ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 今日、鬼滅の映画見てきました………素晴らしかったです。見れてよかったです。

 最近、執筆の際はFGOの参全世界を聞いて書いてます。これめっちゃかっこいいよ。


第43話 目覚めの時

 戦場跡地で起きた予想外の事態に神羅達は目を丸くしていた。何せ魔物が喋ったのだ。それも神羅だけが判別できる言語で、ではない。自分達でも分かる、恐らくだが念話のような物で。

 一体目の前の存在は何なのか、そこまで考えてハジメがある可能性を思い出し、黒竜に問いかける。

 

 「お前……まさか、竜人族なのか?」

 『む?いかにも、妾は竜人族の一人じゃが……そなたらは?』

 

 まさかのドンピシャにハジメはううむ、とうめき声を上げる。

 

 「滅びたはずの竜人族の生き残りか……しかも口ぶりから考えてほかにも生き残っているだろうな……」

 「……なんでこんなところに?」

 「確かに、滅んだはずの竜人族が何故こんなところで、一介の冒険者を襲うよう暗示をかけられていたのか……俺も気になるな。そこら辺の事情、話してくれるか?」

 『う、うむ。そうじゃな……』

 

 そう言うと黒竜はゆっくりと体を起こす。

 

 「洗脳を解くためとはいえ、少々痛めつけてしまった。回復は必要か?」

 『気遣い感謝するが、この程度ならば問題はない』

 

 そう言うと黒竜の全身を黒い光が包み込み、そのまま小さくなっていき、人サイズになると同時に霧散する。

 そこにいたのは黒髪金眼の美女だった。腰まである長く艶やかなストレートの黒髪、見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。見事なプロポーションを誇っており、特に胸部のそれはシアを超えている。

 それを見た男子生徒たちが盛大に反応してしまい、前かがみになり、女子生徒たちが冷めた視線を向けている。

 

 「ひとまずこちらの自己紹介をしよう。我は南雲神羅。こっちは我の弟のハジメ。こっちはハジメの彼女のユエ。そして仲間のシアだ。こっちは………まあ、後でな。そちらは?」

 

 神羅はひとまず自己紹介を済ませ、竜人族に名前を聞く。ちなみにシアが仲間扱いで若干しょんぼりし、紹介もされなかった愛子たちは複雑そうな表情を浮かべる。

 

 「妾はティオ・クラルス。最後の竜人族、クラルス族の一人じゃ。さて、それでは、一から説明するとじゃ……妾は、操られておったのじゃ。お主等を襲ったのも本意ではない。仮初の主、あの男にそこの青年と仲間達を見つけて殺せと命じられたのじゃ」

 

 ティオの話をまとめるとこうだ。元々竜人族はとある場所に隠れ里を築いてそこで暮らしていたのだが、ある理由で彼女はそこを離れた。その理由とは、異世界からの来訪者について調べるというもの。詳細は省かれたが、竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを感知したらしい。どうやら神羅たちの召喚は思った以上に世界に影響を与えたようだ。

 この件の調査でティオは隠れ里からここまでやって来たらしい。そして、山脈を越えた後は人型で市井に紛れ込み、情報収集に励むつもりだったのだが、その前に一度しっかり休息をと思い、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りで休んでいたらしい。魔物を警戒して竜の姿になって。

 そこに黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れ、眠るティオに洗脳や暗示などの闇系魔法を多用して徐々にその思考と精神を蝕んでいった。

 

 「恐ろしい男じゃった。闇系統の魔法に関しては天才と言っていいレベルじゃろうな。そんな男に丸一日かけて間断なく魔法を行使されたのじゃ。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった……」

 「……それはつまり、調査に来ておいて丸一日、魔法が掛けられているのにも気づかないくらい爆睡していたって事じゃないのか?」

 

 ハジメの一言で全員の彼女を見る眼つきがなんとも言えないモノに変わるが、

 

 「お前もえらそうなことは言えんだろう。貫徹したら授業中だろうと爆睡して、何をしても起きんくせに」

 

 神羅の一言にハジメは反論できず、はい……と気まずげに顔を俯ける。今度からはできる限り規則正しい生活を心がけたほうがいいかもしれない……

 ちなみに、なぜ丸一日かけたと知っているのかというと、洗脳が完了した後も意識自体はあるし記憶も残るようで、本人が「丸一日もかかるなんて……」と愚痴を零していたのを聞いていたかららしい。

 その後、ローブの男に従い、二つ目の山脈以降で魔物の洗脳を手伝わされていたのだが、ある時、一つ目の山脈に移動させていたブルタールの群れが、山に調査依頼で訪れていたウィル達と遭遇し、目撃者は消せという命令を受けていたため、これを追いかけた。更に万全を期してティオを向かわせた。

 そしてハジメ達との戦闘でシアの特大の一撃を貰って意識が飛び、気がつけば洗脳が解けていたらしい。

 

 「……ふざけるな」

 

 そんな振り絞るような声が響き、顔を向ければ、ウィルが拳を握り締め、怒りを宿した瞳でティオを睨んでいた。

 

 「……操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを! 殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 「……」

 

 ウィルの怒声に対し、ティオは反論せず、静かに見つめ返す。

 

 「大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう! 大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

 「……今話したのは真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない」

 

 その言葉にウィルが反論しようとした瞬間、ユエが口を開く。

 

 「……きっと、嘘じゃない」

 「っ、一体何の根拠があってそんな事を……」

 

 食ってかかるウィルを一瞥すると、ユエは黒竜を見つめながらぽつぽつと語る。

 

 「……竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は〝己の誇りにかけて〟と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに……嘘つきの目がどういうものか私はよく知っている」

 

 ユエはかつて孤高の女王として祭り上げられていた。その周りは嘘にまみれていた。その事実に心のどこかで気付きながら、目を逸らし続けた結果、裏切られた。だからこそユエは嘘には敏感だ。

 正直に言って、最初、ユエは過去の身近な者達よりも怪獣たちの方が好ましいとさえ思っていた。彼らは実にシンプルだ。認めたなら認める。認めないならたとえ力があっても認めない。そこに嘘はない。何とも単純で、だがしかし、だからこそ信じられる。そして、そんな者達から嘘偽りなく王として認められ、君臨した神羅の事を、心のどこかで羨ましがっていた。

 

 「ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは……いや、昔と言ったかの?」

 「……ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

 「何と、吸血鬼族の……しかも三百年とは……なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は……」

 「……今はユエと名乗ってる。そっちを使ってくれると……今は嬉しい」

 

 そう、以前は。今はあまりそうは思わなかった。神羅の過去が、そしてこれまでの経験がユエの心を少しずつ変えていっていた。

 

 「……それでも、殺した事に変わりないじゃないですか……どうしようもなかったってわかってはいますけど……それでもっ! ゲイルさんは、この仕事が終わったらプロポーズするんだって……彼らの無念はどうすれば……」

 

 そうウィルが言った瞬間、

 

 「ならばお前が晴らせ」

 

 今まで黙っていた神羅が口を開き、え、とウィルが目を見開きながら振り返ると、神羅は宝物庫からナイフを取り出し、ウィルに差し出し、ティオに構わないか?と言うように視線を向ける。その視線を受けたティオは静かに目を伏せ、

 

 「操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実。償えというなら、大人しく裁きを受けよう。だが、それには今しばらく猶予をくれまいか。せめて、あの危険な男を止めるまで。あの男は、魔物の大群を作ろうとしておる。竜人族は大陸の運命に干渉せぬと掟を立てたが、今回は妾の責任もある。放置はできんのじゃ……じゃが、もしも見逃せないと言うなら……一太刀でこの場は収めてほしい。その後で、いかようにも」

 「だ、そうだ。やるなら早くやれ」

 

 そう言って神羅はナイフをずいっと押し出す、それにウィルはえ、あ、と戸惑うように声を漏らして後ずさる。周りの面子は黙ってみている者、突然の事態にどうすればいいのか分からず何もできない者に分かれていた。

 

 「まさかとは思うが我らにやれという訳ではあるまいな?顔も知らない赤の他人の恨みを晴らせと、言わんよなぁ?」

 

 そう言って神羅はウィルの手を取ると、そのままナイフを握らせる。その感触にウィルの顔が引きつる。

 

 「どうした?お前が言ったのだろう?無念を晴らしたい。何を怖気づいている?奴にも罪を償う気概がある。ならやればいいだろう。誰も止めはせん」

 「い、いや、私は……」

 「なんだ?やる気がないのか?自分がやりたくないから他人にやらせると?図に乗るな、愚か者」

 

 そう言い神羅はウィルからナイフを奪い、鼻を鳴らす。ウィルは何も言えず、その場に立ち尽くしてしまう。

 ハジメははあ、とため息を吐くと遺留品のペンダントを取り出す。

 

 「ウィル、これはゲイルってやつの持ち物か?せめてそれを遺族に渡してやれ」

 

 そう言って、取り出したロケットペンダントをウィルに放り投げた。ウィルはそれを受け取ると、マジマジと見つめ嬉しそうに相好を崩す。

 

 「これ、僕のロケットじゃないですか! 失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます!」

 「あれ? お前の?」

 「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

 「マ、ママ?」

 

 予想が見事に外れた挙句、斜め上を行く答えが返ってきて思わず頬が引き攣るハジメ。

 写真の女性は二十代前半で、その事を尋ねると、「せっかくのママの写真なのですから若い頃の一番写りのいいものがいいじゃないですか」と素で答えられた。その場の全員が「ああ、マザコンか」と物凄く微妙な表情をした。女性陣はドン引きしていた。ユエとシアはハジメもブラコンじゃ?、と突っ込みたかったがそこはぐっと我慢する。

 とりあえず先ほどよりも落ち着いた様子のウィルを横目に神羅はティオへの質問を続ける。

 

 「さて、この話はここで終わりにしよう。ティオ・クラルスよ。その黒ローブの男の事を教えてくれ」

 「うむ、分かった、神羅殿」

 

 そしてティオの話によると、黒ローブの男は千単位の魔物を洗脳し、その大群でもって町を襲うつもりらしい。群れの長だけを洗脳することで効率よくその数を増やしているらしい。

 最初、その黒ローブの男は魔人族かと思われた。だが、その予想をティオは否定する。

 何でも黒ローブの男は、黒髪黒目の人間族で、まだ少年くらいの年齢だったというのだ。それに、黒竜たるティオを配下にしたさい、「これで自分は勇者より上だ」等と口にしていたらしい。

 黒髪黒目の人間族の少年で、洗脳系の魔法が使える闇系統魔法に天賦の才がある者。ここまでヒントが出れば、流石に一人の男が容疑者に浮かび上がる。愛子達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。

 そんな中、周囲をハジメ製のドローン、オルキスで調査していたハジメが声を上げる。

 

 「見つけたぞ。魔物の群れだ。だがこれは………千じゃない。万単位の大群だ。よくもまあここまで……」

 「ふむ、動きは?」

 「まだ動いてる様子はないが……それも時間の問題だな」

 「は、早く町に知らせないと! 避難させて、王都から救援を呼んで……それから、それから……」

 

 事態の深刻さに、愛子が混乱しながらも必死にすべきことを言葉に出して整理しようとする。数万の魔物の群れが相手では、チートスペックとは言えトラウマを抱えた生徒達と戦闘経験がほとんどない愛子、駆け出し冒険者のウィルに、魔力が枯渇したティオでは相手どころか障害物にもならない。

 地球組が慌てふためく中、ウィルがポツリと口を開く。

 

 「あの、ハジメ殿たちなら何とか出来るのでは……?」

 

 その呟きに全員が一斉にハジメたちを見やるが、

 

 「バカ言うな。俺たちはウィルの保護が目的で来たんだ。やるにしたって保護対象を連れてやるなんて無茶だ。それに討ち漏らしが出ないとも限らない」

 「だな。なんにしても町に戻るのが先決であろう」

 

 その言葉に全員が呻いていると、愛子が口を開く。

 

 「ハジメ君、黒いローブの男というのは見つかりませんか?」

 「ん? いや、さっきから群れをチェックしているんだが、それらしき人影はないな」

 

 愛子は、ハジメの言葉に、また俯いてしまう。そして、ポツリと、ここに残って黒いローブの男が現在の行方不明の清水幸利なのかどうかを確かめたいと言い出した。その言葉にほかの生徒たちは当然のごとく猛反発し、愛子はそれでも逡巡する。見かねた神羅が口を開く。

 

 「いい加減にしろ。お前に何ができる?身の程をわきまえない言葉はただの妄言でしかない。お前は生徒が大事と言っておきながら、他の連中は危険にさらす気か?仮に残って、お前一人で魔物の大群をどうする!?」

 

 バッサリと切り捨てるような言葉を放つ神羅だったが、次の瞬間、大きく目を見開くと勢い良く振り返る。

 その突然の動作にクラスメイト達は驚いたように目を丸くするが、その理由を問う事はできなかった。

 なぜなら神羅の身から人知を超えた圧が放たれていたからだ。明らかにその様子は先ほどまでとは違う。ビリビリと空気が揺れ、張り詰め、押しつぶされそうになる。ティオでさえ、飲まれたように息を呑んでいる。

 そんな中で動けたのはハジメ、ユエ、シアだった。突然の豹変に言葉を失うが、即座に冷静さを取り戻すと神羅に話しかけようとするが、その前に神羅が口を開く。

 

 「………お前等。今すぐに山を下れ。そして死者を出したくないなら町の人間を全員避難させろ。荷造りなんてさせるな。身一つで放り出しても構わない。一刻も早く、1mでも遠くに逃がせ」

 「おい、兄貴、それってどういう……!」

 

 そこでハジメはある最悪の可能性に気づき、顔を引きつらせる。

 

 「まさか………!」

 「ああ………どうやらこの集合、奴は朧気ながら異常と認識したらしい…………」

 

 そして神羅は静かに告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「目覚めかけている………!」

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