僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
『ごめんなさいm(_ _)m』
「いいから指動かせやあァん?」
『仰せのままにBOSS』
―バヂヂヂヂヂッ!!―
「ぬあぁぁぁぁあッ!?」
インターン後の放課後。体育館γにて、出久は絶叫していた。エターナルに変身しているので、痛ましさが倍増だ。
「出久、無理しないで・・・」
「そうだよ。身体壊したら・・・」
三奈とフランが心配して声を掛けるが、エターナルは息を整えて立ち上がる。
「心配、無用・・・人外の化け物と成り果てたこの身ッ!これしきの苦痛で砕けはしないッ!!」
「いや限界だって確実に!」
「言葉遣いおかしくなってるもん!」
「まだだッ!詠装ッ!!」
【ガングニールβ!】
「I'm that Smile Guardian GUNGNIR tro~ォォォォン゛ッ!!」
恋人達の制止を振り切り、エターナルは再びガングニールを纏った。そしてすかさず胸を叩く。
―ヴォアン!―
「ぐぅッ!」
胸の中央からは赤黒いエネルギーが溢れ出し、ガングニールの鎧に蛇の如く絡み付いた。
「ヴォオ゛ァア゛アアアアアッ!!抜ッ剣ッ!!」
そのエネルギーは明確に蛇龍の形を取り、コンバットベルトを噛み千切ってエターナルの首筋、脇腹、太股に喰らい付いた。
牙によって付けられた鎧の傷からそのエネルギーが染み込み、白かったガイアアーマーは真っ黒なDAIN・カースアーマーに変質。複眼はファングジョーカーのように鋭く吊り上がり、鮮血のような紅蓮に染まった。そして呪いが起爆剤になったかの如く、両手脚の蒼炎が燃え上がる。
「ぐッ・・・がァッ!?」
―バヂヂヂヂヂッ!!―
しかし、10秒と持たずにオーバーフローが発生。胸からシンフォニックメモリが弾き出され、変身解除してしまった。
「かっ・・・ハッ・・・ハッ・・・う゛ッ!?」
「「出久ッ!?」」
出久は脂汗を垂らし、前のめりに倒れ込む。
自分を抱き起こして揺する恋人達をぼんやりと見ながら、出久の意識は暗転した。
(出久サイド)
(・・・また、ここか・・・)
暗く、暗く・・・より、暗い。水銀のように重く粘る闇の中を、俺は落ち続ける。
やがて、周りが紅く染まってきた。そろそろ、着く頃か・・・
『ヒーローなんだろッ!?何で助けに行かないんだよッ!!』
見えてきたのは、
だが、俺はこの後をよく知っている。
――カチッ――
「・・・何?」
瞬間、総てが停止した。燃え盛る炎、ニヤつくゴミ共、手を伸ばすエターナル・・・何度見ても慣れる事が無かった悪夢の総てがモノクロになり、凍り付いたように止まっている。
「これは、一体・・・?」
『これが、お前のオリジンだ』
「ッ!?」
エコー掛かった冷たい声に思わず振り向くと、そこには俺に似たナニカが立っていた。
いや、似ていると言うよりも、ある意味俺と真逆と言うべきか。髪はオレンジ、肌は真っ黒。着ているジャケットは真っ白で、ズボンも同様。左目は黒い眼球にオレンジの光彩だが、右目は逆に白眼球黒光彩だ。
左右も色も反転した、俺のネガとも呼べる見た目のソイツ。こんな奴は、今まで見た事が無い。
「お前、何者だ?」
『・・・フフッ』
俺の質問に、何が可笑しいのか笑い出すネガ。
「おい、俺は可笑しな事を聞いちまったか?」
『フフフッ・・・いいや?至極当然の質問だ。そして、俺はそれに答えよう』
ソイツは気味悪く笑いながら口を開いた。
『俺は、お前が《呪い》と呼ぶ存在
或いは《力》
或いは《矛》
或いは《狂気》
或いは《闇》
そして《俺》は・・・』
―――――《お前》だ―――――
最後に俺を指差すネガ。
どうやら性格は俺に近いようだ。このタイミングで格好付けをブッ込んできやがった。
「ほぉ、随分と洒落た自己紹介じゃないか。
にしても、呪い、狂気か・・・成る程。俺の中にある狂気が、ダインスレイフの呪いで人格化したモノって感じか」
『ふははッ♪よく分かったね!』
やっぱり・・・だが、それにしてはかなりおちゃらけていると言うか・・・
『呪いって感じがしない、かい?』
「あぁ。全くそんな感じがしないな」
『当然だよ。お前の狂気は、ただの破壊衝動なんかじゃない。
敵に対する容赦の無さ、殺しへの躊躇の無さ、異常なまでの苦痛耐性、他者を救う為に見せる非情さ・・・こんな所かな』
「ふむ、成る程。確かに思い当たる事だらけだな」
道理で狂暴じゃ無い訳だ。
「しかし、イグナイトモジュールが毎回これを見せてくるのはキツいモノがあるな」
『仕方無いよ。本来、シンフォギアの暴走には強い怒りや憎悪が必要。それをダインスレイフの呪詛で代用してるから、狂暴な破壊衝動の呪詛が直接流れ込んでくる。そのせいで、使用者が過去に経験した憎悪を追体験してしまうんだよ』
「当然っちゃ当然の効果だが、嫌なもんだよな。自分の無力さを、無理矢理叩き付けられるんだから」
停止しているから落ち着いているものの、やはりこの悪夢には未だに精神を抉られる。
『でも、きっと大丈夫さ。お前は強いし、独りじゃ無いだろ?』
・・・確かに、昔ほど孤独じゃない。
『なら、大丈夫だろうさ。お前は自分を客観的に見られる方だ。きっと呪いを乗り越えられる』
・・・コイツ、本当に狂気の人格なのか?こんなに好評価を貰えるとは思わなかったが・・・
『それは・・・うん。お前の人格そのものに狂気が癒着しすぎて、その欠片から生まれたのが俺だからかな♪』
「・・・俺、よく自我を保ててるな」
『こればっかりは才能としか言えないね』
もしかして、元から発狂してたのか?・・・幼少期の経験上、十分有り得るな。
『さて、そろそろお目覚めだ。じゃあね』
「うぇっ?どういう――――」
―――――
――――
―――
――
―
「・・・こう言う事か」
目覚めると、俺はベッドに寝かされていた。この真っ白な天井とカーテンは、間違い無く保健室だ。お目覚めとは、現実世界での覚醒の事だったらしい。
「よ、っと・・・うげっ、もう真っ暗じゃねぇか」
靴を履いてベッドから下り窓の外を見やれば、完全に日が暮れて真っ暗になっている。
「リカ婆は・・・居ないか。取り敢えず、ハイツアライアンスに戻ろう。三奈やフランも心配してるだろうし」
俺は『有り難う御座いました』と机のメモ用紙に書き置きし、保健室を出た。窓から飛び降りて。
「よっと・・・うおっ、ちっと冷えるか。ま、もう秋だしな」
4m程の高さから発生した位置エネルギーを全身のバネで上手く逃がして立ち上がり、遅れて感じた寒さに思わず身震いする。ゾーンで帰ればすぐだが・・・折角だ。今回の件を整理しながら歩いて行こう。
まず、昨日俺が会ったエリちゃんとオーバーホール。
エリちゃんは恐らく、拷問等の苦痛と人死にへの恐怖による洗脳に縛られているだろう。と言う事はつまり、オーバーホールにとってはそれ程までに手放したくない存在だと言う事だ。それでいて、逃がさない為に最も合理的な方法である四肢欠損が無い・・・だが、両腕には傷跡を隠す包帯。オーバーホールなら傷跡も消せるが、敢えて残して楔にしてるって所か。
そしてヴォジャノーイ。あいつの口振りからすると、死穢八斎會と行動しているのは自分の意思ではない。彼処まで嫌悪感を抱く相手と行動せざるを得ないとなれば、答えは自ずと絞られる。恐らく、あいつが所属する組織の
そしてヴォジャノーイが同じ移動手段を持っていた事から、その組織はパルスィにメモリを使わせたあの魔女も所属している筈だ。
あの魔女は、パルスィを実験台にしていた。つまり、作ったメモリのテストをしていたのだ。
メモリをテスト・・・何の為か等、火を見るより明らかだろう。
商品開発の実験だ。つまり、その組織とヴォジャノーイを通して繋がっている死穢八斎會には確実にドーパントがいる。
そして、メガネウラドーパントに変身した死柄木・・・恐らく、奴等にメモリを売ったのもヴォジャノーイの組織だ。今後は、敵連合のドーパント化も覚悟しておかなければいけない。実際、アームズドーパントのスピナーも敵連合に所属しているからな・・・
「・・・何だ。クールになりさえすれば、結構頭が回るじゃないか」
冷たい夜風に当たって焦りが抜けたからか、漸く何時もの思考回路が復活し始めた。エリちゃんを救えなかった事が、やはりかなりのストレスになっていたようだ。
「じゃ、お次は・・・オーバーホールの目的」
但し、これにはまだ判断材料が全く無い。恐らくエリちゃんの個性を利用するのだろうが・・・
「仕方無い。これは一旦保留だ」
分からないモノは幾ら考えようと分からん。フィリップ先輩流に言えば、《キーワードが足りない》。
「・・・ん」
と、そんな事を考えている内にハイツアライアンスが見えてきた。が・・・
「あ、兄さん・・・」
「・・・」
入り口前で、兄さんが柱に凭れながら腕を組んでいる。その眼は鋭く、直感的に怒っているんだと理解出来た。そして、その怒りの種も。
「・・・俺が今どう思っているか、分かるな?出久」
「あぁ、分かってる。兄さんの気持ちも、何をしなきゃいけないかも」
兄さんの問い掛けに答え、俺は一歩引いて頭を下げた。
「周りを頼らず、無茶をして・・・心配させて、ごめんなさい。殴られる覚悟は出来てる」
「・・・ハァ、そうか」
兄さんは溜め息を吐き、背中で柱をトンと弾いて俺に歩み寄る。
「ふんっ」
―どすっ―
「あいたっ」
予想に反して、振り下ろされたのはチョップだった。それも全く力が入っていない、腕の重量のみのチョップ。
「それが出来ているなら、早くお前の女達に殴られてこい」
「っ!・・・あぁ、分かった!」
「よし、それで良い!」
そう言って兄さんは、俺の背中をバシッと叩く。その勢いに乗り、俺は最も心配させた彼女達の部屋へと走り出し――――
「こら緑谷君ッ!廊下は走ってはいけないぞッ!!」
飯田ァ・・・頼むからさぁ、空気読んでくれよ・・・あ~ぁあ、締まらねぇなぁ・・・
(NOサイド)
「・・・うん、分かった。ありがとね・・・うん、じゃあね」
―ピッ―
三奈は通話を切り、スタッグフォンを畳む。言わずもがな、電話相手は克己だ。
「どうだって?三奈ちゃん」
「もうすぐ来るって」
フランの質問に、三奈はスタッグフォン上に放り投げながら答えた。さながらサイガである。
「・・・三奈ちゃん」
「うん、来たね」
身体に馴染むガイアメモリを使っているせいか、2人共に感覚が常人より鋭い。*1それ故、出久程では無いにしろ身体能力が強化されているのだ。その聴覚が、出久の足音を敏感に聞き取った。
―コンコンッ―
「入って」
律儀なノックに入室許可で答えると、彼女達の恋人が扉を押して入って来る。
「・・・ただいま」
「うん、お帰り」
極めて自然な挨拶だが、三奈とフランの表情は当然ながら芳しくない。それは、出久にとっても想定内だ。
「出久。アタシ達は今、怒ってるんだよね・・・何でか、分かる?」
「あぁ。俺が焦って無理して、心配させたから。それと・・・頼れる相手が沢山居るのに、自分だけで抱え込んだ事」
眼を鋭く尖らせる三奈とフランを見詰め、出久は自分の罪を数える。
「そう。それがアタシ達の怒りの種だよ」
「恋人なんだから、頼ってくれても良いのにさ」
2人の言葉にぐうの音も出ず、出久は気まずそうな顔をして視線を下ろした。
「だから・・・」
「ちょっくら・・・」
三奈とフランは出久に駆け寄り、三奈は右手に、フランは左手に腕を組む。
「「歯ァ食いしばれッ!!」」
「うぇっ―ガガンッ!―ヴォッ!?」
出久の両頬を、2人の鉄拳が慈悲も容赦も欠片無く打ち抜いた。前述の通り、2人の身体能力はメモリとの適合で高まっている。しかもそんな拳が左右からサンドイッチした為、衝撃は余す事無く出久の頬肉と頬骨に吸収された。
「い、痛い・・・」
結果は言わずもがな、激痛である。
「頼ってくれなかった時にアタシ達が感じた寂しさの方がよっぽど痛かったよッ!」
「・・・そうだよなぁ・・・ごめんよ、三奈、フラン」
視線を上げ、出久は2人に謝罪する。既に頬の打撲はドーパントの体質で再生しており、何時もと変わらぬ顔に戻っていた。
「分かったなら、良い。だからさ・・・」
出久の左頬を、今度は優しく撫でる三奈。フランも出久の右腕に抱き付き頬擦りする。
「寂しかった分、キスして・・・❤️」
そう言って、三奈は妖艶に微笑んだ。その誘い、出久が断るかと言えば・・・
「仰せのままに。愛しき君よ」
当然、否である。
「あむっ、ちゅっじゅるっ、ちゅぷっ・・・ぷあ・・・私も、忘れちゃやだよ?べぇ~ろ❤️」
フランは出久の首に手を回し、右の首筋に吸い付いた。そして唾液を擦り込むように啄み、最後に舌で舐め上げる。
「あぁ・・・さて、キスだけじゃ終わりそうにないな。長い夜になりそうだぜ」
言葉では呆れながらも、2人を抱えてベッドに向かう出久の足取りは、とても軽い物だった。
「何か、うん。色々ひどくね?」
『俺もそう思うよ。でも許してくれ』
「俺ちゃんを出せば許してやらん事も無い」
『そればっかりは分からん』
「