帝国の終焉   作:獲ぬ鷹

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共同作戦

「艦長、11ヵ国会議に出席中の外交官から交信です」

 

小野寺は頷き、通話用のヘッドセットを装着した。

 

「小野寺です。ああ、近藤さん。何かありましたか?

 緊急事態?はい、はい・・・・は?宣戦布告?」

 

CICに緊張が走り、全員が小野寺を注視する。

 

「一体どういうことです?はい・・・いや、でもそれは・・・

 はい・・・・何ですって?・・・ええ、無論動向は逐一監視していましたが、

 まさかそんなことになっていたとは、我々には想像もつきません。

 はい?うーん・・・それは難しいかと。装備も練度も全く違いますし。

 え?避難?いや、その必要はないでしょう。そのまま留まってください。

 連中には指一本触れさせはしません。はい、何か動きがあったらお伝えください。

 はい、では失礼します」

 

小野寺はヘッドセットを外し、大きなため息をついた。

説明を求める視線を向ける部下達に重い口を開く。

 

「グラ・バルカス帝国と一戦交えることになった」

 

「・・・」意外にも彼らの表情に驚きの色は薄かった。

艦隊の不穏な動きを追っていた彼らには、相応の覚悟があった。

 

「連中は会議の参加国に服従を要求したらしい。

 服従しなければ攻撃する、と・・・まあ宣戦布告と取られても仕方ないだろうな」

 

「では、空母機動部隊の目標はやはり・・・」副長が質す。

 

「うむ、このカルトアルパスだ。

 直ちに本国の司令部に状況を報告し、交戦許可を取ってくれ」

 

「艦長、これは他の列強との共同作戦ということになるのでしょうか?」

 

「形式上はそうなるらしい」

 

航海長が口を挟む。

 

「ミリシアルやムーはまだしも、大航海時代の帆船が主力の国との共同作戦は、

 実際問題不可能ではないでしょうか。

 艦隊を守るべき航空戦力もワイバーンしかないようだし、敵の的になるだけでしょう。

 装甲などないに等しい木造船では、下手すりゃ機銃掃射で全滅しかねませんよ」

 

副長もうんざりした口調で、

 

「ミリシアルにしたって、今さっきマグドラ諸島沖で敵と交戦し全滅させられています。

 世界最強を自称するくらいだからもう少しやれてもいいはずですが・・・

 ムーの実力はよくわかりませんが、最新鋭戦艦のラ・カサミは明治時代の三笠級、

 空母艦載機が複葉機では、推して知るべしかと。

 まず戦力としてはほとんど期待できないと考えるべきでしょう」

 

「それは俺も近藤さんに伝えたよ」小野寺は苦笑した。

「列強が一体となって悪の帝国に立ち向かう、という図式が欲しいんだろう。

 まあ、あくまでも形式上の話だ。実際は我々だけで何とかするしかないな。

 それでも十分対処できるはずだ。それだけの力が我々にはある」

 

小野寺はいささか楽観的な見通しを述べたが、通信員の報告がそれを一変させた。

 

「艦長、司令部の指示は以下の通りです。

 交戦を許可する。ただし、個別的自衛権の範囲内とする。

 また、武器の使用はCIWSのみとする。

 以上です」

 

「何だって?」副長が叫んだ。

「司令部の連中は何を考えているんだ!状況を理解しているのか!

 CIWSだけで一体何をしろと言うんだ!」

 

憤懣やるかたない表情で航海長が吐き捨てる。

 

「この期に及んで個別的自衛権などと・・・まだ平和ボケを引きずっているのか」

 

「いや、そうではあるまい」

 

そう呟いた小野寺を二人は驚きの目で見た。

 

「しかし、艦長、これは・・・」

 

「敵と味方の戦いぶりを見極め、かつこちらの手の内は極力見せない、か。

 なるほど、よく考えたものだ。司令部は想像以上に狡猾だな」

 

小野寺は全てを理解した表情で続けた。

 

「俺は、敵の手が届かないアウトレンジから一方的に攻撃するつもりだった。

 それが最も安全かつ確実な方法だからだ。

 だが、それでは敵の力も、味方の力もよくわからないままに事が終わってしまう。

 どんな武器を持っているのか、兵の練度や規律はどうか、彼我の実力差は・・・

 この世界における我が国の戦略上、これらは非常に重要な情報だ。

 我々に求められているのは敵を倒すことだけではない。

 戦いをよく観察し、情報を伝聞ではなく身をもって入手することこそ、

 この戦における最重要のミッションだ」

 

「しかし、それでは味方がやられそうになっていても、

 黙って見過ごすしかないということになりませんか?」

 

「やむを得んな」小野寺は副長の疑問にあっさりと返す。

「我が国は列強と安全保障条約を結んでいるわけではなく、単なる友好国に過ぎない。

 まあ、友好すら怪しい国もあるがな。

 とにかく味方だからといって、敵から守ってやる義務はないということだ

 政治的には問題になるかもしれんが、我々には関係のない話だ」

 

「・・・わかりました」釈然としない思いを抱えながら副長は続けた。

「武器に関してはどうしますか?グレードアトラスターもいる空母機動部隊相手に、

 CIWSだけではどうにもならないと思いますが」

 

「必要な時は、司令部に武器使用条件の緩和を要求する。

 認められないときは、俺の責任で許可するから安心しろ」

 

小野寺が力強く言い切ったその時、監視員の声がCICに響いた。

 

「グラ・バルカス帝国の艦載機120機がカルトアルパスに接近中!距離は約150km!」

 

「空母機動部隊の動きは?」

 

「1隻だけが艦載機と同進路で接近中・・・これは・・・グレードアトラスターです!」

 

「何?単艦で来るだと?」

 

「艦長、敵は何をするつもりでしょうか。まさかカルトアルパスを艦砲射撃するつもりでは」

 

「その可能性はあるな。それより何より、敵はこっちを舐め切っている。

 戦艦の脅威になるような航空戦力が皆無と知っているんだろう。

 随伴艦など不要というわけだ。

 だが今度はそうはいかんぞ、我々がいるからな。

 レイフォル戦の成功体験が命取りになることを思い知らせてやるか」

 

小野寺は口元にかすかな笑みを浮かべて言った。

 

「ミリシアルの司令部に情報を伝えろ」

 

神聖ミリシアル帝国から提供された連絡用の魔信を使い、通信員が交信を始めた。

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