ありふれた職業で世界最強 魔王の兄は怪獣王   作:夜叉竜

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 …………………シン・ユニバースロボのPV、見ました。

 まさかリアルにこんなときどんな顔をすればいいのか分からないってなるとは思わなかった………


第78話 フードの人物

 どこか心地いい揺れを感じ、香織は小さく声を漏らしながら意識を取り戻す。

 

 「気がついたか」

 

 これまでにないぐらい近くで聞こえてきた神羅の声に香織はえ、と小さく声を漏らして目を開ける。

 見えたのは黒い和服に包まれたがっしりとした肉体とこちらを見つめる神羅の横顔。

 そこでようやく、香織は自分が神羅におんぶされている事に気付いてえぇ!?と声を上げる。

 

 「我だから大丈夫だが、あんまり耳元で大声は出すものではないぞ」

 

 対し神羅は小さく苦笑を浮かべながらどこか的外れな事を言う。

 その事に少し戸惑いながら香織は周囲を見渡す。すでにあの幻覚は消えており、元の岩礁地帯に戻っている。自分をおぶった神羅の周りには当然ハジメ達が立っているのだが、彼らは一様に目の前の巨船を見上げている。

 それはティオが客船と言っていた最大規模の帆船だ。全長300m以上。10階建て構造で、そこかしこに荘厳な装飾が施されており、朽ちてなお、見る物に感動を与えるほどの豪華客船。その前に神羅達は立っていた。

 

 「お前が意識を失っている間に戦闘を終えて、一通り調べてな。残るはここのみだ」

 「そっか……ごめん、迷惑かけて」

 「気にすんなって、白崎。あんな大規模な魔法を行使したんだ。気を失って当然だ」

 「本当……とんでもないことした。これは私もうかうかしてられない」

 

 ユエがむむ、と悔し気に唸り、香織は小さく苦笑を浮かべる。

 

 「あはは、まあ、成功するかどうか、私自身一か八かだったんだけど………あんな光景、続けさせたくなかったから」

 

 例え魔法による幻覚のような物だとしても、あんな狂気に満ちた地獄で永遠と戦わさせられるなんて、あまりにもむごすぎる。だからこそ、一刻も早く終わらせてあげたかった。

 

 「ま、確かに胸糞悪くなる光景だった。自然界でも他を囮に生き延びると言うのはあるがそれは基本的に結果論だ」

 

 そう言いながら神羅は忌々し気に舌を鳴らし、ハジメ達も嫌悪感を露にする。

 香織はうん、と小さく頷きながら、視線を神羅の後頭部に向ける。そこで改めてここまで神羅が自分を背負ってくれたのだと気づき、思わず顔が赤くなる。

 常日頃がっしりとしているなぁ、と思っていたが、こうして触れてみると、本当にすごい。まるで鋼だ。しかし確かに肉の柔らかさと温もりを持っていて、不思議な安心感がある。

 ハジメ君は何度も背負われてたのかなぁ、と考えると、少し微笑ましく感じる。だが、それと同時に、神羅の言う大事な人もこうして背負われたりしたのだろうかと考える。

 神羅達の話では、その人、モスラは神羅がゴジラだった時からの付き合いらしいので人間の背負うとは少し違うのだろうが、それでも……

 思わず神羅の首に腕を回し、力を込めて抱き着くが、神羅は特に気にするそぶりもない。

 

 「まだ疲れているのなら、もう少し休んでから行くか?」

 「……ううん。もう大丈夫」

 

 そう言って香織は腕をほどいて神羅の背から降りると、宝物庫から魔晶石を取り出して魔力を回復させる。

 そうして準備を整えると、神羅達は一斉各々跳び上がり(香織はシアがお姫様抱っこして)、豪華客船の最上部にあるテラスへと降り立った。すると、案の定、周囲の空間が歪み始める。

 

 「またか……全員、気を抜くなよ。何があるか分からないし、どうせ碌な光景じゃない」

 

 全員が表情を硬くしながら頷いていると、周囲の景色は完全に変わり、今度は、海上に浮かぶ豪華客船の上にいた。

 時刻は夜で、満月が夜天に輝いている。豪華客船は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしていた。

 

 「パーティー……だよね?」

 「ああ。随分と煌びやかだが……メルジーネのコンセプトは勘違いだったか?」

 

 ハジメ達が肩透かしを喰ったような気になるが、神羅は小さく唸りながら周囲を睨む。ひとまずハジメ達は一際高い場所にあるテラスから、その光景を見守る。

 すると、ハジメ達の背後の扉が開いて船員が数名現れ、少し離れたところで一服しながら談笑を始めた。

 その彼等の話に聞き耳を立ててみたところ、どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。長年続いていた戦争が、敵国の殲滅や侵略という形ではなく、和平条約を結ぶという形で終わらせることが出来たのだという。船員達も嬉しそうだ。よく見れば、甲板にいるのは人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた。

 

 「こんな時代があったんですね」

 「……私にはできなかった……まさに偉業。終戦からどれくらい経っているのか分からない……全てのわだかまりが消えたわけじゃないだろうけど……あれだけ笑い合えるなんて……」

 「きっと、あそこに居るのは、その頑張った人達なんじゃないかな? 皆が皆、直ぐに笑い合えるわけじゃないだろうし……」

 「そうじゃな……」

 

 楽しげで晴れやかな人々の表情を見ていると、ハジメ達の頬も自然と緩んだ。それを見て、神羅は小さく息を吐き、

 

 「水を差すようですまないが……そんな単純ではあるまい。恐らく………来るぞ」

 

 その言葉にハジメ達が小さく首を傾げると同時に、甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。それに気がついた人々が、即座におしゃべりを止めて男に注目する。彼等の目には一様に敬意のようなものが含まれていた。

 初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている。その人物を見た瞬間、神羅の顔が歪む。

 全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった。

 

 「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

 

 そう言って始まった演説を誰もが身じろぎ一つせず聞き入る。演説は進み、和平への足がかりとなった事件や、すれ違い、疑心暗鬼、それを覆すためにした無茶の数々、そして、道半ばで散っていった友……演説が進むに連れて、皆が遠い目をしたり、懐かしんだり、目頭を抑えて涙するのを堪えたりしている。

 演説も遂に終盤のようだ。どこか熱に浮かされたように盛り上がる国王。場の雰囲気も盛り上がる。しかし、ハジメは、そんな国王の表情を何処かで見たことがあるような気がし、更に先ほどの神羅の言葉を思い出し、嫌な予感に襲われた。

 

 「こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………実に、愚かだったと………」

 

 国王の言葉に、一瞬、その場にいた人々が頭上に?を浮かべる。聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。その間も、国王の熱に浮かされた演説は続く。

 

 「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」

 「い、一体、何を言っているのだ! アレイストよ! 一体、どうしたと言うッがはっ!?」

 

 アレイストの豹変に、一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出て問い詰めようとするが、その瞬間、胸から剣を生やした。

 刺された魔人族の男は、肩越しに振り返り、そこにいた人間族を見て驚愕に表情を歪めた。本当に、信じられないと言った表情で魔人族の男は崩れ落ちた。

 

 「さて、諸君、最初に言った通り、私は、諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り、我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる〝エヒト様〟に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も、今日この日に終わる! 全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ! それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ! さぁ、神の忠実な下僕達よ! 獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ! ああ、エヒト様! 見ておられますかぁ!!!」

 

 場が騒然とする中、膝を付き天を仰いで哄笑を上げるアレイスト王。彼が合図すると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れた。

 次の瞬間、甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの……一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった

 何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだが、ほとんどの者達が息絶え、甲板は一瞬で血の海に様変わりした。ほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだ。海に飛び込んだ者もいるようだが、そこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

 アレイスト王は、部下を伴って船内へと戻っていった。幾人かは咄嗟に船内へ逃げ込んだようなので、あるいは、狩りでも行う気なのかもしれない。

 彼に追従する男とフードの人物も船内に消える。

 と、その時、ふと、フードの人物が甲板を振り返った。その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪と、それと対を成すような金髪がハジメには見えた気がした。

 その直後、突然青白い魔力がフードの人物を狙い撃つように放たれ、一瞬で飲み込む。それに巻き込まれるように周囲の景色の幻覚が一気にひび割れると、そのまま崩壊し、元の船の墓場の光景が広がる。

 

 「な、なんだなんだ!?」

 

 突然の事態にハジメ達は先ほどまでの凄惨な光景も忘れて目を見開き、魔力を放った人物である神羅に視線を向けると、神羅は荒々しく顔を歪めながら唸り声を漏らし、忌々し気に近くのマストに爪を立てる。

 

 「あ、兄貴?どうしたんだ……?あのフードの奴が何か……」

 「………ただ目の前の光景が気に食わなかっただけだ」

 

 吐き捨てるようにそう言うと、神羅はそのままアレイスト王たちが入っていった扉から船内へと入っていく。

 だが、ハジメ達はすぐに追いかけることはできず、その場で全員が顔を見合わせる。

 

 「なんだか神羅君……すごく苛立っているように見えたけど……どうしたんだろう」

 「分かんねぇ……あのフードの人物が関係してるのは間違いないんだろうけど……映像だからか、いまいち理由が分かんねぇ……」

 「あ、もしかしてですけど、あれが本物の神の使徒だと気づいたんじゃないですか?ほら、ミレディさんが言ってた特徴に銀髪ってありましたし」

 「じゃが、あの者は銀髪の他に金髪も交じっておったぞ?まあ、個体差かもしれんがな」

 

 ハジメ達がう~~ん、と首を傾げている中、ユエは深く考えるように顎に手を当て、金、神羅……いや、ゴジラの敵意……と呟いていたが、不意にもしかして……と小さく呟く。

 

 「ユエ?何か気付いたのか?」

 「あ、うん………えっと、あくまでも確証がない、私の想像なんだけど………」

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