僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2   作:エターナルドーパント

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「前回好評だったな。俺ちゃん出なかったけど・・・俺ちゃん出なかったけどッ!」
『いや、だって・・・試験に出す訳にもいかんだろ?』
「・・・フンッ」
『あ、拗ねた・・・ん゛っんん・・・さてさてどうなる第11話!!』


第11話・暴走するP/止まらぬ悪意

(出久サイド)

 

「なッ、なんだぁ!?」

ビル群の中で起こった大規模な崩壊音に、クローズ・ライトが声を上げる。それはここにいる全員の声の代弁であり、かく言う俺も立ち上る粉塵の柱に目を奪われていた。

だがこういう不測の事態において、最もいけない事は《棒立ちになる事》だ。故に俺は行動を起こす。

「三奈!フラン!スタッグフォン見ろ!」

「「わかった!」」

【バット】

俺の指示に従って、2人はスタッグフォンを開いた。そして俺はバットショットを取り出して煙の方向に投げる。バットショットはすぐさまライブモードに変形し、メインカメラから俺達のスタッグフォンに映像を送信し始めた。

「コレはッ・・・!」

スタッグフォンに映し出されたのは────

 

GUGYAaaaaaaaaaaaaaッッッッッ!!

 

────ビルを突き破って枝や蔦を振り回す、モンスタープラントだった。

 

「何これ!?」

「木の、化け物?」

三奈が言う通り、木の化け物としか形容出来ないモノだ。蔦や枝の先端には鰐のような鋭い牙の並ぶ顎が備わっており、周りの物を手当たり次第に噛み砕いている。

「訓練、では無いか」

【ボーダー!マキシマムドライブ!】

「三奈!コイツに乗れ!」

【ヒート!ユニット・タービュラー!】

俺はエターナルボイルダーを取り出し、更にタービュラーユニットを換装した。

「グリスとローグはバードでクローズを連れて、フランは自分の翼で来い!NEVERの皆は兄さん以外は俺の中に!」

「もう立派な司令官(リーダー)だね、出久は」

「分かった」

「あいよぉ!」

「嫌いじゃないわ~ぁん!」

そう言いながら、皆はオーブとなって俺の中に入る。

「兄さんは、三奈を乗せてエターナルタービュラーを操縦して!」

「お安いご用だ」

兄さんは即座に答え、タービュラーに飛び乗ってエンジンを掛けた。タービュラーユニットのスクランブルカッターウィングが展開し、ファンの回転が生む揚力によって機体が浮き上がる。

流石は兄さんだ。1発で乗りこなしてるよ。

「ま、待てよ緑谷!まさか・・・あ、あれと戦うのか!?」

「あぁそうなるかも知れんな、9割程の確率だが」

「ほぼ確実じゃんッ!」

俺の答えに対し、ヒステリックに叫ぶ峰田。全く喧しい奴だ。

「何でそんな事するんだよぉ、大人に任せりゃ良いだろぉ!?」

・・・何言ってんだコイツ・・・

「お前、そんな事言うなら何で雄英に来る?ヒーローってのは、こういう時に動き出せる奴の事を言うんだよ。

最も、昨日まではそれで良かっただろうがな。だが今、俺達は仮免試験を終了したんだ。受かってようが落ちてようが、そんな他人任せな言動が許される立場な訳が無いだろ」

峰田は俺の言葉にハッとし、周りを見る。当然と言うべきか、全員が峰田に対して失望の視線を向けていた。

「で、でも!あんなのに勝てっこねぇって!」

「俺達が勝てなけりゃ人類全て勝てないだろうよ」

「我々も行こう」

ギャングオルカが立候補する。しかし・・・

「じゃあギャングオルカ、あんた飛べるのか?」

「ぬぅ・・・」

「だろ?もし危なくなれば、俺達は飛行して逃げられる」

生憎、こっちは行ける人数の限界だ。

「さて、行くぜお前ら!」

「「「応!」」」

「了解!」

「イエスダーリン!」

「了解」

【バード!マキシマムドライブ!】

皆の返事を聞きながらバードのマキシマムを発動し、エターナルローブを翼に変える。

「ライダーズ!レディ・・・ゴー!」

(行って来まァァァす!!)

京水姉さんウルサいよ・・・

 

───

──

 

「これはまた・・・」

俺達は異形の植物を目視出来る距離まで近付いたが・・・

「兵隊殖やしとる・・・」

「ハッ、女王蟻気取りかよ・・・」

そう、兵隊であろう二足歩行の小さな*1植物兵が群がっていたのだ。

「・・・あぁ、何か見た事あると思ったら・・・バイオのイビーにそっくりだな。気ぃつけろ、頭の花から溶解液飛ばすかも知れん」

「グリス連れて来たのは正解だったな」

知識的にも、相性的にも。

「取り敢えず、デンデンセンサーでスキャンしてみよう。中身が分かれば、ベストな戦い方が分かる。兄さん、ウィングに乗るぜ」

「おう」

俺はタービュラーユニットのウィングに着地し、デンデンセンサーを眼に翳す。デンデンセンサーの接眼レンズには、モンスタープラントのスキャン映像が映し出された。

「まずは、普通の植物組織を除外っと」

すると、木の内部に糸のような維管束が走っているのが映し出される。それは頂上*2にある天狗巣状の枝の塊で集まり、その集中点からエネルギーが供給されているようだ。そしてそのエネルギーは・・・

「ガイアエナジー・・・やはりと言うべきか」

ガイアエナジー・・・つまり、ガイアメモリのエネルギーによってあのモンスタープラントは暴れているのだ。

「ガイアメモリのエネルギーを確認した。これよりあのモンスタープラントを《プラントドーパント》と呼称する・・・ッ!?」

「ん?出久、どうかしたか?」

「・・・兄さん、拙いぞ・・・ドーパントの体内に、人が1人取り込まれちまってる!」

「何ッ!?」

「「え!?」」

「「ハァ!?」」

「嘘・・・」

まぁ、この反応は当然だな。

「ど、どういう事!?」

「あの頂上の天狗巣・・・あそこにドーパントの本体がいるらしい。そしてそのすぐ側にもう1人いるんだ。こっちはドーパントじゃない。恐らく巻き込まれたんだ」

フランの問いに答え、プラントドーパント・・・いや、プラント・ノヴァとでも呼ぼうか・・・そいつを再び見やる。相変わらず蔦の先からイビーを作り続けており、既に150体はいるだろうな。

 

「タブー・グリス・ローグは地上でイビーを殲滅しろ!グリスはブリザードの使用を許可する!タブーは終焉極大刃炎剣(レーヴァテイン)で、ローグはジェットの機雷艦載機で焼き潰せ!」

 

「おうよ!!」

「わかった!」

「任せといて!」

 

「クローズ・ライトは兄さんと一緒に地上で周囲を偵察!危険なら即座に撤退しろ!大丈夫ならグリス達と合流してイビーを狩れ!絶対に他の人間に近寄らせるな!」

 

「分かったぜ!」

「任された」

 

「そして三奈、今回はダブルで行く。半分力貸せ」

 

「分かってるって!」

全員に指示を飛ばし、俺はエターナルの変身を解除。ロストドライバーを取り外し、サイクロンと共に兄さんに渡す。そして三奈にはダブルドライバーを装着させた。すると俺の腰にもダブルドライバーが出現、装着される。

【エターナル!】

【ジョーカー!】

 

「「変身ッ!」」

 

俺は左手に持っていたエターナルメモリをドライバーの右スロットに装填した。するとそのメモリはデータ化して三奈のドライバーに転送され、現れたメモリを三奈が再び押し込む。そして、三奈自身のジョーカーメモリも左側に装填し、スロットを左右に展開した。

 

【エターナル!ジョーカー!~♪~♪! ~♪!♪!♪!】

 

白と黒の竜巻に抱かれ、俺の意識は三奈の右半身に憑依。そして白と黒の装甲を纏い、変身が完了する。同時に俺の身体がウィングから落っこちるが、それをエクストリームメモリがしっかり回収してくれた。

 

【サイクロン!】

 

「変、身ッ!」

 

【サイクロン!~♪~♪♪♪~!】

 

兄さんも仮面ライダーサイクロンに変身し、銀のマフラーをはためかす。

『じゃあ行くぜ!』

「うん!」

 

(ステージ・グリス)

 

「死ねェ!!」

 

─BBBOOM!!─

 

グリス・ライトは目の前に爆炎を振り撒き、イビーを5体一気に丸焦げにした。

「うわっ、ひっさびさに聞いたわ」

「ホントに殺さなきゃいけねぇ相手だからなァ!」

そう言いながら蒼いドッグタグを握り、グリスブリザードナックルとノースブリザードボトルを召喚。ボトルスロットにノースブリザードボトルを装填する。

【ボトルッキィーンッ!!】

そしてナックル正面のボタン・・・ロボティックイグナイターを掌で押し込み、エネルギーを溜めた。そして・・・

「心火を燃やしてぇ・・・

 

ブッ殺すッ!!」

 

【グルェイシャルナックルゥッ!!

 

カッチッカッチッカチカチッ!カチンッ!!】

 

グリスブリザードナックルを握り締めた右腕を、アッパーカットのように振り上げる。すると凍えるような冷気が一気に放たれ、正面にいたイビーは瞬く間に凍結した。

「やれェ!スカーレット!」

「分かってるッ!」

そしてその氷像となったイビーに、タブーが終焉極大刃炎剣(レーヴァテイン)を振り下ろす。その熱波により、物言わぬ氷像は瞬時に蒸発した。

【クラック・アップ・フィニッシュッ!!】

「意外と呆気ないね」

「いや、見ろ」

ハイキックでイビーの頭部を千切り飛ばしながら、拍子抜けたように呟くローグ・ライト。それに対してグリス・ライトは、プラント・ノヴァの蔦の先端に咲いた鉄砲百合のような花を指差した。

 

─パンッ!パパンッ!─

 

その花から何かが放たれ、地面に着弾。するとそこから、瞬く間にイビーが生えて来たではないか。

「大元叩かねぇと意味ないわ・・・ハァ~・・・」

「うへぇ萎える・・・」

グリス・ライトは面倒臭いと溜め息を吐き、ローグ・ライトは口元をひきつらせる。

「まぁ、仕方無いよ。グリス、時間作るからブリザードね!」

「頼む」

「任された!行くよローグ!」

「おうッ!」

時間稼ぎを請け負ったローグ・ライトとタブーが飛び出し、イビー相手に無双を再開。飛んでくる消化液も当然単調なので、避けるかガードベント(他のイビーで防ぐ)かで対処していた。

「じゃ、やっか」

グリス・ライトはスクラッシュドライバーからロボットゼリーを抜き取り、ドライバーも外す。そして黒のドッグタグを握ってビルドドライバーを召喚、即座に装着した。

「さて・・・行くぜッ!」

 

─ガシャンッ─

 

【グリスブリザァァァドッ!!】

 

そしてグリスブリザードナックルを勢い良く装填し、レバーを回す。背後に現れたアイスライドビルダーの冷気でその下半身は氷に包まれ、周りには白い霧が発生した。

【ARE YOU READY!?】

「変身ッ!」

 

激凍(ゲェキトウ)心火(シンカ)ァ・・・グリスッブリザァァァドッ!!

 

ガァキガキガキガキッ!ガッキィィィン!!】

 

頭からヴァリアブルアイスを被り氷塊に覆われ、更にそれをアイスライドビルダーが圧し砕く事で変身が完了する。

「うッシャァッ!こっからが俺達の祭りだァァァッ!!」

 

(ステージ・サイクロン)

 

「ふむ、弱いが・・・数が面倒だな。ハァッ!!」

「そうッスねッ!オラッ!」

サイクロンは旋風脚で、クローズ・ライトは引っ掻きでイビーを相手していた。しかし、イビーを生む花がすぐ側にあるせいで全く減らない。まぁ、出る尻から狩っているお陰で全体数は殖えていないのだが。

 

─パンッ!─

 

「何!?フンッ!」

その時、突如として花がサイクロンに照準を合わせて種子を撃ち込んできた。

「成る程、オランダフウロのように螺旋状の溝が入った種子を回転を加えながら射出する事で、高い穿孔力を得ている訳か」

サイクロンはそれを難なく掴み取り分析するが、攻撃パターンの変化に少々危機を感じる。

「コイツにも、学習能力が在るらしいな・・・ッ!」

 

─ドパァンッ!─

 

「フン、在り来たりな攻撃だな」

振るわれた蔓の鞭を難無く避けたが、その蔓が鮫の歯のような鋭い棘で覆われている事に気付いた。

「植物兵士に種子弾丸、茨の鞭と来れば、次は毒でも来るか?クローズ!焼き払え!」

「ウッス!オ~リャオリャオリャオリャ~ッ!!」

サイクロンの指示に従い、クローズ・ライトはビルドドライバーのハンドルを激しく回す。

【READY GO!!】

するとその背後に、蒼い炎でできた龍のエネルギー体・・・クローズドラゴン・ブレイズが現れ、その口から炎が覗いた。そしてクローズ・ライトは腰を落として構え、正面に向けて跳び上がる。

 

【DRAGONICK FINISH!!】

 

「オリャァァァァアッ!!」

 

その背中にクローズドラゴン・ブレイズの撃ち出した火炎を受け、花や茨、イビーの群れにボレーキックを叩き込んだ。その脚からは火炎が放たれ、怪植物を一気に焼き尽くす。

「よし、一旦引くぞ」

「ウッス!」

 

(出久サイド)

 

「『タァッ!!」』

俺達はエターナルタービュラーで飛び回りながら、ヒートとルナのツインマキシマムを乗せたメタルシャフトでプラント・ノヴァを攻撃している。しかし、中々本体への道が開かない。

『クッ、弾丸に鞭に毒針!』

「めんどくさいね!」

仕方無いが、ちっとばっかしゴリ押しで行くか!

『三奈!』

「分かった!」

俺はメタルシャフトを消してジョーカーサイドにエターナルエッジを渡し、開いた右手でジョーカーメモリを抜き取って腰のマキシマムスロットに叩き込んだ。

【ジョーカー!マキシマムドライブ!】

『もういっちょ!』

更に追加で、エターナルエッジのマキシマムスロットにヒートメモリを装填。それにより両腕が激しく燃え上がり、更にアドレナリンがドバドバ出ている為闘争本能が引き上げられる。

『行くぜェェェ!!』

「ウオォォォォッ!!」

俺達はエターナルタービュラーの上で立ち上がり、ジェットエンジンを一気に噴かて突撃。そしてプラント・ノヴァの10m手前でエターナルタービュラーは逆噴射で急停止した。当然慣性の法則により俺達は前に弾き出される。空中で俺達は左右に分割し、燃え上がる両拳でラッシュを叩き込んだ。

 

「『ジョーカーグレネードッ!!」』

 

その勢いと熱に乗せて蔦をブチ破り、本体を包む天狗巣に辿り着く事に成功。

【アクセル!マキシマムドライブ!】

瞬時に2本のメモリを戻し、入れ替わりにアクセルメモリをエッジのマキシマムスロットに装填する。

そしてそのエネルギーで加速させ、連続で枝を斬り捌いた。

 

「『ヴァア~ラララララララララァァァ!!」』

 

すると、枝の隙間に金色の髪や赤いスカートが見えてくる。もう少しだ!

 

─ギチィッ!─

 

「なっ!?」

『クッソォ!』

だが、背後から延びてきた蔦に止められてしまった。もう少しだったのに・・・

しかしその時、不思議な事が起こった。

 

─パキッ パキパキッ バキンッ!─

 

『何ッ!?』

何と、気絶していた金髪の少女が小枝を折りながら飛び出してきたのだ。

「お、っと!」

すかさずジョーカーサイドがキャッチしたが、次の瞬間蔦に引っ張られる。

『ッ!!』

その刹那、俺が見たモノは・・・

『メディ、を・・・たす・・・け・・・』

苦しみながらも彼女の背中を押し出したであろう、プラントドーパントの本体だった。

(そうか・・・そういう事かッ!!)

この瞬間、俺は全てを理解した。

 

───

──

 

(幽香サイド)

 

私は、独りだった。

風見幽香・・・それが、私の名前。

植物変異(プラントミューテーション)』・・・それが、私の個性。

植物を突然変異させられる個性。種を植えてから10秒で1m程にまで成長したり、本来有毒のはずの植物から毒が抜けたモノを作ったり・・・

でも、致命的な欠点がある。それは、変異させた植物が必ず・・・狂暴なモンスターになってしまうこと。ハエトリグサのような口があったり、蔦で周りの物を壊したり・・・

幸いにも生命力自体は落ちるらしいから、根元から斬ってしまえばすぐに死ぬ。だから、個性を使う時は刃物が欠かせない。コスチュームに付けた傘だって、刀を内蔵した仕込み傘。

そんな個性だからか、個性が発現して最初の内は皆から羨ましがられた。でも、保育園の頃。個性で大きな薔薇を咲かせた時・・・それをキレイと言って見ていたクラスメイトの腕に、その薔薇(バケモノ)は噛み付いた。

幸い命に別状は無く、回復系の個性を持つ子だった為に次の日には完治した。

でも、周りは許さなかった。

昨日まで遊んでいた子は、私が少しでも近付くと恐怖に顔を歪めて逃げ出すようになった。いや、違う。子供だけじゃない。大人も・・・親さえもが、私の一挙手一投足に怯えていた。

やがて無視はイジメへと変わり、それは小学校を卒業するまで続いた。

大人は、何もしてくれなかった。

 

中学なら、少しはマシになるだろう。そう思っていたが、そんな事は無かった・・・いや、それ以上だった。

下駄箱の扉には画鋲を貼り付けられ、上履きの中には剃刀の刃。机は《死ね!》《消えろ!》《バケモノ!》・・・挙げ句、《人殺し!》などの覚えのないモノまでが彫刻刀で彫り込まれていた。

その頃になると心は完全に冷めきり、機械的に毎日を過ごすだけだった。教室の左後ろの席でボロボロのノートにただただ板書し、あとは窓の外を眺めるだけ・・・その窓から見える風にそよぐ木々が、私の心を唯一慰めてくれる物だった。

それが大きく変わったのは、1年生の2学期。イギリスから転校生が来るという噂が流行っていた。しかも、私のクラスに・・・

 

──え~っと、席は風見の隣だ──

 

担任教師の声が聞こえたが、私は無視した。でも、ズタズタの机を見られるのは何となくイヤだったから、カバンを机の上に寝かせてその上に頭を伏せた。

 

──えっと・・・私、メディスン・メランコリー!よろしくね、カザミさん!──

 

無視した。どうせすぐ、他の奴らと同じになる・・・そう思っていた。

 

授業が始まるから机の横にカバンを戻すと、右から引きつった悲鳴が聞こえて来る。だがそんな事は気にせず、あっと言う間に午前の授業は終わった。

 

昼休み。私はお弁当など持っていないので、中庭を宛も無く歩いて暇を潰す。そんな時、彼女が・・・メディスンが、お弁当箱を抱えて私の袖を引っ張った。

 

──一緒に、食べよ?──

 

物好きな奴だと思いながらも、2人で中庭のベンチに腰掛ける。次の瞬間には、近くにいた奴らは全員消え失せていた。

メディスンは少し顰めっ面になりながら、そのお弁当箱を開く。ウィンナー、ブロッコリー、アスパラのベーコン巻き・・・普通のお弁当。

それを食べながら、メディスンは聞いてきた。虐められているのか、と。隠す理由も無いので、話す事にした。

 

すると、メディスンは自分のことも話してくれた。

個性は、『ポイズンマスター』。毒物を生成したり、体外の毒物を操ったりする事が出来るらしい。そしてメディスンも、虐められていたようだ。

しかし、メディスンは話の最後に自らの夢を聞かせてくれた。

 

──私はね、ヒーロー免許を持ったお医者さんになりたいんだ!私の個性なら麻酔だって作れちゃうし、ヒーロー免許があれば戦って人を助けられる!

だから、さ・・・応援して、くれるかな?──

 

その前向きさは、私の心を照らした。暗い闇が弾け、視界が広がったように感じた。だから私自身もヒーローになって、助け合っていきたいと・・・そう思った。

 

そんな私の太陽(メディスン)が今、私の枝に縛られている。

私のせいで・・・

 

誰でも良い・・・誰か・・・メディを、助けて・・・

 

─バキバキバキバキッ─

 

──ヴァラララララララララァァァ!!──

 

っ!光が・・・お願い!メディを助けてッ!!

 

(出久サイド)

 

「ドーパントがコイツを助けた、という事か」

「あぁ」

変身を解除した俺が状況を説明し、この少女・・・メディスン・メランコリーを見やる。周りには、俺が呼び寄せたライダーズ全員が集まっていた。

にしても、メディスン・メランコリーも確か東方projectのキャラだったな・・・となると、さっきの彼女は・・・

 

植物(プラント)〉        〈ユウカ〉

   〈メディスン・メランコリー〉     〈緑の髪〉

 

・・・風見幽香、だな。

「んぅ・・・ここは?」

と、どうやら目を覚ましたようだ。

「ぁ・・・ぁあ・・・お、お前、は・・・ッ!!」

「なっ!?」

俺を視認するなり、掌に毒液を溜めて跳び掛かって来た。その手をグローブで弾いて流し、バックステップで距離を取る。

「お前がッ!お前が幽香をあんなのにしたんだッ!!私は見た・・・お前が、幽香に何かしたんだ!幽香を戻してッ!!・・・戻してよぉ・・・」

・・・奴ら、質の悪い手ェ使いやがって!

「それは、俺に化けた(ヴィラン)・・・恐らく、渡我被身子(トガヒミコ)だと思う」

「あのイカレ女か・・・」

確か麗日は面識あったな・・・

「これで納得がいった。恐らく、士傑の金髪に化けて潜入していたんだろう。血液を経口摂取する事で、相手に変身する能力だったからな。そして血液性愛(ブラッドフィリア)持ちと来たもんだ」

恐らく、改造手術の時に血を採ってたんだろうな。

「俺らん所に来たのも、そのイカレ女か」

「多分な・・・さて、君の名前は?」

「・・・メディスン・メランコリー・・・」

やっぱりか。これはもう確定だな。

「じゃメディスン。その幽香って友達は、俺に化けた奴にこんな物を挿された筈なんだ。何処に挿されたか、見たか?」

そう言って俺はエターナルメモリを見せてみた。

「確か・・・首の後ろ、骨が出っ張ってる辺りだったと思う。それに、そんなツルンとした形じゃなかったし・・・」

「・・・ありがとう。良い情報だ」

ツルンとしてないって事は、普通のドーパントメモリだな。生体コネクターは、倒れ込んでたあの時に撃ち込んだんだろう。

「メディスン・・・彼女は優しいな」

「え?」

キョトンとするメディスンに目線を合わせ、俺は続ける。

「あそこまで暴走していれば、本来であれば自分を保てない・・・だが彼女は、苦しみの中で君をあの枝の中から押し出した。自分も助かりたい筈なのにな・・・なぁ皆。彼女は救われるべきだと・・・そう思わないか?」

俺が視線を向ければ、全員が頷いた。

「ならば、答えは一つ・・・俺達仮面ライダーが、幽香さんを救おう」

「それがヒーローだからね!」

「要は、本体引っ張り出しゃ良いんだろ?やってやんよ!」

「それが、この力を得た目的やもんね!」

「鳴るぜ腕がッ!」

士気は上々だ。

「だが悪い、今回はダブル(俺達)に任せてくれ。何せ変身者がデリケートなんだ」

そう言うと、他のメンバーは渋々と引き下がった。

「・・・ホントに、幽香を助けてくれるの?」

「あぁ。それが俺達の・・・使命みたいなもんだからな。と言うか、今の所ドーパントにされた人間を救えるのは俺達だけだから」

だから、絶対に救う。

「だから、待っててくれ。必ず彼女を救ってみせる」

「ッ!・・・お願い!待ってるから!」

「その欲望(のぞみ)、確かに効き届けた!「変身ッ!」」

【エターナル!ジョーカー!】

俺と三奈はダブルに変身し、エクストリームが俺の身体を回収した。

『三奈、今度は初っ端からエクストリームで行こう。攻略法が分かる』

「オッケー!」

【フォロロラン~♪】

俺達がドライバーのスロットを閉じると、エクストリーム自動的にドライバーに装填される。その両端を掴み、左右に開けば・・・

 

【【エクストリーム!~♪!~♪♪♪!~♪~♪~!!】】

 

俺達の頭脳は地球という無限の情報庫(アーカイヴ)に直結し、心と身体は1つに融合した。

身体の中央を走る、ブルーフレアを取り込んで水色になったクリスタルサーバーが強く輝く。その瞬間、プラント・ノヴァの情報を総て閲覧した。

『・・・成る程。大体解った。行くぞ三奈!』

「うん!」

その情報を作戦と共に共有し、プラント・ノヴァに向けて駆け出しながらクリスタルサーバーからダウルビッカーを召喚する。更に過剰適合進化者の義眼(アイズオブハイドープ)を起動し、メモリを3本取り出してビッカーヘキサシールドのマキシマムスロットに装填した。

 

【ダウルダヴラ!】

 

【シュルシャガナ!マキシマムドライブ!】

 

【イガリマ!マキシマムドライブ!】

 

そして切断に特化したシンフォニックメモリのマキシマムを発動し、そのエネルギーをダウルセイバーとヘキサシールドに籠める。

そのグリップを握ってを抜剣すれば、緑と青のエネルギーが刀身に、ピンクのエネルギーがシールドを覆った。

そのエネルギーはダウルセイバーとヘキサシールドを、それぞれ大鎌と丸鋸へと変える。

そのまま俺達は、シールドの鋸を回転させて襲い来る蔦を斬り払いながらプラント・ノヴァへと距離を詰めた。気がつけば、もう技の間合いだ。故に、俺達はその技を繰り出す。

まず、イガリマとの共振増幅によって巨大な丸鋸と化したヘキサシールドを勢い良く投げつけた。鋭い鋸刃は太い幹を瞬く間に切断、プラント・ノヴァを根元からスッパリと切り離す。

しかしまだ終わらない。今度はその切り口に向けて、両手で構えた大鎌を───

 

「『セイバー!ザババツインズ!」』

 

───フルスイングで振り抜いた。

すると、途端に土台が再生を止める。当然だ。本体からの命令を断ち切ったんだから。

このプラント・ノヴァは、普通に斬り裂いただけでは恐らく瞬時に再生してしまうだろう。それは何故か・・・単純明快。まだ()()()()()()からだ。

本体から斬り飛ばされても、エネルギーそのものはまだ何とか繋がっている状態だった。それを辿って再生する。

ならば、その(繋がり)を断ってしまえば良い。

本来ならば、そのエネルギーの周波数に干渉するエネルギーを当てなければならない。しかしイガリマは、そんな物を無視して繋がりを断てる。

そして帰って来たシールドをキャッチし、今度は 頭上に倒れてくるその幹を盾鋸の縁で斬り裂いた。

後はもう核となる本体だけだ。その本体であるプラントドーパントは、天狗巣の中から足を引きずって出て来る。

『・・・メディ・・・メディ・・・』

「もう大丈夫!あの子は助けたよ!」

『今度は君の番だ。必ず助けるからな!』

『ア・・・アリ・・・ガ・・・ト・・・』

何て強靭な心だ。ガイアメモリの毒素はまず精神に来る筈なのに・・・もしかして、俺みたく元々相性が良かったから毒素の効きが薄いのか?まぁ今はそんな事どうでも良い。

『行くぜ、三奈。合わせろよ?』

「勿論!」

俺はメモリを3本召喚しながら、再び過剰適合進化者の義眼(アイズオブハイドープ)を起動。その3本をコンバットベルトのマキシマムスロットに装填した。

これを使えば、最小限の力でメモリブレイクが出来る筈だ。

 

【バイオレンス!マキシマムドライブ!】

 

【クイーン!マキシマムドライブ!】

 

【ユニコーン!マキシマムドライブ!】

 

バイオレンスのエネルギーを右手に、クイーンは左手に・・・そしてユニコーンは、両手に均等に流し込む。

そしてドライバーのエクストリームメモリも一旦閉じ、再び左右に開いた。

 

【【エクストリーム!!マキシマムドライブ!!】】

 

それによりクリスタルサーバーが強く輝き、ガイアアーカイヴからのエネルギーを溜め込むタンクとしての機能を発揮し始める。

 

『「ヘルッ!!アンドォ・・・ヘヴンッ!!』」

 

両手を広げると、エクストリームのマキシマムによって増幅したエネルギーが両腕からオーバーフローを起こして強い輝きを放った。

 

『「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・むんッ!!』」

 

その両手を組み合わせる事で反発しあうエネルギーを無理矢理融合させ、それによって発生する対消滅エネルギーをユニコーンのエネルギーに転換する。組み合わせた手から細長く鋭いドリル状のエフェクトが現れ、高速回転を始めた。

更にバックルのエクスタイフーンから竜巻状のエネルギーを飛ばしてプラントドーパントを固定し、標的を外さないよう狙いを定める。

そして、クリスタルサーバーに溜め込んでいたエネルギーを背中から一気に放出。プラントドーパントに向けて突貫した。

 

『「ウオォォォォォォォォオッッ!!

 

ウィィィィィタァァァァァァァァッッッ!!!!』」

 

─パキンッ─

 

そのドリルはプラントドーパントの首を・・・その中にあるドーパントメモリを正確に貫く。それと同時に、そこからユニコーンのエネルギーを流し込んだ。ユニコーンには強力な解毒能力がある。ソレを利用して、体内を洗浄したのだ。

『「ムゥンッ!ハァァアッ・・・デェリャァ!!』」

そして、ドリルエフェクトが霧散した腕を引っこ抜く。その手の中には、砕けたプラントメモリがあった。

「・・・ん・・・ぁ・・・ぁれ?わ、たし・・・」

すぐに目を覚ました幽香さん。良かった、上手く行ったらしい。

「大丈夫?」

「あ、あなた、は・・・」

そう聞かれれば、名乗らなきゃな。

『「(あたし)達は、仮面ライダー・・・仮面ライダーダブル!』」

「あの・・・仮面ライダー?」

『あぁ、その通りだ』

エクストリームを閉じてメモリを引き抜き、変身解除。分離した俺は腕を引っ張って幽香さんを抱き起こし、その肩を支える。

「私を、助けてくれたの・・・?」

「まぁな。それが俺達の生き甲斐だから」

「変わってるのね・・・ッ!!」

 

─ドンッ─

 

「なっ!?」

幽香さんは突然、俺を突き飛ばした。その瞬間・・・

 

─バキバキバキッ!─

 

地面を砕いて大量の蔦が現れ、幽香さんを縛り上げる。

「くっ、やっぱり・・・コイツ等、まだ生きてっ!」

「プラントとの相乗効果で生命力が強化されたか!変身ッ!」

【エターナル!~♪~♪!】

コレは拙い。俺はすぐさまロストドライバーを装着しエターナルに変身した。しかし、その頃にはもう幽香はモンスタープラントに閉じ込められてしまっている。

「かっちゃん!フラン!悪いが根元の方を頼む!」

「了解!」「わぁったよ!」

【タブー!】【ガァキガキガキガキガッキィィンッ!!】

タブーとグリスブリザードに根っこ側を頼んで、俺は考えを巡らせる。そして最適解をコンマ3秒で叩き出し、実行に移した。

【ガングニール!】

「詠装!!

 

I'm that Smile Guardian GUNGNIR tro~オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ン゛ッ!!!!」

 

俺はガングニールを纏い、脚のパワージャッキで飛び上がって背中のバーニアスラスターを噴かす。そして両腕にエネルギーを溜め込み、強く歌いながら殴りつけた。

周りから蔦が襲いかかってくるが、ジュッという音と共に消え失せる。

「背中は任せたぞ!」

「任された!」

酸液で援護してくれる三奈に背中を預け、俺は歌を再開した。殴る毎に拳は加速し、蔦を千切り飛ばしていく。

そしてフックで蔦を大きく抉った時、幽香さんの手が蔦越しに見えた。そして・・・

 

─たす・・・けて・・・─

 

弱々しい声も聞こえてくる。

(助けるッ!絶対にッ!!)

俺は更にスパートを掛け、歌を強く響かせる。そして遂に蔦で出来た壁を、拳で貫いた。

「掴めッ!!」

その声に答えるように、俺の手が掴まれる。弱々しくも懸命に生きようとする意志が籠もった、強い手だった。

「ヌゥゥゥアァッ!!」

 

─ブチブチブチブチッ─

 

その手をしっかりと握り、一気に幽香を引っこ抜いた。そしてすぐさま背中のバーニアで退却。当然蔦は追ってくるが・・・

「させるかッ!!」

 

─バシャッ ブシュゥゥゥゥ─

 

すぐさま三奈が酸で溶かした。見てみれば、タブーとグリスブリザードのおかげで根っこも処理出来たようだ。

「ミッション、コンプリート」

俺はシンフォニックメモリを引き抜き、三奈と肩を並べる。そして復元されたエターナルローブで幽香を包み、横抱きにして抱え上げた。

「え、ちょっ!?///」

「悪いが、こっちの方が早い。バイクに乗せようにも、しがみ付けないだろ?それに、君のお友達が待ってる」

俺はそのまま足に力を込め、揺れは最小限にしてメディスンの元に駆け出すのだった。

 

(NOサイド)

 

「フ~ンフ~フフ~ン♪」

ご機嫌に鼻歌を歌いながら、士傑高校の現身(うつしみ)ケミィ・・・否、それに化けた何者かは路地裏に入る。

試験会場からは、得意の潜伏術と逃走術で難無く脱出していた。そしてその顔がドロドロと溶け始め、本来の顔・・・渡我被身子の顔が現れる。

「お疲れ様です、渡我被身子さん」

すると、その背後に黒いスーツを着た何者かが現れた。声に反応した渡我は其方を振り返り、見てくれだけは可愛らしい笑顔を浮かべる。

「あ、黒服さん!お迎えありがとうございま~す♪」

「では行きましょう」

黒服が壁に向けて銀色のカード・・・《ビゼル》を翳すと、空間が湾曲し真っ黒な穴が出来た。

「・・・新しい血の匂いがしますね~、またスカウトですか~?」

「えぇ。多いですからね最近は。低脳なチンピラや、不法入国をして来る輩が。大いに捗っていますよ、実験がね。

まぁ、今の所アスファルト行きです。全員が・・・まぁ、最低限貢献してくれていますよ。拠点の土台作りには」

そう言って肩を竦める黒服。

「私も早くメモリが欲しぃですね~♪」

「いつか、見繕ってあげましょう。アナタにピッタリなメモリを。今日の実験を手伝っていただいた・・・所謂、バイト代として」

「ホントですか!?楽しみです~♪」

軽やかにスキップしながら、渡我は穴に飛び込んだ。そして黒服もそれに続き、最後に穴が閉じる。

 

その月は、チンピラやゴロツキといった低級な(ヴィラン)の行方不明者が過去最高を記録していた。

 

to be continued・・・

*1
それでも2mはあるのだが

*2
地上10m程




「今回ちょっと長くね?」
『区切りの良い所が見つからなかったんだよ。わりぃな』
「ったく・・・本編で出られない分、こっちで喋らせて貰うぜ」
『どうぞご自由に』
「じゃあまず、プロヒーロー達は何で動かなかったの?」
『書けてなかったけど、ステージ・グリスとステージ・サイクロンの時に出久が「足手纏いになるから戦いには参加するな」って電話で指示した』
「ウッヘ、手厳しい」
『だって当然だろ?彼処にいたのは確か、オルカとイレイザーとギャグ・・・ごめん他にいたっけ?
少なくとも動けるんはこれぐらいだったと思う。でも相性最悪なんだよ。

オルカ:柔軟性のある植物組織は超音波では砕けない。

イレイザー:封じられるのは個性の()()()()()だけ。すでに変異を遂げて個性の影響下から外れたミュータントプラントには効果が無い。

ギャグ:植物は笑わないし、効果範囲は半径10mも無いのでノヴァの上にいる本体には届かない。

な?相性最悪だろ?』
「うっわ確かに・・・」
『更に言うと、真堂の地震でも根っこは竹みたいに地下茎になってるから地面を割る事も出来ないし、イナサの風でも直径5m以上ある木はへし折れないだろうからな』
「最悪やん」
『と言う事で、ライダー達だけで戦う事になりました。かっちゃん達が上手く食い止めたから、受験生達の方にも行かなかったしね。
では、閲覧ありがとうございました!』
「次回!俺ちゃんの出番に乞うご期待!」
『ゴメン、そこはノープランだわ』
「ウワァァァァァァァ!!!!(OMO)」

ちょっと面白いこと考えたから、パルスィ出して良い?

  • 良いゾ~ソレ
  • ウェッ!?ナジェダァ!?(OwO)
  • ゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!!
  • (良い訳)無いです。
  • パルスィ登場ッ!承認ッ!!

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