いやホント。
大変です。
圧倒的体格差が、自身の有利が、何故か不安でならないコキュートス。
ただのスケルトンならば、その不安は杞憂であると確信が持てる。
しかし、目の前にて両手をつき、構えているのは他でもない、あのアインズ・ウール・ゴウンなのだ。
守護者最強のシャルティアを相手に、不利を承知で戦いを挑み、あのデミウルゴスをして驚嘆の声を上げさせる奇策をもって勝利、いや圧勝を勝ち取った圧倒的強者だ。
しかし、不安の大きさならばアインズとて負けてはいない‼
数日の猶予があったので、眠れぬ体を武器に様々な文献を読み漁り対策を立ててみたが、相手が相手だ。
相撲とは本来、人 対 人 の勝負だ。断じて、骨 対 四本腕の蟲の化物 との勝負ではないのだ。
そもそも、人型のアインズはともかく、四本の腕に加え、尻尾まであるコキュートスに対して有効な手段は限られるのだ。
どう考えても間合いに入れない。
ならば勝負を捨てるか、という訳にはいかないのだ。
遊びといえども、勝負は勝負だ。
配下の者においそれと、支配者であるアインズが惨敗を喫する訳にはいかないのだ。
そう!アインズにとってこの試合は、負けるにしても負け方があるのだ。
惨敗ではなく、なんとか普通の敗北になるようにしなくてはいけないのだ!
そしてアインズは賭けに出る。
勝機は一瞬、相手は蟲の王、コキュートス。
相手にとって有り余るっ!!
蟲と骨!
豪腕と小細工!
不安と不安が今ぶつかるっ!!
「八卦良いっ!!」
アルベドの信じられない程の男性ボイスにより、
コキュートスことコキュノ心
と
アインズことアインズ様ノ山
の配下の意地と支配者の維持をかけた勝負の幕が切って落とされる‼
立ち合いを制したのは当然コキュートス。
四本の腕を巧みに活かし、強烈な突っ張りを放つ。
文字通りの手数においても、腕力や身体能力においても、アインズの上を行くコキュートス。
ブリザードのような猛攻で、アインズを一気に土俵際まで追い詰める。
この突っ張りに名前をつけるとしたら、
“氷獄ノ間・阿修羅”
ととでもつけようか。
しかし、コキュートスの前進も土俵際で止まる。
アインズはこうなる事を予想していたのだ。
なので、最初から受ける事に専念していた。
初手から博打には出ずに、あえて打たれ続けていた。
あえて、土俵際に追い込まれることにより、俵に足を固定し、腰を落としひたすら待つ、その時を。
嵐が過ぎ去るその時を。
コキュートスは自覚する。
自らが攻めあぐねていると。
アインズから感じる気迫に気圧されていると。
コキュートスは確信する、このまま時間をかければ相手の思うつぼだと。
賭けに出よう。
連打では、この御方は倒せない‼
ならば、自らの全てを込めた一撃を持って倒すしかない!
コキュートスは右側ニ本の腕を振りかぶり、一気に振り下ろす。
まるで吹雪によって積もった雪が雪崩になって押し寄せる様に。
名付けるなら
“氷獄・建御雷”かな?
コキュートスの満身の力を込めた一撃にアインズは心底ほくそ笑む。間に合ったと。
いくらパーフェクトウォーリアーを使っているとはいえ、これ以上粘り続けるのは正直キツかったのだ。
コキュートスの腕が振りかぶられた瞬間、一瞬だが連打が止む。その一瞬を逃さず前進し、振り下ろされた腕をつかみ、背負うように投げる。
一本背負いである。
ちなみにアインズは既に技名を考えていた。
その名も……“モモンガ投げ”である。
「勝負ありっ!!勝者、アインズ様ノ山!!」
「流石アインズ様!!!」
「か、かっこ良かったです!」
「誠にスゴすぎんす!」
守護者達からの称賛の声を流しつつ、アインズは仰向けに倒れているコキュートスに右手を出し
「良い勝負だった。流石は武人建御雷さんが創造しただけはある。」
「アリガトウゴザイマス。
デスガ、結果ハ敗北。情ケナイ事デス。」
「そんな事なない。
惜しかったぞ。危うく私が敗れる所だったからな。」
軽く会話を交わしつつ、コキュートスを起こして、勝ち名乗りを受け土俵を後にする。
「さあでは、一回戦第2試合、
ひがぁ~しぃ~、 セバの海
にぃ~しぃ~、 デ島 」
首や肩をゴキゴキ鳴らすセバスこと、セバの海
対
眼鏡を外し、息を整えるデミウルゴスことデ島
因縁深き二人の大一番が今始まる‼
自分のネーミングセンスの無さに怒りがこみ上げる今日この頃。
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