ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 この作品、初期の頃のプロットの一つに雫がハジメのヒロインと言う設定がりました。地球にいたころから付き合っていたという具合で。神羅と香織をくっつけようと結託していたらいつの間にか……みたいな感じで。

 それはそうと、最近メッセージで更新を聞いてくる人がいますが、やめてください。そう言う事をされると気分が悪くなります。今後は絶対にやめてください。


第48話 罰

 破壊しつくされた平原に停車している魔力駆動4輪の傍に奇しくもウルの町にいる地球組の全員がそろっていた。

 

 「我ながらかなり派手にやったのだが……まだ起きぬとは……気絶させ過ぎたか?」

 「ある意味大物だな……」

 

 ハジメと神羅は目の前で未だに気絶し、横たわっている清水を見て、呆れたように息を吐く。そして仕方ないので神羅がウルディア湖から大量の水を容器に入れて持ってくると、それを顔面にぶっかける。

 

 「………ゴブッ!?ゴベッ!ガハッ!?」

 

 大量の水にせき込み、ようやく意識を取り戻した清水は一瞬状況が理解できなかったのかぼんやりしていたが、愛子が呼びかけた瞬間、はっと状況を理解する。

 

 「なっ!?こ、ここは!?どうして俺……!」

 「我がお前を捕まえてここまで運んだのだ。ああ、言っておくが言い訳は意味がないぞ。我自身、お前があの魔物の大群に対して司令官ぶっていたのは確認済みだからな」

 

 そう神羅が言うと、清水は彼を見てなっ!?と声を引きつらせる。

 

 「し、神羅!?ど、どうしてお前が……死んだんじゃないのかよ!?」

 「我だけではない。ハジメも生きているぞ」

 

 そう言ってハジメを指させば、清水は最初は分からなかったようだが、すぐにハジメであることに気づく。

 

 「ど、どうしてお前らが……い、いや!その前にどうやって俺を!?俺の魔物は!?」

 「ああ、あれなら我らの方で全滅させた。少々手間取ったがな。その前にお前を確保できたのは幸運だったな……」

 

 そう言って神羅が破壊しつくされた平原を指さし、清水はその光景を見た瞬間、愕然とした表情を浮かべる。

 実際は違うのだが、そうなると怪獣の事やら何やらを改めて説明しなければならなくなり、そしてそこまでしてやる道理はないので伏せたまま話を進める。

そもそも、清水が集めたと言う魔物たちは平原に来てすらいなかった。恐らく、山を進んでいる間にゴジラとメトシェラの殺気に当てられ、生存本能から洗脳が強制的に解除、後は本能のままにめちゃくちゃに逃走したのだろう。

 そして知らないうちに自分がそろえた軍勢が全滅していた(と言う事になっている)清水はそのままがくりと項垂れ、

 

 「そんな……ふざけんな……俺が主人公だろうが……」

 

 ぶつぶつと清水が呟いていると、愛子が近づき、目線を合わせる。

 

 「清水君、落ち着いて下さい。誰もあなたに危害を加えるつもりはありません……先生は、清水君とお話がしたいのです。どうして、こんなことをしたのか……どんな事でも構いません。先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」

 

 すると、一瞬愛子に視線を向けるも、すぐに顔を俯かせ、ぶつぶつとまた呟き始める。

 

 「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって……勇者、勇者うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに……気付きもしないで、モブ扱いしやがって……ホント、馬鹿ばっかりだ……だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが……」

 「てめぇ……自分の立場わかってんのかよ! 危うく、町がめちゃくちゃになるところだったんだぞ!」

 「そうよ! 馬鹿なのはアンタの方でしょ!」

 「愛ちゃん先生がどんだけ心配してたと思ってるのよ!」

 

 反省どころか、周囲への罵倒と不満を口にする清水に、玉井や園部など生徒達が憤慨し、怒声を上げるが、愛子はそれを抑えると続けて清水に質問する。

 

 「そう、沢山不満があったのですね……でも、清水君。みんなを見返そうというのなら、なおさら、先生にはわかりません。どうして、町を襲おうとしたのですか? もし、あのまま町が襲われて……多くの人々が亡くなっていたら……多くの魔物を従えるだけならともかく、それでは君の価値を示せません」

 

 愛子の言葉に清水は顔を上げると卑屈そうな笑みを浮かべ、

 

 「……示せるさ……魔人族になら」

 「なっ!?」

 

 その言葉に愛子たちは驚愕の声を上げ、ハジメ達は軽く眉を上げる。

 

 「魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな……その魔人族は、俺との話しを望んだ。そして、わかってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと……魔人族側と契約したんだよ」

 「契約……ですか? それは、どのような?」

 「……畑山先生……あんたを殺す事だよ」 

 「……え?」

 

 その言葉の意味が一瞬分からなかったのか愛子は間抜けな声を上げ、他のクラスメイト達もポカンとしているが、神羅達は冷静にその理由を推察する。

 

 「なるほど。畑山教諭は作農師。国の食料事情を大きく改善させる能力を持っている」

 「戦争において兵站事情は何よりも重要だからな。そこを潰そうとするのは当然か………しかし、そうなると魔人族は俺たちの事情をそれなりに把握しているみたいだな」

 「教諭を狙うのは当然だが、他の面子の面と能力を把握しているようだしな……そもそも魔人族はライセン大峡谷を挟んだ向こう側に暮らしている。そいつらがこんなところまで来ているとは……魔人族側も本格的に動き出したか」

 「となると、その魔人族が見張りでいるかもしれぬのう……」

 

 ティオがさりげなく周囲を見渡すが、ハジメがすぐに首を横に振る。

 

 「いや、もういないだろ。あんな化け物を見ちまったら、さっさとその情報を国に持ち帰るのが最善だろうし」

 「確かに……」

 

 そう言っていると、言葉の意味を把握した生徒たちが清水を睨み、その圧に彼は身をすくませるが、構わず、さらに口を開く。

 

 「何だよ、その間抜け面。自分が魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか? ある意味、勇者より厄介な存在を魔人族が放っておくわけないだろ……豊穣の女神……あんたを町の住人ごと殺せば、俺は、魔人族側の勇者として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし……だから、だから絶対、あんたを殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ!お前ら本当に何をしやがったんだよ!?」

 

 最初は嘲笑するように呆然とする愛子を見ていた清水だったが、話している内に興奮を露にし、その矛先を神羅達に変えて喚き立て始めた。

 様々な負と狂気を宿し、ヘドロのような光を放つ目をしかしハジメはくだらないと言うように、神羅はその全てを見透かすような目で真っ向から睨み返す。

 その怯まない眼力に清水は圧されるように言葉を詰まらせ、その隙に愛子は清水の手を取る。

 

 「清水君。落ち着いて下さい」

 「な、なんだよっ! 離せよっ!」

 

 清水は愛子の手を振りほどこうとするが、彼女は決して離さないと言うように力を強め、口を開く。

 

 「清水君……君の気持ちはよく分かりました。特別でありたい。そう思う君の気持ちは間違ってなどいません。人として自然な望みです。そして、君ならきっと特別になれます。だって、方法は間違えたけれど、これだけの事が実際にできるのですから……でも、魔人族側には行ってはいけません。君の話してくれたその魔人族の方は、そんな君の思いを利用したのです。そんな人に、先生は、大事な生徒を預けるつもりは一切ありません……清水君。もう一度やり直しましょう? みんなには戦って欲しくはありませんが、清水君が望むなら、先生は応援します。君なら絶対、天之河君達とも肩を並べて戦えます。そして、いつか、みんなで日本に帰る方法を見つけ出して、一緒に帰りましょう?」

 

 話が進むにしたがって清水は次第に顔を俯かせて黙っていき、何時しか肩を震わせていた。それを見た生徒たちは清水が愛子の言葉に心を震わせ泣いているのだと思った。

 そして、愛子が肩を震わせる清水の頭を撫でようと身を乗り出した瞬間、清水は握られた手を「そこまでだ」

 その瞬間、愛子の後ろから伸びた手が上げられた清水の顔を鷲掴みにする。

 突然の事に全員が驚愕の表情を浮かべる中、神羅は清水をそのままつるし上げ、歩く。

 

 「ぐ、がっ……!て、テメェ……!」

 

 清水はジタバタともがくとどこからか取り出した針を神羅の腕に叩きつける。だが、それは枯れ枝のようにあっさりと圧し折れる。それを見て、神羅はふう、と息を吐く。

 

 「なるほど……教諭を人質にしようとしてたか……嗚咽も何も聞こえなかったからもしやと思ったが……」

 「な、なんで……この針には人を数分で殺す毒が……」

 「あいにくとそんなに柔ではない。それに、その程度の毒も我には一切効かん」

 

 神羅がこともなげに告げると、清水は益々顔を歪め、

 

 「ふっっっっっっっざけんな!!そんな事があるかくそが!馬鹿にしてんじゃねえぞ!俺が!俺が特別なんだよ!俺が主人公なんだぞ!お前等みたいな馬鹿は俺の言いなりになってりゃいいんだよ!俺が勇者なんだよ!だから全部俺の物なんだぞ!」

 

 さんざんに喚き散らし、激しく暴れるが、神羅の腕は微動だにしない。そして神羅はどこまでも冷めた目で清水を見つめ、

 

 「……くだらんな。どこまでも………最終通告といこう。これ以上勝手な事を喚き、そして我らに対し害意を見せるなら、こちらもそれ相応の対処をする。今ならばまだマシな対処で済ませてやるが?」

 

 そう言ってハジメに視線を向ける。その視線を受け、ハジメは神羅の意図を理解し、宝物庫から一つの首輪を取り出し、神羅に放り投げる。

 

 「ハジメ殿、それは?」

 

 今まで黙って行く末を見つめていたティオが疑問に思ったのかハジメに問いかける。

 

 「あれは封印石で作られた首輪だ。首にはめれば、魔法の発動を防ぐことができる。つまり、あいつに使えば、外さない限り二度と魔法を使う事はできない。あいつにとっては絶望そのものだろうな。ま、因果応報だけど」

 

 なるほど、とティオが頷いていると、神羅も同じ事を清水に言ったのか清水は愕然とした表情を浮かべ、次の瞬間には顔が赤くなり、更には青くなり、遂には白くなり、

 

 「っざけんじゃねぇ!そんなの許されることなわけねえだろ!俺の!勇者の!主人公の力を封じるなんてくそが!黙れ!黙ってお前は俺に従いやがれ!俺の力を見せてやる!この場の男を全員皆殺しにしろ!女どもを俺の物にしろ!」

 

 そう言って清水は闇魔法で神羅を洗脳しようと言うのか詠唱を始める。それを見た愛子たちが慌ててやめるように、落ち着くように言うが、清水は聞く耳を持たない。そして、神羅はそれを見ても冷静だった。どう考えても、成功するはずがない目論見。警戒する理由がない。そして、それが最後の一歩だった。

 

 「………ここで少しでも動かなければよかったものを……愚かな男だ。ならばお前には、相応の末路を与えてやろう」

 

 そう言うと、神羅は封印石の首輪を後ろに放り投げる。突然の事にハジメとティオは目を丸くし、慌ててそれを受け止める。どう言う事だろうか。これを嵌めるんじゃないんだろうか。

 それから神羅は何故か清水の体を掴み上げたまま探りはじめ、ステータスプレートを見つけるとそれも同様にハジメたちの方に放る。

 

 「全員離れろ。下手に巻き込まれたら、どうなるか分からんぞ」

 

 そう言いながら神羅は愛子たちから距離を取る。彼女たちは急いで追いかけようとするが、それをハジメとティオが止める。彼がああ言うと言う事は本当に何かをする気なのだ。

 そして立ち止まったところで清水の詠唱が完了し、神羅に闇魔法による洗脳が襲い掛かるが、神羅は顔色一つ変えず、

 

 「昔から言うであろう?罪には罰とな」

 

 そう言うと神羅の身体からチェレンコフ色の魔力が立ち上り、そして次の瞬間、

 

 「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 その魔力の一部が清水の体に流れ込み、清水は絶叫を上げる。

 「清水君!?」

 

 その様に愛子が顔色を変えて駆け寄ろうとするが、それをハジメが抑える。

 

 「ハジメ君!?離してください!」

 「そうはいかねぇ!あれだけの魔力だぞ!?」

 

 ハジメが吠えると同時に唐突にふっと魔力が消失する。それと同時に神羅は清水を放り投げる。

 尻もちをつく清水を見、神羅が振り返って頷いた瞬間、愛子は慌てて駆け寄り、ハジメ達と他のクラスメイトもまた神羅の傍に向かい、清水の様子を伺う。

 意外なことに、清水の身体には傷らしい傷はなく、一見するとダメージを負ったようには見えなかった。

 

 「清水君!大丈夫ですか!?」

 

 愛子はすぐに清水を助け起こそうとするが、その瞬間、清水はにたりと笑みを浮かべると、愛子の頭に手をかざし、

 

 「俺の勝ちだぁ!俺に従いやがれ!」

 

 その言葉に全員が清水が愛子に暗示をかけようとしていると気づき、思わず阻止しようとしたが、直ぐに、ん?といぶかしげな表情を浮かべる。

 なぜなら、何も起こっていないからだ。魔力のような物は一切無く、ハジメの魔眼石にもなんの反応もない。愛子も何かされている様子はないようで、困惑の表情を浮かべている。

 最初は勝ち誇った笑みを浮かべていた清水だが、次第に何も起きていないことに気づき、戸惑った表情を浮かべると、再び詠唱を始める。が、今度はすぐに気付いたようだ。

 

 「な、なんだこれ……なんで……魔力が………」

 

 そう。詠唱しても魔力が動く気配が一切ないのだ。それどころか、今気づいたが、全身が少しばかり重くなっているように感じる。

 それを見ていた神羅はハジメに清水のステータスプレートを、言い、ハジメが清水のステータスプレートを取り出して神羅に差し出すと、彼はそれを受け取り、清水の手を取り、爪で指先を傷つけ、垂れた血をステータスプレートに付着させる。

 その内容を確認すると、神羅は小さく頷く。

 

 「成功か……」

 「て、テメェ!俺に何をしやがった!なんで魔法が……!」

 「自分の目で確認しろ」

 

 そう言って神羅がステータスプレートを放れば、それを清水は掴んで、慌てて内容を確認する。

 

 「…………………………は?」

 

 その瞬間、彼はまるでありえないものを見たかのような表情を浮かべる。

 心配になった愛子が横からステータスプレートを覗き見て、驚愕に目を見開く。

 

 清水幸利 17歳 男 レベル:0

 

 天職:

 

 筋力:0

 

 体力:0

 

 耐性:0

 

 敏捷:0

 

 魔力:0

 

 魔耐:0

 

 技能:

 

 全てが0になっていた。本来なら、闇術師と表示される天職も、上がっていたレベルも、ステータスも、あるはずの技能、その全てが無くなっていた。

 

 「こ、これは………!」

 

 愛子が呆然と声を発する中、神羅が口を開く。

 

 「最近疑問に思ったのだ。このステータスプレートと言うのは一体何を元にしてステータスを表示しているのか、とな。純粋に肉体能力を?いいや、それはない。この世界において、来たばかりのハジメは子供にも劣るステータスだった。つまり、この世界の全てのものがハジメにとっては重い物ばかりとなる。だが、そんな事はなかった」

 「あ、ああ……それは、確かに……」

 「ならば何をステータスプレートは表示している?遺伝、肉体情報も多少はあるだろうが、大本はなんだ?……我が考えたのは魔力だ。ステータスプレートが表示しているのは魔力による効果が大半ではないかと我は考えた。魔力以外のステータスはその魔力を使って自然に強化された値、魔力は強化に回されていない自由に使える魔力、魔力を変質させ、発現させやすい特性を技能や魔法。そして魔力その物による性質を天職と言った具合にな」

 「……何が、言いたいのじゃ?」

 「そして我には魔壊と言う技能があってな……まあ、その名の通り、魔力を破壊する物なのだ」

 

 そこで呆然と話を聞いていた清水はその可能性にいたり、顔を蒼白にし、ガチガチと歯の根を鳴らす。

 

 「ま、まさか……お前……」

 「ああ、そうだ。その魔壊を全力でお前に叩きこみ、お前の中の魔力を完全に破壊しつくした。我の考えが正しければ魔力が破壊しつくされるとステータスプレートには何も表示されない。つまり、お前はもう魔力を持たない、ただの地球の人間だ」

 

 その言葉に清水は死亡宣告を告げられたような、絶望一色に染まった表情を浮かべる。更に言えば、周りの生徒たちも驚愕に目を見開き、更に慌てて神羅から距離を取る。まあ、自分たちの力を破壊できる、と言われればそうなるだろう。

 

 「で、でたらめを言うな!そんな事起こる訳が……!」

 

 清水はそう言って再び詠唱を始めるが、やはり魔力を感じられないのか何度もやり直す。だが、結果は変わらない。何度やろうと魔力は感じない。狂ったように何度も詠唱を繰り返す清水に愛子が声をかけようと肩に手を置く。その瞬間、清水は詠唱をやめ、ガクリと膝をつく。

 

 「う、嘘だ……そんな事ある訳……俺の……勇者の力が……消えるはずが……」

 「お前には不相応の力だったと言うだけだ……ただの人間となって、己を見つめなおす事だな」

 

 それだけを言うと神羅は視線を切る。清水はそのまま糸の切れた人形のように項垂れる。

 

 「嘘……そうだ、嘘だ……嘘に決まっている……有り得ない……俺は勇者なんだ……俺は主人公なんだ……こんなことが起こるわけがない……夢……そうだ、夢だ。こんなものはただの悪い夢だ……いつの間に寝たんだ、俺は……起きろよ。早く起きろよ……起きてくれよ……」

 「し、清水君……!神羅君!いくら何でもやりすぎです!」

 

 壊れたように呟き続ける清水に手をやりながら愛子が神羅に対し、声を荒げるが、

 

 「相応の末路だろ。そいつのしでかそうとした事を考えれば。町を破壊しようとし、そして許そうとした恩師を操り、害そうとした。これだけの事をやらかして、殺されなかっただけマシだろう」

 「でも、だからって……!」

 「……我の眼も曇っていたと言う事か………」

 

 それだけを言うと神羅は小さく息を吐く。

 その姿をハジメはじっと見ていたが、そっと視線を愛子に向け、

 

 「悪いけど先生、俺は兄貴が間違っているとは思わない」

 「え?」

 「罪には罰。これは地球でも当然の事だ。やり直させるのは悪い事じゃないと思うけど、その間には罰が必要だ。そいつは罰が必要なほどの事をしたし、能力も厄介すぎる。それに、もしもそのまま戻ったなら、きっと天之河が無条件で許して、仲間にする。そうしたらまた同じことが起きるぞ。そうしないためにも、先生。教師であり、大人であるあんたが、やり直させる前にそいつに罰を与えなきゃならなかった。たとえ嫌われても。違うか?」

 「そ、それは………」

 「でもしなかった。だから兄貴がしたんだ。もう一人の大人である兄貴が……俺はそう思うよ」

 「……………そうじゃな」

 

 その言葉にティオも同意し、愛子はあ、う、と言葉に詰まる。

 事実だからだ。確かに、彼らの言う通りだ。少なくとも、彼らは間違っていない。だが、それでも……

 

 「そんなものじゃないが………まあいい。これで後顧の憂いは無くなった。ここでやることは終わったが……どうする、ハジメ。ユエ達と合流したら出発するか?」

 「いやぁ……流石にここまでの惨状を放るのは……簡単な手伝いをしてから出発しようぜ」

 「妾も手伝うぞ。このまま何もしないのは竜人族として出来ぬからな」

 「そうか……では、我も尻拭いをするか」

 

 そう言う彼らをクラスメイト達は怯えた表情で見つめており、愛子は何とも言えない微妙な表情を浮かべ、清水はただひたすらにぶつぶつと同じことを呟いていた。

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