最新話を楽しみにしてくださっている皆様には申し訳ありません。少しでも早く最新話を投稿しようと思っていますので何卒………
火山から現れたラドンをフリードは呆然とした様子で見つめていた。
あれはなんだ。一体何なのだ。でかい。でかすぎる。他の魔物とはあまりにも規模が違いすぎる。あんなのはもはや、神話に出てくる怪物ではないか。
そこでフリードはウルの町の破壊工作に出ていたレイスと言う部下の報告を思い出していた。何でも突如して山のような巨大な魔物が二匹同時に現れ、戦闘を行われ、神の使徒の支配下に置かれた魔物の群れは離散した。目標である豊穣の女神の排除、及びウルの町への打撃は確認できずという物だ。
その時、フリードはその報告をそこまで深刻に捉えていなかった。なぜならその後、即座にフリード自身の目で現地に赴いて確かめに行ったのだが、凄まじい戦闘痕は発見できたが、湖や周囲の山で巨大な魔物の姿を発見できなかったのだ。しかし、かといってレイスが幻覚を見たとも思えなかった。
だからこそ、フリードは何かイレギュラーと言える何かが自分たちが知らない力、例えば神代魔法を使って魔物を撃退し、レイスはそれによって精神に異常をきたしたのではと思ったのだ。実際、フリードが敬愛する魔人族の王、魔王もフリードからの報告を聞くと、そのように
だからこそ、フリードは警戒はしていたがそこまでではなかった。それどころか、もしも遭遇したら神代魔法を使って自分の手駒にしてしまおうとすら考えていた。
だが、目の前のラドンを見て、フリードは確信した。レイスは正しかった。こいつは本物の怪物だ。神代魔法であってもこいつには届かない。この大陸には自分たちの想像も及ばない強大な存在がいると。
愕然とした様子のフリードを後目にハジメ達はラドンの動向に注意を払っていた。眠っていたのが飛行型の怪獣の可能性が高いのは知っていたが、あまりにもでかすぎる。
咆哮を上げたラドンは翼を火山につけると周囲を見渡し、そして顔を上げて視界にハジメ一行とフリードを納める。
その瞬間、誰もが理解した。出来てしまった。見つかったと。奴からは羽虫にしか見えない自分たちを奴は正確に捕捉したと。
ラドンは唸りながらハジメ達を睨みつける。その視線を真っ向から睨み返し、神羅は小さく舌打ちをすると、
「奴は俺が相手をする!」
そう言って躊躇することなくティオの背中から飛び降りる。
「兄貴!?」
「「『神羅(さん)(殿)!?』」」
ハジメ達が驚いたように声を上げるなか、神羅は重力に轢かれて真っ直ぐに落下していきながら全身から黒い魔力を放出する。
すると、魔力に気づいたのかラドンが神羅に顔を向け、咆哮を上げる。
噴き出した魔力が形を取り、空中にゴジラの巨体が現れると、彼はそのまま砂漠に着地する。その瞬間、地面を激しく揺るがす轟音と共に凄まじい衝撃が砂を吹き飛ばし、高い砂煙を立ち昇らせる。
砂煙が晴れると両手をついた状態のゴジラがゆっくりと立ち上がり、ラドンを睨みつける。対しラドンもまたゴジラを正面から睨みつけ、威嚇の咆哮を上げる。
その咆哮を聞いてゴジラはこいつが偽王側に着いた物とは別個体と確信する。あの個体ならば自分に恭順を示す筈だからだ。
ゴジラもまた咆哮を轟かせる。ここまで来たら二匹が選ぶ道はただ一つだ。
ラドンが一歩踏み出し、翼を大きく羽ばたかせると巨体が浮かび上がり、一直線にゴジラ目掛けて飛翔する。
たったそれだけ。ただ飛んだだけ。それだけでグリューエン大火山の噴火がさらに激しくなり、巨大なマグマ柱が吹き上がり、火山雷が空に轟き、天高く黒煙の柱が立ち昇る。そして、ラドンが飛翔した後には強烈な熱風の嵐が吹き荒れ、火山の表面を薙ぎ払っていく。
先手はゴジラだった。背びれと目を光らせてラドン目掛けて熱線を放つ。が、ラドンは大きく羽ばたくとほぼ直角に急上昇して熱線を回避してしまう。
「ッ!退避!」
ハジメの言葉にティオは慌てて身を捻ってその場から離脱する。ウラノスのも同様に動くとそのまま砂嵐の中に消えていく。そのまま撤退するつもりのようだ。ハジメ達にそれを止めてる余裕はない。
一方ゴジラの熱線を回避したラドンは今度は一気に急降下し、ゴジラとの距離を一瞬で詰めると足の爪を頭部に叩きつける。
ゴジラは咆哮を上げて振り払おうと腕を振り回すがラドンはすぐに離脱して回避すると即座に距離を詰めて胸元を蹴り付け、頭部に嘴を叩きつけようとする。
が、ゴジラは頭部を掴み上げて嘴を防ぎ、更に翼を掴み上げるとラドンを火山目掛けて投げ飛ばす。
轟音と共に火山にラドンが激突し、悲鳴が上がる。ゴジラは即座に熱線で追撃するが、ラドンは慌てて飛翔して回避する。諦めずにゴジラは熱線をラドン目掛けて放ち続けるが、ラドンは驚異的ともいえる飛行能力で熱線を回避していく。外れた熱線は砂漠を焼き払い、砂嵐を吹き飛ばしていく。
『………勘弁してほしいのう……あの巨体で何という機動力じゃ……』
上空からその光景を見下ろしながらティオが竜形態でも分かる苦笑を浮かべていた。
同じ翼を持つ飛行生物だからこそティオには分かる。ラドンの機動力はデタラメにもほどがある。ティオほどの体格であればあの程度の飛行も可能だが、あれほどの巨体ではまず不可能なはずだ。だが、ラドンはその不可能を可能している。
あまりにも反則過ぎて、今まで自分が生きて培ってきた物がひどく頼りない物に感じてしまう。
はあ、と思わずため息が漏れると、背中のハジメがポンポンと叩いてくる。
「吞まれるな、とは言わないけど、あまり腐るな。確かに怪獣ってのはヤバい連中ばっかだけど、それで足を止めていたら、それこそ全部終わりだぞ」
「……ん。その通り。私たちは生きてる。だから自分の全てを使ってできる事をする」
「そうですよ。現にティオさんのおかげで私たちは生きてるんですから」
3人の言葉にティオは目を瞬かせるが、少ししてそうじゃな、と小さく頷く。
その時だ。ラドンの動きに変化が生じたのは。熱線を回避しながら砂嵐に視線を向けると、進路を変え、そのまま砂嵐の中に突っ込む。
熱線の照射をやめたゴジラは大きく鼻を鳴らすと猛然と走り出し、同じように砂嵐に突っ込む。
「っと、追うぞ!」
ハジメの言葉と共にティオが砂嵐の上空に向かって飛翔し、上から様子を探る。
だが、砂嵐は完全にラドンとゴジラの巨体を隠してしまっており、二匹が今どういう状況なのか全く判別できない。
移動しながら様子を伺っている内にハジメ達は砂嵐の外延部に辿り着き、ゴジラとラドンを探す。
そうしていると、砂嵐からゆっくりとした歩調でゴジラが現れ、唸り声をあげながら周囲を見渡す。
「兄貴……だけ?」
「怪獣は一体どこに……」
ユエが困惑の声を上げた瞬間、シアのうさ耳がピンっ!と立ち、それと同時にゴジラの背後の砂嵐を突き破ってラドンが飛び出し、無防備な背中に強襲を仕掛ける。
勢いよく背中を蹴り付けられ、ゴジラが前のめりに倒れ込みかけるがどうにか堪える。が、ラドンはそのまま背中にとりつくと猛然と嘴を叩きつけ、喰らい付く。
ゴジラは咆哮を上げながらラドンを振りほどこうと暴れるが、ラドンはがっちりとゴジラの背にとりつき、執拗に攻撃を加え続ける。
そして、ゴジラの背びれを両足で掴むと、大きく翼を羽ばたかせる。巻き上げられた砂が巨大な砂柱を形成すると同時にラドンはゴジラの巨体を掴んだまま浮かび上がり、そのまま落下してゴジラを砂漠に叩きつける。
地面を揺るがすような轟音と共に砂漠が吹き飛び、ゴジラはうめき声を上げるが、ラドンは構わずもう一度ゴジラを砂漠に叩きつける。
「……!」
それを見たハジメは宝物庫からオルカンを取り出し、構える。
「ハジメ、何を……?」
「兄貴を援護する。このまま見てるだけなんざできるか」
ラドンの攻撃は確実にゴジラに傷を負わせている。神羅が負けるとは思わないが、それでもあの状況が続くのがまずい事はハジメ達でも分かる。それに、ここで取り逃がしてしまう訳にもいかない。ラドンは飛行するだけで地上に甚大な被害をもたらすまさに生きた災厄と言っていい。そして近くにはアンカジ公国があるのだ。もしもラドンが公国方面に飛行すればどれほどの被害が出るか分からない。最悪国が亡ぶ。そうでなくともあの機動力では追いつくのは困難なのだ。放っておけばトータス全土に甚大な被害が出る。今ここで無力化しなければならない。
『その通りじゃ、ハジメ殿。やろうぞ!!』
ティオは叫ぶと同時に口内に魔力を充填させていく。そして、ティオがブレスを放つと同時にハジメはオルカンからロケット弾を乱射する。
漆黒の閃光と計12発のロケット弾は火花の尾を引きながら眼下のラドンに殺到。巨体に次々と着弾すると、大爆発を起こした。
その攻撃にラドンが驚いたような咆哮と共に体を強張らせると、ゴジラはその隙にラドンの翼を掴み上げると、投げ飛ばす。
すぐに翼を大きく広げて体制を整えたラドンだが顔を上げて、上空のハジメ達を睨みつける。
完全に敵と認識された。そう感じた瞬間、ハジメ達は尋常ではないプレッシャーに襲われ、息を詰まらせる。が、動ける。頭は働いている。どうすればいいのか考えられる。
ラドンの注意がハジメ達に向いた瞬間、ゴジラがラドン目掛けて熱線を放つ。ラドンはとっさに身を捻るが、熱線が翼を掠めてバランスを崩し、そのまま墜落するが、即座に立ち上がる。
その様子を睨みつけ、ゴジラは唸り声をあげる。思った以上に効果がない。魔力を得た事で何らかの変化があったのか熱線はそれほど効いていないようだ。
だが、それならそれでやりようはある。ゴジラは猛然と突進するが、ラドンは飛び立つでもなく翼を大きく広げる。その翼が燃え上がる様に赤熱し、それによって発生した上昇気流が盛大な砂嵐を巻き起こす。
そしてラドンが翼を羽ばたかせた瞬間、ゴジラ目掛けて尋常ではない熱波が放たれる。瞬間風速ではグリューエン大火山を包む砂嵐すら超え、熱の余波だけで周囲の砂をガラスにしてしまう灼熱の嵐がゴジラを飲み込む。
だが、その程度の熱波なら、ゴジラは十分に耐えられる。だが、巻き起こされた砂によって完全に視界が遮られ、ゴジラは鬱陶しそうに咆哮を上げる。
が、ラドンの目的はゴジラへの攻撃ではなかった。ゴジラが砂嵐に飲み込まれたことを確認すると、ラドンは再び舞い上がり、一直線にハジメ達へと向かっていく。
『捕まれ!』
ティオは言い終わらぬうちに急旋回と共に凄まじい速度でその場から離れるが、ラドンはハジメ達を見据えながら真っ直ぐに追いかけてくる。
「先に俺達を始末しようってか!?」
練鎖で体を固定しながら追いすがってくるラドンの巨体を見てハジメは顔を強張らせる。すでにゴジラの元からは結構離れている。ゴジラの速度では自分達とラドンに追いつくことは難しい。それはつまり、自分達だけでラドンを凌がなければならないと言う事だ。
ハジメは迷わなかった。装填を終えたオルカンを構えると、再びミサイルをラドン目掛けて放つ。
ミサイルはラドンに全弾命中し、盛大な爆発を起こすがラドンはダメージを受けた様子もなく咆哮を上げる。飛行速度も衰えた様子はほとんどない。
「だったら………海龍!」
ならばとユエが繰り出したのは莫大な水で構成された巨大な水龍。それが咆哮が咆哮と共にラドン目掛けて突っ込む。
蒼龍をベースに開発された水、重力の複合魔法だ。熱を纏ったラドンにならば高い効果を発揮するはず。
が、ラドンは大きく羽ばたいて直角に急上昇して海龍を回避する。即座に海龍はその後を追おうとするが、ラドンは口を開くとそこに莫大な熱を集め、容赦なく解き放つ。
ゴジラの熱線とは違い、純粋な熱のみで構成された息吹は海龍と正面から激突した瞬間、
「嘘でしょ………」
呆然とした様子でユエはその光景を見つめた。莫大な熱は海龍を構成する大量の水を一瞬で蒸発させただけでは飽き足らず、海龍の重力場すら焼き尽くしたのだ。海龍を消滅させたラドンは咆哮を上げるとハジメ達の追跡を再開する。
「魔法を………いや、魔力を焼いたのかよ………!」
信じられないと言うようにハジメは呻くも、即座にオルカンをしまってメチェライを取り出し、猛然と迫りくるラドン目掛けて乱射する。
レールガンの弾幕がラドンに正面から殺到するが、ラドンは鬱陶しそうにするだけでほとんど効果が見られない。
「全く効いてないかよ………化け物が……!」
「ど、どうするんですかハジメさん!このままじゃ追いつかれます!」
見る見る距離を縮めてくるラドンにシアが悲鳴じみた声を上げた瞬間、
「………みんな、なんとか時間を稼いで。私があいつを落とす」
ユエが大きく息を吐きながらラドンを見据えて呟く。
「ユエ!?」
「ど、どうやって!?さっきの魔法もあっさりと対処されたのに!?」
「だから別のを………重力魔法を使う。飛行しているなら重力からは逃れられないはず」
その言葉にハジメ達は目を見張る。そうだ。ラドンは確かに常識外れの怪獣だがそれでも飛行しているならば重力の影響は強く受けるはずだ。
「どれぐらいだ!?」
「少し時間がかかる。どれぐらい耐えるか分からないから全力でやる。その間、飛行の圧が来るけど……」
『それは妾の方で対処する!』
「あともう一つ………落とすのは神羅の近く」
その言葉にハジメ達はえ、と小さく声を漏らす。そしておずおずとシアが口を開く。
「あ、あの、ユエさん……それってつまり………」
「………ん。戻るって事……もっと分かりやすく言う。怪獣に正面から突っ込んで、すれ違う」
その言葉にハジメ達は今度こそ絶句する。相手は飛ぶだけで地面を跡形もなく吹き飛ばす存在だ。そんな奴とすれ違うなど正気の沙汰ではない。
「正気かよ……」
「正気。このまま飛んでても追いつかれてやられるだけ。攻撃しても私たちには決定打がない。なら、神羅の元に誘導して、攻撃の隙を作ってあげるしかない」
「で、ですが………下手したら………」
「だからこそシア、貴女の未来視でタイミングを教えて。そこでティオは奴の上をすれ違う。これならいけると思う」
『それは………確かに上ならばまだ安全かもしれんが………』
ティオですら煮え切らない態度を見せるが、ユエは意見を変えないと言うように黙っている。
そこで背後のラドンが咆哮を上げる。見れば、距離はどんどん詰まってきている。もう数分ほどで追いつかれるだろう。
「………そうだな。現状、これが最善手か………俺が攻撃して少しでも注意を逸らす」
ハジメはオルカンにメチェライを背負いながら頷き、
『……うむ妾も異論はない。やるしか無かろう』
ハジメの様子を見て、ティオの方も覚悟を決めたように頷く。
後はシアだけだが……
「……うし、分かりました!私も腹を決めました!」
軽く手の平と拳を合わせて気合を入れるようにシアは頷く。
その瞬間、彼らは行動を開始する。ティオはその場で反転すると、真っ直ぐにラドン目がけて突っ込む。
こうして正面から向き合うと尋常ではない圧を感じる。否応なしに顔が引きつってしまう。
だが、全員それでも真っ直ぐにラドンを見据える。瞬きも忘れ、視線を逸らすような真似はしない。
距離が瞬く間に縮まっていき、圧倒的な巨体が更に倍となって視界を埋め尽くし、巨大な山が迫ってくるような圧迫感が全員を押しつぶさんとするが、それに歯を食いしばって耐える。
もはや視界の全てが巨体で埋め尽くされ、ラドンが口元を歪めた瞬間、
「今です!!!」
シアが叫んだ瞬間、ティオは勢いよく上昇する。瞬間、先ほどまでティオがいた空間にラドンが大口を開けて食らいつく。
ティオはそこから一気に加速し、ラドンの背中を駆け抜けていく。ラドン自身が起こす風の奔流に弄ばれ、熱波が風魔法を削っていくが、ティオは全力で風魔法を制御して駆け抜ける。
僅か数秒、しかし、ハジメ達にとっては永遠にも等しい時間をかけ、彼らは勢いよくラドンの背後に飛び出す。
「抜けた!」
シアが叫ぶと同時にラドンも逃がした事に気付いたのか素早く制止して反転するが、
「初使用がこれって複雑だなおい!」
その眼前で突如として凄まじい爆発が起こり、ラドンは驚いたように声を上げる。
それはハジメが展開した攻撃特化型ドローン、クロスビット全機による自爆攻撃、オルカン全禅のおまけつきだ。ラドン自身にダメージは与えられないだろうが、爆炎と煙と轟音で驚かせることぐらいはできるはずだ。
一瞬動きが止まったラドンだが、煙が晴れると即座にハジメ達を捕捉して追いかけてくる。
ハジメとシアが火器で攻撃をするが、ラドンはそれをものともせずに追いすがってくる。その姿をユエは目を逸らさずに見据える。すでに魔法の構築は終わっている。後はタイミングだけだ。
まだだ。まだだ。まだ、まだ、まだ……まだ……(ゴォォォォォォォ!)今!
「落ちろ、獄落!」
ユエが叫んだ瞬間、ラドンの頭上に巨大な闇色の球体が現れ、一気に落下する。
その瞬間、今まで悠然と空を飛んでいたラドンの巨体が一気に急降下する。
悲鳴じみた声を上げながらラドンは真っ直ぐに砂漠に落下していき、地を揺るがすような轟音と共に叩きつけられ、砂漠に巨大なクレーターが出現、その中心から天を突かんばかりの巨大な砂柱が立ち昇る。
重力魔法、獄落。ユエが対怪獣用に開発した重力魔法であり、相手に対し強力な重力場を叩きつける。恐ろしくシンプルな魔法だ。ただし、その威力は地面に使えば底の見えない奈落を生み出すほど。
魔力枯渇で荒く息を吐くユエだが、確認のために下を覗き込む。
対象をラドンに限定したため砂漠に奈落はできていないが、高度3千メートル以上から叩き落されて激突したのだ。いかに怪獣と言えどもそれなりには………
そう思っていると、砂煙が吹き飛ばされ、クレーターの中心でラドンがのろのろと立ち上がる。よろめきながらも頭を振ると激昂したように咆哮を上げる。
「あれでなんで動けるの………」
ユエがうんざりしたようにため息を吐き、ハジメ達も信じられないと言う顔でラドンを見ていた。
ラドンはハジメ達を見上げ、怒りに満ちた咆哮を上げ、再び舞い上がろうと翼を羽ばたかせ、
「……後はお願い、神羅」
瞬間、青白い熱線が今度こそラドンの胴体を直撃し、その巨体を勢いよく吹き飛ばす。
驚いたような声ががラドンから上がるが、それをかき消すほどの咆哮をゴジラが上げる。
砂漠に叩きつけられたラドンは即座に立ち上がろうとするが、ゴジラは逃がすまいと猛然と走り出す。が、ラドンはどうにか立ち上がると、翼を動かす。
相手のほうが一手早い。このままではすんでのところで取り逃がしてしまう。そう判断したゴジラは走りながら大きく身をかがめ、両足に力を込めると、一気に解き放つ。砂漠を爆散させるように抉りながらゴジラの巨体が飛び出す。
それと同時にラドンの巨体が舞い上がり、寸でのところでゴジラの攻撃を回避した……瞬間、さらにゴジラは全身を伸ばし、ラドンの翼に喰らい付く。
ラドンは悲鳴じみた声を上げるがゴジラはそれごとラドンを地上に引き摺り墜とし、そのまま飛び掛かると容赦なく爪を突き立て胸元を引き裂く。
マグマのような体液が辺りに飛び散り、ラドンの絶叫が響くが、ゴジラは容赦せず連続で爪を振るい、ラドンを切り裂いていく。
そしてゴジラはとどめと言わんばかりに勢いよく尾を繰り出し、ラドンに叩きつける。巨体が冗談のような勢いで吹き飛び、砂を高々と巻き上げながら砂漠の上を転がっていく。
傷口からマグマのような体液を流し、弱々しい声を上げながらもラドンは立ち上がり、ゴジラを睨みつけるが、ゴジラは荒々しく鼻息を漏らし、咆哮を上げながらラドンを睨む。
その視線にラドンはびくりと体を震わせ、小さく声を漏らすと、まるで平伏するようにその場に屈みこみ、頭を下げる。
それはメトシェラの時と同じ、己の敗北を認める物。
それを見たゴジラは一瞬唸り声をあげた後、天を仰ぎながら勝鬨の咆哮を轟かせる。
ラドン
グリューエン大火山に潜んでいた翼竜型の怪獣。飛行するだけで地上に壊滅的な被害をもたらす。また、魔力を得た事によって熱に対する耐性が向上しているほか、熱を操る能力を獲得し、魔力を焼く特性も身に着けた。その結果、中級魔法程度ではラドンに届きもせずに焼き尽くされる天然の鎧となった。だが、ゴジラの熱線にたいしては魔壊が発動しているためか効果が薄い。