ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 昨日、サーバー落ちに苦戦しながらもモンハンライズの体験版を手に入れ、今、プレイしています。
 正直に言うと操竜がなんかなぁ、と思っていたのですが、やってみたら意外と中々……まだプレイがおぼつかないですが、それでもかなり面白いです。ワールド以上にフィールドに引き込まれましたね……

 ではどうぞ!
 


第47話 畏怖は崇拝に

 決着がつく少し前。魔力駆動4輪は凄まじいスピードでウルの町から伸びる街道を爆走していた。その背後からは空間を揺さぶる咆哮と激しい揺れが断続的に轟いている。

 ハジメは歯を食いしばりながら四輪を前に前に飛ばしていた。少しでも距離を取れるように。

 それから少しすると、目の前に避難民の一団が見えてきて、ハジメ達は訝し気に目を細める。

 まだこんなところにいる、と言うのはまあ、大所帯での避難だ。あり得るだろう。だが、問題はその避難民の一団の規模が明らかに少なく、更に言えば残った者達も錯乱状態だったから。更には明らかに怪我を負った者も見える。

 流石に放っておくことはできず、ハジメ達は避難民の元にある程度の距離まで近づくが、それに気づいた瞬間、彼らの錯乱が更に酷くなり、彼らは悲鳴を上げ、ある者は明後日の方角に走り出し、中にはもう駄目だと諦めたようにその場に崩れ落ちる者まで現れる。

 それを見たハジメは間違えたか、と頭を掻きながらも4輪から降り、ユエ達もそれに続き、降りていく。

 そして改めて一団をざっと観察し、その中に完全に腰を抜かしている愛子たちを見つけ、

 

 「みんな、とりあえず混乱を抑えといてくれ。俺は先生と話をしてくる」

 

 その言葉に全員が頷き、ユエ達はすぐに避難民たちの方に向かい、ハジメは愛子たちの元に駆け出す。彼女たちは地面にへたり込み、顔を恐怖で歪め、真っ青にしているが、その視線はくぎ付けにされたように真っ直ぐにゴジラとメトシェラの戦闘を見つめている。周りの状況が耳に入っていないのか周囲には全く目を向けようとしない。

 

 「おい先生!大丈夫か!?」

 

 いささか強めに問いかけるも愛子は反応せず、ガチガチと歯の根が鳴っている。それを見たハジメは顔をしかめ、次の瞬間、悪い、と一言謝り、

 

 パチン!

 

 頬に平手を叩きこむ。

 

 「いつ………!あ、あれ……ここは……私は……」

 

 呆然とした声を上げながら愛子は周囲を見渡し、近くに立っていたハジメを見つけ、

 

 「ハジメ……君………?」

 

 まだ現実感が伴っていないのかぼんやりと呟く。その様にハジメは小さく呻きながら頭を叩き、

 

 「先生しっかりしろ!何時までもぼんやりしてられないぞ!」

 「ぼんやりって……確か私は……避難してて………それで、町の方角に……」

 

 そこで再び凄まじい轟音が轟き、その場の全員が身体を固くする。そしてそれがきっかけで愛子は何があったのか思い出したのか勢いよくハジメにつかみかかり、

 

 「は、ハジメ君!あ、あ、ああああああああれ!ま、町、まままちまちちちちち町の方に巨だだだだだだだだ大な……!」

 「ああ、知ってるさ。あれが怪獣だ。だから言っただろう、逃げろって。俺たちが正しかったろ」

 

 完全に混乱状態だった愛子だが、ハジメが落ち着いた状態で問いかけるとその様に一瞬呑まれ、それに連動するように彼女は落ち着きを取り戻す。

 

 「な、何で……ハジメ君……そんな………」

 「何回か遭遇してるからな。それでもかなりビビり散らしてるんだが……それよりも、何があった?予想は付くけど……」

 

 ハジメの言葉に愛子はえ、と声を上げてようやく周囲を見渡し、状況を把握し、

 

 「こ、これは!?い、一体何が……!?」

 「気づいてなかったのか……もういい。先生は他の面子を正気にさせてくれ。俺は他の避難民を何とかする」

 

 そう言うとハジメは未だ混乱している避難民の方に走っていく。そこではすでにユエ、シア、ティオが混乱を収めようと必死になっていた。

 

 「シア!」

 「ハジメさん!ヤバいです、全然収まりません!冒険者の人たちも手伝ってくれてますが、あまりにも数の差が……!」

 

 いかにユエとシアとティオが化け物じみた強さを持っていようと、大勢の人間を傷つけず落ち着かせるとなると至難の業だ。

 そうしているとまた人と人がぶつかり合い、けが人が出る。流石にこれ以上は不味い、と判断したハジメはシュラーゲンを取り出すと、その銃口を天に向け、纏雷をチャージ、そしてためらいなく発砲する。

 ドォォォォォォォォォン!!と天をつんざくような轟音が轟き、思わず避難民たちはびくりと肩を震わせ、動きを止め、ハジメに視線を向ける。

 全員の注意が自分に向いた瞬間、ハジメは軽く威圧を放ちながら声を張り上げる。

 

 「全員落ち着け!!ここでバタバタしたって意味がない!早く逃げたいなら落ち着いて逃げろ!それと!ちょっとは自分の足元とか周りを見ろ!ほかの面子を踏んづけてるんじゃねえぞ!」

 

 その声に彼らは一瞬息を呑み、そこでようやく自分たちが人を踏みつけたり、突き飛ばしていることに気づき、慌てて退き、手を差し出したりしている。

 とりあえず落ち着いた、とハジメが息を吐いた瞬間、

 

 「ハジメ!冒険者が言ってた。避難民の多くがでたらめに逃げ出しているって!」

 「それって………四方八方に散り散りになったって事かよ……」

 

 ユエの報告に最悪だ、とハジメが顔をしかめた瞬間、

 

 ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

 

 咆哮が轟き、全員が顔を向ければ、ゴジラがメトシェラを尾で吹き飛ばすところだった。

 そこでゴジラの変化が訪れる。尾の先端が青白く発光し、それがゆっくりと背中の背びれに向かって登っていってるのだ。

 それは日の光の中でも周囲を照らすほどに鮮烈な輝きであり、彼らは思わずその光景に魅入ってしまう。

 そしてその輝きが最高潮になった瞬間、ゴジラの口から熱線が放たれ、メトシェラを直撃する。メトシェラは悲鳴を上げ、その巨体が揺らぎ、爆発と共にその巨体が吹き飛び、地面に叩きつけられる。そのそばに圧し折れた牙が突き刺さる。

 が、メトシェラはすぐさま起き上がり、ゴジラを睨みつけ、ゴジラもまたメトシェラを睨む。瞬間、何キロも離れているはずなのにこちらの空気までビリビリと張り詰めたように感じ、全員が息を殺しながらその光景を見つめる。

 少しして、メトシェラがゆっくりと身を伏せ、首を垂れると、ゴジラが天を揺るがすような咆哮を轟かせる。

 

 「………兄貴の勝ちか」

 

 そう呟き、ハジメはふう、と大きく息を吐き、それと同時に噴出した汗をぬぐう。ここまでずっと極度の緊張状態だった心がようやく緩み、それと同時にそれ程疲れる行動をしていないにもかかわらず、息が荒くなる。見れば、ユエとシアも同様だった。だが、意外にもティオはそうではなく、ただただ食い入るようにゴジラの姿を見つめている。

 

 「は、ハジメ君……これは………」

 

 その後ろから愛子が恐る恐ると言った様子で話しかけてくる。他の生徒たちも一緒で、どうにかなったようだ。

 

 「ああ、決着はついた。兄貴の勝ちだ」

 「兄貴って……な、何言ってんだ?どこに神羅が……」

 

 玉井が困惑しながら言った瞬間、

 

 「神獣だ……」

 

 ポツリと避難民の中からそんな声が漏れる。

 ハジメ達が顔を向けた瞬間、

 

 「神獣様だ……神獣様が駆けつけてくださった……」

 「俺たちの危機に神獣様が目覚めたのか……!」

 「そうだ!きっとそうだ!神獣が助けてくれたんだ!」

 「ああ、神獣様……!」

 

 その声は瞬く間に伝搬し、避難民たちはその場で跪き、口々に感謝の言葉を紡ぐ。

 

 「神獣って……まさか、あの黒い奴の事?」

 

 優花が困惑気味にそう呟く中、ハジメ達は当然の流れか、と微妙そうな表情を浮かべる。

 あまりにも強大な存在を目の当たりにしたとき、自分たちのようにそれに立ち向かおうとするものはごく少数だ。それ以外は、それも多少なりとも神の存在を信じる者ならば、選ぶ道は一つ。その対象を畏怖し、崇め奉る事だろう。特にウルの町には神獣伝説と言うものもある。彼らがそれになぞらえてゴジラを崇めるのは当然の流れと言える。そうすることで彼らはその対象への絶対的な恐怖を誤魔化す。そうしなければ、自分たちの心は恐怖で壊れてしまうから。

 口々にゴジラへの感謝と助かったことへの喜びを口にしている避難民を見て、ハジメはこれからの行動を考える。とりあえずここはもう大丈夫だろう。怪我人はかなりいるが、もしものために買っておいた回復薬を置いて行けば何とかなるだろう。問題は離散した避難民たちだ。一体どこにいるのか、どれぐらい暴走したのか見当がつかない。このままでは魔物の餌食になってしまうが………

 どうするか、とハジメが唸っていると、周囲が再びざわめき始める。

 何事かと顔を向ければ、メトシェラがゆっくりと立ち上がり、そして白い目でゴジラを睨みながらも背を向け、そのまま山脈に向かって歩いていく。凄まじい巨体ながらメトシェラは山脈を乗り越えていき、最終的にはその向こうに消えて行った。

 どう言う事か、なぜとどめを刺さないのかと周囲が疑問の声を上げていると、ゴジラは大きく咆哮を上げ、自分もゆっくりと背を向け、静かに歩き出す。

 どこに行くのかと見守っていると、ゴジラはウルディア湖に向かっていき、その巨体を湖に沈めるとそのまま泳いでいき、最後には完全に湖の中に消えてしまう。

 ますます避難民たちは困惑を露にし、どう言う事かと言葉を交わしていくが、不意に、

 

 「そうか!きっと神獣様も目覚めたばかりで力を取り戻せていないのだろう。それでとどめを刺すことはできなかった。だが、今後も我らをお守りするために力を蓄えるつもりだ。あの魔物をウルの町には近づけぬために湖に身を潜めて!」

 

 騎士の一人がそんな事を口にすると、周囲の面子がなるほど!と同調を始める。

 

 「……ハジメ、あれ、いいの?」

 

 ユエが呆れたように彼らを見ながら問うと、ハジメはため息を吐きながら頭を掻き、

 

 「まあ、いいだろ。兄貴が神獣って言う事には気付かないだろうし、旅立ちには支障がない。ただ湖への信仰心がさらに高まるだけだ。こっちで納得させる手間が省けたしな。兄貴には説明が必要だろうけど」

 

 そう言うとハジメは4輪に向かって歩いていく。

 

 「は、ハジメ君。どこに……?」

 「兄貴の所だ。決着もついたみたいだし、色々と話したいこともあるしな」

 「そ、そうだ!おいハジメ!さっきのどう言う事だよ!神羅の勝ちって……」

 

 慌ててクラスメイト達がハジメに詰め寄ってくると、彼は軽く肩をすくめ、

 

 「気になるなら一緒に来いよ。見たほうが早いだろうしな」

 

 そう言って手を振って促す。その言葉にクラスメイト達は小さくうめき声を上げてためらいを見せる。まあ、確かに。あんな戦闘があった場所に向かうなど、そうできる事ではない。

 愛子も恐怖を見せていたが、ぶんぶんと頭を振ると、行きます!と口にし、するとクラスメイト達もならば、と同行の意思を見せる。

 ハジメは小さく息を吐いて4輪に乗り込み、それに気づいたユエ達が近づいてくるが、

 

 「悪いが、3人は離散した避難民の捜索と救助を頼む。流石に放っておくのはな……」

 

 その言葉にユエとシアはん、と一瞬口元を曲げるが、少ししてそれもそうか、と判断し、頷く。

 

 「それじゃあ、気を付けて」

 「ああ、そっちもな」

 「では……って、ティオさん!何時まで呆けてるんですか!」

 

 シアがティオを元に向かうと、呆けていると思われたティオは何かを考えるように目を閉じていた。

 

 「……ティオ?どうしたの?」

 「え?ああ、ユエか………どうしたのじゃ?」

 「どうしたって……しょうがないですね。私たちは散らばった避難民を捜索します。ハジメさんは先生たちを連れて神羅さんと合流するみたいですけど」

 「合流………そうか……そうなのか………」

 

 ティオは小さくそう呟くと、

 

 「一つ確認がしたいのじゃが………神羅殿はあの黒い竜が本当の姿なのか?」

 「ん。私も初めて見たけど、前、似た姿になったのを見たから間違いない」

 

 ユエの言葉にティオはそうか、とまた呟き、何かを決意したような表情を浮かべる。

 一方、ハジメは押し込まれた清水に驚く愛子たちをなだめ、いざ出発、と言うところまで来ていた。

 

 「そいつは後にして、それじゃあ「待ってくれぬか、ハジメ殿」なんだ?ティオ」

 

 そこにティオが後ろにユエとシアを連れて近づいてくる。

 

 「ハジメ殿に頼みがある………妾も一緒に連れて行って欲しいのじゃ」

 「連れて行ってッて……なんでまた……」

 「その……個人的な事なのじゃが、神羅殿と改めて顔を合わせておきたくなっての……ユエとシアはいいと言ってくれたんじゃが」

 

 ハジメが二人に視線を向ければ、二人とも頷き、

 

 「冒険者や騎士も使えば何とかなる」

 「なんか、ティオさんの様子がおかしかったので、そうしたほうがいいかなと」

 

 その言葉にハジメはふむ、と唸り、ティオを見やる。確かに今の彼女は何か様子が違う。

 彼女は竜だ。怪獣でもある兄に何か感じたものがあるのかもしれない。

 

 「……二人がそう言うなら、いいさ。乗れよ」

 「感謝する」

 

 ティオは頭を下げると4輪に乗り込み、それを確認してからハジメは4輪を走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ひっでぇもんだな……」

 

 ウルの町と北の山脈の間の平原であった場所を見て、ハジメは頬を引くつかせ、愛子たちは愕然としていた。

 そこはもはや平原ではなく、更地とすら表現できないありさまだ。例えるなら隕石の落下地点だろうか。無事な地面はほとんどなく、盛大にめくれ上げられている。いくつものクレーターのような巨大な穴が点在し、無数の木々の残骸が墓標の用に突き刺さっている。死の大地、と言われたら信じてしまいそうなありさまだ。

 この平原にはウルの町の耕作地帯も数多くあったはずだが、恐らく全滅だろう。

 ハジメは4輪を走らせ、整地機能も使って進んでいき、ウルディア湖の湖畔にたどり着き、下車する。愛子たちも続々と下車し、戸惑いながら湖を見つめる。

 ハジメは照明弾を取り出すと空に向かって放ち、しばし待つ。

 少しすると、湖面が大きくうねり、そこからいくつもの巨大な背びれが現れると、それに続いて巨大な頭部がゆっくりと顔を出す。

 ゴジラが唸りながら顔を出し、ハジメ達に視線を向ける。その視線に愛子たちは怯えたように体を震わせ、ペタン、と尻もちをつく。

 それを見て、ゴジラは大きく鼻を鳴らし、ハジメとティオに目を向ける。彼らは圧倒されてはいるが、腰を抜かしてはおらず、ハジメが大きく頷く。

 ゴジラは軽く吠える。それだけで中々の強風が吹き荒れる。そしてそれと同時にゴジラの巨体から黒い煙のような魔力が噴き出し、それに伴って巨体が縮んでいく。魔力が噴き出すにしたがって巨体は小さくなっていくが、その魔力は霧散したりせず、頭上に滞留する。

 そして最終的に、目の前で黒い霧のように漂う魔力は今度は今までとは逆に何かに吸い込まれるように収束していき、それが全て一つの影に飲み込まれる。それは首に手を当てコキコキと骨を鳴らす神羅だった。

 それを見て、ハジメは大きく息をつく。

 

 「やっぱ兄貴だったか」

 「まあ、疑うのは仕方ない。だが……なぜ畑山教諭たちも一緒に?てっきりお前達だけかと……それにティオ・クラルスもとは……」

 「事情説明は必要かと思ってな……まあ、ちょっと刺激が強すぎた気もするが……」

 

 ハジメは腰を抜かしている愛子たちを見て、失敗したか、と頭を掻いている。

 

 「妾は自ら望んでの………本当にあの竜が神羅殿だったとは……」

 「竜ではないがな……」

 「は、ハジメ君……これは一体……どう言う事なんですか……?本当に………何が……」

 「とりあえず、説明をするとするか」

 

 そこからハジメと神羅は怪獣と言う存在、そして神羅がその一人で転生した者であると言う事を説明していく。

 最初は信じられないと言った様子の愛子たちだったが、目の前での変化、更には先ほどまでの戦いを見てたこともあり、最終的には信じたようだ。もっとも、その結果クラスメイトのほとんどは神羅に怯えたような視線を向けているが。愛子と優花は恐れを抱きながらもそれだけではないように見える。

 そして説明を終えたところで神羅は何かを思い出したように眉を動かす。

 

 「そう言えばハジメ。清水は?シアに渡したのだが……」

 「ああ、車の中にいるよ。って、兄貴が見つけたのか?」

 「ああ。奴の場所を見つけ、向かう途中に見かけたので、ついでにな」

 「なるほどな………そんじゃあ、そろそろ……事情聴取でもするか」

 

 その言葉に愛子は沈んだ表情を浮かべ、4輪に顔を向ける。

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