僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2   作:エターナルドーパント

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「俺ちゃんの出番が日に日に少なくなってる気がするんだけど」
『悪いが、お前は空気をぶっ壊すぶんにはやり易いけど他が複雑なんだよ。それに結構大幅に改編してるから、ストーリーでもう手一杯だ』


第29話・連合見敵/最悪のO

「おいまた来たぞ!」

ロックロックの叫びが、薄暗い地下空間に木霊する。その空間は四方八方全てがグネグネと蠢いており、ヒーロー達を圧殺せんと迫っていた。

「ローグ!支えろ!」

「了解!」

【クラック・アップ・フィニッシュ!!】

グリスの背後にローグが回り込み、レンチレバーを叩き下ろしてクラックアップフィニッシュを発動。両手足から鰐の顎を象ったエネルギーが現れ、床や壁に喰らい着く。

「全員耳塞いどけェ!」

【スクラップ・フィニッシュウ!!】

「爆裂!GUR-IXPLOSION(グリィクスプロージョン)ッ!!」

マシンパックショルダーと腕の噴出孔を前に向け、連鎖爆発する特殊なヴァリアブルゼリーを高圧で噴射。向かってくる壁を穿ち、木っ端微塵に破壊した。

 

―ゾァァァァ―

 

「あ?何だ、急に開けたぞ?」

「ッ!危ない!」

蠢きうねっていた壁が、急激に引き下がる。それに疑問を覚え油断したグリスを、ローグが思い切り蹴り飛ばした。

直後にグリスが立っていた場所から壁が生え、それぞれを分断する。

「痛ってぇ・・・ッ!おちゃっローグ!無事か!?」

「平気!」

壁越しに響くグリスの声に、ローグが声を張り上げて答える。

「今更、分断?」

「何だ・・・何考えてやがる、クソヤクザ」

分断されながらも、ローグとグリスはお互いの声を聞き取っていた。つまり、壁も其処まで厚くないと言う事である。

「分断・・・空間が広がって、此方が動きやすくなってもうとるけど・・・」

「それを補って余りある何かがあると言う事だろう。来るぞ、次の一手が!」

ローグは一緒に分断されたイレイザーと、グリスは近くの警察やサーと背中合わせで周囲を警戒する。

「ヴィランれんッ、がッ!?」

すると、壁の向こうのロックロックが発した声をイレイザーとローグが聞き取った。

「ロックロック!?」

「イレイザー、下がっといてください!でぇやッ!!」

ローグが壁を殴り壊すと、2()()のロックロックの姿があった。片方は脇腹から出血しながら倒れており、もう片方はそのすぐ側にしゃがみこんでいる。

「ニセモノが急に襲い掛かってきやがった!気を付けろ、近くに仲間がいる筈だ!」

(・・・ニセモノ)

イレイザーとローグは、その言葉が引っ掛かる。倒れている方を見ると、出血元は脇腹の切り傷。しかも相当鋭利な刃物で斬られたものだ。

「麗日、そっちは大丈―――」

「でいッ!!」

「なっ!?」

台詞を半ばで刈り取りながらのローグの蹴りはしかし、ロックロックに紙一重でに躱される。

 

―ドパッ―

 

同時にイレイザーが能力を発動。ロックロックの姿が泥のように崩れ、ローグにとってはちょっとした因縁のある敵たる渡我被身子が姿を現した。

「おやぁ?何でわかっちゃったんですか~お茶子ちゃん?」

「本物のロックロックは刃物なんざ持ってへんし、味方に向かってガラス玉みたいな隙を伺う眼も向けへんッ!」

ローグの解答に口角を上げながら、渡我はナイフを振りかぶる。しかし、直後にイレイザーの捕縛武器で拘束された。

「渡我被身子、お前は此処で捕獲する!」

「ヤです」

イレイザーをギロリと睨み、引かれるままにジャンプする渡我。捕縛武器を後ろ手で掴んでバク宙しながら刺突を繰り出すが、同時に踏み込んでいたローグのガントレットに防がれ、ナイフの刃が折れる。

「あ~らら・・・じゃ、またねお茶子ちゃん。ばいばい」

「撤退ね!」

渡我がヒラヒラと手を振ると、壁が開いてマグネが出現した。即座に個性で磁力を付与し、手持ちの巨大棒磁石型専用武器で引き寄せる事で回収。即座に壁が閉じ、2組を分断する。

「クソ、まさか連合まで居るとはな」

「急ぎましょう、奴等が関わると録な事にならない」

「あぁ、寧ろ録でも無さに拍車が掛かるだろうからな」

 

―BBOOOM!!―

 

「ッ!今のはグリスの!」

「向こうにも何かあったか・・・いや。分断するなら、それぞれに相手を宛がうのも当然。急いで合流するぞ。ロックロックは警官に応急手当させる」

「はいッ!」

ローグは気合いを入れて答えながら壁を殴り壊し、敵連合のトゥワイスを迎撃したグリス達と合流するのだった。

 

(出久サイド)

 

「ムゥンッ!!」

わらわらと涌き出てくるロード共(有象無象)を斬り伏せながら、俺は着々と歩みを進める。クローン達は体力に乏しくあまり走れない為、必然的に俺のスピードも早歩き程度だ。

にも関わらず、エリちゃんの反応はさっきからほぼ移動していない。誰かが足止めしているんだろう。恐らく、先行したルミリオンが足留めしてくれているんだろう。

 

―ガオンッ―

 

「うおッ!?」

『ギギィィィィ・・・』

壁しか無かった筈の空間から突如として飛んで来たエネルギーリングを、何とかショルダーセイバーで切り裂き防ぐ。

その軌道を遡って見れば、壁からロードが生えてきているような異常な光景が目に飛び込んだ。

「何処から出て来やがった!?」

俺の疑問に答えるように、ロードは壁に向かって腕を振るう。すると其処から飛んだエネルギーによって空間が切り裂かれ、真っ黒な亀裂が出現。ロードは何の躊躇も無く、その亀裂に飛び込んだ。

(空間を切り開いた?中に飛び込んだって事は、それなりに活動可能な空間があるって事か?)

「・・・そうか。奴を構成するメモリは()だ。つまり、異次元空間を開拓して道を切り開く能力か!」

成る程、俺のボーダーにソックリだな。

さて、次は何処から来るか・・・

「ッ!後ろかッ!」

気流感知に引っ掛かった、ドーパントの気配。振り返ると、クローンの1人に今にもかぶりつかんとするロードの姿があった。

 

―ギャリンッ ガガンッ シュルルッ―

 

『ウギャッ!?』

しかし、そうは問屋が卸さない。スタッグフォンに眼を斬り付けられ、バットショットとビートルフォンが膝カックンを喰らわし、最後にスパイダーショックが拘束。

パーフェクトだガジェッツ。

 

―ガシャンッ ギャーオッ!―

 

【アームファングッ!】

アームセイバーを展開し、切れ味を調節。ロードの左肩から右胸にアームセイバーを引っ掛け、クローンの少女から引き剥がす。

「お前、今喰おうとしたな?この子を、この子達を」

スパイダーショックの糸を千切り、左腕を引っ張って捻り上げながら踏みつけ、俺は足元のケダモノに対し言葉を投げ掛けた。

「なぁ、一つ教えてくれよ。今お前は、()()()()()()()()()()()()()()()()()のか?それとも単純に、()()()()()()()()()()()か?」

『ギギァアッ!』

ロードは俺の質問お構い無しに自由な右腕で必死に地面を引っ掻き、クローン達に向かおうと藻掻く。

「オイオイ、無視なんてしてくれるなよ。悲しいじゃあないか」

なんて言ってみるが、この必死さを見るに・・・コイツ、多分あのクソ戦車共みたく人を喰わなきゃ身体を保てないタイプだな。

「まぁ良いか。()()()

首筋にアームセイバーを宛がい、力を込めて切れ味を増強。蒼白いエネルギーを纏う刃を、ロードの首に()()()と通した。

「そうあれかしと呟き斬れば、世界はスルリと片付き申す・・・なんてな」

数瞬遅れて、ロードの首がゴトリと落ちる。

「ふぅ・・・ん?」

不意に鼻を衝いた、ロードの血肉の臭い。しかし、おかしい。

何だこれ・・・真新しい刺激に対する反応(感じ方)じゃない。嗅覚疲労で慣れた所に、同質且つ濃縮された臭いをぶつけられたような・・・

「・・・まさか・・・」

俺は今し方出来た、ロードの血貯まりを覗き込む。その色は、赤黒いと言うよりも寧ろタールに赤銅を少々混ぜたような色になっていた。

()()()()()()()()()()()()()()

「・・・そうか、そう言う事か」

ロードは、切り開いた空間を自分の血液で固める能力を持っているんだ。この黒い廊下も、同じくロードの血で舗装されているんだろう。

空間そのものをガッチリ固定する舗装材なら、ボーダーで切り開けなかったりゾーンで見透せないのも納得だ。

「しかし、今はエリちゃんの所に行かねばな」

幸い、キーのマーカーによるとエリちゃんはまだ動いていない。他のドーパント共の気配も、進行方向には既にほぼ無くなっている。

【エターナル!】

「変身」

【エターナル!】

俺はファングをエターナルと入れ替え、馴染んだ生体鎧を纏った。

エリちゃんまで、残り70m。直線、壁一枚。

後方、敵の気配及び空間異常無し。

ならば・・・

 

―ッシィィィィィィィ―

 

「ワンフォーオール、アーマード・・・15%ッ!」

突貫するのみ。

 

―バガンッ ザリザリザリザリッ―

 

壁を突き破り、左膝と爪先、踵の三点で地面を削ってブレーキを掛ける。開けた空間には、エリちゃんと彼女を護るルミリオン、そしてそれと対峙する治崎の姿があった。

「ファング、三奈達を連れて来い。それと、スタッグフォンにクローン達を俺達の後ろへ誘導するよう伝達しろ」

『ギャーオッ!』

ガシャンガシャンと猛スピードで走って行くファング。俺は息を吐きながらゆっくりと立ち上がり、複眼越しに治崎を見据える。

「メモリアルヘル!」

「死神・・・!」

「よぉ治崎。久し振り・・・だよなぁ?」

ルミリオンの前まで移動し、仮面の下で口角を引き上げながら治崎に声を掛けた。

「その名で呼ぶなッ!」

「おぉっと悪い悪い。そういや、何か知らんが嫌だッつってたな。いやはや、記憶力には自信のある方だったが、もう歳かな?」

俺の下らないジョークに、治崎は青筋を立てる。

「クソ、何が俺を満足させる性能だ。殺せてないじゃないか」

「・・・あぁ~、何の事かと思えば、あのイイ趣味したクズ戦車共の事か。

倒せると思ったか?殺せると思ったか?俺を?この死神(オレ)を?あれっぽちの、お粗末な玩具で?

正気かお前。ん?あぁいや、育ての親に受けた恩を大仇で返す程度には正気だったな。いやはや失敬失敬」

「ッ~!」

おーおー、調子付きかけてた奴を煽るのは気分良いねぇ。結構ピンチだったのは黙っとく。

と、クローン達も来たな。メモリガジェット達が確り誘導してくれた。

「まぁそんな事ぁ置いといて、だ・・・オーバーホール。お前、一体何が目的だ?」

「決まっているッ!我等極道の復権と、哀れな貴様等()()()を治療してやる事だ!」

「病人?」

「あぁそうだ!個性なんてモノを持ったせいで、誰も彼もが心に疾患を抱えるんだッ!自分は何者かになれると思い込むッ!

あぁそうだ!今そこにいるルミリオンもだ!本当に滑稽な話だ!自分がヒーローになれると勘違いした結果、救おうとしたエリの能力で――――」

「無個性になった、か?」

チラリと振り向いてみれば、クローン達の前でエリちゃんが辛そうに歯を噛み締めていた。

そして左前方には、銃を持った構成員・・・成る程。エリちゃんを庇って、B.P.Wを受けたって所か。

「あぁ。残念だったなぁルミリオン?救おう救おうと出来もしない事をムキになってしたせいで、お前の積み上げてきた総てが無に帰したッ!!」

「・・・個性を消した?()()()()()?」

「何?」

 

―ドゴッ―

 

「ぐッ!?」

俺が左にステップを踏むと同時に、後ろにいたルミリオンが気絶していた構成員をオーバーホールに向けて蹴り飛ばした。

それを反射的にオーバーホールが防いだ隙に、ルミリオンは一気に踏み込みその腕を殴り付ける。

「そうだ!個性が消えたって、相手を良く見て予測!する事は何も変わらないし、今までだって微塵も無駄にはなっていないッ!」

「あぁそうさ!例え個性を消されようが、例え腕がもがれようが、コイツは死なない!()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!」

(ワンフォーオール、アーマード!)

Casull(カスール)SMASH(スマッシュ)ッ!!」

左中指と親指でデコピンの形を作り、15%の力を溜めて一気に解放。即席で作った圧縮空気弾を、オーバーホールの鳩尾にブッ放した。

「ごばァ!?」

諸に空気弾を喰らい、内臓がパニックを起こしているだろう。横隔膜が痙攣し、息もままならない筈だ。

 

―バゴンッ―

 

「出久、お待たせ!」

このタイミングで壁を殴り壊し、三奈とローグ、そしてイレイザーが合流した。

「よぉ三奈、パーティ会場にようこそ。席は人数分あるぞ」

合流してくれた三奈達に軽口を飛ばし、手招きする。

「さぁてと・・・無駄だと思うが一応言っとく。抵抗せず投降した方が身の為だぜ?」

「ッ~!巫山戯るなァッ!!」

ま、そうなるわな。

「あぁ、最悪だッ!貴様等のせいで、何もかも滅茶苦茶だ!」

「おぉ、そりゃ良かった。滅茶苦茶になってなきゃ俺等が困る」

「ッ~~ッ!」

あ、しまった。つい煽っちまった。まぁ良いか。

「ローグ。後で説明する。取り敢えずその子達を護ってくれ」

了解(ラジャー)

クローン達の側にローグが着いた。

「ミリオ、よく頑張ったッ!」

ナイトアイがルミリオンの胸板を叩き称賛する。

「クッ、個性が消されたかッ!!」

オーバーホールが地面をバシバシ叩いているが、錬成攻撃は起こらない。流石はイレイザー、仕事が早いな。

「イレイザー!畳み掛ける!」

「あぁ!」

「いい加減・・・起きろクロノォ!!」

「グッ!?」

オーバーホールの呼びに応じて、倒れていた側近から矢印状の針が延びる。俺は反射的に身を捻り躱したが、イレイザーは腕に掠ってしまったようだ。

すると、イレイザーの動きがゆっくりになる。あの矢印・・・確か、クロノだったか。厄介な・・・!不味い、イレイザーの封印が切れる!

 

「全て、無駄だァ!!」

 

【ディスチャージ・メモリィ!】

一瞬で地面が分解し、鋭い剣山に再構築。俺はエターナルエッジからブルーフレアを放つ事で何とか凌いだが、SECOND・NEVERはともかく他はかなり厳しそうだ。クソ、面倒な・・・

「こんなやつらに、これ以上計画を狂わされて堪るかッ!なぁ音本ォ!!」

叫びながら、転がっていた側近の頭を掴むオーバーホール。

次の瞬間、奴は側近と自分を分解し、同時に修復した。それも、融合させて・・・

口と一体化したペストマスク。肩甲骨辺りから生えた1対の真っ黒な副腕。そこかしこに走る、赤黒い血管のようなライン・・・

「チッ、形振り構わず化物になったか。堕ちたなオーバーホール」

環境が急変した。まずは周囲の観測から・・・

(エアディテクション!)

・・・把握完了。

ルミリオンとエリちゃんは、他のクローン達と一緒にローグや三奈が守ってくれたらしい。ジュエルシールドで刺を防いだんだな。

しかし、イレイザーとさっきの側近が消えた。何処かに移動したようだ。グリス達は元から此方には来ていない・・・イレイザーはそっちに任せるしかないか。

だが取り敢えず・・・

「ローグ!その子達全員連れ出せッ!」

了解(ラジャ)ッ!」

「いいや貴様もだメモリアル!」

ローグに指示を飛ばすが、同時にナイトアイが叫んだ。

「ピンキーと共にミリオを連れ出せ!最優先事項を果たすんだッ!!コイツの相手は私が受け持つ!」

「・・・オーダー。行くぞ三奈」

「・・・んっ」

【ルナ!マキシマムドライブ!】

ルナでマキシマムを発動し、分身を6体作る。しかしやはりダメージが溜まっているせいか、エターナルではなくT2マスカレイドになってしまった。だが、人手としては十分。

俺と三奈でルミリオンに肩を貸し、分身達にはエリちゃんとクローン達を任せる。

「行くぞルミリオン。さっきので塞がれてたが、俺が通って来た道だ。露払いは済んである筈だ」

ワンフォーオールで壁を蹴り砕くと、俺が使った通路が露になる。と同時に、青筋を立てたヴォジャノーイが顔を出した。

「オイオイ、いきなり壁が爆ぜるもんだからビックリしたよ」

「ヴォジャノーイ!」

「カエルさん!」

エリちゃんの表情が幾らか柔らかくなる。成る程、どうやら接触済みらしいな。

 

―ズドッ―

 

「っ!?」

背後から聞こえた不吉な音に振り返ってみると・・・ナイトアイの右腕が、刺によって千切り飛ばされていた。

しかしその右には、腹に刺を喰らったゲンムの姿がある。体勢から見て、ゲンムが突飛ばしナイトアイを刺から庇ったのだろう。

「何!?」

「グフッ・・・ヴァーッハハハァ!ゲファッ、グゥ・・・

読者の予想(死亡フラグ)裏切(へし折)った男ォ!デッドプールゥ!」

フェイスから血を撒き散らして笑い、オーバーホールに中指を立てて見せるゲンム。

「ッ~!小ッ癪なァァァッ!!」

【ウェザー!】

ゲンムを蹴り飛ばし、メモリを取り出すオーバーホール。しかもそれは・・・

「T2メモリ、だと!?」

俺が持つものと同じ、T2ウェザーメモリ。そのメモリを起動し、額に突き立てた。

「・・・ヴォジャノーイ、ルミリオンとエリちゃんを頼む」

「分かった」

ルミリオンを任せ、オーバーホールに向き直る。

赤い放電を起こす竜巻が晴れると、オーバーホールだったものが姿を見せた。

侍と雷神をモチーフとした基本造形は黒く染まり、口元はカラスのような嘴に。背中から生える異形の黒腕の手首には、U字磁石とスクリューがくっついていた。

「三奈、2人を」

「分かった!」

三奈が頷くと同時に駆け出し、延びてくる刺を震脚で砕く。根本を見れば、背中の腕が地面を撫でている。

どうやら、ドーパントになっても個性は健在らしいな。ついでに副腕からも出力可能か。文字通り手数が増えた訳だ。厄介なこったよ。

「さぁてと?ダンスパーティーのご開幕かな」

 

(NOサイド)

 

「・・・ハァッ!」

睨み合った状態から、エターナルはエターナルエッジを投擲。風の壁さえ切り裂くその刃はしかし、異形のウェザー・・・ウェザー・キメラの掌に発生した氷によって受け止められる。

「ほォ、流石はシルバークラスのメモリだな。お高かったろうに、良く買えるだけの小遣いがあったもんだ」

「親切なスポンサーから、安く譲って貰ったんだよ」

「スポンサーがいるのかよ。そいつァ羨ましい、なッ!」

エターナルは軽口を叩きながらサイドステップを踏み、両手の小指から人差し指までを全て使った20%のCasull(カスール)SMASH(スマッシュ)・・・HARKONNEN(ハルコンネン) (ツー)SMASH(スマッシュ)を放った。

「無駄だ」

 

―ギィィィィィィィンッ! バヒュッッ!!―

 

しかし、ウェザー・キメラの副腕に備え付けられたスクリューが猛回転し竜巻を作る事で、その圧縮空気弾を悉く打ち砕く。

「チッ、器用だなァお前」

「千変地獄と呼ばれたお前に言われると気分が良いなァ死神ィ?」

「そんな通り名あったっけか?」

真空と圧縮空気のミキサーとなっている竜巻を、エターナルは跳んで回避する。地面は船底状に抉れ、ロードの血をーで固めた壁でさえ表面にヒビが入った。

「ハァァァァァ!」

ウェザー・キメラは再び副腕を突き上げ、今度はU字磁石を高速回転させて、紅い雷を一直線に放つ。

HARKONNEN(ハルコンネン)SMASH(スマッシュ)ッ!」

エターナルは右に向けて単発の20%デコピン・・・HARKONNEN(ハルコンネン)SMASH(スマッシュ)を発射。反動で左にスッ飛び回避する。

「逃がさない!」

「何ッ!?」

しかし紅い稲妻はその後をピッタリと追尾し、エターナルへと正確無比に落雷した。

「ぐあァァァァァァアッ!?」

稲妻はエターナルの身体を通じ、再び無差別に放電。空中で姿勢を崩し、壁に激突する。

 

―シュゥゥゥゥ・・・―

 

「出久ッ!」

ナイトアイとゲンムを通路内に避難させたジョーカーは、大量の白煙を上げるエターナルに悲鳴じみた呼び声を掛ける。

それがいけなかった。

「あぁ、そうだ。お前もだッ!」

ジョーカーを睨み付け、掌を向けるウェザー。

「な、何を―――」

 

―ジュゥゥゥゥゥッ!!―

 

「―――ッッッッッ!?!?!?!?!?

あっ、あ・・・あ゙あああァァァァァァァァァァァッ!?!?」

次の瞬間、ジョーカーの右腕が灼熱に包まれた。一瞬遅れて、人体の許容限界を遥かに超えた膨大な熱痛信号がジョーカーの神経を通じ、脳を焦がす。

 

これは、融合した側近の個性・・・《真吐き》により引き出された、メモリの規定値以上のフィジカルブーストの結果である。

オーバーホールの()()()()()()()()()()()()()()能力が飛躍し、()()()()()()()()()()()()()()()()()能力・・・則ち、白き無垢な殺意の闇(ン・ダグバ・ゼバ)に迫るまでのモーフィングパワーへと昇華したのだ。

 

「うっ、あ、あ゙ぁああぁぁあっ・・・ッハ、ッハ、ッハ・・・!!」

汗と涙と涎を溢しながら、過呼吸を起こし踞るジョーカー。もはやその激痛は腕だけのモノでは無く、全身を内側から有刺鉄線で抉り回すように神経を焼き削る。

余りのダメージに、ドライバーとメモリの安全装置が作動。変身が解除されてしまった。

「良い具合に加減出来た・・・ギリギリ生きているなら、極上の餌になる」

ウェザー・キメラが黒い嘴をニヤリと歪め、掌を再構築し反響器官を備えた発声器を作る。

 

壊理(エリ)ィ!!またお前のせいで死ぬぞッ!それが望みかァ!!壊ェ理ィイッ!!」

 

―――

――

 

「クッ、エリちゃん!行ったらアカン!」

狙い済ましたように湧き出てくるロードを相手取りながら、ローグは必死に壊理を呼び止める。

クローン達はルミリオンと共に通路横に固まって座っており、彼女等を抱えていたT2マスカレイドも既にロードに殺られて消えた。

一方でヴォジャノーイも、大量のロードに足止めされている。最初こそ壁や天井を駆け抜けようとしたものの、壊理の身体が耐えられる程度の速度では狙い打ちされるであろう事は容易に想像出来た為、実行に移せなかったのだ。

「フシュゥゥゥゥッ・・・フシュゥゥゥゥッ・・・」

しかし、無策にロードを相手取ってはいない。この男には、秘策がある。

「カエルさん」

壊理に呼び掛けられ、視界の端に彼女を捉えるヴォジャノーイ。その眼に映る少女の瞳には、6割の恐怖、そして2割の勇気と決意が滲んでいた。

「・・・信じる、から・・・!」

「ッ!」

恐怖は未だ強い。しかし、彼女はハッキリと言い切り、もと来た道を弱々しくも駆け出した。

「ま、待って!」

何とか振り向こうとするローグだが、獣染みたロードの群れが許さない。

「ごめん、パープル色のライダー。ちょっと頼む」

「えっ、はぁ!?頼むってちょっ、えぇいもうッ!」

【クラック・アップ・フィニッシュッ!】

ロードをローグに丸投げし、ヴォジャノーイは壊理の背を追った。

 

―――

――

 

「望んで・・・ない」

自らの思い通りの回答を寄越す壊理に、ウェザー・キメラは口元を歪める。

「見てみろ壊理。お前を助けに来たヒーローとやらは、もうどう見ても薄汚いボロ雑巾同然だ。

このゴミ共たった2、3人で、どうにかなると思うか?」

「・・・思わない」

「なら、どうすべきか判るな?」

「・・・戻る」

俯き、唇を固く結びながら、壊理は答えた。

「その代わりに!・・・皆を、助けて・・元通りに、してあげて・・・」

「だ、ダメッ・・・エリ、ちゃんッ・・・」

必死に左手を伸ばす三奈。その声にピクリと反応するも、壊理はウェザー・キメラに・・・治崎に歩み寄る事を止めない。

「あぁ、あぁそうだよなぁ!自分のせいで誰かが傷付くより、自分が傷ついた方が楽だもんなぁ!」

融合とメモリの併用により、テンションがハイになっているウェザー・キメラ。

壊理はそんな化物の側に駆け寄り、黒い羽織の裾を掴む。

「お前達は、求められてな――――」

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!」

 

―ドクンッ―

 

ウェザー・キメラの台詞を切り落とすように、壊理が叫んだ。すると同時に額の茶色い角が延び、黄金色の光が溢れる。

「ぐッ、ぐあァァアッ!?ま、まさかッ!?」

その光を流し込まれるとウェザー・キメラは苦しみ悶え、メモリと側近が分離。元のオーバーホールに戻された。

「壊理ィ・・・お前ェッ!」

仰け反った反動で壊理に掌を振り下ろすオーバーホール。しかし掌が触れた瞬間、その姿は()()()()()()()()()()

「はァいハズレ、残念でした」

通路から聞こえる、小バカにしたようなおどけた声。其処には舌を長く伸ばしたヴォジャノーイと、三奈とゲンムに自らのエネルギーを流し込む壊理がいた。

投影(クムクム)・・・見せた事あるけど、意識が壊理ちゃんに向ききってたお陰かな?此処に煙が舞ってて良かったぜ」

「エリ、ちゃん・・・ッ!腕が、動く!?」

壊理がパッと手を離すと、三奈は眼を白黒させて手を動かす。痛み等欠片も無く、寧ろ疲れも全くない最高のコンディションになっていた。

「みんなだけじゃ、どうにもできない・・・でも、私が一緒に戦えばっ!」

「ッッッッッ!!!!貴様の入れ知恵かッ!ヴォジャノーイィイッ!」

忌々しげに叫ぶオーバーホールを横目に、壊理はエターナルへと駆け寄る。オーバーホールは地面を叩き刺を延ばすが・・・

「そうは問屋が卸しま千円!!」

「アシッドスラッシュッ!」

【クゥリティカァルッ・デァッドゥ!!】

ゲンムの肉壁と三奈の酸液で、悉く迎撃された。

「仮面ライダーさん!私、見てみたい!広い森とか、大きい川とか、カエルさんが言ってた、リンゴより美味しいものだって食べてみたい!だから・・・だから!

 

私を、助けて!」

 

―――ドックン―――

 

「ORDER、認識した。俺が君を、必ず救おう。仮面ライダーの名に懸けて。ありがとう、エリちゃん。助けを求めてくれて」

 

少女が初めて発した救いの願い。気高き死神は聞き届けんと目を覚まし、膝を着いて宣言した。

「そこは、()()、でしょ?」

「・・・あぁ、そうだな。そうだった」

三奈の手を取り、立ち上がるエターナル。

「赦さんッ!赦さんぞ死神ィ!!」

【ウェザー!】

再びウェザードーパントに変身するオーバーホール。個性の覚醒は巻き戻されたものの、メモリの進化は巻き戻ってはいない。

【ガングニール・β!】

「詠装―――」

 

―――I'm that Smile Guardian GUNGNIR tro~n・・・♪

 

歌を紡ぎ、拳を握る。すると、エターナルの纏うガングニールに変化が現れた。

バーニアスラスターの上から、焼け消えた筈のエターナルローブがマフラーとして出現。全体的に白が多かったアーマーもオレンジ色が入り、更にボディにも同色のライン模様が浮かび上がる。

これまでは、赦し繋ぐこの拳とは合わないと一線を引いてきたエターナル。しかし今、気付いたのだ。自分の理由を、ギアに理解させれば良いと。

故に、ギアは変化した。立花響の繋がる拳に対し、これは掴み離さぬ拳。眼前の弱者を救うと言う強い決意が、ガングニールに受け入れられた証だった。

「仮面ライダーエターナル、シンフォニックスタイル・・・ノックアウト・ガングニール・・・!」

複眼越しに義眼が蒼く光り、ガントレットから火花が散った。

「うぅ・・・」

「え、エリちゃん大丈夫!?」

突然、壊理が顔を顰めて踞る。見れば先程よりも角が延び、エネルギーも火に掛けられたヤカンの蒸気のように吹き出している。

「壊理は出力の調整が出来ない。俺に渡せ。止められるのは俺だけだ」

「そうかな」

勝機はあると嗤うウェザーだが、ヴォジャノーイは余裕たっぷりに言い返した。

そして壊理に歩み寄り、腰に下げた袋からセルメダルを数枚取り出して壊理に押し付ける。

「セルメダルだと!?どういう事だ、何故それが・・・」

「悪いけど、お答えできません」

セルメダルはパリパリと砕け、欲望のエネルギーが放出。そのエネルギーは壊理の光とぶつかり合い、互いに相殺、減衰する。

「・・・は?」

数秒後には光も収まり、壊理は気を失った。しかし、しっかりと止めることが出来たと言う事実が、ウェザーの精神を抉る。

 

―BBBBBBOM!!―

 

「お、キタキタ」

通路の奥から響く爆音。ヴォジャノーイはクスリと笑い、其方を見やる。

「よぉ、大将。遅れちまったが、他は全部片付けたぜ」

凍り付き霜が掛かったロードを放り投げ、グリスブリザードが不敵に笑いながら現れた。

「すまねぇ、遅くなった!」

拳をぶつけ合わせ、紅黎登躯炉得途・頼雄斗が続く。

「あの子等や先輩達は、警察の人等に任せてきた。心置き無く戦える!」

眼をカッと見開き、プライムローグが拳を握り締める。

「エクストラボスのお出ましかな。ま、このメンバーなら負けないけどッ♪」

自信たっぷりに呟き、タブーは手に魔力弾を作った。

「子供の勇気に救われた。報いて見せよう、必ずやッ!

熱き決意に燃える男ッ!デッドプールッ!!!!」

何時もの調子を貫きつつ、名乗りをあげるゲンム。

「何処にいるのも、本能任せの雑魚ばかり。所詮、堕ちたヤクザなどこの程度か」

凶暴な嘲笑を浮かべ、刀の血を払う克己。その後ろに続き、NEVERのメンバーも現れた。

「クソッ、バカなッ!こんな屑共に、病人風情にッ!俺の、この俺の計画がァァァァァァァァァァッ!!!!」

バイザー越しに血涙を流し、腕のアタッチメントをギチギチと痙攣させるウェザー。

「さてと、役者は揃ったな。さぁ、最終ラウンドの始まりだ」

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

ロード・ドーパント
今作では超量産化されてしまったドーパント。出久のショートカット対策として、地下全体の壁面をロードの血肉で舗装してある。因みに当然、オバホには内緒。

緑谷出久
化物。これまでは響の狂気的なまでの平和主義からガングニールに適合しきれなかったが、今回でガングニールに宿る心象そのものを自分の物に書き換えて完全適合を果たす。
また、今回の件でかなりジョークが達者になった。
今回判明した通り名、千変地獄。

芦戸三奈
ライダーガールジョーカー。出久の嫁。手分けしてローグと一緒に構成員と戦っていた所、ファングに呼ばれてエターナルと合流。
ウェザー・キメラに腕を焼かれるも、壊理の個性により回復する。

ヴォジャノーイ
実質今回のMVP。割と頻繁に壊理に接触し外界の興味を煽ったりしていた為、壊理がかなり意欲的になった。
因みにリンゴの皮剥きがかなり上達している。
「はいハズレ」の時は、直前の呼吸描写の時から徐々に霧を撒いていた。この霧が投影(クムクム)の発動条件。
最初は壊理の個性のブレーキはガングニールの絶唱によるS2CAでガオガイガーのイレイザーヘッドのようにエネルギーを地球外へ吹き飛ばす予定だったが、それだとヴォジャノーイが余りにも無責任なので急遽セルメダルの欲望エネルギーによる相殺を採用した。
一応、自分の中のエネルギーを感じ取る訓練は行っていた模様。

壊理
原作と違い、ヴォジャノーイのお陰で精神的にかなり強くなった。ヴォジャノーイの事をカエルさんと呼び、かなり懐いている。
彼女にとっては第一のヒーローがヴォジャノーイ、第二のヒーローがルミリオン、同列でエターナルである。

敵連合
原作と違い別に仲間を殺された訳じゃないが、構成員が明らかに自分達を見下しているので結局裏切る。
出向組は渡我とトゥワイスとマグネ。

オーバーホール
スポンサーの派遣人員に裏切られるわ、本拠地を知らん間に自分の大嫌いなモノで舗装されるわ、壊理は言うこと聞かないわで踏んだり蹴ったりな敵のボス。
挙げ句に発現したモーフィングパワーさえ、壊理のせいで巻き戻された。
もっとひどい目に遭わせる予定。
因みに、人体実験繋がりでウェザーと適合。だが自分が実験台になっているという皮肉。
ドーパント態に付いているスクリューとマグネットのモチーフは、勇者王ガオガイガーFINALに登場したソール11遊星主の一柱、ペチュルオン。

サー・ナイトアイ
デップーの見せ場のせいで自分の死という運命(死亡フラグ)を見事にへし折られて大混乱。
結果、腕は吹っ飛んだが致命傷は避けられた。
しかし壊理は仮面ライダーを優先的に治したので、腕はそのまま。結構不憫だが、まぁ死ななかっただけマシ。

デッドプール
仮面ライダーゲンム。ナイトアイは一応原作通りに死ぬ予定だったが、作者を脅して強制突入。見せ場を無理矢理むしりとった。
作者のシナリオをガン無視して突っ込んでいった為、ナイトアイの予知にも映らなかった。
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