ぐだぐだMoiraアカデミア   作:冥府さん@がんばらない(古)

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 如何なる賢者であれ、流れる砂は止められない。

 

 

 

 

 ───だが、それを【否定】することはできる。

 

 

 

 

 状態が悪すぎる。

 

 レオンティウスが今生きているのは本当にに、薄氷のうえでタップダンスをしているというくらいにぎりぎりの境にあるというほどの奇跡であった。

 

 病室には、大怪我を負っているアルカディオスの面々。オリオンも戦闘中は無視していただけで、実際はかなりの大怪我を負っていたため同じく入院中。

 

 死者多数───いや、無数。無差別に街の人を殺していたようで、あまりにも多くの死者が出てしまった。その中に、彼らアルカディオスの中でも特に強かったイーリアスと言う男が入っていることからどれだけの激戦だったのか。

 

 敵はどれだけ大きいのか。

 

 レオンティウスは面会謝絶である。だからこの部屋には存在しない。

 

 面会しにきたエレフは、オリオンの傍の椅子に座ってただ周囲を見ていた。家から急いでやってきたミーシャも同様に、意識のない友人を眺めている。

 

 ───これが、唐突な襲撃事件の、後日談。

 

「……………………」

 

 がらり、と病室の扉が開いた。

 

 そこに立っていたのはオールマイト。最悪の事態を防いでくれた、NO1ヒーローの姿。

 

「…………すまない」

 

 オールマイトは、エレフの姿を見て、真っ先に謝った。

 

「……なんで謝るんですか」

 

「私がもう少し早く駆けつけられれば、助けられたはずだった」

 

「……そうですね」

 

 けれど、それがどうした。

 

 誰が悪かったわけでもない。少なくとも、だれもが皆奮闘した。必死に誰かが掴んだ未来がここにあった。

 

 生き残った命、生き残らなかった命。それは当然存在するけれど、恨んだところで何にもならない。

 

「もういいんです」

 

「……………………」

 

「運命はこの末路を望んでいたのでしょう。だったら……俺達は、それに抗えない」

 

 ただ、運命に従うだけ。

 

「……運命とは、自分で切り拓くものだとは言えないんだろうね」

 

「ええ。───ミーシャの個性は、運命()の存在を証明するものですから。その存在に今更疑問はありません」

 

「…………エレフ」

 

「だったら───俺は」

 

「エレフ!」

 

 ミーシャが、エレフの服の裾を掴んだ。

 

「駄目……エレフまで消えちゃう……!」

 

「……………………」

 

「お願い、そんなこと言わないで。()()()()()()()()()()()……!」

 

「……………………」

 

 エレフは、小さく笑った。

 

 それは、とても危うい笑みだった。

 

 

 

 

 まだなんとかやりなおせるんじゃないか、と思っていた。

 

 まだ立ち直って、自分はまだしっかりとした生き方ができるのではないか、と思った。妹と二人、身を寄せ合って生きることもできるんじゃないかと思った。

 

「……兄さんが戻ってきたときに、ただいまって言えるように……」

 

「……そうね」

 

 まともに笑えなかった。面持は暗く、けれど前を向いて歩き出せるように、その第一歩として二人でぎこちなくも笑いあった。

 

 そうして、泣き疲れたその日は眠った。食事もあんまり喉を通らなかった。

 

 朝起きて、目が腫れていることに気づいた。それをなんとかしようと、二人で目に蒸しタオルを当てた。そういえば昔、これは兄に教わったのだった。

 

 両親を失ったときに、兄は無理やりに笑顔を作って、なんとか明るくしてくれた。だからこそ、自分たちも同じように、明るくあろうとした。

 

 外が騒がしいのはあんまり気にならなかった。そんなことを気にすることができるほど、余裕がなかったというほうが正しいか。

 

 だから朝、ゆっくりと朝食をとった。あんまり多くは食べれなかった。けれど、せめて少しは食べておこうと、シリアルを持ってきて器に移し、食べた。

 

 そして学校に行く準備をした。

 

 昔、兄が長くいなくなるときに、兄が傍にいるように、ということでもらった雷槍のフィギュア。それを鞄につけて背負う。

 

 制服に着替え、もう準備は完了。

 

 ミーシャを学校に送り届けてから自分は雄英に向かおう、と思っていたから、エレフはミーシャといっしょに玄関の扉を開けた。

 

 ───そして、扉の前を埋め尽くす多くの人の姿に、足が止まった。

 

「───え」

 

「ミーシャ、家に入って!」

 

 ばたり、と扉が閉まる。これは妹を休ませる連絡をしたほうがいいか、と判断する。だから家の扉の前で立ち止まった。

 

「レオ「今回の「現在の「何故「心境を「どうして「今は「先ほどの「エレフ「こっちを「どうか「顔を「お気「貴方は「女の子を「泣い「こちらの「扉を「   ……。、」

 

 言葉の嵐。どう対応すればいいのかわからず、やはり足を動かすことはできない。いったいどうすればいいのだろう? 自分はどうすることが正解なのだろう。

 

 それがわからないからどうしようもない。

 

「泣いて!」

 

 そんな声が聞こえてきて、手が伸びてきて、マイクが無粋に言葉を奪おうとして、こっそりと扉を開こうと手が伸びてきて、

 

 ただ、扉の前で立ち尽くした。

 

 

 

 

 家の鍵を締め、学校に連絡を入れる。

 

『まぁ、仕方ねぇな。あんなことがあったあとだ。休んでも誰も文句言わねぇさ』

 

「すいません」

 

『マスコミは雄英のほうで対応させる。明日はちょっと不便だが対応できるだろう』

 

「…………いえ」

 

『ん?』

 

「なんでもありません」

 

 そう言って、電話を切った。

 

 ミーシャのほうの学校にはもう連絡を入れてあるから、大丈夫だろう。エレフはゆっくりとソファーに座り込む。

 

 もう、疲れた。

 

 眠っていても問題ないだろう。

 

 

 

 

 次の日はなんとか学校に登校できた。

 

 

 

 

 その次の日の登校中、石を投げられた。

 

『俺の父さんを返せ!』

 

『私の母さんを───』

 

 色とりどりの罵声。

 

 頭を殴られ、頭を切った。血を流しながら、それでも学校に通う。

 

 兄のテレビの評判は酷いものだ。オールマイトが敵を圧倒したことから、相対的に無能の烙印を捺されてしまった。

 

 そんなわけがない。そんなわけがないのだ。

 

 兄は弱くはない。けれど、一般市民から見ればそんなの関係はない。そもそも生の実力を見たことがない者のほうが多いだろう。

 

 それでも、必死に兄は命を賭して戦ってきたのだ。一度程度守れなかったことで、そんなになにかを言われるようなことか?

 

 破落戸が正義を騙り自分を殴る。大義名分を得た人間は止まらない。

 

 弱いもの集まればより弱いものを叩く。

 

 どこまで行っても、構図は変わらないのだ。

 

 

 

 

 次の日。

 

 テレビで兄についての報道が連日流れる。どれも不安感を煽るようなもの。中にはレオンティウスの否定すらある。

 

 なにも知らないやつらが、なにかを語っている。

 

 知らない奴らが、知ったふうな口ぶりで、もっともらしくそれっぽいことを言ってやがる。

 

 やがて苛立ちは殺意となり、キャパシティの限界に達した。

 

 

 

 

 

 

 さよなら、ミーシャ。

 

 少年は小さくつぶやいた。

 

 

 

 目覚めた時、少女は一人だった。

 

 そこにない少年の存在を受け止め、ただ一人で泣き崩れた。




 ようやくプロローグ終わりです……原作に入れる……

 まぁちょっとお話として弱い気がしますので次話でテコ入れとかしますけど。

 とりあえず一言、このお話の主人公は便宜上エレフであり真の主人公はまた別にいます。彼の活躍が早く書きたいものです。

 あ、緑谷くんではないです。
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