ぐだぐだMoiraアカデミア 作:冥府さん@がんばらない(古)
これは夢だ。そうわかっている。沈んでいく感覚から、そう気づいた。
けれど夢とわかっていて落ちることはやめられない。自分の意志じゃどうにもならないのだ。そのまま落ちていく。
落ちていって───どうする?
自分が落ちることになんの意味があるのか。あるいはだれかの思惑があるのか。それは全くわからない。
だが、自分がだれかのために、なにかのために落ちていることはわかる。
ゆっくりと落ちていく。頭を汚染するような感覚がある。浮こうと思って手を何度かばたつかせたが、それは沈む速度を早めるだけだった。
移り変わっていく景色。
それは、自分の入学式まで遡る。
そこには初日、クラスメートと挨拶している自分がいた。挨拶をして、これからの未来を若干思い描いて、楽しそうに笑っている自分がいた。
エレフ。
エレフセウス。
そんな、日本基準で言ったら妙ちきりんな名前を受け入れてくれた、クラスメートがいたのだ。
だからこそ、このクラスで仲良くなっていけそうだと思っていた。
羽住夏樹は明るく、エレフに臆することなく話しかけてくれる人間だった。その男の名はよく覚えている。人の名前を覚えるのが苦手だったエレフだってその名前をしっかりと覚えているのだから、それだけコミュニケーション能力に優れていたのだろう。
相模凶鳥はどこか苛烈だった。わずかな交流でもそれは理解できた。けれど彼は、身内に対して優しかった。そして同じクラスであるのだから、と彼は自らを仲間と言ってくれた。それが嬉しかった。
ほかにも、ほかにも、ほかにも、ほかにも───
考える度に落ちていく。かろうじて最深部に落ちていないのは、まだまだ心の支えがあるからだろうか? エレフセウスという男は、そんなに精神が強いわけじゃない。悲しいほどに弱くて、全てを家族にゆだねているような物だ。
だからこそ、家族が最後の防波堤になってくれていた。
『息仔ョ……マダ落チナィノダネ……ナラバ私ハ
声がした。自分を呪おうとする声がした。問題となるのは、この底まで落ちること。それがどこまで自分に影響を及ぼすのか。
まぁいい。
然るべき時がくれば底まで落ちてやろう。それでいい。それがいい。既に自らの命に意味を見出していない。だから落ちることは厭わない。
待てよ底に住まう者よ。また今度お前に全てを捧げてやる。捧げてやるから望んで待っていろ。
「エレフセウス」
「はい」
「そろそろ休憩の時間だ」
「はい」
「そんなに根を詰めすぎないほうがいい。体を壊せばそのぶん成長はストップする。収支が釣り合わない。合理的ではない」
「はい」
「なら休憩しろ。わかったな」
「はい」
言われて、エレフは拳をおさめた。そして振り返る。広大な個性の訓練場。そこを使っているのが自分だけというのだから、謎は未だ残る。
授業自体がエレフに合わせた構造になっているので、エレフの在席しているクラス───1 - Aの授業の進行は非常に早い。そのぶん空いた時間を個性訓練に費やすことで、1 - Bとの均衡を保っていた。
とはいえ、その個性訓練でめきめきと戦闘力を身に着けているのだから、あんまり公平とはいえない。
常人ではこうはいかなかっただろう。エレフセウスという一人の天才だからこそ、ここまで成長が早かったのだ。
1 - Aの担任、相澤消太は考える。
(成長が早すぎる)
彼は抹消ヒーロー・イレイザーヘッド。
個性を消す個性という強力極まりないものを持ち、その個性を最大限に活かす超一流の戦闘能力を持つ者。
そんな彼からして、エレフの評価は
(天才中の天才。
イレイザーヘッドとして見てきた中で、似たようなことをした人間が何人かいた。
一人はオールマイト。彼の強力無比な力は個性とその筋肉に支えられるものであり、個性を消されてもある程度は戦える。
一人はエレフの一つ上の先輩である通形ミリオ。彼の能力自体に戦う力はない。ただ、その能力を戦える力に仕立て上げただけ。彼は個性がなくとも戦士として戦うことができる。
一人はレオンティウス。彼は雷を操る個性である。だからこそ、その身体能力に個性はほとんど関与しない。
だからといって。
個性がない状態で尋常ならざる動きをされると───そしてそれが、入学したばかりの高校生であると。
その少年を育て上げたとき、いったいどれほどのヒーローができるのだろうか?
「……………………」
今年は随分不作だと思った。けれど違った。たった一人、一人だけ飛び抜けた奴がいる。
エレフセウス。
このさき中々これほどの生徒は現れないだろう、と相澤消太に思わせるほどの人材である。
エレフにとっての幸せとはなにか? と言われると、それは家族がいて、みんなが平和に笑っていることだと答えられるだろう。
だからこそ、エレフは友になるはずだった者達を失ってもまだなんとかやれた。
まだ平気だった。なんとかなるのだと思っていた。
だが当然それは幻想だった。
運命がそんなことを許すわけがないのだ───命を運び続ける運命が。痛みを与え続ける運命が。
かつてあるロシアの考古学者が見つけ出した書物。
それは《Black Chronicle》というタイトルの存在だった。
全ての原点ともなる、改竄
持つ者に歴史の編纂を赦すその書物を、考古学者は厳重に封印することに決めた。
現代。
ある男が、とある美術館へと侵入した。
どこまでも堂々と。悠々と。
彼の進撃はたかが警備員程度に止められるものではなく、逆に警備員達は返り討ちにあい───そして、あっさりと侵入を許してしまう。
「なるほど。僕に相応しい、良い書のようだ───」
男は、どこまでも堂々と。悠々と。
美術館に
その本の名は《
過去から未来に亘るまで歴史の詳細が描かれた本。その本の最大の問題点となるのは、近い将来に世界が滅ぶという事実───
「終わったか」
「ああ、
「言われずとも」
現れた男は、ゆっくりと男の名を呼ぶ。
「───オール・フォー・ワン」
家でマ●カしてる、暑苦しい服装をした少年───イヴェールはふと、嫌な予感を覚えた。
「オルタンス」
「なんでしょう、ムシュー……?」
「なんか……嫌な予感がする。なにかを間違ってる。
「……ムシュー?」
イヴェール・ローラン───傾かざる冬の天秤は、ゲームをするその手を止めてまで言った。
「
「……それは」
「この考えが間違っているなら、杞憂ならそれでいい。でもここで間違えたら
「……でも、ムシュー……彼になんと?」
「……ああ、できればでいい。できればでいいから……もし、エレフセウスが揺れて、何かを犠牲にすることも厭わないようであるなら」
「
メルヒェン・フォン・フリートホーフはそのころエリーゼとゆっくりイドでみるふぃーゆ食ってた。
サンホラっぽくなるまでさっさと進めていきます(?)
とりあえず次回は体育祭。競技考えるのめんどくさい……めんどくさくない?