僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2   作:エターナルドーパント

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「ホラホラ!チンタラせずに書けェ!」
『強要は止めチクリィ』


第18話・Pの愛情/魔女の介入

「・・・ん」

 

─ジャラッ─

 

「ッ!」

勇義が目を覚ますと、彼女を縛る鎖が擦れて音が鳴る。その違和感に、勇義の意識は一気に覚醒した。

「ここはッ!?」

「あら、起きた?」

「ッ!!」

勇義が左に視線を向けると、そこにはパルスィが座っていた。よく見れば、勇義が縛られているのはパルスィが座っているベンチだ。

「勇義、憶えてるかしら。ここが何処か・・・」

「え?・・・!」

パルスィに言われ、周囲を見渡す勇義。目についたブランコ、ジャングルジム等の遊具に、勇義は大いに見覚えがあった。

「・・・パルスィと初めて会って、話した公園」

「ふふっ、せーぃかい♥」

満面の笑みを浮かべるパルスィの言葉は妙に色気があり、勇義は脳を鼓膜越しに擽られるような錯覚を覚える。

「憶えててくれて嬉しいわ、勇義♥」

「~っ///」

パルスィは勇義に摺り寄り、肩に手を掛けてじゃれつき始めた。その様は、正に"猫にマタタビ“状態である。

「ねぇ勇義。私はね?別に貴女を殺したい程独占欲が強い訳じゃないの。ただ、最近のよそよそしい態度に腹が立っただけ・・・さっきは気が立ってて、貴女を私だけのモノにする、って言っちゃったけど・・・よくよく考えればそれはムリね」

勇義を背面から抱き締めて肩に顎を乗せ、自嘲気味に呟くパルスィ。意外と理性的なその様子に、勇義はかなり驚いた。出久から聞いたメモリ中毒者の特徴に合致しないからだ。

「じゃあ、何で・・・」

「こんな事を、って?」

勇義はパルスィの目を覗き込む。その緑の瞳に宿る感情は、純粋な戸惑いだった。

「分からないの・・・」

「え・・・?」

勇義は、酷く困惑した。

勇義の個性は《鬼》。それも人が業や怨嗟を溜め込んで変異する後天性の鬼・・・所謂《悪鬼》ではなく、生まれながらの天然モノの鬼だ。この鬼は嘘を嫌い、その嫌うモノを感知する能力が備わっている。

故に、このパルスィの言葉が嘘ではないと分かった。

本当に、分からない。

自らの行いの理由が理解出来ていないパルスィに、勇義は困惑したのだ。

「それだけじゃない。このメモリも、何時何処で手に入れたか・・・今だって、何で勇義をこんなに縛ってるのか、あの結界を張り続けてるのか分からない。でも、そうせずには居られないの」

「・・・メモリは何回使った?」

「多分、さっきの1回だけ・・・」

「だったら、出久に頼めば後遺症とかも無く治して貰えるかもな!」

「・・・便利な奴ね。器用万能で嫉ましい」

「・・・フフッ」

「・・・何よ」

笑みを零す勇義に、パルスィはジト目を向ける。

「何というかさ、パルスィの口からやっと何時もの嫉み節が出たから。パルスィの嫉妬は、やっぱりしっくり来る」

「嫉んでばっかで悪かったわね」

「違う違う、そうじゃなくてな?」

勇義はベンチの背凭れに上体を預け、パルスィの肩に頭を着けた。

「前にも言ったけど、パルスィの嫉妬ってさ・・・裏を返せば、その人の良い所っつーか、長所な訳じゃん?つまり、パルスィはある意味褒め上手なんだよ。そのおかげで、アタシはこんな風になれたんだし」

「・・・そういう豪快な性格、嫉ましいわ」

「ハハッ、ありがとう♪」

誰もいない公園に、楽しげな笑い声が響く。気付けば、お互いの態度はかなり軟化していた。

「・・・ねぇ勇義、教えて?何で、あんなによそよそしかったの?」

「・・・実はアタシ────」

 

「甘ったるいな」

 

「「ッ!?」」

突如として聞こえて来た声に、2人は驚く。

声の主であるローブを着た女は、ジャングルジムの天辺に座っていた。

「全く・・・もっと狂暴に呪いをまき散らしてくれるかと思ったが、拍子抜けも良い所だ」

女はジャングルジムから飛び降り、ふわっと音も無く着地する。

「・・・そうか。元々嫉妬という呪いの感情と同居していたせいで、耐性がついているんだな。ハァ・・・我ながら、選んだ奴が悪かったか」

「・・・選んだ?」

女の物言いが引っ掛かり、勇義は目を鋭く細めて睨んだ。

「あぁ。その女の能力なら、ハイドープになれるかもしれないと思ったのだが・・・正直、ソイツはハズレだ。何の価値もない」

 

「・・・取り消せよッ!その言葉ァッ!!」

 

牙を剥き出し、目をこれでもかと見開いて吠える勇義。

「くっ、この鎖、外れない!私が作った筈なのに!」

「あぁ。私はちょっとばかし、暗示や催眠術も得意でね。それはお前の力では外れないし、あの結界も消せない。外からの救援は絶望的だな」

「そんな・・・」

パルスィの表情が曇り、目には涙が浮かぶ。

「・・・何だ?その目は」

しかし、勇義は違った。目には希望が宿っており、口角が上がってすらいる。

「・・・お前は、出久をナメ過ぎだよ」

「何だと?」

勇義の言葉に、女は眉を顰めた。

「どのような輩でも、あの呪いの壁を突破する事は出来ない。呪いの概念を凝縮して固形化したものだ。寧ろ、触れる事すらままなるまい」

「どぉかな、そりゃぁ・・・」

 

─バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!─

 

唐突に、結界から爆音が鳴り響く。音の元を見てみれば、何らかのエネルギーが結界にぶつけられていた。

「何だとッ!?」

「ほぉら来た」

女は驚き、勇義はニヤリと笑う。女の失敗は・・・

 

──極光!──

─バキンッ─

 

「よぉ勇義。助けに来たぜ」

出久に、常識の物差しを当て填めた事だ。

 

(出久サイド)

 

「よぉ勇義。助けに来たぜ」

神獣鏡を解除し、大きく首を回す。

「プギャー、飛行は速いよ飛行はぁ!!」

「煩い」

遅れて来たゲンムがボヤくが、んな事ぁどうでも良い。で、現状は・・・

 

・ベンチに縛られてる勇義

・勇義を縛る鎖に手を掛けてる水橋パルスィ

・黒いローブを纏った謎の女

 

・・・どういう状況だコレ。誘拐した張本人が何故か涙目だし・・・

「チッ、化け物め・・・ならば!」

 

─パキッ─

 

ローブの女がフィンガースナップした。何かの合図か?

「・・・」

【カース!】

「ぱ、パルスィ!?」

その瞬間、パルスィの顔から表情が抜け落ちた。そしてメモリを取り出し、カースドーパントに変身する。

「・・・成る程、大t」

「大体分かっちゃった」

「セリフを盗るな。そして常盤ソウゴみたいな言い回しするな」

まぁゲンムが言う通り、理解は出来た。

恐らく、洗脳や催眠の類だろうな。ならば、水橋パルスィは悪くない訳だ。

「行くぞ!」

「逝っちゃうぜ!」

「逝くな」

イントネーションが違う─スカンッ!─って危なッ!また五寸釘かよ・・・

「チッ、どうやらお約束は通じないらしい。ちゃっちゃとやるぞ」

【ガングニールβ!】

「詠装ッ!」

 

─I'm that Smile Guardian GUNGNIR tron~♪─

 

ガングニールを纏い、拳を握る。

『キィィエァアァァァァァアッ!!』

カースは死装束の中から大量に呪符を取り出し、握り締めてから投げつけて来た。

「ゲンムッ!止めろッ!」

「当たり前田のクラッカー!」

 

─ピュルルアァーンッ!ピュルルアァーンッ!─

 

【クゥリティカァル・デァッド!!】

ゲンムの分身で、呪符受け止める。しかし・・・

『ヴォアアァアァァァァ!』

「ッ!」

「あ~ぁあ、ホントに呪いって奴はエロ漫画御用達なんだから」

飛んで来た呪符は分身に張り付き、乗っ取られてしまった。

「チッ、殭屍(きょうし)化しちまったか。分身肉壁は悪手だったな」

しかもデップーは格闘術も得意だから、殭屍もそれを使えるだろう。本当に厄介だ。だから・・・

「ゲンム!一掃するから下がってろ!」

「合点承知の助!」

ゲンムを下がらせ、メモリを召喚。腰のマキシマムスロットに叩き込み、マキシマムドライブを発動する。

【ツァンダー!マキシマムドライブ!】

「ハァァァァァァァァァアッ!!」

 

─バヂヂッギジジジジジジッバヂヂヂッ!!─

 

頭上に生成した雷雲からの落雷を、突き上げた拳で受けてエネルギーをチャージ。そして雷を纏った右腕をジャマダハルのように変形させ、殭屍ゲンムの群れに向けて突き出した。

 

──我流!サンダーブレェク!!──

 

─ビッシャァァァァァァァンッッ!!!!─

 

突き出された拳は雷光の槍と化し、ゲンムの群れを貫く。その間も絶えず頭部の3本角で雷を受け続け、供給を止めない。結果、10秒程度でゲンムの群れは殲滅出来た。

殭屍が雷に弱いってのは、どうやら本当だったらしい。

「チッ、やはり化け物だな・・・殺されては堪らん」

女が金色のカードのような物を翳すと、空間に穴が開いた。黒霧のワープゲートにも似たそれに女が飛び込むと、穴はすぐに塞がってしまう。

「成る程、あぁやって入って来たのか。兎に角、今は水橋パルスィの救助が先だ!オラァッ!!」

現状の打開を優先し、カースドーパントをブン殴った。

「ヴッウッッ!?!?ゴヘァッ!?」

その瞬間、俺の腹に鈍痛が走る。

「ゴッフゲフッ・・・こ、れぁ・・・」

痛みが走った場所は、丁度俺の拳が当たった場所・・・まさか!?

「ぬぅ・・・外的刺激に含まれる敵対心・害意を呪詛として受け取り・・・呪詛返しとして、俺に撃ち返していやがるのかッ・・・!」

しかもこのダメージ、カースドーパントは防御力がかなり低いと見た。殴れば殴る程俺にダメージが入り、更にドーパントの素体にされている水橋パルスィにも負担がかかる。チッ、厄介なドーパントだぜ・・・

 

─ドックンッ─

 

「カッ!?」

「どうした出久!?」

な、何だ!?心臓がッ 焼け ように ついッ・・・!

 

───おにいさん・・・どうして?───

 

ッ!?き、君は!あの時の・・・

 

───熱かった・・・苦しかった・・・ねぇ・・・───

 

───Dぉうsて、たsけtぇくlぇなかttたnぉ?───

 

「うぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!?!?!?」

 

呪いが、溢れ出す・・・

 

──【Dainsleif!】──

 

(NOサイド)

 

「オイ出久!どうしたってんだよ!?」

エターナルに起こった異変に、ゲンムが叫ぶ。その視線の先にいるのは、禍々しい真っ黒な影だった。

 

血のように赤黒く染まった複眼。

 

コンバットベルトが消し飛び、闇色に染まった装甲。

 

刺々しくなった全身のアーマー。

 

胸部に開く4つの目。

 

そして、蒼く燃え上がる両手足。

 

誰がどう見ても、まともでないのは一目瞭然だった。

「呪いに触発されて鎧が呪いの装備になりましたとかクッソありがちなシナリオ!つかこの先そんなに考えてないだろ!いい加減にしろ!」

「ゴァアアアアアアアアアッッッ!!!!」

ゲンムに向けて、エターナルが吠える。そしてネコ科動物のように両手を着き、一気に飛びかかった。

「危なッ!?」

すんでの所で爪を躱すゲンム。しかしエターナルは地面に指を突き立ててブレーキを掛け、再びゲンムに襲い掛かる。

「ガァァァァアアアアアアアアッ!!!!」

「アベシッ!ソガシッ!ヤッダッバァーッ!?アァン!オォン!アァッハァッ!」

今度は拳のラッシュであり、数百の残像をも引くパンチの雨霰でゲンムは汚い悲鳴を上げながら吹っ飛ばされた。

「・・・もう許せるぞオイ!もう許さねぇからな!!(迫真)」

ここに来て、デップーがキレる。赤と青のオッドアイが鋭く光り、ドライバーのABボタンを乱暴に叩いた。

 

─ピュルルアァーンッ!ピュルルアァーンッ!ピュルルアァーンッ!ピュルルアァーンッ!─

 

アラート音が響き、ゲンムを黒紫の毒靄が包む。その中でゲンムはBボタンを押し込んだ。

【クゥリティカァル・デァッド!!】

すると再びゲンムの分身が、今度は2体現れる。

 

─ガキンッ ギャリッ バキンッ ガキンッ─

 

「ゴァアッ!?」

分身は素早く駆け回り、擦れ違い様にエターナルを引っ掻いた。そしてよろめいたエターナルの両腕を掴み、動けないよう拘束する。

「いい加減~ン・・・」

そこに、本体のゲンムが歩み寄って来た。その右手には、毒々しい黄色のノイズが走っている。

 

「目ェ覚ませェ!!」

 

──デンジャラス・クロウ!!──

 

ゲンムはその爪を、エターナルの胸に叩き込んだ。

「グアァアアアアアアアッ!?!?」

「悔い†改めて!!(完全勝利)」

爪から流れ込むウィルスプログラムによりガングニールβメモリの機能が停止し、シンフォニックスタイルが解除されてメモリも排出される。

「ッカハァ・・・ハァッ、ハァッ・・・た、助かったぜ、ゲンム」

 

─バヂッ─

 

「なっ!?」

礼を言うエターナルだったが、その瞬間エターナルメモリから放電が発生。ガイアアーマーが分解し、変身が解除されてしまった。

「くっ、シンフォニックだけバグらせたつもりだったが・・・」

「・・・いや、ありがとうゲンム。お陰で・・・勝利の法則が決まった!」

出久は重い腰を上げて立ち、エターナルメモリを仕舞った。

そして別のメモリを取り出し、スタートアップスイッチを押す。

【スカルッ!】

ガイアウィスパーがメモリの名を告げ、出久の髪に銀と黒紫のメッシュが入った。

そして出久はそのメモリをドライバーに装填し、スロットを倒す。

「変身」

【スカルッ!~♪~!】

出久の身体は黒と燻銀の装甲に包まれ、首元からは白いボロボロのマフラーが伸びた。

そして頭蓋骨を模した頭部に稲妻形のひび割れ模様が入り、黒い複眼に紫の波紋が広がる。

「あ、お揃い」

ゲンムの言う通り、骸骨をモチーフにした風貌。そのライダーの名は・・・

「仮面ライダー、スカル

自らを骸として戦う仮面ライダー。その戦士が今、この世界に現れた。

 

(出久サイド)

 

「今助けるぞ、Lady」

俺は中身の冷え切った額に左手を添え、カースドーパントに向けて駆け出す。

『キアァァァァアアアッ!!』

それに対し、カースは再び呪符と五寸釘を飛ばして来た。

「フンッ」

 

─ズキュキュキュキュンッ!ボボボボボボンッ!─

 

右手に召喚したゴツい拳銃(スカルマグナム)で迎撃する。すると呪符が爆発を起こした。どうやら爆炎を発生させる血呪・・・《爆符》だったらしい。

『キィィエァアァァァァァアッ!!』

ならばと、今度は藁人形まで飛ばして来た。勿論、呪符と五寸釘もだ。

だが、的が多いなら手数を増やせば良いだけの事。

「フッ!ハッ!」

左手にトリガーマグナムも召喚し、二丁拳銃で迎撃する。*1

 

─ズガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!─

 

『キャアアアアァァァァァアッ!!』

堪忍袋の尾が切れたのか、カースが右腕から此方に向けて緑の火炎弾を放って来た。それをトリガーマグナムのエネルギー弾で撃ち抜き、カースの肩をスカルマグナムで狙撃して怯ませる。

『ギィッ!?』

「お前の呪詛返しは無駄だ。骸骨(スカル)は痛みを感じない。

・・・鳴海荘吉(おやっさん)曰わく、『変身する事は一時的に死ぬ事』、らしい。そして・・・君の死は、もう直ぐ終わる。ゲンム!」

「あいよぉ!」

『キィッ!?』

俺の指示に従い、ゲンムはカースを羽交い締めにした。腕が使えないせいで、カースもゲンムを攻撃出来ない。

「これで、終わりだ」

 

─ガシャッ─

 

俺はスカルマグナムにビートルフォンをセットし、マグナムを折り曲げてマキシマムスロットを展開。そこにドライバーから抜き取ったスカルメモリを装填し、マグナムを一直線形のマキシマムモードに戻した。

【スカルッ!マキシマムドライブ!】

更に・・・

【ユニコーン!マキシマムドライブ!】

ビートルフォンのメモリスロットにはユニコーンを装填。ツインマキシマムを発動し、そのエネルギーをビートルフォンのエネルギー収束装置で圧縮する。

「スカル・ビートルイレイザー・・・」

そしてカースの心臓に照準を合わせ、引き金を引き絞った。

 

─シュビッ!─

 

『カッ・・・』

一転収束されたエネルギーレーザーはカースの心臓・・・カースメモリを正確に撃ち抜き、変身を解除させた。それにより、勇義を縛っていた鎖も溶けるように消滅する。

「ぱ、パルスィ!」

「お~よしよし大丈夫大丈夫。出久の注射は一発でよくキクから」

【ガッシューン・・・(ガシャット)】

【ガッシューン・・・(ドライバー)】

「危ないクスリみたいな言い方するな。ただの治療だ」

俺は変身解除し、勇義が抱えている水橋パルスィを簡単に触診する。

呼吸・・・異常無し。脈拍・・・異常無し。うん、身体は大丈夫だな。

「見た所大丈夫だが、念の為だ。永遠亭に運ぼう」

【ゾーン!マキシマムドライブ!】

俺はエターナルエッジを取り出し、ゾーンメモリを装填した。

「俺ちゃんも連れてって~」

「コレ連れて行ける上限2人なんだわ。残念でした」

「ヴゾダドンダゴドォォォンッ!!」

 

─────

────

───

──

(NOサイド)

 

「・・・ん」

その金髪の少女の意識は、習慣付けられた覚醒リズムに則り浮上した。目は開けていないものの、身体を包む柔らかい感触は布団であろう事が何となく分かった。

「ここ、は・・・」

パルスィがゆっくり目を開けると、板張りの茶色い天井が目に入る。

「知らない、天井・・・」

口を突いて出たこの呟きの元ネタを、パルスィは知らない。

そしてその視界の端には、赤い三角形がユラユラと揺れていた。

「・・・勇、義」

言わずもがな、勇義の角だ。彼女が寝かされているベッドの横で、勇義は腕を組み船を漕いで眠っている。

「ん・・・パル、スィ?」

その勇義の目が、薄ボンヤリながら開かれた。

「勇義・・・」

「・・・ッ!パルスィ!起きたのかい!?」

自らの名を呼ぶパルスィの声に、勇義の意識は一拍置いて一気に覚醒する。

「ん、起きた・・・」

「ハァ、良かった~!」

「わぷっ!?」

勇義は目に涙を浮かべ、パルスィを抱き締めて頭をワシャワシャと撫でる。その豊満なバストに顔が包まれ、パルスィは堪らずタップした。

「あぁ、ゴメンよ?」

「ぷはっ!も~ぅ・・・このでっかいおっぱい、嫉ましいわね・・・」

憎たらしげな表情で勇義の胸をつつくパルスィ。だが、内心満更でも無さそうだ。

「・・・所で、ここは?」

「あ、そっか。説明しないとな!ここは永遠亭っつってな。出久の知り合いがやってる、訳有り専門の病院だよ」

まぁこれも聞いた話なんだが・・・と言いながら、勇義は角を引っ掻く。

照れたり困ったり、ハッキリ言えない事がある時の彼女の癖だ。

「凄い人脈。人望があるのね、妬ましい」

「アイツは、縁結びが上手いのさ!」

「あら、何て妬ましい奴なのかしら」

そう言いながらも、パルスィの口元は柔らかく微笑んでいた。

「・・・ねぇ、勇義。さっき、なのかしら。言い掛けてたのは・・・」

「っ!あ、あぁ・・・」

言い掛けていた事と言えば、勇義が何故よそよそしかったかについてである。

「・・・その、アタシにはちょっとした・・・秘密があってな。他の女とは、ちっと違って・・・」

「・・・別に、言いたくないなら・・・」

「いや、何というか・・・パルスィに隠し事してると、何となく水臭いと言うか・・・だから言い出せなくて、気まずかったから・・・」

赤くなった頬を掻き、視線を逸らす勇義。それを見たパルスィは、表情が暗くなってしまった。

「私、何かすごい勘違いしてたみたい・・・ハァ~もう・・・」

「あ~・・・で、良いか?」

「・・・うん」

落ち込み掛けたパルスィを持ち直させ、勇義は視線を少し泳がせながら鎖骨をなぞる。

「・・・今まで黙ってたけど・・・アタシ、実は・・・りょ・・・」

「・・・りょ?」

 

「両性具有、なんです・・・///」

 

「・・・え、あの両性具有?」

「うん・・・だから、ちょっと・・・その、それも、気まずくって・・・」

真っ赤になった顔を隠し、小さい声で告白する勇義。

「・・・それだけ?」

「・・・うぇ?」

キョトンとするパルスィに、勇義は思わず目を丸くする。

「このご時世、両性具有とか性転換とか、そんなの大して珍しく無いわよ。ったく、その見た目に反する可愛らしさ、嫉ましいわね」

嫉ましいとは言うものの、パルスィの顔には優しい微笑みが浮かんでいる。

「でも、一番嫉ましいのは・・・」

そして勇義の頬に手を添え、自分と目を合わせるパルスィ。

「気にしてるコンプレックスを私にさらけ出してくれた、その勇気よ♥」

 

─ちゅっ♥─

 

「っ////!?」

そのままキスして、勇義を抱き締めた。

「ぷはっ・・・ねぇ、勇義。お願いがあるの────

 

────私と、付き合って下さい!」

 

「ッ!!・・・はいッ!!」

パルスィの願いに、YESと答える勇義。

「フフッ、キマシタワ~♥」

「「ッ!?」」

突然聞こえて来た声に、2人の顔は一気に燃え上がった。

声の主は、扉を開けて入って来たアレクシア・・・レックスだった。

「でも、まだ水橋さんは中学三年生。せめて中学卒業までは、健全なお付き合いをね♪

呉々も、一線だけは超えないように」

「は、ハイッ!」

背筋を伸ばして返事をする勇義に、レックスはクスッと笑う。

「じゃ、応援してるからね!グッドラック!私はえーりん先生を呼んでくるから!」

祝福の言葉にサムズアップとウィンクを添え、レックスは部屋から出て行った。

「「・・・・・・」」

硬直した末にパルスィがとった行動は・・・

「・・・じゃあ、これから宜しくね!」

「お、おう!」

何も無かった事にし、流す事だった。

 

to be continued・・・

*1
マジンカイザーSKLのガン=カタを見てきて下さい。アレと同じ動きです。




「勇義、まさかのだよ」
『百合も両性具有も俺の性癖だよ』
「嫌いじゃないわ」
『ありがとよ・・・さて、今回漸く神獣鏡が出せました!』
「暴走としてイグナイトもな!」
『あと、スパロボネタも』
「サンダーブレイクだな。グレートマジンガーの技だったか」
『あぁ。グレートとは違って、ジャマダハルから撃ったがな』
「あと新技もね。スカル・ビートルイレイザーだっけ?」
『あぁ。ユニコーンフルボトルのベストマッチが消しゴムだったのと、技の効果から取った』
「さて、次回も早く書けよ?」
『頑張るわ。今回はご都合主義だらけでスイマセン!コメント頂けたらモチベーション上がります!』
「コメントくだちぃ」

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