしている。見ればほかのクラスメイトも皆同じ表情だ。
この世界に転移した際、身に着けていた関係で音楽プレーヤーやスマホを持ち込んだ者はそれなりにいる。ハジメだってそうだ。だが、充電もできない現状、どんなに使用を制限していても、電子機器はバッテリー切れを起こし、今では全てが使用不能となっている。
神羅はちらりと目を向け、
「確かに音楽プレーヤーだが、持ち込んだ物ではない。こちらで手に入れたものだ」
「手に入れたって……ど、どこでそんなもん……」
「言っても仕方がない。これはこの世に一つしかないものだからな」
そう言って神羅はそのまま口を閉ざし、歌に意識を傾ける。
最初はプレーヤーに興味津々だった優花たちだったが、次第にその興味は神羅の方に向けられる。
それはそうだ。今彼は地球にいた時にはハジメであっても見たこともないほどに柔らかい表情を浮かべているからだ。その表情を見れば、昨日、尋常ではない圧を放った者と同一人物とは思えない。
顔を見合わせるクラスメイト達を後目に四輪は山を駆け上っていく。
北の山脈地帯は標高千メートルから八千メートル級の山々が連なり、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。日本の秋の山のような色彩が見られたかと思ったら、次のエリアでは真夏の木のように青々とした葉を広げていたり、逆に枯れ木ばかりという場所もある。一節では神獣の加護によって生育環境にばらつきができている、と言われている。
ハジメ達は、その麓に四輪を止めると、しばらく見事な色彩を見せる自然の芸術に見蕩れた。女性陣の誰かが「ほぅ」と溜息を吐く。
その間にハジメたちは四輪を宝物庫に納め、彼女たちが満喫するのを待ってから出発を促す。
頭上の鳥の先導を受けながら彼らは冒険者達も通ったであろう山道を進む。目的地は六合目から七号目の辺りの川だ。そこらへんに戦闘痕があるらしい。
神羅とハジメは優花から得た情報を共有、考察しながら歩いていくが、その速度はかなりの物で、一時間ほどで最初の目的地に出る。その時には愛子たちは揃いも揃ってへばっており、神羅が心底呆れた表情を浮かべやっぱり連れてきたのは間違いだったのではと後悔していた。
それはさておき、川のほとりに金属製のラウンドシールドと鞄が散乱していた。更に進めば半ばで立ち折れた木や枝。踏みしめられた草木、更には、折れた剣や血が飛び散った痕もあった。それらを発見する度に、特に愛子達の表情が強ばっていく。
その中でシアが一つのペンダントを見つける。遺留品かと確認すれば、ロケットペンダントのようで、中を見ると、女性の写真が入っていた。おそらく、誰かの恋人か妻と言ったところか。
一応回収して先に進む。それから大分進み、日が中点を過ぎてしばらく。これまで以上の異常な箇所にたどり着く。
そこは大きな川だった。上流に小さい滝が見え、水量が多く流れもそれなりに激しい。本来は真っ直ぐ麓に向かって流れていたのであろうが、現在、その川は途中で大きく、直線状に抉れており、更に周囲の木々や地面が焦げており、更に、何か大きな衝撃を受けたように、何本もの木が半ばからへし折られて、何十メートルも遠くに横倒しになっていた。川辺のぬかるんだ場所には、三十センチ以上ある大きな足跡も残されている。
頭上を飛んでいた鳥はすでに神羅の肩に留まっている。どうやらここが最後らしい。
「ここで本格的な戦闘があったようだな……この足跡、大型で二足歩行する魔物……確か、山二つ向こうにはブルタールって魔物がいたな。だが、この抉れた地面は……」
「………恐らく放出系の攻撃だな。それも熱線やレーザーなどの指向性だ」
ちなみにブルタールとはRPGにおけるオーガやオークのような魔物だ。
「仮にここを切り抜けたとして……どこに向かう?」
「下流だな。前方を魔物に塞がれた以上、逃げ場はこの川にしかない。流れに逆らうなど意味がないから、少しでも生き延びる確率を上げるなら流れに任せて下流に向かうのが最善だろう。逆らう事ができなかったとも考えられる」
神羅の言葉にほかの全員は賛同し、川沿いに沿って下流に向かう。少し進むと、先ほどのものとは比べ物にならないくらい立派な滝に出くわした。ハジメ達は、軽快に滝横の崖をひょいひょいと降りていき滝壺付近に着地する。と、そこでハジメの気配感知に反応が出た。
「! これは……」
「……ハジメ?」
「おいおい、マジかよ。気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」
「生きてる人がいるってことですか!」
「ほう、可能性があったとはいえ、大した強運だ」
そう言うと神羅は目の前の滝におもむろに近づいていき、そのまま滝の中に入っていく。滝はかなりの水量が落ちており、凄まじい衝撃があるはずなのだが、神羅は意に介したふうもなく中に侵入する。
ハジメ達がその様子を見守る事数分、滝の中から神羅が声を張り上げる。
それにユエは即座に動く。魔法で滝を真っ二つに割り、行きとは違い通り道を作ってやる。そこを通って戻ってきた神羅の背には二十歳くらいの青年が背負われていた。
「神羅君!その人はもしかして……」
「一応中にいたのはこいつだけだ。清水ではないだろうな」
そう言いながら神羅は水から上がり、近くの地面に青年を横たえる。愛子が気づかわし気に様子を見る中、ハジメはぺちぺちと青年の頬を叩き、気付けを行う。少しすると、青年がうめき声を漏らしながら意識を取り戻す。
「う、あ……」
そして目を覚ました瞬間、多数の人間に囲まれた状況に驚愕する。
「なぁっ!?こ、これは!?君達は一体、どうしてここに……」
「俺はフューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼で捜索に来たハジメだ。あんたは捜索対象のウィル・クデタか?」
「は、はい!そうです!そうですか、イルワさんが……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」
そのままその場の全員と自己紹介をし、ウィルから何があったのか聞きだす。
話を総合すると、五日前、ウィルたちは五合目辺りでブルタールの群れに襲われ、犠牲を出しながらも捌いて撤退していたのだが、大きな川のあたりで突如として現れた漆黒の竜に襲われたらしい。
竜のブレスでウィルは吹き飛ばされ、川に転落、他の生き残りのメンバーはみな竜とブルタールに襲われていたことから生存は絶望的だろう。
ウィルは、話している内に、感情が高ぶったようですすり泣きを始めた。
「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」
愛子がウィルの背中をさすり、全員が何も言えずにいると、
「そう言うのは後にしろ。今はここから撤退するのが先決だ。立てるか?立てぬなら我が担ぐ」
神羅はバッサリと切り、ウィルを立たせようとする。
「あ、あの、神羅君……」
「それとも……今度は我らを犠牲に生き延びるか?」
戸惑っていたウィルだが、神羅のその言葉にびくりと体を震わせて目を見開くと、次第に体を起こし始める。よろめくが、ハジメが即座にその体を支え、立たせる。
「そうだな………嘆いたりなんだりするのは安全な場所でやればいい。ここは撤退が最優先だ」
ハジメも小さく頷きながら同意する。そこには実感が籠っており、神羅は無言でハジメの頭を撫でる。
その後、気を取り直したウィルは素直に撤退に賛同、周囲の生徒が正義感からか魔物の調査をしようと言い出したが愛子が許さず撤退する流れとなった。
そしてさあ行こうとなった瞬間、神羅が唸りながら空を見上げる。それと同時に何かが日の光を遮る。
ハジメ達が顔を上げれば、
「グゥルルルル」
低いうなり声を発しながら現れたのは漆黒の鱗に身を包み、翼を広げ宙に浮かぶ、金の瞳でこちらを睨む一匹の竜だった。
さて、夏アニメが終わってしまいました……今期は本当に自分はよかったです。
で、今期の中で一番好みだったヒロインが、デカダンス最終話の3年後ナツメでした。もろドストライクでした、はい。