ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 ようやっとこ最新話出せるよ……半年も空いたよ、半年も。シンフォギアはそれ以上だけどさぁ……

 とにかく、ようやく動けるようになりました。


第51話 己の在り方

 イルワからの依頼を達成した翌日。ハジメ達は手分けして食材などの買い出しに出ていた。と言っても、それほど大それたものは必要ではなく、神羅の供を買って出たティオだけで事足りるため、ハジメとユエは神羅の好意でデートに繰り出していた。もっとも、シアがついて行きたいと駄々をこね、結局、3人でのデートになってしまったが。

 今、神羅とティオは買い物を終え、街中をのんびりと散策していた。

 

 「しかし、神羅殿。シアの件は本当に良かったのかのう?」

 「良かった……と言うのは、ハジメとユエのデートについて行ったことか?」

 「うむ、神羅殿はそう言う事に関しては厳しい感じがしたので……」

 

 ティオの問いかけに神羅はふむ、と腕を組み、

 

 「まあ、確かに日本の人間としては一夫一妻では?と思わないでもないが、怪獣としては別に問題は感じないな。子を多く残そうとするのは生物として当然の本能だ。まあ、我はそれに逆らってあいつに惚れたんだが……それに、あれは完全にハジメ個人の問題だ。助言位はしてやるが、結局はあいつ自身が答えを出さねばならん」

 「それは……まあ、確かに、そうじゃのう」

 

 突き放すような物言いだが、間違っていない。これはあくまでもハジメの恋愛だ。ならば結局彼自身で決断せねばならず、外野がいろいろ言う事が間違っている。

 

 「そんな事を聞くとは、お前もハジメに惚れたのか?」

 「いや、そう言うわけではないよ。確かに妾は自分よりも強い者を伴侶にしたいと思っておった。そう言う意味ではハジメ殿は当てはまるが、惹かれてはおらん。神羅殿の一件ですっかり吹っ飛んでしまったよ」

 「む、そう言われると悪い事をした気分になるな」

 「いやいや、神羅殿の件を抜きにしても、ユエとの仲睦まじさを見たら割り込もうとはとても……」

 「そう言う意味ではシアは凄いがな。あれを見ても突撃を諦めんのだから……そう言う意味ではユエが意外なのだよなぁ」

 「意外とは?」

 「あいつは元王族だ。そう言うのにはある意味寛容なところがあると思ってたんだが……実際、一時はシアの突撃に寛容な時もあったのだが……それも数日で鳴りを潜めて、今の状況だ」

 

 確かミレディ戦の直前からその辺り緩くなったと思ったのだが、すぐさま前のように独占力を発揮した。一体どうしたんだろうか……

 

 「友人としては大切に思っているようだがな……」

 「そうなのか………ところで神羅殿としてはユエとシアはどう映っているのじゃ?」

 

 ティオは神羅達の中で新参者だ。怪獣など、基本的な情報は共有しているが、それ以外の、4人の関係が気になっているのだろう。

 

 「ふむ、そうだな……ユエはまあ、将来の義妹になるだろうが、それ抜きにしてもいい友人だ。なんだかんだ付き合いも長いし、知識欲も旺盛、前世の事をよく聞いてくる。それが原因かもしれんが、本当の妹のように感じる。シアはよく訓練に付き合ってやっているし、あいつの成長を見るのはなんだかんだで楽しみだからな、友人兼弟子と言ったところか………」

 「なるほどのう………」

 

 納得したようにティオが頷いていると、神羅は彼女に目を向け、

 

 「我の方からも聞いていいか?」

 「ん?ああ、構わぬが、何を……」

 「いや、本当に我らと共に来てよかったのかと思ってな」

 「ああ、その事か。あの時も言ったが、妾自身がそうするべきと考えたから問題はない」

 「………では質問の仕方を変えよう」

 「え?」

 

 「恨み骨髄の対象である人間、その人間に味方をする(同類)。それらを見て、お前は本当に自分を抑えられるのか?」

 

 その瞬間、神羅とティオの間の空気がしん、と静まり返る。

 

 「………気付いておったか」

 

 少ししてティオは存外穏やかに言葉を紡ぐ。

 

 「当然だ。それぐらい見抜けぬようではやっていけん。ハジメ達の安全にもかかわる………お前は内心では人間というものを激しく憎んでいる。全滅させてやりたいほどにな。にも拘らず、お前はともすれば人間を守るために人間と行動を共にしている。何か切っ掛けがあった、と言う感じもない。我も恐らく違う。そこら辺の事を、今はっきりさせておかなければ、後々の禍根になるだろうよ。だからこそ我は正面から問う。お前は何故、自分を押さえつけてまで、我らと共に人間の世界を旅をすると決めた?」

 

 神羅は眉をひそめながら真っ直ぐにティオの目を見つめる。怪獣としての圧は一切開放していない。魔力も使っていない。だが、その視線は尋常ではない圧があった。一切の嘘偽りを見抜き、許さないと言わんばかりに。

 対し、ティオもまたその視線を前にしても一切臆さず、真っ直ぐに神羅の目を見つめ返す。二人の間だけ、異様な空気となり、通行人たちもそそくさと彼ら避けて早足に去って行く。

 

 「………そうじゃ。妾は人間が、正直に言って憎い。かつて、妾達竜人族は世界の守護者と呼ばれていた。人間達を守るために戦っていた。ユエが言っていたように、真の王族とも呼ばれた。だが、それは全て神と人間の手によって踏みにじられた。解放者の者達と同じように世界の敵にされた……国は焼かれ、多くの同胞は殺され、父も母も……」

 「それを押し殺してまで、なぜ我らと共に行く?」

 「そうじゃな………竜人族としての使命、も重要じゃが、それとは別に、妾は復讐に走るつもりは微塵もない。それが父の最後の願いじゃし……竜人族の誇りじゃからな」

 「………」

 「妾達竜人族にはこんな言葉がある。我等、己の存在する意味を知らず。この身は獣か、あるいは人か、世界の全てに意味あるものとするならば、答えは何処に。答えなく幾星霜。なればこそ、人か獣か、我らは決意を以て魂を掲げる。竜の眼は一路の真実を見抜き、欺瞞と猜疑を打ち破る。竜の爪は鉄の城を切り裂き、巣喰う悪意を打ち砕く。竜の牙は己の弱さを噛み砕き、憎悪と憤怒を押し流す。仁、失いし時、汝らはただの獣なり。されど理性の剣を振るい続ける限り、我らは竜人である、と」

 

 その言葉を神羅は無言で腕を組み、聞いている。

 

 「妾は誇り高き竜人族。復讐の牙など望まん。妾が持つは竜の牙と竜の爪。だから決して折れはせんよ」

 

 そうティオは誇らしげに笑みを浮かべる。故にこそ、

 

 「なるほど………竜人族としてのお前の考えは分かった………では、もう一度問おう。お前はなぜ、我らと共に旅をすると決めた?」

 「…………へ?」

 

 その言葉は完全に意表を突いたものだった。

 ティオがぽかん、としていると、神羅は静かに腕を解き、

 

 「何を予想外、と言う顔をしている。お前は我の質問にちゃんと答えていないだろう」

 「い、いや、先ほど言ったであろう?妾は竜人として」

 「それは竜人族としてのお前の意見だ。俺が聞きたいのは、竜人族も何も関係ない、誰でもない、ティオ・クラルスの意思を聞きたい」

 

 その言葉にティオは目を見開き、知らずの内に気圧されたように一歩、後ろに下がる。

 

 「お前自身とその竜人族の誇りが合致しているならばそれでいい。だが、所詮それはお前ではない別の誰かが生み出した誇りだ。お前の誇りとは言い切れまい」

 「妾達を愚弄するのか、神羅殿……」

 

 ティオが一転、神羅に敵意が籠った視線を向けるも、彼は一切動揺しない。

 

 「そうではない。俺が聞きたいのは、お前自身がどうしたいのか、それを聞きたいのだ。竜人族の誇りを愚弄するつもりはない。だが、言っておこう、竜人よ。それはお前ではない、顔も知らぬ誰かが定めた誇りだ。ならば、当然その誇りとお前の考えには齟齬が出ているのではないか?」

 

 その問いにティオは一瞬言葉に詰まる。

 

 「お前は事あるごとに竜人族を口にする。それは自分がどうしたいのかを自分じゃなく、竜人族として考えているからではないか?だとしたら、それは誇り云々ではなく、自分の在り方を他に委ねているようにしか見えん………自分がどんな存在かは、自分で決めるしかない。お前は何者だ?ティオ・クラルスよ。そしてお前は……どうして俺達と一緒に来た?」

 

 ティオが困惑を強くするが、少しすると、神羅を見据えて口を開く。

 

「……では、逆に聞くが、なぜ神羅殿は……元怪獣の其方は、人間と共におるのだ?其方の……あり方とは……?」

 「………俺は俺だ。それ以上もそれ以下も、それ以外もない。俺は俺でしかない………俺はゴジラであり、南雲神羅だ。だから俺はこれまで築いてきた物を、見てきた物をなにも忘れたりはせん。だから知っている。人間がどれほど愚かで、浅ましいか。人間がどれほど優しく、強いか………だから俺は決めた。人間は守るし、助ける。だが、懲りずに愚を犯すのなら、一切の容赦はしないと。俺はそう決めた」

 「………っ……」

 

 変わらず、圧は放っていない。魔力も放っていない。だが、その身からは人知を超えた圧が放たれ、相対していたティオは息を呑む。

 

 「他者の誇りに感銘を受けるなとは言わん。だが、それに自身の在り方を委ねるな。自分の在り方は自分で決めろ。自分の誇りは……自分で決めろ」

 「うっ…………」

 

 神羅の問いにティオは迷うように視線を彷徨わせる。そこには竜人族の誇りを語っていた時の気高さはない。自身の在り方に迷い、惑い、自分はどうすればいいのか、どこへ行けばいいのか分からずにいる少女のようだ。

 彼女の立ち位置をはっきりさせるつもりだったのだが、少々きつく言いすぎたか……

 神羅がそんな事を考え、頭を掻いた時、不意に彼はん?と視線を鋭くし、近くの建物を見やる。

 神羅の雰囲気が変わったことを察したのかティオが一先ず顔を上げる。

 

 「どうしたのじゃ?神羅殿」

 「いや、近くでハジメたちの気配がするが、随分と攻撃的……」

 

 その直後、建物の壁が轟音と共に破壊され、そこから男が二人吹っ飛んできた。

 男たちはそのまま地面に叩きつけられ、ぴくぴくと痙攣している。重傷だが一応生きているようだ。

 周囲の住人が悲鳴を上げながら距離を取る中、崩壊し建物の壁からひょっこりとハジメとユエが顔を出した。

 

 「ああ、やっぱり二人だったか……」

 「……二人とも何をしているの?」

 「それはこっちのセリフだ馬鹿者。なぜデートで建物の壁を破壊している」

 「と言うか、シアがおらんが……どうしたのじゃ?」

 

 建物の中を覗き込むと、中には重傷を負っているか死んでいるかの二択の男達が十数人倒れているが、シアの姿はない。

 

 「あ~~~、実は今、人身売買をしている裏組織を潰しているんだ。ギルドからの依頼で。シアは別の場所を潰してる」

 「何をどうしたらデートの最中にギルドからの依頼で裏組織を潰すのじゃ?」

 「……説明する」

 

 ユエが事情の説明を始める。

 なんでも、最初は3人はユエとシアが小競り合いをしながらも水族館を見て回ったりなど楽しくデートを満喫していた。だが、昼食を済ませた後の散策の時、ハジメが何気なく使った気配感知が地下の下水道で小さく弱った気配を感知した。恐らく弱った子供かもしれない、と言う事で3人は救助に回り、無事に助け出せたのだが、その子は何と海人族だったのだ。 海人族は西大陸の果、グリューエン大砂漠を超えた先の海、その沖合にある海上の町エリセンで生活している亜人の種族だが、他の亜人と違って海人族は王国の保護下にある。その町が王国の海産物の8割を担っているからだ。そんな王国が、教会が保護している海人族の幼女が下水道にいる……間違いなく碌な案件ではない。

 そしてその海人族の少女、ミュウから話を聞いたところ、やはり人攫いの類にさらわれ、無理やり連れてこられたことが判明。ミュウが下水道にいたのは、運よく逃げ出せたかららしい。

 で、ハジメ達は一先ずミュウを保安署に預ける事にした。そうするまでにいつの間にかミュウを気に入ったユエとシアがごね、これまたいつの間にかハジメ達に懐いたミュウの盛大な駄々があったが、ともかく彼女を保安署に預け、ハジメ達は保安署を後にしたのだが、その直後、その保安署が襲撃され、ミュウは再び攫われてしまった。更に、現場に駆け付けてみれば、そこには海人族の子を死なせたくなければ白髪の兎人族と金髪の少女を連れて○○に来いと言う書置きまで残されている始末。

 それを以て、ハジメ達はこの裏組織、フリートホーフを叩き潰すことを決めたのだが、無断で暴れるのは論外と言う事でひとまずイルワにこの件を報告したところ、彼の方から正式にフリートホーフ壊滅の依頼が出されたので彼らはそれを受け、今こうして暴れている、という訳だ。

 

 「ハジメ。お前は日本に帰ったら一先ず全国の神社仏閣を巡ってお祓いを受けてこい」

 「そんなにっすか………」

 

 説明を聞き終えた神羅の第一声にハジメは頬を引くつかせる。ユエとティオもそのトラブル体質に微妙そうな表情を浮かべる。

 

 「話は分かった。つまり、そのミュウ、と言う子を探せばいいのだな?」

 「ああ。どうやらフューレン一の裏組織らしくて関連施設もかなりあって構成員もかなりの数。イルワは構成員の処遇は俺たちに任せるけど、幹部連中はできるだけ生かしてほしいって」

 「なるほど。そう言う話であれば、手伝う事に異論はない。それで、ティオは………」

 

 神羅はちらりとティオに視線をやり、彼女は毅然とした顔をし、

 

 「もちろん、妾も手伝「いや、ティオは一先ずイルワの元に合流。そのまま待機していたほうがいい」なっ……!?」

 

 神羅の言葉にティオだけでなく、ハジメとユエも驚いたように目を丸くする。

 

 「な、なぜじゃ神羅殿…!」

 「お前、まだ迷っているのだろう?だったらそれが定まるまで大人しくしていろ。今の状態で戦ったら、万が一もあるし、変な方向に固まられても困るだけだ」

 「っ……それは……じゃが……」

 

 言葉に詰まるもティオは反論しようとする。だが、それを神羅が妨げる。

 

 「お前を信用していないでも、見下しているわけでもない。我が言う事ではないが、今の状態が危険なのはお前自身分かっているはずだ。少し頭を整理して、自分で大丈夫、と思った時に合流してくれ。それで十分だ」

 「………」

 

 その言葉に、ティオは何か言いたそうな顔をするが、何も言えず、少し、迷うように視線を彷徨わせる。

 

 「……分かった。確かに今の妾は少々………混乱している。ここは大人しくしていよう」

 

 そう言ってティオはその場からギルドの方角に向かって歩いていく。

 

 「……神羅。ティオと何かあった?」

 

 ユエがおずおずと聞くと、神羅は小さく息を吐き、

 

 「少々、己の在り方についてな」

 「……完全にタイミングがアウトだったか……」

 「それを言ったらキリがない。ともかく行くぞ」

 

 気まずげなハジメの肩を叩き、神羅は歩き出し、ハジメとユエも一瞬顔を見合わせた後、その後に続く。




 今回、ティオに関してはこんな感じになりました。小林さんちのメイドラゴンのイルルとのやり取りを参考にしました。今後、彼女なりの答えを示せたらなと思っています。
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