孫悟飯に憑依してしまった~舐めプはしない~ 作:MAEKOU
俺は目が醒めたら孫悟飯に憑依していた。というか転生していた。俺の生前の名前は来栖春斗。普通の高校生だ。運動能力は平均より上、学習面でも上。容姿はそこそこだったので彼女はいた。まぁ何か特徴を挙げるならドラゴンボールが好きだという点くらいか。勿論他の作品も好きだが、一番はドラゴンボールだ。
その日も俺は何時も通り彼女と帰っていた。彼女を家に送り届けた後は一人で帰宅する。何時も通りの日常だった。けれど運が悪かったのだろう。大型自動車がいきなり俺の方向にピンポイントで突っ込んできたのだ。それで即死。まぁ痛み無く死ねた事はラッキーだろう。
で、気付けば今に至る。最初は身体に違和感を感じた。で、目を開くと自室ではない部屋にいたのだ。流石におかしいと感じベットから起きたのだが更におかしい事に俺の視線が異常に低いのだ。窓からは日の光が出ているから部屋は明るい。俺は目を凝らして自身の身体を見る。すると見慣れた手の平ではなかった。あまりにも幼い子供の手だった。俺は恐怖を感じた。
この時はまだ、死んだ事を自覚していなかったから尚の事。俺は慌てて鏡を探し自身の姿を見る。そこに現れたのは二歳児か三歳時くらいの男の子だった。特徴的な髪型に、孫とでかでか書かれた服。俺はまさかと思ったさ。
「孫..........悟飯」
そこに立っていたのはドラゴンボールZ開始時期よりも幼い孫悟飯がいたのだ。俺は夢だと思った。しかし頬をつねっても痛みが帰ってくる。時間がたっても俺の意識は明瞭のまま。しまいに母さん.....チチが俺がしっかり勉強してるかの確認ついでの差し入れに来た事から俺は確信した。俺は孫悟飯なのだと。
勉強していなかった俺に対しチチは怒ろうとしたのだが明らかに呆然としている俺に違和感を覚えたのだろう。視線を合わせて心配してくれた。
俺にはそれが申し訳なく、罪悪感に苛まれた。だってそうだろ。本来なら孫悟飯自身に向けられる愛情が中身別人の奴に向けられているのだから。
俺はどうにかこうにか誤魔化し、勉強机で独り思案する。そして徐々に思い出す。俺が地球.....前世での地球で死んだ事を。車が突っ込んで来るところしか思い出せないが俺は死んだのだろう。そう思ったら唐突に涙が出てきた。もう家族に会えない。友達にも会えない。彼女にも会えない。世界が違うんだ。一生会う事はない。俺は声を押し殺して泣いた。今この時だけは独りで良かった。
親にだって育ててくれた恩を返せていないに。親不孝だな。俺って。
「うっ........くっ....ゥゥゥゥゥ」
更に襲ってきたのは絶望感だ。そりゃ、俺はドラゴンボールが好きだ。それはあくまでも娯楽として鑑賞する分にはだ。しかし現実ならば?死亡フラグだらけの、まともに生きるに事すら難しい世界なのだ。普通の一般人でも必ず一度は死ぬ。なんせ魔人ブウが人類を滅ぼすからだ。
それに限らず、もしこの世界が絶望の未来ルートなら。それを考えるだけで俺は恐ろしい。
「大丈夫か悟飯!!」
「....ご.....父さん」
俺が空虚と絶望、更に罪悪感に押し潰れそうになった時、この世界の主人公である孫悟空が慌てて俺の元に来た。
「大丈夫か」
「なんで....」
「悟飯の気がいきなり不安定になったからな。心配で急いで来たんだ。チチもソワソワしてたし」
こうして、俺は不安を抱えたまま一日を終えた。これが夢ならばどれ程良かったか、考えたらキリがない。
翌日。俺は朝早く目が醒める。隣には悟空とチチが俺を挟んで眠っていた。俺はこっそり布団から抜け出し外に出る。まだ太陽が出ておらず寒い。この時の悟飯は、どうやらまだ髪は長くなく鬱陶しいと思う事はない。ただ一つ言うならば身体が小さいせいで、全ての光景が大きく見える。
俺はこれから、どうすればいいのか悩む。たぶん、これが二次創作の類のオリ主ならば「原作介入」「俺TUEE」を主に動くだろう。けれど、俺は二次創作の主人公の様に前世の事を気にせずに動ける程、心は強くない。それに、この世界は理不尽が多すぎる。あと一年か二年もすればラディッツが襲来し、そこから問答無用の生きた心地がしない戦いが待ち受けている。
俺は前世で空手をしていた。しかし、それはあくまでもスポーツだ。生死を掛けた死闘なんてした事がない。それに俺は痛いのが嫌いだ。原作のワンシーンを思い出しても俺なら絶対に泣いてしまう。
更に言うなら俺は多分.......超サイヤ人には成れないと思う。あんな絶望的な状況において俺は怒れない。それよか絶望して諦めてしまう。
なんで俺が『孫悟飯』なんだ。
俺はどうすればいい。
俺は悩む。まだ答えなんて出せない。けれども、この世界では強さが一番大事だ。だからこそ、少しでも足掻こう。一先ずは原作介入をした事による影響は考えずに動く。
朝、悟空、チチと食卓を囲み朝食を食べている。悟空は昨日初めて実際に見たが原作....それ以上の迫力を伴う食いっぷりだ。俺はまだ、そこまで消費されるエネルギーが少ないのか食事量は普通だと思う。
さて、ここで俺の言う事によって、僅かだが歴史は変わるだろう。
「父さん.....母さん...お願いがあるんだけど」
「悟飯ちゃん、どうしただか?そんな深刻そうな顔して」
「どうしたんだ?悟飯がお願い事とか珍しいな」
どうやら緊張しているのが表に出ていたのか二人は心配してくれている。やはり良い親なんだろうと思ってしまう。
「父さん.....お...僕に修行をつけてください。そして、母さん。学者の勉強は続けるから僕に強くなる機会を下さい」
「悟飯ちゃん、何言ってるだ!悟飯ちゃんはそんな危険な事はしなくていいだ!悟空さも何か言ってけろ」
チチが俺の身を案じてくれるのは理解している。正確には孫悟飯の事をだが。悟空は俺のいきなりの言葉に食事を止めて、腕を組み考えているようだ。
「悟飯.....なんで急に修行をつけてくれ、なんて言ったんだ?」
悟空は真剣な眼差しで俺を見つめる。俺はその質問に対して用意していた事を言う。
「僕も....父さんみたいに強くなりたから....かな」
「そうか.....わかった」
「悟空さ!!」
「チチ.....悟飯が強くなる事を望んでるんだ。それを強制してまで勉強させる必要はねぇだろ。それに悟飯は学者を目指してるようだし勉強もちゃんとすんだろ」
「いいや、駄目だ。第一、悟飯ちゃんが生れた時、悟空さも学者にさせる事に対して賛成しただねぇか」
「それは、そうだがよ。そん時は、悟飯はまだしっかり喋れてなかったし」
俺のお願いのせいで、チチと悟空が言い争ってしまう。言い争いというか、チチの怒りを悟空が宥めている感じか。そして、悟空は確信をもった言い方で言う。
「それによ、もし悟飯が立派な学者になったとしてだ。その悟飯に嫉妬した奴が暴力を振るう可能性だってあるんだぜ」
「うっ.........確かに。でも悟空さが、そんな事を言うのは意外だべ」
俺も意外に思う。『ドラゴンボール超』のような単細胞ではないんだな。
「そりゃあ、オラだって普通なら、そんな事は考えないさ。チチはさオラがドラゴンボール探しで世界を巡った事は知ってるだろ?」
「うんだ。ドラゴンボールのお陰でオラと悟空さは会ったんだから」
「そこでは、色んな人がいた。オラに飯を恵んでくれる様な良い人だっていたが、それと同じ位に悪人だっていたんだ。オラは強かったから何事もなかったが、今の状態で悟飯が成長すると考えたら....チチと同じくらいに悟飯の事を心配しちまう」
悟空ってこんな考えを持ってたんだ......なんか今は全ての不安が吹き飛ぶ程の衝撃を感じてる。チチは悟空の言葉を聞き、やがて「うん」と頷いた。
「それなら悟空さ、悟飯ちゃんを立派に強くしてけろ」
「サンキュー」
「なら僕は.....」
「ああ、早速今日から鍛えっからな」
「はい!!お願いします!!」