ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 ここで一つお知らせを。自分、今まで送られてきた感想にはできる限り返信してきましたが、これからは返信はしないことになると思います。それでも送られる感想には全部目を通しています。


第76話 メルジーネ大迷宮

 周囲が夜の闇の閉ざされ、空の月が輝きだしたのを見て、頃合いかと、ハジメは懐からグリューエン大火山の攻略の証であるペンダントを取り出す。サークル内に女性がランタンを掲げている姿がデザインされており、ランタンの部分だけがくりぬかれて穴抜きになっている。

 月とペンダントでどうしろと言うんだろうと首を捻りながらとりあえずペンダントを月に掲げてみる。

 しばらくすると、不意に変化が訪れる。ペンダントのランタンは少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜め始めたのだ。

 

 「わぁ、ランタンに光が溜まっていきますぅ。綺麗ですねぇ」

 「本当……不思議だね。穴が空いているのに」

 

 シアと香織が瞳を輝かせながら見つめる中、穴あきの部分が光で塞がっていく。

 

 「昨夜も試してみたんだが……」

 「ふむ、恐らくこの場所でなければならなかったのであろうな」

 

 ティオが推測を口にしている間にランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、ランタンから一直線に光を放ち、海面の一点を指し示す。

 

 「中々粋な演出。ミレディとは大違い」

 「あ~~、まあ……そうだな、うん」

 

 神羅は軽く肩をすくめるとそのまま海に飛び込む。ハジメ達も潜水艇を導きにしたがって航行させる。

 夜の海は漆黒に塗りつぶされており、潜水艦のライトとペンダントの光がなければあっという間に迷う事だろう。

 ペンダントが指示していたのは昼間神羅が空洞を見つけた岩壁地帯だった。潜水艇が近寄り、ペンダントの光が海底の岩石の一部に当たると、ゴゴゴゴゴッ!と音を響かせて地震のような振動と共に岩壁が動き出す。まるで扉のように左右に開き始め、冥界の入り口のような暗い道が続いていた。

 

 「なるほどな。兄貴がいたから気付けたけど、そうじゃなきゃ、ペンダントがないといつまでも見つからねぇ」

 「うん………それだけここの迷宮が高難易度って事だと思う」

 

 ユエの言葉にハジメ達は気を引き締めると潜水艇を操作して割れ目の中に入っていく。ペンダントのランタンはまだ半分ほど光を溜めた状態だが、光の放出を止めており、潜水艇のライトだけが海底を照らしている。

 

 「海底遺跡と聞いた時から思っておったのじゃが、この潜水艇がなければ、並みの輩では迷宮に入る事も出来なさそうじゃな」

 「ん。強力な結界が使えないとダメ」

 「他にも空気と光、後は水流操作も必須だな」

 「でも、ここに来るのにグリューエン大火山の攻略が必須でしたから……もしかしたら、空間魔法を駆使するのがセオリーなのかもしれませんね」

 

 ハジメ達が攻略法について考察しながら進んでいると、

 

 『ハジメ、止めろ。この先に強烈な海流がある。そのままだと巻き込まれるぞ』

 「ん、了解」

 

 神羅からの念話にハジメは潜水艇を一時停止させてフロント水晶から外を除く。

 ライトで照らされたくらい海中の中に、確かに目視できるほど強烈な流れの海流がある。

 

 「ハジメ君、大丈夫なの?」

 「ああ、問題ない。こういう時の為に潜水艇には船体を安定させる仕掛けを組み込んであるからな。でも、みんなちゃんとシートベルトはつけておけよ」

 

 ユエ達が席についてシートベルトを着用したのを確認したハジメが念話で大丈夫だと伝えると、神羅は静かに泳ぎだし、ハジメ達もその後に続いて進んでいき、海流に飛び込む。

 強烈な横殴りの衝撃に襲われるが、潜水艇は最初こそ大きく揺れるが即座に安定を取り戻す。

 船体を制御しながら海流に流されるままにハジメ達は進んでいく。その中を生身で進んでいくあたり流石は神羅だ。

 進んでいく途中、トビウオのような形の魔物が襲い掛かってきたが、潜水艇の魚雷で一部は吹き飛び、一部は神羅のおやつとなった。

 そうやって進んでいくと、ハジメ達は岩壁が壊されている場所に出くわした。よく見れば、先ほど吹き飛ばしたトビウオの死骸も引っかかっている。

 

 「……ここ、さっき通った場所か?」

 「そうみたい。グルグル回ってる?」

 『神羅さん。何か見つけませんでしたか?』

 『………さあ、どうであろうな?』

 

 外で小さく肩をすくめながら答える神羅を見て、ハジメ達は、神羅が何か気付いたと確信した。だが、あの様子だと教えてはくれなさそうだ。自分で見つけろ、と言う事なのだろう。

 ハジメ達は周囲を注意深く捜索しながら再び洞窟内を航行する。その結果、

 

 「あ、ハジメ君。あそこにもあったよ!」

 「これで五か所目か……」

 

 洞窟の数か所に50センチぐらいの中央に三日月のような文様が刻まれた五芒星と言うメルジーネの紋章が刻まれている場所を発見した。それが海底洞窟の五か所に刻まれている。

 

 「ま、五芒星の紋章に五か所の目印、そして光を残したペンダントとくれば……」

 

 ハジメは潜水艇を紋章に近づけると、ペンダントを取り出し、フロント水晶越しにそれをかざしてみる。すると予想通りペンダントが反応、ランタンから光が伸びて紋章に当たると紋章が一気に輝きだす。

 

 「これ、魔法でこの場に来る人は大変だね。すぐに気がつけないと魔力が持たないよ」

 

 香織の言葉を聞きながらハジメ達は残りの紋章にも光を当てていく。そして最後の紋章に光を注ぐと、ゴゴゴゴゴゴッ!と轟音を響かせて洞窟の壁の一角が真っ二つに割れる。その中に入ると真下へ通じる水路があり、ハジメ達が進もうとすると、先行するように神羅が泳ぎ出す。その姿を目で追いかけるハジメたちの前で、その姿が水面に沈むかのような波紋とともに消える。

 

 「あれは………」

 

 よく見れば神羅が消えた付近は水中ではなく、水面のように揺れている。

 

 「どうやら、あの先が本番みたいだ。みんなしっかり掴まってろよ」

 

 ハジメは潜水艇を進ませ、目の前の水面に突っ込む。

 すると船体は浮遊感に包まれ一気に落下し、衝撃と共に固い地面に叩きつけられる。激しい衝撃に最も脆弱な体の香織が上き声をあげる。

 

 「っ……大丈夫か?白崎」

 「う、うん。大丈夫……ここは?」

 

 香織がフロント水晶から外を見ると、そこは半球状の空間が広がっていた。目の前には周囲を見渡している神羅もいた。

 船外に出て改めて周囲を見渡してみれば、頭上に穴が空いているのだが、どう言う原理なのか水面が揺蕩っている。ハジメ達はそこから落ちたようだ。

 

 「どうやらここからが本番みたいだな。海底遺跡って言うよりただの洞窟だが」

 「……全部水中じゃなくてよかった」

 

 ハジメが潜水艇を宝物庫に戻してから洞窟の奥に見える通路に進もうとして、

 

 「ユエ」

 「ん」

 「私も」

 

 そう呼びかけると同時にユエと香織は動く。頭上からレーザーのような水流が一斉に降り注ぐが、ユエと香織は障壁を展開してそれを防ぐ。が、ユエの障壁は水流を防いでいるが、香織のは防いで入るが障壁に罅が入っていた。

 

 「む、罅が入っちゃった……」

 「まだまだ魔力の練りが甘いね。要鍛錬」

 

 ユエの言葉に香織が小さく頷いている間に神羅とティオが火炎を繰り出して天井を焼き払い、攻撃してきた輩を叩き落す。それはフジツボのような魔物だった。

 フジツボの排除を終えたハジメ達は改めて通路へと歩みを進める。その先は足元ぐらいまで海水で満たされている。すると一番身長が低いユエは腰元まで水に浸かってしまい、歩き辛そうにしている。

 ハジメは一つ頷くとユエを抱き上げてそのまま自分の肩に下して肩車にする。

 

 「は、ハジメ。これはさすがにちょっと恥ずかしい……」

 「だが、少しずつ水深も深くなってきてるし、この方がユエもいいだろ?」

 「はあ、自動再生がどうにかなったら身長も伸びるかなぁ」

 

 ユエはそうぼやきながら自分の頭に手を当てている。

 

 「伸びるであろうな。自動再生によって年を取らない。老いないという事は成長しないという事であるからな」

 

 神羅の言葉にユエはそっか、と呟きながらハジメの頭にしっかりと掴まる。その光景は中々に愛らしく、シアたちは微笑ましそうに見つめながら進んでいく。

 が、そこに何かが勢いよく襲い掛かってくる。

 それは手裏剣のように見える。高速回転しながら直線的に、あるいは曲線を描きながら高速で飛んでくる。ハジメはドンナーを抜いて発砲、全てを撃ち落とす。撃ち落とされたそれはヒトデっぽい何かだった。更に足元からウミヘビのような魔物が泳いでくるが、ユエが氷の槍で串刺しにする。

 

 「……弱すぎるよな?」

 

 ハジメの呟きに神羅以外の全員が頷いた。

 大迷宮の魔物は獣級試練用の魔物を例外としても基本的に単体で協力複数で厄介なのがセオリーと言える。だが、ここまで襲ってきた魔物はこれまで戦ってきた海の魔物と強さはほとんど変わらない。大迷宮の魔物とはとても思えなかった。

 その事を警戒しながら進んでいくと、ハジメ達は広い空間に辿り着く。

 その瞬間、半透明のゼリーのような何かが背後の通路への入り口をふさいでしまう。

 

 「私がやります!うりゃぁ!」

 

 とっさに最後尾のシアが壁を破壊しようとドリュッケンを叩きつけるが、表面が飛び散っただけで壁は壊れず、その飛沫がシアに付着する。

 

 「ひゃわ!なんですかこれ!?」

 

 シアが悲鳴と困惑の声を上げる。視線を向ければ、飛沫が付着したシアの衣服、具体的には胸元付近が溶け出していた。

 

 「シア、動くでない!」

 

 とっさにティオが絶妙な火加減でゼリーだけを焼き尽くす。衣服は解け、その豊満な胸元が幾らか露になっている。

 

 「失せろ」

 

 神羅がゼリーの壁に向かって炎を吐き出すと、それは瞬く間にゼリーの壁を焼き尽くしていく。青白い炎が消えた後にはゼリー状の物体は跡形もなく無くなっていた。

 神羅がふん、と鼻を鳴らしていると、脅威がなくなったと悟ったシアがそろりそろりとハジメに近寄り、露になった谷間を強調しながら、

 

 「あのぉ……ハジメさん。火傷しちゃったので、お薬塗ってもらえませんか?」

 「お前……状況分かってんのか?」

 

 呆れた様子で呟くハジメにシアはあはは、と小さく笑みを浮かべ、

 

 「いや~~、神羅さんのおかげでどうにかなったみたいですし、折角だから………」

 「いいや、シア。色仕掛けはもう少し先にしておけ」

 

 神羅が周囲を見渡しながらそう言うと、天井の亀裂から染み出すようにそれは現れた。全長10mほどの大きさの、全身に極小の赤いキラキラした斑点を持ったクリオネのような姿の魔物だ

 クリオネは何の予備動作もなく全身から触手を飛び出させ、頭部からシャワーのように溶解性のゼリーを放つが、神羅が口から青白い炎を吐き出す。

 それは触手、ゼリーの全てを焼き尽くしてクリオネすらも焼き尽くす。が、それだけで終わらず神羅は部屋上部を焼き払うように炎を放つ。

 ハジメ達は慌てて水の中に倒れ込むようにして潜水する。

 少ししてハジメ達が顔を上げれば空間の岸壁の至る所が真っ赤に赤熱、マグマのように溶解しており、サウナのような熱波に包まれている。

 

 「あ、兄貴!いくら何でもやり過ぎだろ!」

 

 ハジメが抗議の声を上げる中、神羅は周囲を見渡し、

 

 「ふむ、逃げたか………」

 

 そう呟いてハジメ達に視線を向ける。

 

 「悪かった。だが、どうにも嫌な感じがしてな。いつの間にか敵の腹の中に入っていたような感覚……恐らくだが、先ほどまでのは奴の分体。本体はこの空間を飲み込むように存在していたのだろう」

 「え!?それじゃあ、あのまま何もしてなかったら……」

 「恐らく、全方位から攻撃を受けていたであろうな」

 

 その言葉にハジメ達はマジかよ、と呻く。あの魔物がどれほどの実力を持っていたかは分からないがかなり厄介な事になっていただろう。

 

 「まあ、ここからは我は手は出さん。危なくなったら助けるがな」

 「つまりいつも通り、って事か。了解」

 

 ハジメ達は一つ頷くと、シアの着替えを待ってから通路の奥へと歩みを進める。




 最近、有害超獣にハマっている夜叉竜です。絵がすごく綺麗で、雄大で、それなのに恐ろしくて……
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