僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
『わりぃわりぃ。補食少女の方が難産だったんだよ』
「どーにかならんのか」
『ならんならん。
あ、今回新キャラが出ます。
タイトルはFESTIVALのFね。ではどうぞ』
「っは~・・・結構、鈍っちゃったなぁ」
公園で運動後のストレッチをこなしながら、ガタイの良い青年・・・通形ミリオは、彼にしては珍しく表情を曇らせながら呟く。
Tウィルス投与による、破壊された個性因子の復元オペレーション。地獄のような高熱や痒み、空腹も等の昔に鳴りを潜めたが、それでも定着しきるまでに日にちが掛かった。そのせいで落ちた身体能力を取り戻す為、リハビリとして公園で身体を動かしているのだ。
「ふぅ~。さて、今日は此処まで・・・ん?」
汗を拭いながら公園から出たミリオの眼に、1人の女性が留まる。
色白で整った顔と、服と同じ深い青色の髪。そして∞マークを思わせる特徴的な髪型に、今時珍しい簪を刺していた事も理由になるだろう。だが一番は、彼女が手に持ったメモと周囲とを頻りに見比べている事だった。
「どうかしました?道に迷ったんですか?」
その挙動から道に迷っていると判断し、ミリオは彼女に声を掛ける。一方その女性は、困ったような、しかし何処か嬉しそうな笑みを浮かべ答えた。
「あ、ハイ・・・ちょっと知り合いに会いに来たんですけど、待ち合わせ場所が判らなくて・・・スマホも充電を忘れてて、ナビが使えないんですよぅ」
眉を八の字にし、少し大袈裟な身振り手振りをして見せる。妖艶な美しさを持つ身体でのボディランゲージは、見る者にあざとい印象を与えるものだ。
「ちょっと見せて・・・あ~、ここ知ってます。案内しますよ」
「まぁ!良いんですか?」
「ヒーローとしては、当然だよね!」
「あらぁ、かっこいいですわね♪」
「HAHAHA!何か照れちゃうな~!さ、お手をどうぞ?」
「では、お願いしますね?ヒーローさん♪」
差し出されたミリオの手を取り、彼女は引かれるままに着いて行く。細めた眼で握られている手を見つめ、口角を吊り上げながら。
―――――
――――
―――
――
―
(出久サイド)
「文化祭があります」
「ガッポォォォイッ!!」
事件終息から数週間経った。それぞれ個性や戦闘技術を磨き上げつつ、そう言えばそろそろ文化祭。皆こういうイベント大好きだから、テンションが跳ね上がっている。
だが俺は無駄に因果律の知識と理解があるせいで確実に何かトラブルが起こると確信し、若干顔を引き攣らせていた。
「でも、このタイミングでそんなイベント起こして大丈夫なのかしら?」
口許に指を当て、心配そうに呟く梅雨ちゃん。まぁ尤もな心配だな。
「その気持ちは分かるが、体育祭がヒーロー科主体だったのに対し、文化祭は他科がメインだからな。流石にこれを潰せば、そっちのフラストレーションが爆発しかねない」
「まぁ、ガス抜きは必要か」
確かに最近、結構他科からは冷たい視線を感じるなぁ。まぁどうでも良いけども。
「取り敢えず、特定の関係者以外は文化祭に来られない事になっている。そんでもって、主役じゃなくてもクラス毎に1つずつ出し物をする決まりでな。1時限目で案を出しあって、明日の朝までに決めるように。
因みに決まらなかった場合は公開座学だからな」
「こりゃ決めにゃな」
折角の祭りで公開座学とか誰得だよ。
なーんて思っている内に、クラス全員が我先にと手を上げるのだった。
―――――
――――
―――
――
―
(NOサイド)
「ほら、見えましたよ!」
通り掛かりで道案内をする事になったミリオが、前方の建物を指差す。その先にあるのは、大きなショッピングモールだ。
「本当にありがとうございます。お陰様で、とても助かりましたわぁ♪」
「それは良かった。それで、お知り合いの人は?」
「う~ん、と・・・あっ、居ました!キャルちゃ~ん!」
探し人を見つけ、彼女は声を上げながら大きく手を振った。相手はそれに気付き、不機嫌そうに近付いて来る。
長い金髪を首元に巻き付け、マスクを着けた紫パーカーの女性・・・否、少女だった。外見年齢は、ミリオと同じか少し下程度だ。
「黙れ、馴れ馴れしく呼ぶな。鬱陶しくて虫酸が走る」
「きゃっ、怖いですわぁキャルちゃん♪」
マスクに隠れていない眼は鋭く細められ、本気で嫌がっている事が一目瞭然。にも拘らず、ミリオの手を掴む彼女はそんな空気も何のそのでおどけて見せた。
「ハァ・・・お前が、コイツを案内してくれたんだったか。例を言うと同時に、心の底から同情する・・・」
頭痛がすると言いたげにこめかみを押さえる少女。どうやら苦労させられているらしい。
「気にしないで!ヒーローとして当然だからね!」
「・・・フン、あぁそうかい」
ヒーローという言葉に反応し、少女の機嫌は更に悪くなる。
「・・・どうか、したのかな?」
「別に?俺の唯一の家族を殺した奴等も、そうやって大衆正義を振り翳すお前らヒーローみたいなものだった事を思い出しただけだよ」
「ッ!?そ、それは・・・」
「おっと、下手な同情なんかしてくれるなよ?お前らの存在そのものが、既に俺の地雷を数百個踏み抜いてんだ。
精々、黙って消えるんだな」
「ちょっとキャルちゃん?流石に失礼じゃありません?」
「知るか。正義面して誰かを叩き潰してる現実を覆い隠す奴なぞ、皆平等に糞だ」
「・・・」
自分にはどうしようもない少女の憎悪に、ミリオは閉口するしか無かった。
「行くぞ。お前の我儘に付き合わされたせいで、研究を勧める筈だった時間が無駄になってしまった」
「んもぅ、もう少しゆったり生きた方が楽しいですわよ?」
少女はミリオにくっついていた女性を吹き剥がし、その場を立ち去ろうとする。
「あ、そう言えば名前・・・」
「あら、私とした事が・・・そうですわ!」
彼女は何かを思い付き、手で口許を隠しながらニッコリと微笑んだ。
「これも何かの
では、ごきげんよう。素敵なヒーローさん♪」
そう言ってキスを投げ、彼女達は人垣の向こうへと消えた。
「つ、次会った時か・・・」
若干の苦笑いを浮かべながら、ミリオは永遠亭への帰路に就こうとする。
―グラリ―
「うおっ!?」
突如として視界が白み、地面が消えたような錯覚に襲われ膝を突いた。しかし、数秒も経つと何事もなかったかのように身体が力を取り戻す。
「貧血・・・?それとも、まだ身体にウィルスが馴染み切って無いのかな?」
首をかしげつつ、ミリオはその場を後にするのだった。
―――――
――――
―――
――
―
(出久サイド)
「よし、大体の構想は決まったな」
夜。ハイツアライアンスにて、俺は文化祭の演し物の作りについて考えていた。
内容はライヴパフォーマンス。前後半で別れ歌って踊って、後半はライダーシステムもジャンジャン使う盛大なヤツだ。兄さん達NEVERや自動人形達も総動員して、出来る限りの派手を尽くす。
因みにそう言った活動の経験者が俺、三奈、フラン、響香さんと4人も居た事もあり、かなりすんなりと事は運んだ。
「取り敢えず、1曲目と後半パートは任せて欲しいかな。文字通りエンジン温める曲があるし、後半には新たな戦士の系統として仮面ライダーを強く押し出したい」
「確か、パフォーマンスは大体2時間だよね。うん、其々1時間ずつ、入れ替わり立ち替わりでやっていこうか」
企画のリーダー的な立ち位置なのは俺。皆の個性や性格を考え、大まかな進行を組み上げる。
「えっと、前半のメインボーカルとベースはウチとして、ギターとドラムが欲しいな・・・」
「かっちゃんは結構前だけど音楽教室通ってたから、あの器用さならドラムも出来ると思う。それにあの性格だ、推薦されたら降りはしないだろうし。
良いよなかっちゃん」
「細けぇ所はボンヤリしてッから完璧は求めんなよ?」
「凄いな爆豪・・・」
「あ、私は習い事でピアノを嗜んでおりますわ!」
「じゃあキーボードお願い。クラブミュージックの要の1つだから、キッチリ教えたげるね」
歌や楽器の音楽参謀が響香さん。聞けば、父親がその道のプロだとの事。実力も過去に何度か共演した俺達が一番分かってるし、心強い事この上無い。
「何より重要なのは、動きのメリハリ!動く時はダイナミックに動いて、止まる時はガッチリロックね!」
「こう、こうか!」
「飯田ソレはロボットダンスだー。じゃあ飯田はもうソレ専一でやるか。うん、シュールさも使いこなせば良い味出るし」
ダンスを教える体術教官は、言わずもがな三奈だ。ダブルの回転を多用したバトルスタイル然りヘブンズトルネード然り、あの体捌きは天才的。尚且つ教えるのも上手かったからな。適任だ。
「取り敢えず、演出の派手さ的に青山君のレーザーと私の弾幕は外せないね。青山君は出久に放り投げて貰って、レーザーエフェクターにしようか」
「あとあれだね!麗日が轟と切島を浮かして、氷を削ってダイヤモンドダスト!」
「あ、衣装はガイアメモリ組がNEVERの隊服で、ビルド系の3人は原点の人達の服な。かっちゃんと麗日は仁がくれたのがあるし、切島のだけ作ろう」
「分かった。デザインは紙に描いといてね」
そして、エフェクトや衣装等を担当する芸術参謀はフラン。英国貴族出身の文字通り英才教育が、ここに来てとても役に立つ。
「にしても・・・楽しんでくれっかなぁ~、他科の生徒・・・」
上鳴が苦笑い気味に溢した呟きが、俺の耳に引っ掛かる。
「楽しんでくれるよきっと!」
「うむ!その為にも、我々が技を磨かないとな!」
「・・・なぁ、ちょっと良いか?」
盛り上がり始める皆に、俺は待ったを掛ける。見れば、かっちゃんの顔も芳しくない。やはり、解っているらしいな。
「なぁ、上鳴。今のそれは、どういう感情で言ったんだ?」
「え?いや、普通に・・・普段イライラさせちまってるっぽいし、その分楽しんで貰えたら良いなって・・・」
「ハァァァァ・・・やっぱりか」
この認識は、改めないと成功する事は無いな。
「勘違いしてるようだが・・・俺らのライブは、他科との馴れ合いの為にするんじゃねぇぞ」
『ッ!?』
ドスを効かせた俺の声に、ほぼほぼ皆の肩が跳ねる。
皆、悪意への認識が甘過ぎだ。まぁ、明確な憎悪を抱いた事が無い奴らだから仕方無いが。
「上鳴が言った事を俺らの立場に置き換えるとするなら・・・もし、いっつも俺らを目の敵にしてくるB組の物間が、高圧的且つ独善的に上から目線で俺達に施しを持ってきたら・・・どうだ?どんな気分になる?」
「あ~・・・成る程」
「それは・・・イラッとするな」
皆の頭の中には、物間がムカつく高笑いをしながら此方に手を差し伸べるというクッソムカつくイメージが広がっているだろう。
全く、喋れば弾幕、噤めば地雷。オマケに離れりゃ意識汚染と来たもんだ。この特殊兵器っぷりを少しは戦場で役立つ方面に向けて欲しいもんだな。粗を探り合う外交官とかには向いてそうだ。
「とまぁ、そんな具合にだ。奴さんらの為っつっちまえば、何をしようが所詮は只の挑発にしかならねぇ。やるのなら、俺達自身の為にやった方が良い」
「もっと言うと、向こうがどう思ってようと結局悪いのは喧嘩吹っ掛けてくる
要らない責任や義務感まで背負い込もうとするのは、日本人の悪い癖だね」
俺の発言に、フランも同調してくれた。
「あぁそうだ。俺達は悪くない。一片の非もありはしない。
悪くない俺達が、どうして口だけな批判ばかりする奴等のご機嫌をうかがって、ビクビクしなきゃいけないってんだ?
俺達が振り回してるんじゃあ無い。この学校に迷惑を掛けているのは、飽くまで
よく思い返してみよう。
USJ・・・100%相手が悪い。
ヒーロー殺し・・・飯田の暴走があったが、俺達の非は5%未満だろう。
林間合宿・・・俺達に原因は無い。
保須の悪夢に至っては、逆に俺が一番の被害者だ。
「と、言う事でだ。最優先は飽くまで俺達が一体となる事。他科は、楽しむ気がある奴だけ楽しめば良い。そういう意識の方が、
「・・・よし!この話はもうおしまい!折角の文化祭、目一杯楽しむ事を考えよーよ!」
「・・・そう、だな。俺等がしょげてても、どーにもなんねぇもんな!」
フランが声をあげ、空気を仕切り直してくれた。そしてチラリと此方を振り向き、然り気無くウィンクを飛ばしてくれる。
(ありがとな、フラン)
(良いって事♪)
魂の接続による精神通信―――ベターマンからとって、リミピッドチャンネルと呼んでいる―――でフランに礼を言うと、向こうから気さくな返事が帰って来た。
文化祭以外にも、このリミピッドチャンネルやワンフォーオールの事、問題課題は山積みだ。だが、取り敢えず今は、楽しむ事を第一に考えるとしよう。
「取り敢えず、ライヴはYouTubeで生放送したいんだが、反対って奴はいるか?」
「メディアに露出した時の練習と思えば、それも良いですわね!」
「うむ!何事も経験だ!」
「お姉様も見られるしね!」
・・・そうだ。これなら、アイツ等にも楽しんでもらえるな。
(NOサイド)
「ふんふふ~ん♪フフ~ン♪」
黒い街にある、組織の集会場になっているビル。その廊下を、ミリオに助けられた女は鼻唄を歌いながら上機嫌にスキップしていた。クルクルとバレリーナのような回転も加えながら、右掌に貼ってあった紙をペリペリと剥がす。
表面は掌に同化する肌色だが、裏から見ると血のような真っ赤に染まっていた。
「おい、耳障りで鬱陶しい。その鼻唄を止めろ」
「それは無理ですわ~キャルちゃん♪ごめんあそばせ~♪」
「チッ」
露骨に嫌な顔をする少女を捨て置き、彼女は集会室の扉を開く。
「只今戻りましたわ~♪」
「お~、お帰り」
殺風景な部屋にちょこんと置かれたソファの上に寝そべったヴォジャノーイが、2人の帰還を確認する。
「で?お目当てのモノは手に入ったの?
「はい!勿論ですわ!」
ヴォジャノーイの問いに、彼女―――霍青娥は、手に貼ってあった紙を見せる。
そしてすぐさま棚から大きな試験管を取り出し、その口の上で紙を破いた。すると、破れた断面から真っ赤な血が滴り落ちる。
「500mlも採れました♪これで手に入りましたわ、念願のTウィルスが♪B.O.Wの噂を聞いてから、欲しくて堪らなかったのですわ♪」
「あっそ、良かったね。ヤガーもお疲れ様」
「全くだ。無駄に心配はさせても俺を自分勝手に振り回さない分、お前の方が数倍マシと思うレベルだ」
ご機嫌絶不調な少女―――バーバ・ヤガーは溜め息を吐くが、その一言を聞き逃すヴォジャノーイでは無かった。
「あれ?オレの事、心配してくれてるの?普段は散々オレを鬱陶しがるのに」
「ッ!う、煩いッ!!忘れろッ!!今すぐ忘れろッ!!」
「いやぁ、意外と愛されてるなぁオレって♪」
「黙れッ!!貴様その口を今すぐ閉じろッ!さもなくばその記憶を焼却するぞッ!!」
「ハハハ。結構ですよ、仲が良さそうで」
「「ッ!」」
何の前触れも無く響いた声。発生源に眼をやると、何時の間にかリーダーであるアダム・ヴァイスハウプトが立っていた。
「あ~ビックリした!リーダー、脅かさないでよォ!」
「これに関してだけはヴォジャノーイと同意見だ、社長。頼むから止めてくれ、心臓に悪いんだよ」
「ハハハ。済みませんね、それは。善処しますよ、これからはね。
所で、青娥さん。
「有り難うございますわ!これで、実験が出来ます!」
そう言って、青娥は足早に集会室を後にした。
「芳香・・・あの
青娥が出て行った扉を見つめ、苦労人ヤガーは溜め息を吐くのだった。
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
緑谷出久
何時もの化物主人公。
文化祭のプロジェクトリーダーで、更にメカニック担当も兼ねる。
原作かっちゃんに代わって、人間の憎悪について認識が甘かったクラスメイト達のスタイルを矯正した。
ライヴはYouTubeで生配信する予定。同時に、とある場所にも映像を中継する。
芦戸三奈
出久の正妻。
文化祭のダンスを教える体術教官。その体捌きは、ダブルに変身した際にも発揮されている。
フランドール・スカーレット
出久の第二夫人。
文化祭のエフェクトを纏める芸術参謀。また、ライヴではヴァイオリンも演奏する。
吸血し合った事で、出久とは魂が繋がっている。此処からお互いに能力が覚醒していく予定。
耳郎響香
文化祭の音楽参謀兼メインボーカル。原作と違い既に出久や三奈と共演しているので、自分の趣味に自信がある。
バーバ・ヤガー
まだ本名不明の少女。でも多分、読者の皆さんには正体完全にバレた。
パルスィをカースドーパントにした幹部。辛辣な口調とは裏腹に結構ツンデレで、実はヴォジャノーイのセルメダルをコインチョコに代えたりしたのは不器用ながらも自分の心配を意識して貰う為だったりする。
霍青娥
東方Projectのキャラクター。
神霊廟に籍を置く邪仙。トリックスター的なキャラクター。
今作ではアダムに勧誘された後にTウィルスの噂を聞き付け、また個性破壊弾頭の効果を打ち消す為にTウィルスを使うだろうと当たりをつけてミリオに接触した。
原作とは能力がかなり違う。頭はかなりキレる方で、作者が扱いきれるか心配なキャラでもある。