僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
「ピンクの三奈ちゃんとピンクだったミーナさん然り、ギアッチョの声しかり、お前って時々こう言う天運は恵まれるよな」
(出久サイド)
「うぅ~ん・・・ダメだ。如何せん、キーワードが少な過ぎるな」
真っ白な
永遠亭での個性事故を思い出し、まずワンフォーオールには筋力の生物濃縮だけでなく個性の保存と言う側面もあると言う仮説を立てた。問題は、キーワードが無さ過ぎて保存されているであろう個性の情報まで到達出来ない事だ。
と言っても、オールマイトの先代である志村菜奈は名前が絞れていたので個性は判明した。この情報のソースがオールフォーワンのオールマイトを跪かそうとした言葉だったのは、皮肉が利いてると言うか何と言うか・・・
で、判明した彼女の個性は《浮遊》。空中に浮き上がる個性だったらしい。
しかし、個性についてはそれだけだった。やはり、鍵が足りない。
「・・・ん?志村、
菜奈・・・ナナ・・・7?もしかして・・・
「オールマイトは、
・・・何て事だ。俺達は、名前レベルで因果律に縛られているらしい。全く、創作物として観測・干渉されまくってる事を証明する材料はポンポン出て来やがるな・・・
「つーか、そもそも本名が既に個性を表してる人間ばかりだな。
《爆豪》勝己、轟《氷火》、《芦戸》三奈・・・《上鳴電気》なんかまんまだな。電気なんて名前付けねぇだろ普通・・・しかも、仁とかデップー曰く複雑に絡み合ったクロスオーバー時空らしいし・・・」
いかんいかん、ドツボに嵌まるわ・・・ん?クロスオーバー?
「クロスオーバー・・・接点・・・交わる・・・あっ」
・・・もしかしたら、俺の嫁達が俺みたいな化物になるかもしれない・・・
―――――
――――
―――
――
―
「ヒュゥゥゥゥ・・・シュゥゥゥゥゥゥ・・・・・」
昼の訓練。俺は上裸生身で高台に登り、深呼吸しながら腰を落とす。そして両手は腹の前でスイカを抱えるような形にし、同時にワンフォーオールを3%で全身に巡らせた。
「ヒュゥゥゥゥ・・・シィィィィィィィ・・・・・」
体勢をキープしたまま、ワンフォーオールの出力を僅かずつ上げていく。30秒で1%のペースだ。
「なぁフランちゃん、緑谷あれ何やってんだ?」
「中国の
グレートクローズの疑問に、タブーが答えてくれる。
「そっか。じゃあ邪魔しちゃわりぃな」
「そうだね。暫くしたら、あたしも相棒として手伝うし」
頼もしい事を言ってくれるじゃあないか、三奈。
―――
――
―
「三奈、ドライバーを」
「ん、分かった」
三奈がダブルドライバーを装着し、俺の腰にもそれが現れた。俺達の意識はベルトを介して接続し、互いの感覚を共有する。
(ワンフォーオールのこの感覚、分かるな?)
(ん、何と無くね)
(なら大丈夫だ。俺の感覚を追ってくれ)
(分かった)
三奈に指示を出し、胸の前で腕をクロス。三奈からも同じようにクロスした感覚が送られてくると、ワンフォーオールの意識を持続から瞬間火力に切り替え、全身へと一気に行き渡らせる。
「ヘェアッ!」
此処では知る人は殆んどいない光の巨人のような掛け声と共に、ワンフォーオールを流し込んだ。
「5%・・・アーマードッ!」
まずは、普通の人間でも骨折はしない程度の5%で出力。そして三奈の方を見てみると・・・
「うわっ!?」
・・・予想通り、全身にワンフォーオールを纏っていた。
「こ、これって・・・」
「あぁ、俺の
(遺伝子を取り込ませる事で、次世代に託すワンフォーオール・・・だが俺達は、融合と分離を繰り返す中で、この力を共有しちまったらしい。
もっとも、それだけが原因とは限らんが・・・な)
(ま、マジか・・・)
(まぁ、幸い三奈はライダーシステムを俺と共有してる上、使ってるメモリも発動エフェクトや性質の似たジョーカーだからな。俺と同じハイドープに覚醒したと言っとけば、幾らでも誤魔化しは利くだろう。
それに俺と言う複数能力覚醒の前例がある分、後でホントに別のハイドープ能力に覚醒しても《そんなもんだろ》でゴリ押せるしな)
(あ、アハハ~、ラッキーっちゃラッキーだねぇ)
ワンフォーオールを納め、ドライバーを外させる。パッと見てみるが、恐らく身体は破壊されていないだろう。
ジョーカーに適合してるお陰で多少頑丈とは言え、ワンフォーオールは俺が補助輪してても危険っちゃ危険だからな。
「じゃあ、ジョーカーに変身して感覚を掴んでくれ。俺はフランも確認する」
「おっけ~♪変身!」
【ジョーカー!】
三奈がジョーカーに変身すると、紫の波紋に僅かだが赤の稲妻模様と緑の放電が混じる。どうやらジョーカーにも合っていたらしい。
「うっ・・・これ、ムッズイなぁ!」
「俺が耐えられるのは20%までだ。まずは落ち着いて、さっきと同じ5%で手綱を握れ」
「合ッ点ッ承ッ知ッ!テャアッ!」
気合いを込めて、ワンフォーオールを維持したままブレイクダンスを始める三奈。
流石だな。殆んど乱れてない。
「無理はするなよ。
オーイ、フラ~ン!」
「何~?」
俺の呼び掛けに、タブーに変身したフランがパタパタと飛んで来る。
「タブー、ちょっと試したい事がある。変身状態で、ちょっと吸血してみてくれ」
「えっ?良いけど・・・」
「あーあと、首筋に噛みついたまんま少しの間保持してくれ」
「ん、分かった」
そう言って俺は胡座をかき、太股をポンポンと叩いた。
タブーは遠慮無くそこに座り、俺の首筋に牙を突き立てる。
「ん゙っ・・・やはり、な」
前々から思っていたが、フランに吸血される時は普通に触れ合うよりも、もっと根本的な部分で接続しているような感覚がある。血を命の通貨として魂の遣り取りをする吸血鬼だからか・・・
(んふぅ・・・出久の血、美味しい・・・大好きぃ❤️)
そしてそれを裏付けるように、フランの思考が俺に逆流してくる。前まではこんな事は無かったが、最近気付いた事だ。
恐らく、吸血で取り込まれたワンフォーオールの因子や俺の魂の欠片が、リアルタイムで意識の遣り取りをしているんだろう。
(フラン、聞こえるか?)
「ッ!?」
俺が伝えるつもりで念じると、フランは驚いて口を離そうとした。すかさず頭に手を添え、押さえて落ち着かせる。
(落ち着け。取り敢えず聞こえてるな。実験を第2段階にシフトしよう)
俺が伝えると、フランも落ち着きを取り戻した。
それをしっかり確認して、俺は地球の本棚に入る。
「・・・よし」
真っ白な空間に、無量大数の本棚が浮かぶ何時もの光景。
そして何時もと違うのは、此処にフランがいる事だ。
「うぇっ?此処は?」
「地球の本棚だ。やっぱり引っ張り込めるみたいだな」
「そ、そっか、此処が・・・」
状況を何とか呑み込んだフランは、周囲をまじまじと見渡す。
にしても、地球の本棚に入れる人数がかなり増えたな。NEVERの皆で5人、俺を経由すれば、限定的にだが三奈とフランも入れるから3人、計8人か。
「でも何で?私、ダブルドライバーで繋がってないよ?」
「多分、他者の魂と接続し同化するっていう
・・・そう言えば、フランにワンフォーオールの事を全く説明してなかったな。しまったしまった。
「あれ?出久って確か無個性じゃ・・・」
「神野事件の後、オールマイトから受け継いだ」
「・・・はぇん?」
おっと、フランが宇宙猫になった。ちっちゃと説明しよう。
「あー、今の所、雄英生じゃ三奈しか知らないんだがな。
個性の名はワンフォーオール。DNAを体内に取り込ませる事で次の世代に渡し、これを繰り返して身体能力を生物濃縮させていく個性だ」
「・・・わぉ」
あー、まぁ流石のフランでも、この情報量は混乱するわな。
「あ、ちょっと待って?DNAを取り込むって・・・私達、諸該当してない?」
「勘が良いな。その通りだ。
血液、唾液、その他諸々・・・まぁハッキリは言わんが、バリバリ摂取しまくってるな」
「あー、うん・・・」
若干気まずそうに頬を赤らめつつ、ふいっと目を逸らすフラン。まぁそうなんのも当然だな。
「あー、話を戻そう。今フランの中には、ワンフォーオールの因子がある筈だ。俺が《譲渡する》とハッキリ意識しなければ、継承はされないらしいがな。
ある程度感覚が共有している状態である今、俺から発破を掛けてその因子を覚醒させる。それを使えば、お前の焦りも解消されるだろう」
「ッ!」
ギクッと震えるフラン。
「・・・何時から気付いてたの?」
「カマ掛けてみて良かったよ」
「はぁ!?」
そう、ブラフだ。だが、自分をフランの立場に投影してみれば、そんなに難しい話じゃない。
自分は相手の第二夫人。しかも正妻はダブルとして相手を最も近くで支えている。更に最近はジョーカーとの適合率も上がってきているから、自分がいなくても同じなんじゃないか、と言う思考に悩まされている・・・と言った所か。
「まぁ、お前の焦りがどういうものかは理解してるつもりだ。俺が気にするなと声を掛ける程度じゃ無駄だと言う事もな。
だから、お前を新たに進化させる。そうすれば、アイデンティティも回復して精神的な余裕が出来るだろう」
「そんな事も出来るの!?」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってる」
そう言って、俺はニッと片頬を上げて見せる。
「俺の
そしてお前は
「・・・分かった!やってみる!」
フランのやる気は充分。さて、やってみるか。
「じゃあ、現実世界に戻ろう」
「うんっ!」
―――
――
―
「で、具体的にどうすれば良いの?」
俺の首筋の唾液を拭き取りながら、フランが聞いてくる。
「取り敢えず、実験的に俺がフランの血を吸ってみようと思う。ノスフェラトゥと対等なのは、そのノスフェラトゥに血を吸われ、またその血を吸った者だけだと言われているからな。
俺の場合、お前の中には俺がいるから、お前の気持ちが一方通行にボンヤリとだが伝わる。まずはその回線をキッチリと繋ごう。無理だったらそん時に考える」
「・・・ねぇ、それって出久が
「・・・」
まぁ、確かに
「うーん、
「あー、成る程・・・じゃあ、どうぞ?」
サイドテールを右手で後ろに退かし、左手で服の襟をクイッと引っ張る
「・・・有り難いけど、一応変身解除しようか。ガイアエナジーが混ざってるとどんな反応が起こるか分からん」
「あっ、そっか」
フランはドライバーを閉じ、メモリを引き抜いて変身を解除した。
そして改めて差し出された首筋を見てみるが・・・何だか、妙に唆るものがあると言うか・・・
「・・・取り敢えず、エターナルエッジで浅く傷付けるから。動くなよ?」
「うん・・・」
了解の意を示し、軽く眼を瞑るフラン。そのシミ1つ無い美しい首筋に刃を滑らせ、紅の一文字を作る。
「んっ・・・」
微かに呻くが、しかしフランは耐えた。俺は傷口にキスを落とすように口を当て、溢れてくる血液を吸い出し嚥下する。
―ドクンッ―
不意に、俺の心臓が強く脈動した。そこから何かが身体に染み渡るような感覚があり、体内を何かが走る・・・いや、変わっていくような気がする。
「・・・あれ?」
「ん?どうかしたか?」
フランが唐突に呆けた声を出し、俺は首筋から口を離した。
「何か、出久の気配が変わったような・・・」
「・・・確かに、俺も身体に違和感が・・・」
しかし、この違和感には覚えがある。これは・・・他者と自分が、共有される感覚。ダブルドライバーで三奈と接続した時に近いものだ。
フランと回路が繋がったからか、とも考えたが・・・それもあるものの、それ以上に別の何かを自分の中から感じる。
「・・・まさか、継承者達の魂か?・・・確かめてみるかな」
拳を握り、ワンフォーオールを発動。すると、明らかな感覚の違いが浮き彫りになった。
何と言うか、見よう見まねでやってた動作の正しいやり方が分かって、どの筋肉を意識すれば良いかを理解したような、そんな感覚。
「・・・よし、一晩馴染ませよう。正直、馴れない感覚に酔いそうだ・・・もし今夜部屋に突撃したらゴメンな?」
「あー・・・三奈ちゃんには私から言っとくよ」
「助かる・・・」
全く、ガイアメモリで身体が変異する時は何ともない癖になぁ。どうなってるんだ・・・
ん?何と無く歯茎がムズムズするような・・・まぁ、胸騒ぎはしないし、大丈夫か・・・?
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
緑谷出久
新しい変なフラグが立った化物主人公。
ワンフォーオールの解析が原作よりかなり順調。しかもハイドープ能力があんだけあるから、後付けで新しい能力が発現しても軽く引かれるだけで済むと言う可笑しな状態になっている。
芦戸三奈
出久の嫁にして半身。
うん、まぁ、エクストリームで身体も融合してるし、その上あ~んな事やこ~んな事とかもうヤる事ヤッちゃってる訳で、そんなこんなでワンフォーオールを共有する事になった。
因みにジョーカーの適合体質で以前より身体が丈夫になっている為、一応10%までならほぼノーダメージで扱えるかなーと言う感じ。
フランドール・スカーレット
出久の第二夫人である
今回の一件で、かなり久々に強化フラグが立った。今までは未覚醒で、魔力は使えるけど吸血鬼っぽい事は殆んど出来なかったが・・・
因みに、吸血鬼の性質等はHELLSINGの設定を使っている。