ぐだぐだMoiraアカデミア 作:冥府さん@がんばらない(古)
今回作者の解釈の要素が強いのでお気をつけください
手に持つのはたこ焼き棒。手荷物はにゃんにゃん棒。腰に下げているのはただの杖。
男───サヴァンは、ある友からの頼みを受けて日本という地に降り立っていた。
「やれやれ、イヴェール君は───私もあんまり暇ではないのだがね」
「それは……すいませんね、サヴァン」
男のつぶやきに混ざってきたのは、双子の人形を携えた少年。彼を見てサヴァンは軽く眉を潜めた。
「イヴェール君───動くのかね?」
「ええ。今は僕だけですけど……そのうち全員動き出すと思いますよ。なにせ噂に聞くと、黒の予言書が盗難にあったそうじゃないですか。ちょっとばかり……やばい事態かもしれません。あの予言書の影響を受けない人間が動かないといけない。……なんて。そんなことができるのは、現状だと僕とメルヒェンさんくらいなんですけど。それでもメルヒェンさんだけじゃ不安なんですよね。さらっと暁光しそうな気がしますし」
暁光する→童話が終わる。
「だからこそサヴァンを呼びました。神の描いたシナリオを破壊できるのは、そもそも生まれていない僕か、神をも殺す男か……それだけですから」
「なるほど……エレフセウス。彼が全ての鍵」
「ええ」
イヴェールは、サヴァンが差し出したたこ焼きを一つつまんだ。
「彼は───僕達のなかで唯一神を殺すことのできる可能性を秘めた男ですから」
「神話の時代の傑物……運命に牙を剥く男……冥府の王の、その器───たしかに、この世界で彼より上の人間はいないだろうね」
イヴェールはたこやきを口に含んだ。
熱かった。感覚的に、舌を火傷していた。
ご近所さんに『イドノトコニナンカオチテルー!!』ともっぱら評判のメルヒェンさん一家は、井戸の底で今日ものんびりしていた。
最近の井戸はなんと素晴らしいことか、生活空間が充実しているのだ。まぁ! なんてお得! 問題があるとすれば崩落の危険性が高く作り上げた空間が無駄になりやすいことか。
そんな井戸の底には、大量の衣装が散らばっていた。
『ドウカシラ? メル』
「似合ってるよ、エリーゼ。……あ、キミ、これいるかい? 最近知り合いが買ってきてくれたんだ」
「ありがとう、メルヒェンさん。……でね、ボクはなんとか命からがら逃げ出したんだけど、他のみんなは教団に捕まったままなんだ。早いところ歴史を巡って滅びを否定しないと……聞いてる?」
「勿論聞いているとも。ふむ、そういうことなら話は早い。向かうとしよう」
「え? いいの?」
「ああ、当然だ。それにこちらとしても黙ってはいられない。この歴史が滅びるという事実は、ね。さらに滅びを記した書がさらに作られようとしているんだろう? 私が協力しない理由がない」
「おー! 流石メルヒェンさん!」
「そんなに褒めてくれるなルキアくん。一番最初の滅びのきっかけはなんなんだい?」
「えーとね、確か……ある女の子が、相手がいないのに妊娠して、だから悪魔の子だって言われて殺されちゃったのがきっかけだね。その姉が怒って世界を滅ぼしちゃう。魔女の怨念は怖いものだよ。結局怨みを抱えたままずーっと生きて、最後には世界すら滅ぼしちゃったらしいね」
「なるほど。ならば……それは私に任せ給え。復讐なのだろう? 私の得意分野であるとも」
はっはっはっはっ、と笑いメルヒェンは立ち上がった。
「さぁ───復讐劇の始まりだ」
少女の首に手をかける。
(……ごめんね)
その男は、そのまま一気に力を込めた。
(やっぱり僕は死体に魅力を感じてしまうんだ)
生きているキミも嫌いではないが───と、思いながら、勢いよく締めた───はずだった。
気づいた時にはベッドに押し倒されていた。なにが起きたのか、それは男には全くわからなかった。
「うふ、うふふ、うふふふふ───まぁ! 朝からなんてご盛んですの? こんなに情熱的に誘ってくれるなんて、私も応えないわけにはいかないわねっ!」
「あっ」
やべっ、ミスった。
男の頭の中にはそれ以外がなかった。完全に失敗した、と思う感情以外に。
けれどまぁ、別にいいか。男は思う。
死んでいても、死んでいなくても、キミは綺麗なのだから。
その言葉は呑み込んだ───いや、飲み込まざるをえなかった。なぜなら、少女に口を塞がれていたから。
長いキス。おぼろげな意識を、完全に覚醒に導くキス。目覚めへと到るキス。
とても長い間のそれが終わった時、男の頭は若干の酸欠でくらくらしていた。意識が妙におぼつかないからベッドにまた倒れる。
「……ねぇ」
すわ力尽で犯される、と思ったが、男の予想に反し少女は男の胸に顔を埋めて弱々しく呟いただけだった。
「私、さっきので嫌な夢を見ちゃった。責任をとってあなたが忘れさせてよ」
「……………………」
そういえば。
彼女の抱える嫌な記憶。その告白を、自分は聞いたことがあったような気がする。
「……はぁ。朝なんだけどな」
「今日は休日よ。一日中愛し合っているのもいいんじゃないの?」
「キミが望むなら応えてあげよう」
「望んでなくても答えてください」
「ああ、了解」
───雪白姫と、ある王子の些細な日常。
『───かつて、記憶とは認識と同義と言い切った女がいたらしいわね』
『へぇ。それはどうにも大言壮語だね。それで、キミはどう思ったんだい?』
『別になにも。私はただ揺蕩うだけ。記憶の底にいるだけ』
『へぇ───じゃあなんだ? 僕は人の中にいるってことかな?』
『そうでしょう? 貴方も私も、人の中にある存在で、そんなわけのわからない存在として一緒にあるなんて……まるで檻だわ』
『へぇ、不満なのかい?』
『いいえ。不満なわけじゃないわ。ただ……私達も自由があればな、と思っただけ』
『自由がほしいのかい? キミが? はっはは、こいつは傑作だ。キミは自由じゃあないか。既に自由な存在が自由じゃないなんて、こいつは自由の定義が崩れるぜ』
『私はただ浮かんでいるだけにすぎないもの。別に自由じゃないわ』
『へぇ。流れていくんだ』
『貴方も私も───どちらも流れていくだけじゃない?』
『そうだね。僕達は一時のものでしかない。記憶も、自殺衝動も、どちらも一時的だ。だから僕達は今日も大変なのさ。なんせこの世界は衝動として産まれ、失われ続けるものが多すぎる。多すぎちゃってイドが歌うぜ』
『ねぇ』
『なんだい?』
『いつまでここに居座るつもりなの?』
『悪いか? かわいこちゃん。まぁわかってくれよ。僕は若干、キミに期待してないこともないんだぜ』
『なにを?』
『そりゃあ決まってるだろ』
───ある少年と、少女の会話。
テロへの対策はない。
テロ───それは平和な場所を一瞬で地獄に変えるもの。それへの対策など存在せず、常に起こったあとの対応を求められる。
それはアルカディオスにとっても同じだった。
「───陛下ァ! 逃げてください、敵襲です!」
「……なに? 数は?」
「たった
「馬鹿な……戦える人材が数多く揃っているはずだ」
「イーリアス殿は!?」
「……討たれました。ゾスマが面倒を見ていた……インターンの少年が進行の足止めに大きく貢献していますが、彼を狙われてしまうとどうしようもありません」
「オリオン君か……彼は優秀な弓兵だったな。───彼になら、私の後を任せられるか」
「陛下! そんな、……そんな言葉を……」
「カストル。これは仕方ないんだ。侵入者については検討がついている。───私が命を賭しても討てるのかわからない」
「……陛下」
カストルは、自らが遣える主を引き留めようとするのを、拳を握りしめて堪える。
「……貴方は、平凡な生ではなく英雄としての死を望むのですね」
「……………………」
レオンティウスは、なにも言わなかった。
誰もいなくなった部屋で一人、カストルは呆然とつぶやく。
「───神よ。貴方は何故、このような仕打ちを───」
この勝負。
どちらが勝っても悲劇に転ぶ以外ないのだ。
「今晩和───エレフセウス。キミは世界が憎くないかい? ───ああ。知っているとも。ならば、どうだ。世界に復讐をする気はないか?」
エレフセウスは、ある境界の狭間でとある人形と出会っていた。
「こんにちわ」
「……………………」
「そんなに警戒しないでもいい───貴方は私達の王、その器。私達を総ているのだから……私達は、貴方に危害を与えられないでしょう?」
「って、言われてもな……」
エレフはその少女を見た。
幼い。
ピンクの。
髪の。
少女。
あの野郎ロリコンだったか、とエレフは心の中で呟いた。
「良いことを教えてあげる」
彼女はつぶやく。
「───貴方、急いで兄に会いに言ったほうがいいわよ」
結構急ぎましたけど、ようやくお話を始めれそうです。雪白姫と黒雪姫をよく間違えます。
どうでもいいけれどライブのサヴァン口悪いですよね。