僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
「お前好きそうだよな、ああいうキャラ」
『あたぼうよ。だってあの見た目で更に人妻だぜ?いやぁ性癖』
「お前にゃ文やんがいるじゃろがい」
『仕方ねぇだろ!お前が書いてくれねぇんだから!』
(出久サイド)
「やぁ、エリちゃん。久し振りだね」
持って来たフルーツバスケットを机に置いて、ミリオ先輩がそう切り出す。
此処は、エリちゃんが入院している病院。面会に来たのは、俺と先輩と相澤先生、そして三奈とサーだ。
昨日の夜、えーりんから電話があった。曰く、エリちゃんが俺達の事を気にしている、と。
因みにクローン達は永遠亭で保護し、調薬の手伝いをさせているらしい。と言っても、漢方の材料を持って来させるぐらいらしいが。
「あっ・・・えっと、仮面ライダーさんと・・・」
「あぁ、そう言えば名乗ってなかったか。俺は緑谷出久。此方が芦戸三奈」
俺は被っていた帽子を取り、自分と三奈の名前を教えた。
「あの時はありがとね、エリちゃん♪」
そう言って三奈は、エリちゃんの頬を両手でムニムニと揉む。
三奈はあの戦いで治崎に腕を焼かれたが、エリちゃんの巻き戻し能力で治して貰ったからな。
「俺は通形ミリオ。ヒーロー名はルミリオンだね!
此方がサー・ナイトアイ。俺の師匠みたいな感じの人だね!」
「こんにちは、エリちゃん」
サーは短く挨拶し、中腰になって下からエリちゃんのコメカミ辺りを撫でた。
つかサーってあんな柔らかい笑顔出来たんだな。俺は見た事無かった。
「あ・・・ナイトさん、右手・・・私の、せいで・・・」
エリちゃんはサーの手袋をはめた右手を見て、申し訳無さそうに俯く。
サーは右腕を失ったが、永遠亭組が各種企業に急ピッチで作成を依頼した義手を装着しているのだ。
「・・・エリちゃん。確かに私は、この前の戦いで本物の腕を失った。でも今は・・・見てごらん」
サーは手袋を外し、グッと右袖を捲った。その下から現れたのは、黒い艶消しブラックに金色のラインが走るスマートでイカした義手だ。
その指をキリキリとスムーズに動かし、手首を360度回転させて見せる。
「エリちゃん、好きな果物は何かな?」
「えっと、リンゴ・・・」
「分かった。ミリオ、リンゴを」
「どうぞ」
先輩からリンゴを受け取ったサーは、そのリンゴでポンポンとジャグリングして見せた。動きは生身のそれに殆ど劣らず、とてもスムーズだ。
「更に、ほっ」
「わっ」
更に、わざと明後日の方向に投げたリンゴを、義手の伸縮機能で見事にキャッチする。スライド引き出しのように滑らかな動きで義手を元の形まで縮め、今度はフルーツナイフでリンゴをシャリシャリと剥き始めた。
「わぁ、カッコイイなぁその義手」
「ハハハ、そうだ。ピンキーの言う通り。
見ての通り、この義手のお陰で何も不自由はしていない。寧ろ、こんなカッコイイ義手を着ける機会を貰えた事に感謝してるぐらいだよ。ハハハ」
三奈のと共に優しく微笑みながら、ユーモアの効いた言葉を掛けるサー。
「あ・・・これって・・・」
その間にもフルーツナイフは精密に動き、リンゴを綺麗に切り分けた。しかも、少し手の凝ったキュートなウサギリンゴだ。
「君は自分のせいで、私達に迷惑を掛けてしまったと思っていたみたいだが・・・大丈夫。君を迷惑だと思っている人なんて、何処にもいない。安心してくれ。
私達は、君の笑顔が見たいんだ」
「・・・」
その瞬間、またエリちゃんの顔が暗くなった。そして口を開けたり、頬を横に引き伸ばしたりし、最後はまたその手を膝の上に置いて口を開く。
「ごめんなさい・・・笑顔って、どうすれば良いのか・・・分からなくて・・・」
「・・・そうか」
エリちゃんは、未だ笑顔を浮かべられない。まだ心を、治崎の呪縛に縛られているからだ。
まだ、救えてなんかいやしない。
「・・・そうだッ!」
担当医の話では、エリちゃんは角にエネルギーを溜め込んで放出するタイプらしい。そしてその角は今、ちょっとしたコブ程度にまで縮んでいる。つまり、エネルギーはほぼスッカラカンと言う事だ。これなら・・・暴走の危険は少ないだろう。その上、今年の文化祭は極少数の例外を除いて部外者禁制。乱入される可能性も少ない。
「相澤先生。エリちゃん、連れて行けませんか?文化祭」
「・・・不可能では無いな」
「それはナイスアイディアだね!」
「じゃあライヴ来てよ!アタシ達ライヴするんだー!」
「成る程。確かに、悪くはない。だが、初っ端から人で溢れる祭典に連れ出すのも負担が大きいだろう。事前に何度か雄英に連れて行き、慣らしておくべきだ」
「ですね」
「取り敢えず校長に掛け合ってみる」
「えっと・・・ぶんか、さい?」
此方だけでトントン拍子に話が進み、エリちゃんが困惑している。
「文化祭っていうのはね、俺達の学校で行うお祭りの事さ!学校中の人が、他の人に楽しんで貰えるよう、出し物をしたり食べ物を作ったり・・・あ、りんご飴!りんご飴も出るかも!」
「リンゴアメ?」
「甘くて美味しいリンゴを、あろう事か更に甘くしちゃったお菓子さ!」
「さらに・・・!」
成る程、りんご飴。祭りの定番だな。
「取り敢えず、来るなら俺等は歓迎だ。君が最高に楽しめるよう努めるよ」
「・・・私、考えてたの・・・」
少し俯き加減に、おずおずとエリちゃんが口を開く。
「助けてくれた時の、助けてくれた人の事・・・ルミリオンさんやカエルさんたちのこと、もっと知りたいなって考えてたの・・・!」
「あぁ!嫌って程教えてあげるよ!」
「・・・カエルさん、か・・・」
ヴォジャノーイ・・・恐らくこの子にとって、一番のヒーローはやはりアイツなんだろう。一応敵対組織の構成員だし、戦った俺としては色々複雑な気分だ。
「・・・さぁてと。先輩?エリちゃんのエスコート、しっかりしてやって下さいね」
「勿論だとも!まだ休学中だから、エリちゃんにつきっきりでデート出来るよね!」
そう言って、先輩はエリちゃんの頭をワシワシと撫でる。
デート、か・・・さて、此方もフランとデートと洒落込むとするかね・・・
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「ほぅ・・・」
夜。空を冷たく照らす満月の下で、俺はグラスを呷る。
久々に封を切った酒は、イギリス産のジンだ。ライムの爽やかな香りと、微かな苦味が癖になる。度数はちと強めだが、問題は無い。俺が未成年である事以外は。
「出久・・・」
「来たか、フラン」
バルコニーの柵の向こうに、フランがふわりと現れた。
満月に当てられ、少々息が荒い。かく言う俺も、実は結構犬歯が疼いていたりする。
「ふぅ・・・始めようか、出久」
「あぁ、そうだな」
【バード!】
グラスに残ったジンを飲み下し、バードメモリで腕を翼に変化。そのままバルコニーから飛び立つ。
行き先は、仮想市街地のグラウンド。センサーに引っ掛からないよう注意して、俺達はビルの屋上に降り立った。
「よし。フラン、これからお前の能力、手綱を握るぞ」
「うん。でも、どうするの?」
「その為の酒だ」
「え?」
ポカンとするフランを他所に、俺は持って来たグラスにジンを注ぐ。
「酒は心身のタガを外し、魂魄の境を曖昧にする。身体に宿る魂を解放し、体外に魄として顕現させる吸血鬼の訓練には、もってこいだと思ってな」
実際、日本でも精神と肉体を近付ける必要がある神事やお祓いの際にもよく使われるしな。酒は。
「ほら、グイッと。あ、ジンは飲めるか?」
「あぁうん、平気だけど・・・じゃあ、頂きます」
―ごくっ―
「ぷはっ・・・ッ~!!」
フランはグラスを受け取り、勢い良く飲み下した。その途端、涙眼になり鼻を押さえて踞る。
「おっと、アルコールに鼻を焼かれたか。大丈夫か?フラン」
「んッ~・・・平気・・・胃が熱いけど・・・」
眼を潤ませながら、何とか持ち直すフラン。感覚がリンクしてるせいで、俺の鼻にも少しばかり幻痛が走る。
「よし。じゃあ次は、お互いに吸血してみようか」
「・・・それも、最近よく言う魂魄理論?」
「いや。これは酒で外れやすくなったタガを、吸血によって完全に外す為だ。さぁ、吸え」
俺は上着のジッパーを下ろし、首筋を曝け出した。それを見るや、フランの眼が熱っぽく蕩ける。しかし同時に、その瞳には餓えた捕食者特有のギラギラとした鈍い輝きも籠っていた。
「はァァァァ・・・」
―ブツッ―
「ッ・・・」
荒々しく息を吐き出しながら、フランは俺の首筋に食らい付く。普段の鎮痛唾液を使う余裕すら無い程に、相当渇いていたのだろう。皮膚を貫き肉を掻き分ける鋭い痛みを伴って、その犬歯が俺の首筋へと突き立てられた。
俺の血が脈拍と共に滲み溢れ、フランの口内に流れ込む。
「はぁ・・・❤️」
口に溢れ出した血液を嚥下し、うっとりしながら溜め息を吐いた。
「・・・ッ!?」
だが惚けたように虚空を見つめるその瞳はしかし、すぐに大きく見開かれる。
「あっ、あがぁ!?」
―メキッ メリメリッ―
身体から木が軋むような音を発しながら、すがるように俺に抱き着くフラン。それと共に、結晶が鈴生りにぶら下がった枝のようなその翼が目一杯まで開かれる。
「アァァァァァァァッッ!!!?」
そして7対の結晶の根元から、翼が裂け始めた。1対だった翼が、裂けた傷口から赤黒いエネルギーを噴き出しつつクリスタルと同じ7対まで分化。フランは仰け反るように俺から離れ、全身の筋肉を緊張させる。
更にそのクリスタルから同じく赤黒いエネルギーが指状に滲み出し、クリスタルを手の甲に埋め込まれた腕として各々が独立した。
最後に、翼の掌と元からあった手の甲に、裂けるように眼が出現。顔にあった左目は黒く染まり、瞳は俺と同じく蒼い光を放つ。
「フゥゥ・・・ハルルルルゥ・・・グッ、アァァァッ!?」
変化が止まるや否や、7対の翼腕が暴れるように俺に延びて来た。そして俺の肩や両手足を掴み、引きずり寄せる。
「ダメっ・・・出、久・・・逃げ、て・・・」
俺の身を案じてか、涙を溢しながら翼腕を掴むフラン。その優しさは嬉しいが、俺が此処にいる意味を忘れてもらっちゃ困るね。
「馬鹿言え。お前が覚醒時に多かれ少なかれ暴走するなんざ、とっくに予測済みなんだよ。良いから、俺に任せろ」
俺は翼腕に引かれるまま、フランの懐に飛び込む。そして左手で身体を抱きながら顔を右手で掴み、少し強引に右を向かせた。
「ハァッ!!」
―ブツッ―
「くっ・・・」
そのまま、今度は俺が犬歯を剥き出してフランの首筋に食らい付く。溢れ出す血は不思議な事に、儚い甘味を孕む香り高い極上の蜜のようにも、夜通し煮つめ続けた濃厚なスープのようにも感じた。兎に角、途轍もなく美味なのは間違い無い。
「ハァァァ・・・これが、吸血鬼の味覚か」
「ハァ・・・ハァ・・・」
暴走していたフランも、これで幾らか落ち着いたようだ。
何をしたかと言えば、フランが支配し切れなかった吸血鬼としての特質の手綱を、俺が吸血する事で強引に握ったのだ。
「そして、これが吸血鬼の見る夜空か」
ふと顔を上げると、周囲が随分と明るく見えた。一瞬、この儀式に夢中になり過ぎて夜が明けたのかと思ったが、空には依然月が佇んでいる。この人間としては異常なレベルの夜目が、俺が吸血鬼となった証拠なのだろう。
「はぁ・・・出久。もう、大丈夫・・・」
「そうか」
抱き締めていた左手を解き、一歩後ろに下がる。
「あ・・・出久、その牙・・・」
「ん?あぁ・・・確かに」
舌で犬歯を撫でてみると、先程よりも明らかに鋭く、長く伸びていた。
「これで俺も、華々しく吸血鬼デビューだな!」
「いや軽くない?」
「なったもんはもう戻らん。どうせなら楽しんだ方が得だ」
「・・・」
フランの表情に、決して小さくない不安が浮かぶ。魂からは、恐怖の感情が流れてきた。
「恐いか、自分の力が」
「・・・うん」
視線を落とし、自分の手を見つめるフラン。そこにあった眼は既に消え、いつの間にか翼も元に戻っていた。
「そうなると思って、お前へのプレゼントも用意してあるんだよ」
「え?プレ、ゼント・・・?」
俺はポケットからそのプレゼントを取り出し、フランの首に着けてやる。紅い逆さ十字をあしらったそれは、月光を反射し眩く煌めいた。
「これって、チョーカー?」
「あぁ、俺が作ったチョーカー・・・封印拘束制御チョーカー、《クロムウェルII》だ。それの左側に、3つスイッチがあるだろ?それを使って、能力を封印する。
それは任意で解除出来るから、手綱を握り切れれば、戦いで使えるだろ?」
俺の説明を聞いて、フランはチョーカーの横に付いたスライド式のスイッチに指で触れる。
「それがあれば、不用意に他人を傷付ける事は無い。これからゆっくり、慣れていこう」
「・・・ん、分かった!」
俺の眼を真っ直ぐ見つめ、フランは答えた。
まだ若干の不安はあるが、さっきよりも希望がある。これならば、新たな力を手懐ける時も、そう遠くないだろう。
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
緑谷出久
我等が化物主人公。
今回で遂に吸血鬼となり、正真正銘の化物になった。着地点?そんなもの俺が知るか。
フランドール・スカーレット
出久の第二夫人。
吸血鬼として完全に覚醒。今までは飽くまで《吸血鬼の個性を持った人間》だったが、今回で正真正銘の吸血鬼となった。まぁご都合主義で歳はとるけど。
因みに、フランの覚醒態は対リップヴァーン戦時のクロムウェルを解除したアーカードがモデル。
覚醒態で現れる手の甲に付いた眼は、出久のワンフォーオール内にある9人分の魂。オールマイトの先代である志村菜奈までの魂が翼腕の眼に1対ずつ現れており、両手の眼がオールマイトの分。出久の魂は現在共有状態なので、顔の眼が出久と同じ状態へと変化する。
クロムウェルIIのギミックは、キルラキルの神衣純潔の人衣圧倒から。
サー・ナイトアイ
生き延びたオールマイトヲタク。前線からは離脱。
失くした右腕に代わり、えーりん達が急ピッチで手配した特殊な義手を装着している。イメージは、Marvel's Spider-Manのオクタビアス博士が作った神経インターフェイス接続の義手。可動域や動作性もそのまんま。
サー自身もこの義手を気に入っており、エリちゃんに言った通り、腕を失った事は全然気にしてない。
ザイアスペック的なヘッドデバイスを装着しており、運動神経の脳信号を直接拾っている。
因みに、現役復帰も不可能ではないとの事。