ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 すっごい遅れましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 と、言うわけで新年一発目の更新です。


第59話 見つけた答え

 オルクス大迷宮の入り口からハジメ達は文字通り勢いよく飛び出してきた。その様は中々にひどいもので、ほとんどの者がその場に崩れ落ちそうになるほど疲弊していた。機能した転移陣を使ったとはいえ、全員がほぼ休み無しで大迷宮内を駆け抜けたのだから無理はないかもしれない。

 だが、それをホルアドの住民が気にしたそぶりはない。それに気づいたのは比較的余裕があるハジメ達だった。

 

 「……みんな慌ててる」

 「目覚めた影響だろうな」

 

 あの地響きの影響はここまで及んでいたのか大勢の人々が右往左往しており、中には怪我人も出ているようだ。大迷宮の入り口は露店などもあり、賑わっていたのだが、今はそれが災いし、崩壊した露店も見受けられる。

 

 「南雲……何か知っているなら説明してくれ。あの巨大な魔物は一体なんだ?あんなのは今まで見たことが……」

 

 その中で、メルドが息を荒げながらハジメに問いかけてくる。振り返ってみれば、その場の全員が息も絶え絶えながら似たような視線を向けている。

 

 「………俺達も詳しくは知らない。でも、種族は違えど、似たようなデカブツとはこれまでの旅の中で何匹も遭遇してきた。そんで、俺たちは奴らの事を、怪獣、って呼んでる」

 

 それに対し、ハジメは『正体は知らないけど、何度も遭遇したことがあるので、自分なりの仮説を立ててみました』を装って話始める。より詳しく話そうとしたらそれこそ面倒な事になる。

 

 「か、怪獣って………」

 「ああ、あの怪獣だ。地球の特撮に出てくる大都会を一匹で破壊して、ミサイルやらレーザーやら撃ち込まれてもピンピンしているあの怪獣。実際、俺たちが出会ってきた奴らはみんなそれにふさわしいでかさと戦闘力を持っている」

 「……ん。私たちの攻撃がほとんど……ううん。全く効かないと言っていい」

 

 その言葉にクラスメイト達は全員顔を青ざめさせ、体を震わせる。

 

 「う、嘘だろ……あんなのが……他にも何匹もいるのかよ……」

 「どうなってんだいったい……」

 「で、でも、神羅はあいつを蹴り飛ばしていたような………」

 

 どう言う事だ、と言わんばかりに全員がハジメを見つめる。ハジメは小さく肩をすくめ、

 

 「兄貴は別格だ。俺たちの中で、兄貴だけが奴らと互角に渡り合えるだけの力を持っている。それだけだ」

 「それだけって……どうして?どうして神羅君だけ……」

 

 香織の問いにハジメは小さく肩をすくめ、

 

 「知らねぇ。兄貴とはぐれた後、再会した時にはもう持ってた。兄貴も由来は知らないようだったな」

 

 その言葉に香織がそうなんだ、と心配そうな表情を浮かべる。

 

 「と、とにかく、相手が何だろうと逃げるわけにはいかない!南雲!その怪獣は今どこにいる!?」

 

 不意に光輝がそう声を上げ、ハジメ達はぎょっ!?と目を見開く。

 

 「ちょ、待て天之河!お前、まさかとは思うが奴とやり合うつもりか!?」

 「あんな化け物放っておけるわけがないだろ!?それに神羅だけに任せておけない!」

 「何言ってんだ!?兄貴に任せて……って言うのは俺も反対だが、お前じゃ力不足だ!そもそも武器はどうする!?まさかとは思うが、その剣って言わないよな!?」

 「そ、それは……」

 

 ハジメのもっともなツッコみに光輝は言葉に詰まり、それでも声を出そうとした瞬間、

 

 「ハジメおにいちゃぁぁぁぁぁん!」

 「ハジメ殿!」

 

 そこにミュウとティオが駆け寄ってくる。

 

 「ミュウに、ティオ!?」

 

 ハジメはその事に驚きながらも駆け寄ってきた勢いのまま飛びついてくるミュウを慌てて受け止める。ミュウはそのままハジメの服を強く握りしめ、離れたくないと言うように抱き着く。それで気付いたのだが、ミュウの身体は怯えるように震えていた。

 

 「ど、どうしたんだよ、二人とも」

 「うむ。先ほどこの町をすさまじい揺れが襲ってな。それでミュウが怯えてしまったのでこうして様子を見に来た……妾も、先ほどからウルの町で襲われた嫌な気配がして……な。それで、何が起こったのじゃ?」

 「なるほど……ご想像の通り、怪獣だ。この迷宮のすぐそばに潜んでいやがった。今は兄貴が囮として引き付けてくれている」

 

 ティオがそうか、と小さく息を吐いている中、光輝達はお兄ちゃんってなんだ!?と唖然とし、一部はティオの容姿にざわついていた。

 

 「ならば、妾達はどうする?」

 「まずはミュウを安全な所に。その後に俺達は武器の準備をして兄貴と「おい、見つけたぞ!」今度は何だよ……!」

 

 ハジメが苛立ちを滲ませながら視線を向けると、薄汚い格好の武装した男十数人がこちらに向かって走ってきていた。

 彼らはハジメ達の前まで来ると、いやらしい視線をミュウやティオ、シアにユエに向けると、

 

 「おい、ガキ。死にたくなかったら女を置いてさっさと消えろ。なぁに、後でちゃんと返してやるよ」

 「まあ、そんときにはすでに壊れてるだけどな」

 

 耳障りな笑い声をあげる男たちにハジメは奥歯を噛み締める。恐らくだが、容姿が整っているミュウとティオを見て、碌でもないことを考えた連中だろう。こんな連中に関わっている暇はない。さっさと排除して神羅と合流しなければならないのに……

 その考えの下、ハジメが男たちに対し、一切加減のないプレッシャーを放とうとした瞬間、

 

 男の一人が消える。

 

 「「は?」」

 

 その光景にハジメと彼らの発言に憤り進み出た光輝はそろって声を上げる。

 

 「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?な、なんだこれ!?どうなってんだ!?」

 

 連れ去られたであろう男が上げた悲鳴が頭上から聞こえてきて、その場の全員が驚きながら空を見上げると、そこには男を両足でつかんで飛び去って行く巨大な影が見えた。

 

 「な、何だあれ!?」

 「ど、どうなってんだ!?なんだよあの魔物!?」

 

 男たちが慌てふためき、クラスメイト達ですら呆然とした瞬間、

 

 「ぐべぇっ!?」

 

 男たちの頭上から巨大な影が舞い降り、それは容赦なく男の一人を踏みつける。

 ふみつけられた男は潰れたカエルのような声を漏らし、取り巻きは巨大な翼に打ち据えられるか風圧で倒れ込む。

 そこにいたのは正に巨鳥と呼ぶにふさわしい存在だった。ギョロついた巨大な目に鋭い嘴。体長3mはあろうかと言う巨体に10mは超えていそうな爪と指を備えた翼、強靭なかぎ爪を持った足。だが、それは通常の鳥とは違った面を持っていた。羽根がないのだ。背中に黒い棘のような物が生えているが、それだけで、羽毛もなく、その身体はざらついた皮膚に覆われ、翼も被膜でできている。

 巨鳥は踏みつけた男を掴み上げると、そのまま飛翔し、男を連れ去ってしまう。その光景に、男たちは悲鳴を上げて逃げ去ってしまう。ハジメ達は鳥の行方を追いかけて、空を改めて見上げ、絶句した。

 空の至る所に同じ巨鳥が羽ばたいていた。その数は間違いなく10、20では聞かない。50匹は居そうな大群がホルアドの上空を占拠していたのだ。

 

 「な、なんだこの魔物たちは!?一体どこから!?」

 

 光輝が狼狽える中、巨鳥達は上空でしばし旋回していたのだが、次の瞬間には獲物を見定めたのか次々と町中に勢いよく降下し始める。当然、ハジメ達の元にも。

 

 「!蒼龍!」

 

 だが、それは叶わなかった。ユエが発動させた蒼龍が咆哮を上げながら天に昇る。ハジメ達を狙った個体は成すすべなく飲み込まれ、更に竜はそのまま空を舐めるように蹂躙、未だ空にいる巨鳥を次々と焼き尽くしていく。

 だが、巨鳥達も只者ではなかった。蒼龍に気づくと、彼らは下手に逃げるのではなく、次々と町に舞い降りていったのだ。

 その行動にユエは思わず舌打ちをする。幾らなんでも町中に無差別に蒼龍を放つなんて真似はできない。ユエは重力魔法で浮き上がると、町を上空から見下ろし、見える範囲の巨鳥に魔法を放っていくが、建物が影になり、成果は芳しくない。

 上空からの襲撃に町中は大パニックに陥り、そこら中から引っ切り無しに悲鳴が上がり、何かが壊れる音が響き、阿鼻叫喚の様相を示す。

 

 「ど、どうして急に魔物が町を……!」

 「詮索は後だ!とりあえず奴らをどうにかするぞ!」

 「はい!分かりまし「オォォォォォォォォォォォォォォォ!」な、なんですか!?」

 

 だが、事態は未だ終わっていなかった。今度は巨大な咆哮が轟き、その場の全員が体を強張らせる。

 

 「ま、まさか……怪獣が地上に出てきたのか……!?」

 

 誰かが怯えながらそう言うと、ハジメは舌打ちと共にユエに声をかける。ユエは頷くと上空からぐるりと周囲を見渡し、

 

 「嘘でしょ…………!新手がやってきた!」

 「あ、新手って……あの怪獣や鳥とは違うやつかよ!?」

 「その通り!なんか、細長いガイコツみたいな頭をした二本の腕で体を支えている奴が町に向かって来てる!」

 

 その言葉にクラスメイト達はえ、と小さく声を上げ、香織が確認するように問う。

 

 「えっと……ユエちゃん!……そいつの下半身って、後ろ脚は無くて、長い尾を持ってる感じ?」

 「え?そうだけど……何で知ってるの?」

 

 香織の確認にユエが目を丸くしていると、香織はやっぱり、と小さく頷く。

 

 「それ、私たち戦ったことあるよ!」

 「……本当?」

 「うん。それに打ち倒してもいるよ。結構強かったけどね」

 

 すると、香織の言葉が伝搬していくようにクラスメイト達の混乱が落ち着き始める。かつて撃破した敵、と聞いて余裕が出てきたようだ。

 

 「だったら………ハジメ君。貴方達は神羅君の援護に行って。私たちは外の魔物を相手するわ。鳥は……冒険者に協力を要請しましょう」

 「そうだな………それが最善だな」

 

 顎に手を当てて考え込んでいた雫がそう提案し、メルドも同意する。体力は消費しているが、少なくとも、一度戦ったことがある相手ならばどうにかなる。そう彼女は判断したようだ。

 周囲のクラスメイト達も混乱から復帰すると、やろう、と言うように頷いている。より正確には、怪獣の相手をするぐらいならば勝ったことのある魔物、もしくは鳥の相手をする方がいい、と言ったところか。光輝もまた状況が状況だからか雫とメルドの判断に文句を言う様子はない。

 が、雫の言葉に、ユエは複雑そうな表情を浮かべ、

 

 「……一つ確認だけど、貴方達が倒した奴って、どれぐらいの大きさだった?」

 「え?え~~と……大体7~8mぐらい。べヒモスと同じぐらいだったよ?」

 

 香織が答えると、ユエは思わず、と言うように空を仰ぎ、深いため息を吐いて、

 

 「……今町に向かってる奴、それよりもずっと大きいんだけど……」

 

 その言葉にクラスメイト達はえ、とポカンとした表情を浮かべる。シア、ティオはうわぁ、と言うように顔をしかめ、ハジメは自分もオルキスを飛ばし、確認を行い、顔をしかめる。

 

 「本当だ………これ、30mはあるんじゃないか?」

 「さ、30m……?な、何を言ってるんだ南雲。そんなデタラメ……」

 「俺としてもデタラメの方がよかった。でも、間違いなく、あれは30mはある」

 「それって……つまり……」

 「皆さんが倒した個体は、まだ子供だったって事ですね……」

 

 シアの言葉にクラスメイト達は愕然とした表情を浮かべる。かつて自分たちが何とか撃破した魔物がほんの子供だったという事実は弱っていた彼らの心を打ちのめすのに十分な威力を持っていた。

 

 「……どうする?」

 

 ハジメはどうするのが最善か考え込んでいた。視線をクラスメイトやほかの者達に向け、その能力を客観的に判断していく。クラスメイト達はどうすればいいのか判断できず、オロオロとしてばかりだ。ひとまず町中の巨鳥に攻撃を加え、シアは慌てて付近の住民の避難誘導を行っている。

 その光景を、ティオは茫然とした様子で見つめていた。周囲では大勢の人々が悲鳴を上げて逃げまどい、火の手も上がったのか、焦げ臭い匂いが鉄臭と混じっておぞましい匂いとなって漂ってきている。その光景を、自分は知っている。何百年も前の事だとしても、忘れた事もない。それは自分達が、竜人族が攻められた時と同じ光景だ。多くの者が死んだ。父も母も、友も。大勢が……この町も、このままでは同じ末路を辿りかねない。

 その事に、ティオの中でざまぁみろ、と言う感情が沸き上がる。当然だ。こいつらは自分たちを踏みにじってきた。自業自得だ。いいや、まだだ。まだ足りない。もっとだ。もっと苦しめ。もっと悲鳴を上げろ。もっと死ね。死に続けろ!

 そのおぞましい感情に、ティオは頭を振って振り払おうとするが、それでも黒い感情はティオを逃さない。

 

 《これがお前が望んできたことだろう。どうして自分たちは踏みにじられなければならなかった?何も悪い事してこなかったのに。守って来たのに。奴らはあっさりと自分たちを裏切った。許せるわけがない。許していいわけがない》

 (違う!こんな事、妾は望んでおらん!こんな……こんなおぞましい事……竜人族の誇りを汚すような……)

 《竜人族の誇り?何も守れない誇りに何の意味がある?ただの自己満足じゃないか。そんなもの、意味がない。そんなものに縋らなければならないなんて、まっぴらだ。だったら捨ててしまえ。神羅も言っていたではないか。それは他者の誇りだと。自分で誇りを決めろと。つまり、自分の好きなように生きていいと言う事だ。だったらそうすればいい。好きに生きようではないか。復讐に生きようではないか。人間を皆殺しにしてやろうではないか》

 

 湧き上がる感情にティオは次第に追い詰められていく。

 違う、違う違う違う違う違う違うちがうちがうちがうちがちがうチガウチガウチガウチガウ……

 

 「ハジメお兄ちゃん……」

 

 不意に響いた幼い声に思わず憔悴しきった表情のティオが顔を向ければ、ミュウがハジメの胸元に怯えるように顔をこすりつけていた。

 それに気づいたハジメは、静かにミュウを抱きなおし、彼女の顔を上げる。そして安心させるように微笑み、

 

 「大丈夫だ、ミュウ。怖いのは俺が全部やっつけてやる。お前の所には、怖いのは一匹もこれやしない」

 「……本当?」

 「ああ、本当だ。前に言ったろ?兄ちゃんは嘘はつかないって」

 

 そう言ってハジメはミュウの頭を優しく撫でる。

 その光景に、不意に何かが重なる。ミュウに一人の少女が。ハジメには一人の男性の姿が。なんだろう、あれは……

 少しして、ティオはそれに気づく。ああ、あれは自分と父だ。幼い時の、竜人族の国が滅びた時の。

 そして、ティオの脳裏にある言葉が蘇る。

 

 『ティオ。私の黒鱗とオルナの風と父アドゥルの炎を受け継ぎし、クラルスの誇りよ。今日、お前の中に生まれた黒い炎と、生まれた時から持つクラルスの猛き炎を胸に、よく生きよ』

 (父上………)

 

 その瞬間、唐突にティオの頭から血が引いていく。強張っていた体はほぐれ、目の前の霧が急速に晴れていくような気分になる。その中で、これまで、神羅やハジメ達が語ってきた言葉が次々と蘇り、最後に幻影の神羅が問う。

 

 『お前の在り方はなんだ?お前の誇りは……一体なんだ?お前が戦う理由は……なんだ?』

 (妾の……誇り……)

 

 ティオは目を閉じ、細く息を吐く。

 自分は………一体誰だ?……自分の誇りは……なんだ?………自分が戦う理由………それは………

 彼女が目を開けた時、そこにはかつてない光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハジメ殿。神羅殿はあの怪獣相手でもすぐにやられると思うか?」

 

 考え込んでいたハジメはティオの言葉にえ?と目を丸くする。そこには、毅然とした佇まいのティオがいた。それはこの状況でありながら、さざ波一つ立たず、凪いだ水面のように静かな光を宿している。

 

 「えっと………そこは大丈夫だと思う。もしそうなら、兄貴はその辺りの事、はっきりと言うと思うから……」

 「なるほど………ならば、怪獣は神羅殿に任せて、妾達は一先ず巨大魔物の相手をし、そちらを片付けた後、神羅殿と合流、彼の援護。他の者達はばらけて鳥の相手をするのがよかろうよ」

 

 その采配に周囲の者達は軽く目を丸くする。

 確かに、今のハジメ達ならば、怪獣は無理でも、手持ちの武装を駆使すれば、30m級の魔物は撃破できる。そして、神羅は怪獣の王の座を実力で勝ち取った猛者だ。相手が何であろうと、成す術もなくやられると言う事はないだろう。そして、肝心のクラスメイト達だが、上空からの奇襲に注意していれば、鳥が相手ならばに十分にやり合えるだろう。

 それは、少し冷静になればすぐに思いつくような簡単な作戦。だが、混乱し、視野が狭まっていたハジメ達はそこに至れなかった。

 

 「どうじゃ?」

 「あ……そうだな。多分、それがベストだ。あ、でも、ミュウが……」

 「だったら私がミュウをギルドに預けてくる。空を飛べる私が一番早いだろうし」

 

 上空から降りてきたユエがそう言い、ハジメは小さく頷くと、ミュウをユエに手渡そうとするが、ミュウはぎゅっとハジメの服を握りしめたまま放さない。

 

 「お兄ちゃん……」

 「ミュウ。これからお兄ちゃんたちが怖いのをやっつけてくる。だから、ミュウはギルドでいい子で留守番していてくれ」

 「……お兄ちゃんたち、帰ってくる?」

 「ああ。神羅お兄ちゃんも一緒にちゃんと帰ってくる。だからいい子で待っててくれ」

 

 ハジメが頭を一撫ですると、ミュウは小さく頷いてハジメから手を放し、その体をユエが抱きかかえる。

 

 「よし、これで「そしてハジメ殿。今後は妾も其方たちに全力で力を貸そう」それは……」

 

 ティオの言葉にハジメは彼女の顔を見やる。彼女の事情はすでに神羅から聞いている。彼女が迷っていることも、だからこそ戦いに出ないという事も……

 

 「案ずるな。自分がどうしたいのかは……ちゃんと見つけた。問題はない」

 「そうか。だったらいいが……とにかく、方針としては、巨大魔物は俺達が相手をする。お前らは町中の鳥たちの撃破。異論はないな?」

 

 ハジメがクラスメイト達を見ながら伝えると、彼らは怯えを見せながらも頷く。光輝はハジメ達が仕切っている事にどこか納得してなさそうな表情を浮かべているが、頷いていた。

 

 「じゃあさっさと……と、その前に。八重樫、メルド。これを」

 

 ハジメは宝物庫から二振りの剣を取り出し、それぞれを雫とメルドに渡す。

 メルドに渡したのは黒塗りの両刃の大剣。雫に渡したのは黒い鞘に納められた漆黒の刀だ。

 

 「練成の鍛錬を兼ねて作っていた奴だ。世界一固い鉱石を圧縮して作ったから頑丈だし、切れ味も保証する。二人とも得物を無くしているようだし、これで何とかしてくれ」

 「そうか……助かった、ナグモ」

 「ありがとう、ハジメ君。何かで間に合わせようと思ってから、助かったわ」

 「よし、それじゃあ、さっさと動くぞ!」

 

 ハジメの号令と共に全員が一斉に走り出す。




 戦闘は次回本格化します。

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