ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 日本版ゴジラ新作ひゃっほう!!!!!

 いや~~、まさかここに来て新作ゴジラの情報が来るとは!フェスには行けてませんが嬉しかったですね~~~。まだ情報がほとんど出ていないので何とも言えませんが、今は純粋に楽しみにしておきましょう!

 さて、今回。またしても魔力に関する独自の考察がありますのでご了承を。


第68話 おとぎ話の悪魔

 「なるほど………つまり、神羅殿の技能でオアシスの水に溶け込んでいた毒素を破壊した結果、オアシスは浄化された……そう言う事でいいか?」

 

 混乱から落ち着いたランズィが大きく息を吐きながら神羅に問いかけると、彼はうむと頷き、ランズィは感嘆したように声を漏らす。

 

 「まさか、そのような技能を持っている者がいようとは……しかし、あのバチュラムのような魔物は一体何だったのか……新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

 

 気を取り直したランズィが首を傾げてオアシスを眺めていると、ハジメが口を開く。

 

 「……恐らくだが、魔人族の仕業じゃないか?」

 「!?魔人族だと?ハジメ殿、貴殿がそう言うからには思い当たることがあるのだな?」

 

 ランズィに続きを促され、ハジメは続ける。

 ハジメの予想ではオアシスバチュラムは魔人族の神代魔法で生み出された魔物だと思われる。能力が特異なのもあるが、ウルの町とオルクスで魔人族の暗躍が確認されている事もある。

 恐らく魔人族の魔物の軍勢は整いつつあるのだろう。そして、本格的な戦争を仕掛ける前に、危険や不確定要素、人間領の要所に対する調査と打撃を行っているのだ。作農師である愛子と勇者を狙ったことからも間違いないだろう。

 そしてアンカジは食料関係において無視できない要所だ。しかも大砂漠のど真ん中と言う立地上、援軍も呼びにくい。魔人族が狙ってもおかしくはない。

 

 「魔物の事は聞き及んでいる。こちらでも独自に調査していたが……よもやあんなものまで使役できるようになっているとは……見通しが甘かったか」

 「まあ、仕方ない所はあるだろ。王都でも新種の魔物の情報は掴んでないだろうし、勇者一行が襲われたのはつい最近だしな……」

 「いよいよ本格的に動き出したと言う事か。ハジメ殿……貴殿は冒険者と名乗っていたが、そのアーティファクトと言い、強さと言い、やはり香織殿と同じ……」

 

 ハジメは何も言わずに肩をすくめると、それだけでランズィは何か事情があるのだろうと察したのかそれ以上の詮索をやめた。

 

 「……ハジメ殿、神羅殿、ユエ殿。アンカジ公国領主、ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは国と民を代表して礼を言う。この国は貴殿らに救われた」

 

 そう言うとランズィを含め彼の部下たちも深々と頭を下げた。

 領主が軽々しく頭を下げるべきではないだろうが、ランズィはハジメの立場が何であれ頭を下げたであろう。彼の愛国心は本物であり、だからこそハジメ達に心から感謝しているし、その事を理解しているからこそ部下たちも一緒に頭を下げたのだ。

 それに対しハジメは小さく頷くと、

 

 「ま、俺もここには用があった。そのためにもこの国には平和であってもらう必要があったからな。ただ、ここまでやったんだ。その恩を忘れたりすんなよ?」

 

 ひらひらと手を振りながらもしっかりと釘を刺すのを忘れないハジメにはランズィは小さく苦笑を浮かべながら頷く。

 

 「ああ、もちろんだ。末代まで覚えているとも……だが、アンカジにはいまだ苦しんでいる患者たちが大勢いる。神羅殿、其方の技能で……」

 「流石にそこまで万能ではない。人体にそれを行うと最悪体内の魔力を破壊し尽くして死なせてしまう。静因石を使うほうが安全だろう」

 「そうか……ハジメ殿。静因石の採取……お願いできるかね?」

 「もともとグリューエン大火山に用があったからな。そっちも問題ない。ただ、どれぐらい採取する必要があるんだ?」

 「引き受けてくれるか……おい、資料を」

 

 ランズィが資料と共に現在の患者数と必要な採取量を伝える。

 

 「かなりの量が必要だ。荷物持ちくらいならこちらから出すが?」

 「いや、必要ない。大量輸送可能なアーティファクトを持ってるからな」

 「……もう、何でもありだな。これも神のお導きか」

 

 ランズィはあきれ顔で呟いていると、

 

 「しかし……こう考えると魔人族の奴らの方が一枚も二枚も上手と言うかなんというか……」

 

 神羅はあまりにも人間族が後手に回り続けていることに呆れたように後頭部を掻いている。

 その言葉にはハジメもユエも同意しかない。魔人族は人間族と違い本気でこの戦争に勝ちに来ているように見えるのは気のせいではないだろう。もしもハジメ達がいなかったら人間族は戦争をする前に負けていた可能性が高い。

 こんなので人間族は本当に大丈夫なのか、と神羅は呆れるように息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オアシスが浄化されたことで飲み水は必要最低限確保できれば良くなったので、ハジメ達は手早く農業地帯に貯水池を作り、ユエの魔法で飲み水を確保。一仕事終えた彼らはそのまま医療院へと戻っていた。

 その医療院では香織とシアが獅子奮迅の活躍を見せていた。

 香織は半径10数メートルの患者から魔力を抜き取って魔晶石にストックし、更には衰弱を回復魔法で癒し、シアはホルアドで神羅と一緒にやったように遠方の患者を馬車に詰め込んでその馬車を運んで来たりしている。もちろん、ティオもミュウも負けていない。二人に比べれば地味だが、ティオは手際よく、かつ冷静に、手当てを行い、ミュウは手にタオルを抱えて医療院内を走り回っている。

 ハジメたちと共にランズィがやってくると、医療院のスタッフや患者たちが頭を垂れようとするが、ランズィはそれを手で制止、

 

 「皆の者、聞け!たった今オアシスを汚染していた原因は排除され、汚染も除去された!我らのオアシスが戻ってきた!加えて水の確保もなった!オアシスのと合わせれば救援に十分持つ。更に、ここにいる金ランクの冒険者たちが静因石の採取依頼を引き受けてくれた!あと数日だ、踏ん張れ!気力を振り立たせ、この難局を共に乗り切ろう!」

 

 最初、誰もが何を言っているのかと言うように戸惑ったように硬直していたが、次の瞬間、建物が震えるほどの大歓声が上がる。絶望に包まれていた人々が笑顔を取り戻し始める。患者やその家族たちは互いに抱き合って涙を流し、医療院のスタッフは仲間と肩を叩き合い、気合を入れなおしている。

 その様子にハジメは食えない奴だ、とランズィを見て肩をすくませる。彼は言外に帰ってこないと数万人が死ぬかもしれない。その罪悪感を味わいたくないよね、と言ってきているようだ。事実それは正しかったようで、ランズィもまたハジメに向けて肩をすくめる。もっとも、そんなこと言われなくても見捨てる気は更々ないのだが。

 その一方で神羅は香織の元に足を向けていた。

 

 「白崎。これからグリューエン火山に挑むがこいつらはどの程度持ちそうだ?」

 「神羅君………うん、4日は行けると思う。魔力を抜きつつ回復させていけば、それぐらいは」

 「そうか……手に入れた魔力操作は十分馴染んでいるようだな」

 

 神羅の言葉に香織はうん、と頷く。

 そう。香織はハジメ達と同じように魔力操作を手にしている。それによって従来よりも遥かに回復魔法の精度は上がっており、これほどの数の患者が相手でも彼女は今まで以上の活躍をみせることができるのだ。

 ただ、もしも彼女について一つ付け加えるとするならば……彼女はハジメのように魔物の肉を口にしてはいないと言う事だ。

 

 

 ではどのように会得したのかと言うと、香織は魔力操作を会得したのではない……………習得(・・)したのだ。

 

 

 そもそもの発端は香織が神羅達が魔力操作を持っており、それによって高い魔法戦闘力を持っていると知ったことだ。

 その話を聞いた香織はならば自分も魔力操作を会得すべきと判断して彼らに相談した。

 ハジメ達としてもその意見には賛成だが、一つ問題があった。それは魔力操作を手にするためには魔物の肉を喰らった上で神水を飲み、崩壊する身体を強制的に癒し続けるという地獄を味わわねばならないと言う事。ハジメの時はそうするしかなかったとはいえ、それはかなりの危険が伴う。幾らなんでも軽々しく人に勧める事ではない。

 香織はその話を聞いたうえでそれでも、と覚悟は決まっていた。彼らと、神羅と共にあるためにはもっと強くならなければならない。そのために力を手に入れる必要があるならばどんな地獄であろうと躊躇いはしないと。

 その覚悟の強さにハジメ達が根負けしそうになった時、話に置いて行かれていたミュウが神羅達に何をしているのかと問いかけたのだ。

 そしてユエがミュウにこの世界の魔法と魔力操作の事を簡単に説明した時、ミュウはキョトンと首を傾げながら問いかけた。『魔力操作がないと魔力が動かせないなら、どうやって香織お姉ちゃんは魔法を使ってるの?』と。

 その問いにハジメ達は改めて説明しようとしたが、そこでユエはある事に気付いた。

 魔力の直接操作はできないが、詠唱によって魔法陣に魔力を流し込む事はできる………この二つは矛盾していないだろうか?

 任意の場所に任意のタイミングで魔力を流し込む。これだって立派な操作と言える。ならば魔力操作がないとそれすらできないはず。にも拘らず人間は魔力操作がなくてもそれはできる。よくよく考えるとおかしいではないか。

 その事に気付いた瞬間、ユエはミレディの魔術書を取り出し、食事も水も取らず、ハジメですら話しかけるのを躊躇うほどの鬼気を放ちながら思考に没頭した。

 そして半日ほどが経過したころ、遂にユエはある仮説にたどり着いた。

 ユエの仮説は、魔力を持っている生物は生まれつき、ステータスプレートに反映されるほどではない最低限度の魔力操作の技能を持っていると言う物だ。そうでなければ魔力操作無しに魔力を操る諸々の行動、例えば魔法陣に魔力を流し込む、アーティファクトを使うと言った事ができることに説明がつかない。技能の魔力操作はその最低限度の魔力操作が強化され、より直接的に操作できるようになった物ではないかと。

 ハジメ達にそこまで語ってからユエはそこから導き出したもう一つの仮説を唱える。それは、魔力の流れを意図的に刺激してそれを香織に知覚させ、それを制御させることができれば、魔力操作を習得することができるのではないかというものだった。

 ユエの仮説はハジメ達でも納得したが、そんな方法があるのだろうか。もしもそんな事が出来るなら魔力操作は禁忌扱いされていないだろう。

 だが、ユエは抜かりなかった。持ち前の魔法の知識からその手段を見つけていた。

 それが廻聖だ。廻聖は魔力を抜き取り、他の物に譲渡することが可能。つまり、より直接的に魔力に干渉し、操っていると言っても過言ではない。これを使えば何とかなるかもしれない。

 善は急げ、香織とユエは早速実験に移った。と言っても、そこまで大それたことをする必要はない。香織が廻聖でユエから魔力を抜き取り、それを自分に、逆に香織の魔力をユエに渡すという形で魔力の循環を生み出し、それを香織に感じ取ってもらうというものだ。更にはユエの方でも魔力を操ってみたりもした。

 その結果、香織は自身の魔力の流れの知覚に成功、それに自ら干渉することで見事魔力操作を習得して見せたのだ。

 ユエ、シア、香織、ミュウ、神羅は素直に、あるいは無邪気にこのことを喜んでいたが、ある事に気付いたハジメとティオは若干顔を引きつらせていた。間違いなく、これはトータスの魔法技術を根底から覆しかねない偉業だ。この事が広まれば、魔力操作は急速に広まりかねない。そうなれば、トータスの文化は飛躍的に発展するだろう。なんかどんどん自分たちを中心にトータスが書き換わって行ってるのでは?と言う感覚に二人は軽く体を震わせていた。

 

 

 

 

 

 「神羅君。私はここに残って患者さんたちの治療をするね。静因石をお願い」

 「ああ、任せろ。代わりと言っては何だが、ミュウを頼む」

 

 香織は了承するように頷くが、次の瞬間一瞬小さく目を伏せると、良し、と小さく頷き、

 

 「私も頑張るから、無事に帰ってきてね。待ってるから……」

 

 そう、言葉を投げかける。その目は愛しそうに細められ、信頼と愛情がたっぷりとつまっている。それを見て、神羅は困ったように唇を曲げる。

 その様子をハジメ達は更に困った顔で見ていた。ハジメに至っては胃を押さえている。

 

 「それじゃあ、出発とするが……そうだ。一応確認しておくか……ランズィ、お前に一つ訊ねたいことがある」

 「ん?なんだね?」

 「グリューエン大火山に関係する神獣伝説のような伝承はあるか?あるなら教えてほしいのだが……」

 

 ランズィはなぜそんなものを?と言うように首を傾げるが、ハジメ達は神羅の意図に気づいた。グリューエン大火山、及びその周辺に怪獣がいるかどうか探っているのだ。

 

 「ふむ、しかし、大火山にそのような物………ああ、いや、あれがあったか………」

 「あれとは?」

 「うむ、アンカジにしか知られていないおとぎ話でな、炎の悪魔というものだ」

 

 その名に神羅は小さく目を細め、ハジメ達はどういう内容か気になり、続きを促す。

 

 「うむ。遥か昔、まだここがアンカジ公国と呼ばれていなかったころ、砂漠が大いに荒れた時期があったという。砂は天高く巻き上げられ、凄まじい砂嵐が全てを吹き飛ばそうとした。その時、国の民たちが砂嵐の中に巨大な燃え上がる影を見たという。その影はそのままグリューエン大火山の方に向かって飛んで行ったというものだ。国には被害は出なかったようだが以降、彼らはその影を炎の悪魔と呼んで恐れたという。もっとも、確認されたのはその一度だけで、その後はそんな影、火山でも全く見つけられず、見間違いだったのではと言う事になっている。今となっては悪い事をした子供を叱るために使われるおとぎ話の類となっているが………」

 

 話を聞き終えたハジメ達が神羅に視線を向けると、彼は悪態をつくようにため息を吐きながら首の後ろに手を当てていた。

 ランズィの話を聞いて神羅の脳裏をよぎったのは偽王との戦いの際、救援に来たモスラを抑え、瀕死にし、偽王が倒れた後、最初に自分に頭を垂れた者。

 

 「奴か………」

 

 その言葉で、ハジメ達全員が緊張に顔を強張らせる。

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