ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 今回は早く投稿できました。ではどうぞ!


第42話 黒竜戦

 その竜の体長は七メートル程。漆黒の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。

 その黄金の瞳が、空中よりハジメ達を睥睨していた。低い唸り声が、黒竜の喉から漏れ出している。

 その圧倒的な迫力に、蛇に睨まれた蛙のごとく、愛子達は硬直してしまっている。特に、ウィルは真っ青な顔でガタガタと震えて今にも崩れ落ちそうだ。脳裏に、襲われた時の事がフラッシュバックしているのだろう。

 だが、ハジメ達は平然としていた。この程度、ギガヒュドラやミレディのそれに比べたら屁でもない。

 そして黒竜はウィルを視界にとらえると、口を開け、そこに魔力を収束させていく。

 

 「ブレスだ!避けろ!」

 

 そう言いながらハジメは飛び退き、ユエとシアも反応するが、地球組とウィルは突然の事態と恐怖で動けないでいた。

 その様子を見て神羅は嘆息すると宝物庫を光らせ、何かを取り出す。

 それは一見すると、神羅の全身を隠して余りあるタワーシールドだ。高さは優に3mは超えているが、何よりも異質なのはその厚みだ。その厚みは優に2mはありそうなほど分厚い。もはやシールドと言うよりも巨大な鉄塊と呼ぶべきかもしれない。

 凄まじい重量であろうそれを神羅は片手で軽々と持ち上げると、愛子たちの前に立ち、タワーシールドをかざす。

 直後、黒竜が黒色のブレスを放ち、音を置き去りにして神羅のタワーシールドに直撃する。凄まじい熱波に周囲の地面が溶解し、かなりの圧力がかかるが、

 

 「この程度か……」

 

 神羅は大したことはないと言わんばかりに片手で耐えていた。ちなみにこのタワーシールド、タウル鉱石を主材にシュタル鉱石を挟んでアザンチウムで外側をコーティングしたものだ。シュタル鉱石は神羅の魔力によって極限まで強化されているので、よほどの一撃でなければゆらぐことすらないだろう。

 試しにちらりと後ろに目を向ければ、正気を取り戻した愛子たちが呆然とした様子でこちらを見ている。その手は所在なさげに持ち上げられていた。もしかしたら神羅を支えようとしたのかもしれないが、あまりに余裕な様子に加勢できなかったのだろう。

 それから十秒ほど経過した時、声が響く。

 

 「禍天」

 

 すると黒竜の頭上に直径四メートル程の黒く渦巻く球体が現れ、直後、落下すると押し潰すように黒竜を地面に叩きつけた。

 

 「グゥルァアアア!?」

 

 轟音と共に地べたに這い蹲らされた黒竜は、衝撃に悲鳴を上げながらブレスを中断する。しかし、渦巻く球体は、それだけでは足りないとでも言うように、なお消えることなく、黒竜に凄絶な圧力をかけ地面に陥没させていく。

 重力魔法、禍天。超重力を持って対象を押しつぶす魔法だ。だが、黒竜は潰れず、苦し気ながらも四肢を踏ん張り、重力場から逃れようとする。その頭上にシアが飛び出す。その手にはドリュッケンが握られているが、以前とその形状は違っていた。かつては正に戦槌と言ったデザインだったのだが、今は片側の打撃面にジェット機のスラスターのようなパーツが搭載されている。

 ドリュッケンを振り上げると同時にスラスターから爆炎が噴き出し、シアの体は爆発的な加速を得てそのまま黒竜目掛けてまさに隕石のように降り注ぎ、

 

 ドゴォォォォォォォォォォォ!!

 

 と言う轟音と共に地面を文字通り吹き飛ばす。その様はまさに隕石その物だ。ドリュッケンはハジメの改造により、二つの新機能を得ていた。一つが見て分かる通りのスラスターによる加速装置だ。ハジメが試作した物を取り付け、調整したもので、ユエが開発した炎を勢いよく噴出する魔法が組み込まれている。代わりにショットシェルの激発の機能を取っ払う事になったが、問題はなかった。

 これは魔力の量によって炎の勢い、威力を調整できる。故に加速の度合いを調整することができ、更には炎その物を使って攻撃、防御もできる。何より、外付け式なので、内部に複雑な機構を仕込まずに済み、その強度、重量を更に増大させているのだ。

 更に重力魔法による加重も加わっているので、その威力は凄まじいものとなっている。

 だが、黒竜はその膂力で無理やりにその一撃を回避していた。そしてユエ目掛けて火炎弾を放つが、ユエは落ち着いて黒盾を展開、火炎弾をそのまま黒竜に返してやる。

 自分が放った火炎弾を返され、黒竜が思わず呻いた瞬間、シアが再び爆炎の推進力でドリュッケンを勢いよく薙ぎ払い、黒竜の顎をかちあげる。

 だが、黒竜はたたらを踏みながらも踏みとどまり、不安定な体制から尾を繰り出す。シアはそれを余裕を持って回避するとふう、と息を整える。

 黒竜はそのまま視線を神羅に……いいや、その後ろにいるウィルに向けるが、そこにハジメのレールガンが連続で放たれ、直撃、その巨体を吹き飛ばす。

 その隙にハジメはリロードをし、ドンナーとシュラークを構えるが、そのデザインは変わっていた。その銃身には武骨な大ぶりの刃物がついており、いわゆるガンブレードになっているのだ。ミレディからのアドバイスを受け、仮に弾を切らした状態でも戦えるように改造したのだ。

 

 「ハジメ、手を貸すか?」

 「いいや、問題ない!」

 

 その言葉に神羅は頷くと、ハジメは黒竜との距離を詰める。立ち上がった黒竜はしかし、ハジメを無視してウィル目掛けて火炎弾を放つがそれは神羅が全て防ぐ。

 そこに来てようやく生徒たちは正気に戻り、ハジメに加勢しようと魔法の詠唱を始めるが、

 

 「やめろ。お前たち程度の攻撃では焼け石に水どころか溶岩に水滴だ。それよりも周りから他の魔物が来ないか見張っててくれ。こいつ一匹だけとは限らんからな」

 

 その言葉に生徒たちは一瞬むっとし、納得が言ってない様子を見せながらも小さく頷き、神羅の後ろで周囲を見渡す。その様子を見て神羅は小さく息を吐く。これならば余計な手出しをしようとはしないだろう。しかし、黒竜の咆哮が響くたびに生徒たちはびくりと体を震わせる。比較的まともなのは優花ぐらいか。今も咆哮に肩を震わせるが、視線は周囲に向けられている。

 神羅はシールドから顔を出して黒竜の様子をうかがう。

 ハジメ達の猛攻に黒竜は何度も吹き飛ぶが、大きなダメージは負っておらず、執拗にウィル目掛けて攻撃を繰り出す。

 

 (妙だな……先ほどからずっとウィルのみを狙っている……流石にここまでされた我とて無視はできん……となると考えられるのは…………)

 

 黒竜の様子に違和感を覚えた神羅は黒竜を観察し、考察し、一つの結論を出す。

 

 「皆!そいつは恐らくだが何者かに操られている!ウィルを狙うように仕向けられているのだろう」

 「それは………なるほど、納得だ………じゃあどうする?このまま殺すか!?」

 「…………できれば生かしてくれ。多少強引でも正気に戻しさえすれば我が情報を聞きだす。傷も魔法で回復させればいいだろう。なんだったら魔懐で強制的に洗脳か暗示を解除する」

 「……分かった!」

 

 神羅の言葉にハジメたちはすぐに賛同する。もしもこれが本当に洗脳などによるものならば、それを実行した者を叩かなければ何度でも同じことの繰り返しになり、面倒極まりない。

 黒竜は再びブレスを放とうと口に魔力を収束させるが、ハジメがシュラーゲンを取り出し、チャージをしていくと、黒竜はシュラーゲンを危険と判断したのかハジメの方に向き直り、ブレスを放とうとするが、その瞬間ハジメはチャージを取りやめ、

 

 「黒玉」

 

 代わりに頭上を取ったユエが黒竜の頭部に重力の砲弾をぶち込み、強引に顎を閉じさせる。瞬間、その顎の中でブレスが暴発、黒竜の口から牙が何本も吹き飛び、血が流れる。

 黒竜が悲鳴を上げ、体制を大きく崩した瞬間、続けざまにシアがドリュッケンで顎をかちあげる。

 黒竜が悲鳴を上げながら墜落していくその後をハジメは超速で追いかけ、左の義手を構える。

 

 「もう一発!」

 

 そう言ってハジメは黒竜の頭部に向かうとそのまま渾身の力で殴りつける。

 落下の勢いも乗った一撃は見事に黒竜の頭部を捉え、凄まじい衝撃音と共に黒竜のくぐもった悲鳴が響くが、黒竜は頭部を勢いよく振り回し、ハジメを吹き飛ばす。

 

 「ちっ、まだ足りないか」

 

 ようやく敵意を持ってこちらを睨む黒竜を見て、ハジメは顔をしかめる。

 黒竜がハジメに火炎弾を放つが、ハジメは空力と縮地でその全てを回避すると、遠距離からドンナーとシュラークを発砲し、黒竜を怯ませては頭部に渾身の一撃を叩きこんでいく。本当は新たに新造したブレードも駆使したいのだが、黒竜の鱗の強度から考えてまともにダメージを入れることはできないだろう。無理に使わず、ハジメは堅実にダメージを与えていく。

 さらにそこにユエとシアも加わり、魔法と打撃が次々と黒竜に叩きこまれていく。

 次第に全身の鱗は砕け、血が流れだすが、いまだに洗脳が解ける気配はない。

 

 「すげぇ……」

 

 3人の戦闘を神羅の後ろで見ていた玉井が思わずつぶやく。言葉はなくても、他の生徒達や愛子も同意見のようで無言でコクコクと頷き、その圧倒的な戦闘から目を逸らせずにいた。ウィルに至っては、先程まで黒竜の偉容にガクブルしていたとは思えないほど目を輝かせて食い入るようにハジメを見つめている。

 

 「ふむ……あれ(・・)をつけた状態であれならばまあ、成長したか……」

 

 あれ?と愛子たちが首を傾げた瞬間、黒竜が咆哮を上げながら全身から魔力を放出、それによってハジメを吹き飛ばすと、黒竜はウィル目掛けて突進する。

 神羅は静かにタワーシールドを前に突き出す。次の瞬間、黒竜の巨体が轟音と共にタワーシールドに激突、凄まじい衝撃が放たれるが、それを神羅は片手で悠々と受け止めきり、逆に突進した黒竜が弾き飛ばされるように体制を崩していた。

 

 「貰いましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 すると、それを待っていたと言わんばかりにシアがユエの重力魔法の恩恵を受けて高く跳躍すると、自由落下と、スラスターの加速を利用して隕石のごとく黒竜へと落下した。

 そして無防備な頭部にシアの、大上段に振りかぶった超重量のドリュッケンが、狙い違わず轟音を立てながら直撃した。

 黒竜は、頭部を地面にめり込ませ、半ば倒立でもするように下半身を浮き上がらせ逆さまになると、一瞬の停滞のあと、ゆっくりと地響きを立てながら倒れ込んだ。

 地面にめり込んだ黒竜の頭部からドリュッケンを退けるシアは恐る恐る結果を確認する。やりすぎてしまったかと思ったが、黒竜の頭部は表面が砕け散り、大きくヒビが入っているものの、完全には砕けていなかった。

 

 「流石にこれなら……」

 

 ハジメ達が様子を伺うなか、神羅はタワーシールドを地面に突き立てるとそのまま黒竜に近づいていく。それと入れ替わる様にユエが愛子たちの正面に立つ。もしも洗脳が解けているなら神羅が話をするし、解けていなくても神羅が魔懐で洗脳を解くだろう。

 黒竜の前に立った神羅はゆさゆさとその巨体を揺さぶる。すると、次第に黒竜は意識を取り戻したのかゆっくりと目を開け、

 

 『うっ………つう……ここは……?妾は……?』

 

 突如として響いた女性の声に神羅達ははっ?と目を丸くして動きが止まる。一瞬誰かがいるのかと思われたが、声に連動するように黒竜が周囲を見渡しているのを見ると、黒竜が発したもののようだ。

 どう言う事だ?と神羅が思わずハジメを見て、ハジメもどう言う事?と神羅を見やる。




 さて、ここまで来て大体予想はできたと思いますが、まあ、そう言う事です。ティオさん、変態化回避です。

 このメンバーでそれはさすがにないと思いましたので。
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