僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
『と言うよりコレにしっくり来るライダーネタが無かったんだ』
「あの人お前と相性悪そうだもんな」
『気の利いたジョークなんて言えないからね』
(出久サイド)
「ったぁく、最近はトラブルばっかりだな」
放課後。自室の机にベタッと頬を着け、溜め息を吐く。
一昨日はセンチピード、昨日はカース。この分だと、これからもドーパントは増えるだろうな。
「にしても、ゲンムのエラープログラムウィルス・・・予想以上だったな」
エターナルメモリを変身不可に追い込むとは・・・まぁ一晩たったら内部処理システムのお陰で直ってたけど。しかし、ドーパント相手には有効か。生体コネクタを探さなきゃいけないが。
「イグナイトモジュールの制御が今後の課題として・・・さぁてと・・・問題は、インターンなんだよな~・・・」
今朝相澤先生が言ってた、『インターンは事前経験のある事務所に限る』ってのがな・・・
「だがぱっと見、何処もイマイチで俺のスタイルに合わないな・・・仕方無い。コネ使おう」
オールマイトなら良い事務所知ってるかも。
───
──
─
『紹介?』
「そう。オールマイトなら何処か良い所を知ってるかもと。死穢八斎會をマークしている所が望ましいんだが・・・」
電話越しに『ウムム・・・』と唸る声が聞こえる。オールマイトと連絡先交換してて良かった。*1
『・・・私の元
「・・・何か問題でも?」
『・・・』
・・・よっぽどだなオイ。
『まず1つ。相澤君から聞いたと思うが、現在は敵が活性化している。こんな危険な時期じゃなくても良いんじゃないか?』
「この時期だからこそだよ。この化け物の力、今使わずして何時使うというのだ。
それに、マイノリティながらガイアメモリが出回ってきてるって情報も入った。仮面ライダーとしては捨て置けない」
『あ・・・そうだね。うん』
ってオイ、そこまで考えて渋ってたんじゃないのかよ・・・
「・・・で、次は?」
『あぁ・・・2つ目は、君とは相性が悪そうだから』
「そりゃ俺の事気に入らんでしょ」
YouTubeでも、アンチコメしてる奴調べてみたらプロヒーローだったとか何十回じゃ利かないほどあったし。
『いや、彼はユーモアを大事にする人でね』
「俺、ジョークなら言えん事も無いぞ?」
主に黒いジョークだけど。
『・・・最後に、なんだが・・・』
・・・何だろう。オールマイトの事だから、何だか途轍もなくしょーもない理由な気がしてきた。
『・・・訳あって気まずい』
「んなこったろうと思った」
あ~ぁあ、やっぱりだよ。
「じゃあ、そこは無理なのか?」
『・・・いや!私が紹介する事は出来ないが・・・インターンで行った通形少年ならば!』
「・・・成る程」
通形先輩か・・・となると、恐らく予測タイプだな。
『近い内に通形少年にも頼んでみるよ』
「どうも」
『何の何の。じゃあね!』
「あぁ、また」
─ブツッ─
さて、楽しみだな・・・
─────
────
───
──
─
「ハァァァ・・・」
上裸の俺は
・・・日常用の感覚受容体が戦闘用に切り替わり、アッパードラッグをキメたかのように感覚が鋭敏化し始めた。
「フッ!」
─ゴシャッ ガコンッ グキッ─
掴み掛かって来たT2マスカレイドの股間に裏拳を叩き込み、下がった頭をアッパーで撃ち抜く。
─ドゴッ ベキッ─
そして膝を横から蹴り砕いてコメカミに膝を叩き込み、地面に倒して首を踏み折った。
だが、T2マスカレイドはまだまだいる。今度は正面から首を絞めてきた。
「ッシ!」
─ゴチュッ バキッ─
前蹴りで股間を潰し、左手で後頭部を、右手で額を掴む。そのまま勢い良く頭を回転させ、脊椎を首骨ごと破壊してダウンさせた。
さぁ、次は何が来る?
─ガチッ─
ほう、2人掛かりで抱き付きか。考えた方だが・・・まだまだだな。
─ゴチュッゴチュッ ゴキッ ガッガッガッガッガッガッ─
交互に膝蹴りで股間を潰し、右の奴はハイキックで首をへし折る。そしてもう片方は下がった頭を掴み、膝蹴りを6発叩き込んで顔面と肋骨を粉砕・陥没させた。
「って、次は真正面かよ」
正面から何の捻りも無く殴り掛かって来る間抜けなT2マスカレイドには・・・
─ジャクッ─
踏み込みから中指を突き出したカーヴィング・ナックルで喉笛を切り裂く。その顎を爪先で勢い良く蹴り上げると、首が千切れてフッ飛んで行った。
―ドッ!―
「くっ!?」
油断・・・背後から殴られ、俺はブッ飛ばされてしまう。しかし何とか受け身は取れた。
「やはり鈍ったか・・・」
殴り掛かってきたT2マスカレイドを合気道でいなして転ばし、頸椎を踏み砕く。これでラストだ。
「ひゅッ・・・」
「出久ちゃん、お疲れ様☆」
「ん、サンキュ」
京水姉さんが投げてくれたスポドリを飲み下し、ヴハッと息を吐いた。
「でも、急にどうしたの?突然、『分身を貸してくれ』なんて」
「あぁ、それね」
姉さんに渡されたタオルで滴る汗を拭い、その場に腰を下ろす。
「いやなに。最近、ちょっとばっかし日和って来ちゃったからさ。いざって時の為に、殺しの感覚も忘れないようにと思って」
伸脚しながら息を整え、京水姉さんにそう答えた。
「そう・・・」
京水姉さんは呟き、表情を曇らせる。
「ねぇ、出久ちゃん。何もこれ以上、闇に沈む事はないのよ?」
「・・・」
伸脚を止めて視線を上げれば、俺の目には京水姉さんの哀しげな、それでいて優しい顔が映った。
「殺しの
「・・・そっ、か・・・ありがとう、京水姉さん」
スクッと立ち上がってシャツに袖を通し、ベキッベキッと首を捻る。
「でも、違うんだ」
そして、俺は京水姉さんと真っ直ぐ目を合わせた。
「俺の強みは、躊躇の無い
肩を揺すって脱力し、腰をゴキゴキッと捩る。ベンチに座って凭れ掛かり、再び京水姉さんに視線を戻した。
「それにさ・・・これからどれだけ闇に堕ちようとも、俺はもう黒く染まりはしない」
「・・・大丈夫なの?」
「あぁ!」
強く答え、拳を握る。
「だって・・・どんな闇の中でも、俺には光が見えてるから」
脳裏に浮かぶ、三奈とフランの顔。次いで浮かぶ、心強い愉快な仲間達。
「だから今度は、俺が弱者を照らしたい・・・闇を抱いて、光になる!」
「ッ!」
息を呑む京水姉さん。
「・・・って、呪いの旋律に呑まれちまった俺が言うのもなんだがな。まずは、イグナイトの呪いを克服しなきゃ!」
「青臭くも逞しい!嫌いじゃないわァ~ン❤️」
「ありがと♪」
・・・京水姉さん、もしかしたらミッドナイトと仲良くなれるかもな。今の発言と言い、使う武器と言い・・・
「さて、気も引き締まったし・・・」
後は待つだけだ。
―――――
――――
―――
――
―
週末。俺はミリオ先輩と約束した通り、駅前で待ち合わせ中だ。
「やあ、緑谷君!」
「あぁ、ミリオ先輩」
そして、たった今合流した。
「じゃあ、付いてきてね!」
「りょーかい」
先輩の後を付いて行きながら、今回のインターン先のヒーローの情報を振り返ってみる。
コードネームはサー・ナイトアイ。
個性は《予知》。本棚で調べると・・・どうやら相手に接触しながら目を合わせる事で、一時間は相手の未来を三人称視点で見られるようだ。
但し、リキャストタイムは24時間。1日1回しか予知出来ないらしい。
しかしながら、個性を使わない戦闘でも先読み戦術が目立つ。相手の挙動を逸早く察知し、瞬時に出鼻を挫く。また、専用武器である超質量印鑑を投げ付けてくる為、腕力はパワースペックに関係する個性を持たないヒーローの中でもかなり強い方である。
「ねぇ、聞いてる?」
「ん、あぁすいません。今回、サー・ナイトアイについてソコソコ調べて来たんで。その情報を整理してました」
「そっか!まぁ何はともあれ、着いたよ!ここが、サーの事務所!」
お、もう着いてたのか。中々にデカいビルだな。
「良いかい?採用してもらいたければ、一回はサーを笑わせるんだ」
「そりゃまた随分難しい。ギャグは苦手だ」
「ハイこれ、合格祈願のお守り!安物だけどね!」
「ありがとう、貰っとく。だが神には滅多に祈らないんだ。どうせ叶えてくれないから。神様がいれば、争いの無い平和で退屈な世界になってたかもな」
「セミプロヒーローとしてその発言はどうなんだい?」
「敵を力で捩じ伏せるのがヒーローってもんだ。それに、戦争がなければここまで人間は発展しなかったと思うぞ」
進歩ってのは、欲と競争から始まるもんだ。
「・・・戦争についてどう思ってる?」
「知的生命の行き着く進化の突き当たりで起こらない筈の無い種全体による
「面白い意見だね」
そもそも、戦争を止めろって方が無理なんだよ。
生物は他種を敵と定めて競争する事で進化するが、本気で武装した人間の敵に成り得る生物は自然界には存在しない。銃や戦車、核爆弾だって使えるからな。人間に殺せない地球の原生生物は、いないと言って良いだろう。
ならば、口減らしも兼ねて同等の力を持つ同種と争って進化するしか無いって訳だ。
それに、子供なんかを巻き込むのは戴けないがな。
と言うか、子供がみーんな
「さぁて、オールマイトの元サイドキック。どんなヒーローなのやら・・・」
何時の間にか辿り着いていた、サー・ナイトアイの事務室。俺はその扉を開け・・・
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!も、もう勘弁しィヒヒヒヒヒヒ!」
「何だ、案外元気な声が出せるじゃないか」
・・・顔から表情が抜け落ちた。だが仕方無い。擽りマシンに磔にされてゲラゲラ笑っている女と、リモコン持ってそれを見てる男だぜ?ドン引くのが当然だと思う。
「ミリオ先輩、事務室と拷問部屋を間違えるのはインターン経験者としてどうなんだ?」
「ここが事務室で間違いないよ。バブルガール、また元気が足りなかったのかな?」
「また?あの拷問を日常的にやってんのか。イイご趣味で」
ユーモアをモットーにするヒーローは、拷問してまで笑わせるか。皮肉なもんだな。
「サー、連れてきました!」
「あぁ、ミリオか。そこの彼が・・・」
「コードネーム、メモリアル・ヘル。緑谷出久です。宜しくお願いします」
少し頭を下げ、軽く自己紹介。と言うか、何か聞いたことあるぞこの声。ヒーローの番組は見ないから、声を聞いたのは初めてなのに・・・何処で聞いたんだっけ?
「サー・ナイトアイだ。宜しく」
そう言って差し出された手。その握手に応じ、俺は笑顔を見せる。目を閉じるのも忘れずに。
「・・・さて、インターン希望だったな。志望動機は?」
手を離し、再び目を合わせた。どうやら、結構警戒してくれてるみたいだな。
そして気付いた。イマジンのジークと同じ声だわ。面白い事もあるもんだ。未来を改編する怪人と同じ声のヒーローは、これもまた未来視の能力か。
「最近、死穢八斎會がおかしな動きをしていると情報が入りましてね・・・マークしている所をオールマイトに聞いた所、ここを薦められました。それに、最近はドーパントも出始めています。この辺はどうなのか、その確認と言うか視察と言うか、そんな事も兼ねて」
「ふむ・・・用紙を渡しなさい」
「はい、これです」
俺が用紙を渡すと、サーは印鑑を取り出し・・・
―カンッ―
テーブルを叩いた。
「・・・」
―カンッ カンッ カンッ―
一向に用紙の上に朱肉の赤色が付かない。
「成る程、押すつもりは無いと」
「当然だ」
かなり即答だな。
「君の目的は分かった。死穢八斎會も、最近不穏な雰囲気があるのも事実・・・だが、君が私に与えてくれるメリットはあるのか?」
「一騎討万の戦力、その場で傷を癒し戦闘を続行出来る持続力、捕獲した敵から情報を引き出す虚偽無効の尋問能力、その他」
ヒーロー活動に有用なスキルを適当に挙げてみる。加えて拷問も得意だ。
「成る程・・・では、テストしてみよう。今から2分以内に、私の手からこの印を奪ってみせろ。どんな手段でも、奪いさえすれば良い。自分の運命を左右する書類には、自分で判を押すんだ」
「流石は元オールマイトの
ジョークでも飛ばしてみろと言われたらどうしようかと思った。正直、俺は即興でジョークを考えるのは苦手だ。こっちの方が、まだ可能性がある。
【シェンショウジン!】
そして、サーの能力から最適かと思われるシンフォニックメモリを召喚。スタートアップスイッチを押し、心臓に突き立てた。
「詠装」
―Love Shen syoujing EVOL zezzl・・・♪―
バイザー、レッグアーマー、スカートマントとショルダーマントが装着され、生身でのシンフォニックスタイルが完成する。そして二の腕から伸びる帯は、光の中で腕に巻き付けた。
林間学校以来だな、生身でギアを纏うのは。
―パキパキッ パキパキパキパキッ―
俺の命令が、ヘッドギアを介してマントに伝わる。その命令に従い、マントは銀色に変色して細かい粒子に分解し始めた。
「思ったより、使い易いな」
神獣鏡の力により、エターナルローブは微細な
その鏡面板を操り、廊下や窓から入ってくる光を乱反射させて目眩ましに使う。神獣鏡はただ反射するだけでなく、何と電磁波を増幅する事も出来るらしい。部屋は閃光手榴弾でも爆発したような凶悪な光量の閃光で包まれ、サーは網膜が焼けないよう手で眼を守った。
さぁ、開戦だ。
―NOサイド―
「ぬぅ・・・」
余りの眩しさに、サー・ナイトアイは思わず唸った。
彼が掛けている眼鏡には、こういった視界潰しの閃光をある程度カットする機能が設けられている。ある程度と言っても、一般的な閃光手榴弾程度なら問題無く眼を開け続けられる程の性能だ。
しかし、この閃光はその限界光量を易々と突き抜けてきた。
(確かに、私に目潰しは有効だ・・・)
ナイトアイは冷静に予測を開始する。
(私が閃光を弱点とする事は、データを閲覧し放題な彼には当然知られていただろう。実際、さっきの握手はあからさまに私の予知の条件を潰していた。そして、こうやって逸速く防御する事も恐らく承知だ。ならば・・・)
思考を巡らせながら、まずターゲットになるであろう印鑑を持った左手を胸に寄せる。
その瞬間、左肩を風が撫でた。
(一直線で狙って来たか)
閃光が収まった事を確認しながら、ナイトアイは落胆する。余りにもオーソドックス過ぎる、と。だが・・・
「ッ!!」
眼を開け、左を見ようと右腕のガードを外した時・・・彼は、眼前に迫る紫の
「フッ!」
右足軸回転と同時にスウェーバックし、胸元に迫る出久の手を回避する。
(確かに風圧を感じた筈・・・いや、今は敵前だ)
持ち前の判断力で敵前でのパニックを防ぎ、ナイトアイは出久を睨み付けた。
「おっと、どうしました?そんなに睨んで。気に入らない事でもありました?」
そう言って於ける出久を見据え、ナイトアイは油断無く構える。しかし、全く情報の無い状態では、ナイトアイはやはり不利だ。
(ふむ、かっちゃん並みに
一方で、出久もまた内心では冷や汗を流していた。今しがたのフェイント・・・腕の帯を振るった風圧偽装も、ギリギリながらほぼ完璧に躱されてしまったからだ。
「なら、ジョーカー切りますか」
出久がそう呟くと、無数の鏡面板が竜巻のように彼を覆う。
「また目眩ましか?」
呆れた口調で呟きながらも、ナイトアイは油断無く感覚を研ぎ澄ます。
―パキッ―
突如として響いたフィンガースナップ。それと共に鏡面板の竜巻は掻き消え、その中央がナイトアイの視界に収まった。
「ッ!?」
――幻惑――
そこに、出久の姿は無い。部屋中何処にも、あの少年の姿は無かった。
「何処に・・・ぐっ!?」
出久を探そうとナイトアイが周囲を見渡した時、その腕に違和感を覚える。
「な、何だ?」
その擽ったさやむず痒さにも似た違和感はどんどん大きくなり、10を数える間も無く痛みに変わった。
「何が起きて・・・」
―ジャクッ―
「ぐあぁぁぁぁッ!!?」
「サー!?」
その瞬間、その腕から銀の刃が出現し、皮を裂いて肉を貫く。余りの激痛にナイトアイは大きく叫ぶが、それでも印鑑を持つ指を開きはしなかった。
―パシッ―
しかし、それでも意識がそれた事には変わり無い。印鑑を見えないナニカが巻き取り、ナイトアイの手から奪う。
―カンッ―
「これで、俺の勝ちです」
そして何もないように見えていた空間が揺らいで出久が現れ、鏡面板が剥がれて可視化した帯から印鑑を回収、用紙に押した。
そして腕を振るい、刃として使った鏡面板を回収する。
「・・・してやられたな」
「全くだ。貴方らしくないな、手の内の知れない相手に何でもありを許すなんて。だからこうなる」
シンフォニックスタイルを解除し、出久はナイトアイに向き直った。
【ヒーリング!マキシマムドライブ!】
エターナルエッジで癒しの波動を飛ばし、ナイトアイのズタズタになった腕を治す。
「緑谷君、ちょっと、いやかーなーり、やり過ぎだよね」
ミリオはやり過ぎだと言い、出久の肩を掴んだ。しかし、振り向いた出久の眼を見て冷や汗を吹き出す。
「やり過ぎと言うならば、俺の容赦無さを知っていながらその《やり過ぎ》を封じる為の制約を付けなかったサー・ナイトアイの落ち度だ。どんな手段でも使って良いなら、俺はまず殺傷を選ぶ。実際選んだ」
その鋭い眼に、ミリオは寒気を覚えた。その眼差しは、敵の殺傷に何の躊躇も情けも無いモノ・・・凶悪な
「今、先輩はこう感じただろう。《コイツはヒーローに向かない》、と」
「ッ!!」
事実だ。ミリオは出久の冷た過ぎる眼に、ヒーローとは対極の存在を当て填めたのだから。
「別に否定はしない。俺みたいな人格のヒーロー資格者は、少なくとも日本じゃ聞いた事が無いからな。だが・・・キレイゴトだけじゃ、救えないモノもあるんだよ」
興奮気味なのか、出久の
「何かを救うには、時にはそれ相応に手を汚す事だってしなきゃあいけない。それは分かるな?ここはお伽噺話の世界じゃない、ご都合主義が通じない
一般人が出来ない汚れ仕事を伴う救済・・・ソレを行うのが
例え救いを求めまいと、俺には関係無い。勝手に、利己的に、俺は救う。最終的に心からの笑顔さえ見られれば、それで良い。救えない後悔より、救った後の怨みや面倒事の悩みの方が何倍も軽い」
出久の口から出る言葉に、その理性の裏に潜む狂気の断片が混じり始めた。
「・・・狂気的だな」
「平和の象徴、なんて人間が背負うべきじゃない二つ名を笑いながら背負ってたオールマイトも十分狂気に満ちてますよ」
「・・・何?」
オールマイトの名が出た途端、ナイトアイの眼の色が変わる。
「恐らく・・・
(だから何もかも抱え込んで、結局代わりの居ない人間になっちまったんだ)
本来の世界線では出久自身もそうなっていた事を、デッドプール以外に知る者は居ない。
「・・・良いだろう。インターンの受け入れを認める」
「(いや、当然だろ。提示された条件を俺がクリアしたんだから)どうも有り難う御座います」
頭の中は失礼極まりないが、一応空気を読んだ出久。
「正直、君の事を嘗めていたよ」
「知ってますよ。
にしても、オールマイトの大ファンなんですねぇ。この部屋、よく見れば何処もかしこもオールマイトグッズだらけだ。興味無いから詳しくは知りませんけど、大体が限定ものと見た。いやはや尊敬しますね」
これは本心である。出久は他者を害さないモノであれば、愛に対して敬意を表する事が信条なのだ。
「では、俺はこのプリントを提出してきます。有り難うございました」
そう言って頭を下げ、出久は部屋を出る。残されたのはナイトアイ、ミリオ、そして磔にされたまま完全に空気になっていたバブルガールだけだ。
「・・・どう思います?彼は」
「・・・正直、私とは気が合わないな」
ミリオの質問に、ナイトアイは簡潔な答えを返した。
「ですよねぇ・・・」
「だが、彼が強いのも事実だ。彼が自分で言ったが、切れる
「
「・・・ふむ、言い得て妙だな」
「あれ?またスベっちゃった?」
「私、何時まで磔なんだろ・・・」
バブルガールのその呟きは、ナイトアイの耳に届いた。そして彼はポケットから、擽り拷問マシンのリモコンを取り出す。
「・・・黙ってりゃ良かったな」
虚ろなバブルガールの眼はただ、ボタンに力を掛けるナイトアイの親指を眺めるだけだった。
to be continued・・・
「遅いよ」
『ぐうの音も出ない』
「お前が書き始めたの、先週のジオウで克己ちゃんが出たからだよな?」
『あぁ、テンションが上がって』
「で、仕上がったのが今日と」
『すいません許してください』
「ん?今何でもするって言っt『無いです』オォン」
『ったく謝ってんのに』
「喧しい。
コホン・・・では、次回も宜しく!」
『お楽しみに!』