ぐだぐだMoiraアカデミア 作:冥府さん@がんばらない(古)
雄英体育祭。
其れは、一つの見世物であり、国内最大級のエンターテイメントでもある。
その中でいくつもの
エレフは相澤からそのことを説明された際、ふーん程度に思っていた。
帰ってミーシャから応援されたからめっちゃやる気になった。
雄英体育祭当日。
エレフはあんまり気負うこともなく、自然体で───それでもやる気は十分に、A組入場の合図に合わせて入場した。
周囲のどよめきを無視し、エレフはたった一人の中立って他の選手の入場を待つ。
計十一クラス。たった一人しかいないAクラスは、その中でも特に浮いている。
『選手宣誓!』
その声に、自分の出番か、とエレフは背筋をこころなしか伸ばした。
『A組!エレフセウス!』
言葉と共に壇上に上がっていく。そして、ゆっくり辺りを見回し、その動体視力でもってミーシャの存在を探す───いない。
ならばと思い次に探したのはレオンティウス───これもいない。
テレビで見てくれてるのかな、とエレフは思った。
思ったので言った。
「《本当
素で言い切った。
頭おかしいんじゃねぇのこいつ。
周りのことなんぞ知ったものか。彼は自らの道を貫き通すのだ。
『それでは第一種目を発表いたします!』
と、その声にエレフは意識を研ぎ澄ませる。どんな競技が来ても問題はない、宣言した以上自分が一位になるのだ。
『第一種目、それは! ───
「……………………」
これは。
勝てるのではないだろうか。自分の能力は純粋に身体能力の強化だ。だとすると、相手がかなり早くなければなんとか流せるはずだ。
エレフはそう考える。実際、エレフの速度に追いつける者はほんのわずかだろう。プロヒーローで、速さを売っているものでなければ。
『鬼はこちらで用意しています! このためだけに会場に来てもらいました! それでは───どうぞ!』
司会の声に合わせ、グラウンドにどデカイ雷が落ちた。
衝撃で生徒を吹き飛ばしながら、なんなら客席までを風で煽りながら、その姿を見てグラウンドに四人が入場する。
「んなっ……」
その姿を見てエレフは絶句する。嘘だろ。そんな馬鹿な。
ゆっくりと周りを見渡しながら、生徒たちの前に彼らは立った。
『───《
正面に立つのは、エレフがよく知る男だった。
『レオンティウスを筆頭とするヒーローグループの───ご登場ぉー!!』
「や、こんにちわ」
───そう、実兄レオンティウス。
『彼らを鬼役として競技を開始します! ルールは単純! ただ逃げるだけ! 残ったのが四十二人になるまで競技は続きますよ! そして逃げぬいた四十二人が本選出場者となります!』
嫌な予感しかしねぇとエレフは呟いた。その呟きに反応するかのように、レオンティウスがエレフを見る。
そして───笑う。
それはまるで、猛獣のような笑みだった。
(超ヤバイ)
『それではそろそろ開始としましょうか! 行きますよぉ───! カウントダウン! スリー、ツー、ワン! 第一種目開始ぃ───!』
エレフは言葉と同時に駆け出した。
雷鳴が轟く。背後で唸りをあげている。
(───やっば、やっぱこっち来てる!)
雷槍のうねりに反応し、雷鳴が唸る。
肩越しに振り返ると、そこにはレオンティウスが追いかけてくる姿があった。
「嘘だろぉ!?」
かもめさん、かもめさん。ぼくをたすけてください。
そんなことを思ってみたりして。
一応、全力疾走であれば距離は縮まらない。……が、それだとすぐにスタミナが尽きてしまう。
(───ごめん!)
エレフはこのままじゃあ追いつかれる、と判断し、人の波の中へと闖入した。
既に周囲には確保者が現れている───しかし、二百人もいるのだから、そんなに簡単に確保が終わるわけがない。
(あとどれほどだ!? 今の一瞬で十六人も確保された!? 嘘だろ……!?)
「エレフセウスゥ───! こっちくんなぁ───!」
「俺も叫びてぇよ馬鹿野郎ォ───!」
「はははっ、ちゃんと友人と仲良くやれてるようじゃないか。よかったよかった。ギア上げていくよ!」
「上げなくていいよぉ!」
「ちっ……! エレフセウス! こっちこい!」
「あ!? なんだ!?」
「俺の手を掴め!」
言われた通りに、一緒にレオンティウスから逃げていた男の手を取った。
「よし! 取ったな!?
その瞬間、視界が黒に染まった。
「───!?」
手を引かれ、エレフはそちらの方向に引きずられるまま進んでいく。
そしてしばらく歩き───視界が元に戻った。
「……なんだ、今の」
「俺の個性だ」
と、男は答えた。
「俺の個性は透明になる個性だからな。相手を透かせる個性であり、不意打ちもできる個性だ。問題は光が眼を通り抜けるから、使っている間は何も見えねぇ」
「なるほど。ありがとう……えーと、お前、名前は?」
「
「ああ」
「エレフ、一つ提案だ」
そして芽隠透視は言った。
「俺と組もう」
「……わかった。が、どうするつもりだ? 協力といっても中々できることじゃあないだろ」
「だから単純な役割分担だ。俺が消す役、お前が運ぶ役───お前、俺を背負って動けるか?」
「……なるほど。それならいけるな」
『おーと! これで五十人目の確保───! 早い、早いぞアルカディオス!』
もう五十人も確保されたのか、と思う。早すぎる。どれだけ本気でやってるんだ、と思う。
けれど、なんとかいける気がする。
芽隠を背負った。ゆっくりと立ち上がり、息を吸って、吐く。
「それじゃあいくか」
「ああ。……頼んだぞ。透明になった後の道案内だが、前に進む時は頭を叩く。左右は肩を叩く。良いな?」
「了解だ。……って、こっちきやがった! いくぞ!」
「おうよ!」
尋常でない速度だ。だが、今ではブラインドまで利用できる。
問題なく、戦える。
後ろからやってくる追手を、撹乱するように左へ行くと見せかけて右へ行く。そのタイミングで透明化を利用される。
何時視力が消えてもいいように、直前の風景をしっかりと覚えておく。一秒たりとも気を抜けない。走り、息が切れそうになると透明な状態で少しだけ休む。
このゲームにおいて最大の味方を身に着けた気分だった。
『確保者百人突破───! 全二百一名のこの一学年からすると! すでに学年の半分が捕まったってことだぁ───! そして残りは半分少し! ここらへんからアルカディオスも少し本気を出して捕まえにくるぞ!』
「マジか!?」
「アホじゃねぇのか雄英! ってあーこっち来た!」
「ちっ……! 一斉にこっち来てやがる!」
「は!? 嘘だろ!? 囲まれたっ!?」
四方から迫りくる鬼───それに囲まれたのは、自分達だけでない。
その檻の中に、数えられないほど集まっている。
「……ちっ! 一網打尽にしにきやがった!」
「……………………エレフ、お前、俺を担いだまま人より高く飛べるか?」
「それは余裕だ!」
「じゃあ……
「そんなんできねぇに決まってんだろ!?」
「いや、頼む! タイミングはこっちで指示する! やってくれ!着地したらそのまま正面に直進だ!」
「……ッ……わかった! やってやる!」
もうすでに迫りくる男達は、すり抜けることができないほどの距離にいる。
エレフはゆっくりと息を吐いた。そして、よく前方のカタチを頭に思い浮かべる。
これで周囲の状況も合わせ……なんとかなるだろう。
「今だ! 走れ!」
合図と同時に足を進める。飛ぶタイミングは向こうが指定してくれている。
既に視力は掻き消えている。だからこそ、感覚は研ぎ澄まされる。どのタイミングで飛ぶべきか───それを、合図された。頭を強く叩かれたからだ。
故に強く地を蹴り飛び上がる。
足を下へ。着地の衝撃に備えろ。
着地。勢いを前方へと流すように殺す。
そして前方に向けて走る。
『今の挟撃で───ッ!? マジか!? 三十人も減ったぞ!? ということは残り───二十八人だぁ───! 誰が残るかわからない───ッ!?』
そこで透明化が解除された。姿が外に晒され、光を得た視界が若干痛む。
『エレフセウス、芽隠透視の二人はなんと! あの檻から抜け出していたァ───!? マジか!? なんてタッグだ!? 強すぎるぞ! これは予選通過最有力候補か!?』
雷槍が唸った。雷が轟く。
レオンティウスが、エレフセウスを追っている。
「くっそ!? なんでこっち来るんだ!」
「……ぐ……残りはわずか……しかももう個性も開放されたみたいだな……やばいぞ。雷神だけじゃない。戦火も剛力も風響も開放された。雷でこっちの退路を絶たれるとやばい」
「雷に突っ込んでも耐えれるか!?」
「無理に決まってんだろ!? アホかお前!?」
「……いや、それじゃあ先に謝っとくが……突っ込むぞ」
「は!? ちょっとまておま───」
言葉を切るように、前方に派手な雷が落ちた。まるで極光。触れると、ただじゃあ済まないだろう。
しかしリスクを背負わず勝てるものか───!
だから、
突っ込んだ。
極光が体を焼く痛みに耐え、痺れる舌で、今のパートナーに言葉を下す。
「め……かく、れ……個性を……っ!」
「……っ!」
透明化が発動する。視力が失われた。しかし問題はない。すでに、なにも見ずとも体は動く。
雷で鈍る体を無理矢理動かして、ゆっくりと前方に進んでいく。
『レグルスの戦火で足止めした生徒を! カストルの風響で一網打尽! そこをゾスマの剛力で
残り、六人。
「陛下。貴方の弟君は随分と強かなようですな」
「ああ。自慢な弟さ。全く……私の雷を受け止めるだと? 無茶をする……」
『ゾスマが恐ろしい! 地面を揺らす! 地面を壊す! 地面を引っ剥がす! そしてそこをカストルが捕らえる! ───残り一人! 残り一人だ───ッ!』
その言葉を聞いて、レオンティウスはその身が持つ力を解き放つ。
「しかし……もう残り一人か。時間が過ぎるのは早いものだな」
「陛下。今、全力を発揮するのですな?」
「ああ。もともと、そういう約束だったからね」
たった一人になったとき、全力を見せつけろ、と。
だからこそ───《雷神域の英雄》は、その力を発揮する。
何かがおかしい、と思ったのは、透明化している自分がなにか、
なにかがおかしい───と、思った。だからこそ、その詳細を確かめようと、言葉を紡ごうとして、そのまま、自らの体を奔る衝動に従い、後ろに飛び退いた。
何かが前方を通り過ぎていく音がした。
音からして、尋常じゃなく早い。不味い。このままじゃあ捕まる。
「芽隠! 個性を解け! このままじゃ捕まるぞ!」
「……ああ。ってか、もう喋れるのか……」
その言葉は無視し、復活した視界で世界を見る。
そこには───雷を鎧う獣があった。
自らの雷を纏い、自らの力としているレオンティウスの姿が、遠くにあった。
「……うっそだろ」
「……マジ、だ」
その姿がゆらりとこちらを向いた。体が勝手に横に飛んだ。だが、それで正解だった。
数百メートルという距離を瞬間で詰められた。
気付いたら、尋常でない加速で追い詰められていた。
目で追えない、冗談のように早い───そんな速度。
その、第二波がきた。
危うく捕まる───というところで、なんとか体をそらせた。
しかし次はどうなるかわからない。偶然はいつまで続くのかわからない───だから。
「……人が多い場所に誘導できれば」
「いや、それよりもいい方法があるぜ」
「……あ?」
「後ろを向け。体ごとな」
「……………………なんだ?」
「ああ、そのままだ。そのままいろ。そのままな」
───第三波。
「───お前、まさか───」
「ま、本選通過おめでとうってことで」
エレフの背で暴れるようにして、エレフの体勢を崩す。
そして、芽隠は自分の体をレオンティウスの手の盾にした。
『───終了───! 第一種目、終了───! 本選出場者を今から発表するぜ───』
「お前……なんで……」
「あ? ……いや、最終競技って戦闘だろ? 俺は間違いなく本選に出ても負けるしな……だとしたら、確率の高そうなお前に任せたほうがいいだろ?」
「だからって……!」
「ま、そういうことだ。お疲れさん、エレフ。俺はここで終わっちまうけど、そのぶんをお前に託したんだ。宣言したように優勝しろよ?」
「……………………」
「それに、全くなんの成果がないってわけじゃないんだしな」
何を言っているのか、エレフには理解できなかった。その顔を見て芽隠は言った。
「俺の個性はお前みたいなやつがいたら輝くってことだよ」
「…………お前」
「将来一緒に活動することがあったら、そのときは頼むな」
「……ああ」
エレフセウス。
雄英体育祭───本選出場。
書き忘れてましたが、これ確保したことが通達されるように鬼側は手袋つけてます。生徒の体操服をタッチすると反応して電光掲示板で確保数がカウント仕組みになっているので(原理不明)、詳しく人数詳細がわかったってことです。
なんでこれ忘れてるんだろ……って感じの、結構ツッコミどころな感じの補足でした。