ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 まさかゴジラに続きガメラまで………ありがとう……本当にありがとう……

 遂に日本の特撮復活の兆しが見えてきましたね……


第69話 グリューエン大火山

 グリューエン大火山。

 それはアンカジ公国より北方に百キロほど進んだ位置に存在している。見た目は直径5キロ、標高3千メートルほどの巨石で、通常の火山のような円錐状ではなく、溶岩円頂丘のように平べったい形をしており、山というよりも巨大な丘と言ったほうがいいだろう。

 そして、もう一つの特徴が火山全体を巨大な渦巻く砂嵐に包まれている事だ。火山を完全に覆い尽くすその様は砂嵐の竜巻と言うよりも流動する壁と言った方がしっくりくる。

 この砂嵐の中にはサンドワームやほかの魔物も多数潜んでおり、視界すらままならない状態でも容赦なく奇襲を仕掛けてくる。並みの実力ではグリューエン大火山を包む砂嵐すら突破できないという。静因石を取りに行ける冒険者が少ないのも納得だ。

 

 「つくづく、徒歩で来なくてよかったですぅ」

 

 ブリーゼの車内から巨大砂嵐を眺めるシアがブリーゼに感謝感謝と拝んでいる。

 

 「神羅殿。それで、怪獣の気配なぞはどうじゃ?」

 

 一方ティオは車内で目を閉じて集中している神羅に声をかける。それと同時に車内は一気に空気が重くなり、全員が固唾を飲んで神羅を見つめる。

 グリューエン大火山に怪獣が住み着いている可能性は極めて高い。怪獣の中には火山を住処にする奴もいるからだ。だからこそ、こうして神羅が怪獣の気配を探っているのだ。今怪獣がどういう状態かによってハジメたちの行動も大きく変わってくる。

 神羅はゆっくりと目を開けると、

 

 「……今のところ気配はほとんどしない。どうやら、ウルの町の奴と同じように眠りについているようだ。ならば、刺激しないように立ち回れば害はないだろう」

 「刺激しないようにって……火山内での戦闘は避けた方がいいって事か?」

 「いや、そこは大丈夫だ。火山内にほかの魔物がいるならば、ウルの時のように魔物が大集結でもしない限り異常と認識したりはしないだろう。後はまあ、火山が噴火でもしなければ大丈夫だ」

 「それならいいけど……でも、そうなると神羅はほとんど戦えないと考えていい?」

 

 ユエの問いに神羅は小さく口を曲げながら頷く。

 

 「そうだな……今回、我はあまり暴れることはできないだろうな」

 「ま、それならそれでいいんだけどさ……万が一怪獣が目覚めたらどうする?」

 「その時は何よりも退避だな。そして、外に出たら俺が相手をする。お前たちはアンカジまで撤退して、出来る限りの避難を。今回はウルの町のようにはいかん事を留意しておけ」

 

 ウルの町では住民のほとんどが自力で避難することができたが、アンカジは今、大勢の重病人を抱えている。彼らを全員連れて避難するのは現代ならばいざ知らずこの世界ではほぼ不可能だ。最悪の選択もしなければならないだろう。

 ハジメ達はその言葉に小さく頷き、ブリーゼは砂嵐の中に突撃する。

 砂嵐の内部は太陽の光もほとんど届かない赤銅色に塗りつぶされた世界になっており、ほとんど先が見えない。ここを生身で突破するのは至難の業だろう。

 その中をブリーゼはひた走る。この調子ならば5分ほどで突破できるはずだ。

 その間、シアはソナーで砂嵐内部を見ていたが、次の瞬間、「ハジメさん!」と声を上げる。一拍遅れてハジメも気付き、「摑まれ!」と声を張り上げながらハンドルを切る。

 直後、3体のサンドワームが飛び出し、奇襲を仕掛けてくるが、ハジメはS字を描くようにブリーゼを走らせて回避し、そのまま走り去る。ブリーゼの速度ならばさっさと範囲を抜けるほうがいい。

 そのブリーゼに新たに2匹のサンドワームが左右から挟み込むように襲い掛かるが、それに気づいたユエとティオが動く。

 

 「「風刃」」

 

 左のサンドワームをユエが、右のサンドワームをティオが一瞥しながらそう呟くと、車外で生み出された風の刃がサンドワームに襲い掛かり、その体を横一文字に切断する。血しぶきをまき散らしながらサンドワームは倒れ伏す。

 

 「ふむ……先ほどの風刃、随分と威力があったな。魔力を込めた様子はなかったが」

 「ん。砂嵐の風を利用した」

 

 ティオも同じように頷いており、神羅はなるほど、と小さく頷く。

 その後も後方からのサンドワームに加えて蜘蛛や蟻の魔物も襲い掛かるが、ユエとティオの魔法とブリーゼの武装で撃滅していき、遂にハジメ達は砂嵐を突破した。

 勢いよく砂嵐を抜け出たハジメたちの目に、エアーズロックを何倍にも巨大化させたような岩山が飛び込んできた。砂嵐を抜けた先は静かなもので、周囲は砂嵐で囲まれていながら、頭上には青空が見える。まるで台風の目のようだ。

 グリューエン大火山の入り口は頂上にあるようで、進めるところまではブリーゼで駆け上がっていく。

 やがて、ブリーゼでは厳しいところまでたどり着き、ハジメ達は徒歩で山頂を目指すのだが……

 

 「うわぁ……あ、あついですぅ」

 「ん……」

 「確かにこいつはキツイ……こりゃ、タイムリミット関係なしにさっさと攻略しちまう方がいいな」

 「ふむ、妾にはむしろ適温なのじゃが……」

 「我にとってもそうだな」

 

 神羅とティオの発言にほかの全員がうんざりとした表情になる。

 さっさと済ませようとハジメ達は暑い暑いと言いながらも岩場を軽々と登っていき、一時間もかからず山頂にたどり着く。

 超常は無造作に乱立した岩に埋め尽くされた場所だったが、その中にはひときわ目立つ物があった。歪にアーチを形作る10mほどの岩石だ。その下には大きな階段も見える、ここがグリューエン大火山への入り口だ。

 ハジメは階段の手前で立ち止まり、肩越しに背後を振り返る。神羅達が小さく頷くとハジメは表情を引き締め号令をかける。

 

 「やるぞ!」

 「おう」

 「んっ!」

 「はいです!」

 「うむ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グリューエン大火山の内部はこれまでの大迷宮以上にとんでもない場所だった。

 何とマグマが宙に浮いて、川のように流れているのだ。真っ赤に赤熱したマグマが空中をうねりながら曲がれていく様は巨大な龍が飛び交っているようだ。

 更に、通路や広間の至る所にマグマが流れており、それに加えて、

 

 「うきゃ!」

 「おっと、大丈夫か?」

 「はう、ありがとうございますハジメさん。いきなりマグマが噴き出してくるなんて……」

 

 先程のシアのように壁から唐突にマグマが噴き出してくるのだ。事前の兆候もなく、突然噴き出すので察知が難しい。ハジメが熱源感知を持っていたおかげで多少は予測できるが、それがなければ攻略のスピードはかなり落ちていただろう。

 そして最も厳しいのがまるでサウナの中にいるような、もしくは熱したフライパンの上にいるような強烈な暑さ、もとい熱さだ。

 これにはハジメ達だけでなく、ティオも汗を流してしまう。神羅は汗一つ掻かず涼し気で全員から恨みがましい視線を向けられる。

 滝のように汗をかきながら天井付近のマグマの雫や噴き出すマグマを躱しながら進んでいくと、広間で人為的に削られている場所が幾つも見つかる。ツルハシで砕いたような壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石が覗いている。

 

 「お?静因石……だよな?」

 「うむ、間違いないぞ、ハジメ殿」

 

 どうやらここが静因石の発掘場所のようだが……

 

 「……小さい」

 「ほかの場所も小石サイズばっかりですね……」

 「ほぼ採り尽くされてるな……」

 

 見つかるのは小指の先よりも小さいものばかり。大量に回収するには深部に行く必要があるようだ。

 とりあえず取れるだけの静因石を宝物庫にいれ、先を急ぐ。

 熱さに辟易しながら7階ほど降り、現時点での最高到達階層である8階層へとたどり着く。

 その瞬間、ハジメ達の眼前に巨大な火炎が螺旋を描きながら襲い掛かる。

 

 「絶渦」

 

 その炎に対し、ユエが重力魔法、絶渦を発動させる。黒く渦巻く球体が迫りくる火炎を全てのみ込み、ユエはその重力球を攻撃主であるマグマを纏った雄牛目掛けて放つ。マグマの中の雄牛は素早い反撃に対処できず、正面から重力球を喰らい、肉体をぶち抜かれる。

 

 「……よし、こんなもの」

 「それじゃあ、さっさと奥に……兄貴?どうした」

 

 先を急ごうとしたハジメだったが、神羅がマグマをじっと見つめ続けている事に気付き、声をかける。

 神羅はその声に答えずじっとマグマを見つめ、考えるように唸り声をあげ、

 

 「………試してみるか」

 

 そう呟くと、神羅は唐突にマグマの中に足を踏み入れる。

 

 「ちょ!兄貴!?」

 「何をやってるんですか神羅……さ……ん……」

 

 最初は悲鳴じみていたシアの声が徐々に尻すぼみになっていく。

 ハジメでさえただでは済まないであろう灼熱のマグマの中を神羅は水たまりを歩いていくかのような気軽さで渡っていくのだ。そうなっても無理はない。

 見ればハジメ達もその光景を顔を引きつらせながら見ていた。

 そんな視線を気にもせず神羅は溶岩の中を歩いていく。その動きを目で追っていくうちにハジメは移動先のマグマの動きが気になった。具体的には岩などで流れが阻害されているわけでもないのに流れが変わっているのだ。

 神羅はその場所にたどり着くと小さく鼻を鳴らすと躊躇なくマグマの中に手を突っ込む。それでも全く熱がるそぶりを見せずそのままマグマの中で手をまさぐっていると、少ししてマグマから手を出す。

 赤い雫が滴る右手の中には一抱えほどの岩塊が握られている。よく見れば、その岩塊からは静因石の塊が覗いている。

 

 「ふむ、流れが妙だと思って調べてみたらこういう事か。静因石がマグマの魔力に干渉して流れを変えていたと言う事か。と言う事は……流れが不自然な所を調べれば静因石を確保できるな……ん?静因石がマグマに干渉すると言う事は、下手に取り過ぎればマグマが暴れるか………?そうなったら奴が目覚めるか……流石にここでそれは不味いな……まあ、他にもあるだろうし、それを採取していけばいいか。それでどうだ?ハジメ」

 「あ、はい。それで、いいと思う……」

 

 呑気に岩塊を宝物庫に放り込んでいる神羅を眺めながらハジメ達は熱さとは違う理由で疲れたようなため息を吐いた。

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