僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
『お慈悲ちようだい』
「だが断る」
『ウワァァァァァァァ!?』
(出久サイド)
「ふぅ・・・変身ッ!」
【タブー!】
「ほう、これは・・・」
敬愛のキスに差し出すが如く前方に伸ばした右手で、ドライバーのスロットを押し倒すフラン。すると、今までとは違う無数の血の蝙蝠が飛ぶようなエフェクトに包まれ、新たなライダーガールが姿を現した。
身体にピッチリとフィットする黒いアンダースーツ。
鋭い爪を備えた赤いグローブと、同じく鮮血のように紅い胸当て。
銀と言うには少し渋く、鉄と言うには少し明るい、絶妙な色をした金属装甲。
そして、角のようにも見えるカチューシャと、黄金月が透き通ったような色合いのクリアバイザー。その下に走る、稲妻にも見える牙状に変化した涙ライン。
「タブー改め、ライダーガール・スカーレットキヴァ、と言った所か」
「うん!物体を自分の中に同化して収納する能力を使えるようになったから、応用してみたの!」
このスカーレットキヴァ、実は仁から貰ったコスプレ衣装を依代としてタブーで共振増幅したフランの魔力を固着させているものなのだ。
それによりこの衣装は本物の鎧となり、更にフランの魔力と完全に融合している。
「恐らく、俺のメモリ格納能力が吸血鬼の能力に取り込まれて昇華した能力だろうな。
実際、吸血鬼は幾つかの化身に姿を変える変身能力があるが、その際に帽子や剣、鎧なども同時に出現すると言う。本来の真祖に近付いている証だろう」
「図書館からキバのDVD漸く借りられてさ。キバの鎧格好いいなーって思って、試しにやってみたら出来たの!」
「スゲェな、流石は吸血鬼。自分の意思で拒絶しなければ、自分の中に異物を受け入れる事が出来る」
「ATフィールドを自由に操作出来る感じかな?」
「どっちかっつーと、自由に解除出来る、だろうな。
しかしそのスカーレットキヴァ、随分と馴染んでいるようだ。やっぱ好きなモノを纏えば、メンタルが力に直結する吸血鬼にとってかなりのブーストになるのか」
もうこれだけで軽く一個武装中隊は潰せるだろう。
「これなら明日・・・当日も、大丈夫そうだな」
「うん。吸血鬼の能力もどんどん使えるようになってきてるし、油断さえしなければ平気だよ」
そう、明日。遂に雄英文化祭当日である。俺が身に付けた・・・と言うか、並行世界の観測やら移動やらデップーの言動やらで嫌が応にも身に付いてしまった
「しかも丁度狙い澄ましたかのように私の作業全般が片付きつつ、青山君のロープが切れ掛けると言うのがね。もうこれ完全にそういうシナリオだよ」
そう。パフォーマンスの一環で青山をロープで吊し上げるのだが、その練習で使ったロープがボロボロになってしまったのだ。気付いたのはついさっき。八百万も熟睡中。これは朝イチに買いに行けと言うシナリオの啓示だろう。丁度舞台仕込みの最終調整やら何やらで早朝から作業するから、俺が行く訳にも行かない。
どうせ異次元の奴ら、俺の思考読んでるか聞いてるんだろ?最初に言っとくが、朝イチに八百万に作って貰え、ってのは無しな?この因果は確実に、襲撃してくる敵を迎撃する為の物だ。反抗して八百万に作らせれば、下手すりゃ迎撃するチャンスが無くなるかも知れない。
悔しいが、此処はシナリオに流されるとしよう。
「仕方ねぇさ。俺達はどうも役者らしい。
だが考えても見ろ。《神とは、別次元の知性体に感情移入された存在である》・・・ダークソウルの裏設定らしいが、この法則なら俺達は既に神様だ。この程度、何とも無いさ。
それに、今までクラスメイト誰1人として欠けなかっただろ?察するに、シナリオライターはかなり甘いらしい。こんな所でメインキャスト退場なんてさせねぇだろうよ」
「うわぁ~えげつないメタ読み・・・まぁ、そう思っとくよ。気が楽だし」
そう言って苦笑いするフランに、俺もハハハと笑う。
出来る事はした。後は明日だ。
―ズキッ―
「っ・・・此方も、そろそろ潮時か」
一瞬疼き痛んだ左腕を擦り、俺はそう呟いた。
此方も、割と時間が無い。準備は早く進めないとな・・・
―――――
――――
―――
――
―
(フランサイド)
「あーもう!
出久に今朝方頼まれたものも入れたビニール袋を握り締めて、私は雄英までの道を走る。
全然使わないから、日本のコンビニは凄いって散々イギリスで話題になってたのを過信し過ぎた!結局最寄りのホームセンターで取り揃えたけど・・・
「あーもう遠いなぁ・・・っ!」
走りながら愚痴っていると、前方の曲がり角から人の気配。数は2、警戒開始。
「おぉっと」
「おわっ、すいません!」
―――道中で顔見知り以外の気配に確実に出くわすだろう。接近したら、まず人数を確認しろ。2人だった場合は警戒開始。敵である前提で、態と接触するんだ―――
出久が読んでいたシナリオに従い、態とぶつかり掛けて接触。相手を視界に入れる。
片方は、丈の長いトレンチコートにマスクとグラサンで完全に肌を隠した男。もう1人は、小さい背丈にグラサンで目元を隠し、つば広の帽子を被った女の子だ。
「気を付けたまえよ。ゴールドティップスインペリアルの余韻が、損なわれる所だったじゃァないか」
(ビンゴッ!)
―――あのジェントルと言う奴、紅茶に対してかなり拘りがあるらしい。もし紅茶の名前を出したら、確実に黒だ―――
「へぇ・・・朝からそんな高級紅茶なんて、気合いの入った
「ッ~!」
動画から拾ってきたキーワードで圧を掛けてみれば、面白いように肩が跳ねる。
此処からだ。
「動画、見たわ。今引き下がるなら、特別悪いようにはしないであげようかと思うのだけど・・・」
―――まずは説得、と言うか揺すりを入れろ。計画は分からないが、目的は分かり切ってる―――
「・・・ラブラバ。カメラを回せ」
「・・・仕方無い。じゃあ、プランBか」
因みにプランBのBってのは、《ボコボコにブッ叩く》のB。飽きるまでのBだ。
(NOサイド)
「リスナー!これより始まる怪傑浪漫!
私は
丈長のコートを勢い良く脱ぎ捨て、相方であるラブラバが持つカメラに挨拶をするジェントル・クリミナル。フランは右手の人差し指の爪で親指の腹を切って出血させ、小振りな刀剣を作り出して勝ち虫の構えを取った。
「予定がズレた!只今何時もの窮地にて手短に!今回はズバリ―――
―――《雄英!!入ってみた!!》」
「させるかッ!!」
フランはアスファルトが軋む程に強く蹴り出し、神速の打ち下ろし斬りを叩き込む。
―むにょん―
「ッ!!」
しかしその刀身は、志半ばで止められる。それを為したのは、柔らかな空気の膜壁だった。
「おや、私の動画のリスナーならご存知かと思ったが・・・外套脱衣のついでに
私の個性の、
「新参者に、態々解説どうもッ!!」
ならばとフランはその空気膜の反発に逆らわず刀身を跳ね上げ、肩を軸に縦回転。バックステップで距離を取りながら霞の構え*1を取って、眼に魔力を集中する。
「(視えたッ!
上体の落下を前方への踏み出しに転換し、吸血鬼の脚力で更に加速。同時に蹴り脚を前方に伸ばしつつ重心低くスライディングしながら、吸血鬼の膂力と動体視力を以て支える亜音速の血刀で空気膜の
―――吸血鬼版 大忍び刺し―――
―ブツンッ―
「何ッ!?」
空気膜は難無く破れ、瞬時に霧散。その切っ先が鋭い牙を備えた
その背筋には氷柱を背骨に突き込まれたような悪寒が走り、脳内は危険信号で埋め尽くされた。
「ジェントルッ!?」
「大事無いさラブラバ。しかし、我がジェントリーリバウンドを破られたのは初めてだよ。流石の私も、少々とは言えぬ程に肝が冷えた」
「克己兄さんに勧められて、隻狼やってて良かったよ」
使命に縛られた亡者と言う設定に興味を示し、ダークソウルからフロム・ソフトウェアのゲームプレイと考察鑑賞に嵌まっていた克己。その克己に良ければどうだと勧められ、フランも隻狼を一週プレイしていたのだ。因みに竜胤帰しルートである。
「鋭い技だねお嬢さん。だが生憎、私にはラブラバと言う心に誓った女性がいるのだ。幾ら剣先の冷たい唇だろうと、キスは受け取れないな。
許してくれたまえ」「キャー!私も大好きよジェントル!」
「ったく、調子狂うなぁ・・・でも、狩るッ!」
巫山戯ているのか真面目なのか分からないノリにウンザリするフラン。しかし瞬時にスイッチを切り替え、再び血刀で刺突を放った。
「悪いが、暴力的解決は好きじゃない」
―ブチッ むにぃぃ―
「なっうわぁぁぁ!?」
空気膜を1枚突き破った血刀はしかし、もう1枚の膜に再び阻まれる。そして人外の握力が災いし、跳ね返されたエネルギーを諸に受け止め後方に大きく吹き飛ばされてしまった。
「・・・エグいぐらい暴力的よ、ジェントル」
「あぁ、私も驚きと混乱の最中さラブラバ。それ程までに、彼方のパワー、スピード双方が強烈だったと言う事だ。
見かけに依らず恐ろしい!済まないお嬢さんッ!私は征くッ!!」
「ッ!謝るぐらいならッ、学校に手ェ出さないでよッ!!」
顔に青筋を立てながら、ジェントルとラブラバは全速力で逃走。フランは身体のバネで瞬時に飛び起き、血刀を腰に密着させ居合抜きの構えを取りながら地面を蹴り出す。
「それは出来ない相談だ!ジェントリートランポリンッ!!」
「どわっまたァ!?」
ジェントルは急ブレーキを掛けると同時に、地面に手を付き弾性を付与。巨大なトランポリンと化した地面を居合斬りの踏み込みで思い切り踏みつけてしまい、フランは再び跳ねあげられた。
「学生時分、私も行事に勤しんだものだ。君にも懸ける想いがあろう。だが、私のヒゲと魂には及びはしまい!
この案件は、伝説への第一歩ッ!邪魔はしないで頂きたいッ!
さらばだ!青春の煌きよッ!!」
別れ文句を並べながら、自身もトランポリンで離脱するジェントル。
「ジェントル思い出したわ!彼女、保須市の件でゴキブリを燃やして活躍した、吸血鬼の女の子よ!それに動画サイトでもチームで歌を歌って投稿してた!ジェントルの方が素敵なのに!」
「確か炎の剣、レーヴァテインだったか。恐ろしい限りだ」
「(マズイ、逃げられる!照準安定の
打ち上げられたフランは、背中に収納していた翼を展開。空中で姿勢制御し、血刀を分解して右手に集め再構築した。
血は伸ばされた人差し指から手首まで絡み付き、更に前方に細長く筒状に伸びて固着。そのブラッドアタッチメントごと右手を左肘で挟み込むようにホールドし、立てた親指の爪越しに先端の
「よし。これなら、外れないッ!!」
―バヒュッ!―
そして鋭い風切り音と共に、スナイパーライフルのようなブラッドアタッチメント・・・ブラドトリガーから、スピード特化の針型魔力弾を放った。
―ズドンッ―
「グハァッ!?」
「らッシャァ!」
本来は速度を重視し、威力と安定性に欠ける故に数をばら蒔く筈の
「名付けて、『禁断・
段幕を背中に受けたジェントルは体勢を崩しこそしたものの、すぐに持ち直し逃走を再開。しかし、乗っていたスピードは完全に殺されてしまっていた。それがフランの狙いである。
直ぐ様側にあった電柱の上に着地し、吸血鬼の脚力で思い切り蹴り出す。
夜であれば自前の翼で蜻蛉も真っ青な高速変態飛行が出来るが、生憎と今は朝方。日光のせいで4割程スペックが落ちてしまった今は、翼で飛ぶよりも脚で跳ぶ方が遥かに速い。
「ゥリェェェェェイッ!!」
「ぬぅッ!?中々どうして、逞しいお嬢さんだッ!!」
「当然だッ!こちとら、魂のパートナーから任されてんだよッ!!アンタに気持ちで負ける道理が、一体全体何処にあるッ!!」
「そいつは失敬ッ!」
掴み掛かった勢いのまま互いに揉み合い、2人は建設中のビルに突っ込んだ。
「んにィ!」
ザリリッと靴底で足場を削りながら着地し、即座に体勢を立て直すフラン。舞った粉塵を翼を振るって吹き飛ばし、ジェントルを再び視界に納めた。
そう。鉄骨にコートが引っ掛かって、滑稽にも宙ぶらりんになっているジェントルを。
「これぞまさしく不測の事態!しかし私は動じない!ハハハハハ!」
「アンタ、脳味噌がマシュマロみたいって言われない?フワフワ軽くて甘ったるいよ」
その様子に呆れ返りながら、フランは血の触手でヒュンヒュンと風を切る。先端はナイフのように鋭く、そしてそれが肉眼では捉えられない程に速い。
「この案件、必ず成功させて見せる!その覚悟があるッ!!紳士は動じたりしないのさッ!!」
「覚悟、覚悟ねぇ・・・成る程、諦めるつもりは微塵も無い訳ね。
で?アンタの何処が紳士なのさ。雄英突っつく気なんでしょ?何するつもり?」
「フッ、何をするつもり、か・・・
いやなに、
と言う事で見逃したまえ」
「こんなベラベラと命乞いが飛び出す辺り、マジでプライドかなぐり捨ててるね」
躊躇無く飛び出す命乞いの羅列にフランはまた呆れ、下で見ていた老人に撮影だと誤魔化して登って来たラブラバは絶句。
「でも御生憎様。アンタみたいなのが見つかった時点で、即座にブザーが鳴って緊急包囲。しかも問答無用で文化祭が中止されるの。
まぁ要するに・・・テメェみたいな碌でも無い奴逃がす訳ねぇだろうが寝惚けてんじゃねぇぞコラ」
元から吊り気味だった眼を更に鋭く吊り上げながら、ドスを効かせた声で威嚇するフラン。右手の血液は触手からカランビットにシックル、トマホークにデスサイズと忙しなく切り替わり続けており、しかもどれもこれもかなり殺意の高い武器ばかり。彼女がかなり苛立っているのは一目瞭然だ。
「ホホゥ、それならば心配ご無用!我が相棒がハッキングし、センサーを無力化する算段だ。
よって、警報は鳴らない!我々は企画成功、君らの文化祭も中止にならない!正にWin-Winの関係じゃないかな?」
「あーそれなら問題無いと言うとでも思ったかバカタレ!そっちの方が遥かに大問題なんだよ!コレクションで使わないって言って信管抜いてない本物の核弾頭を日本の都市部に持ち込むようなもんなんだよその理論は!!
後これ此方に何の
「あー、確かに!」
見事な論破。ジェントルが挙げた穴だらけの理論を、更にフランの言葉が滅多刺しにする。
「・・・そう、それが私の企画。面倒な事になる前に、早く向かいたいのだが」
「まだ見逃して貰えると思ってるの?脳内お花畑も大概にしてよ」
「・・・平行線か、仕方無い。この手は、私の流儀的にも避けたかったのだが・・・」
「・・・ッ!まさかッ!?」
ジェントルは足元に空気膜を作り、跳ね上がって鉄骨に着地。そして懐をまさぐり、黒いソレを取り出した。
【
「嘘ッ!?依りにも依ってT2ジョーカー!?」
ジェントルはT2ジョーカーメモリを起動し、己の首筋に突き立てる。
顔は右半分が笑顔、左半分が泣き顔のピエロマスク。服装はそのままに紫のラインが入り、靴はジョーカーメモリのロゴと同じく尖ったピエロブーツと化した。
「全く、ホント出久の言う通りだ・・・」
【タブー!】
「変身ッ!」
【タブー!】
出久から念の為と渡されたロストドライバー・マイルドを装着し、フランはスカーレット・キヴァに変身する。
『紅茶の余韻が残る間に、眠って戴こう・・・仮面ライダー!』
ジョーカードーパントは鉄骨を踏み締め、個性で柔軟化。そして反動で弾け跳び、ピンボールゲームのように縦横無尽に跳ね回り始めた。
「ちぃ、昼間の動体視力じゃ捉え切れない・・・だったらッ!
禁忌・
キヴァは翼を広げて浮上し、両手に魔力球を生成。その2つを握り潰しながら叩き合わせ、全方位に弾幕としてバラ撒いた。
『ぬぅ、中々どうして厄介な・・・』
ジョーカーは紫電のようなエネルギーを纏った両手脚を振るい、迫り来る弾幕の津波を凌ぐ。
「ジェントル!そろそろ行かないとマズいんじゃないかしら!?」
『いいやラブラバ、今少しだ!』
宙返りやロンダートで弾幕を躱しながら、足元の鉄骨を止めているボルトを柔軟化しブルンと引っこ抜いていく。
そして右手で空気膜を作り、引き伸ばしてボーラのようにフランに投げ付けた。
「どわっ!?」
アクロバティックな動きに誤魔化された上に眼に廻す分の魔力まで弾幕に割いていた為、反応出来ず空気膜に絡め取られてしまう。
『やはりこのメモリ、私に馴染むようだ!以前はこのように、空気を投げ付けるなど出来なかったからね!』
「うわっ!?くっ、このォ!」
連続で投げ付けられるエアボーラが身体に絡まり、焦りを見せるキヴァ。それを余所に、ジョーカーは立っている鉄骨を柔軟化してバインバインと弾ませる。
『さて、突然だが私の個性について説明させていただこう。
私の個性は、自分の意思では解除出来ない。時間経過と共に、徐々に元の性質を取り戻していくのだ』
「・・・何の話を・・・?」
『尋常ではない弾みを残したまま、硬さを取り戻していく鉄骨。そして私はさっき、この鉄骨を止めているボルトを全て外した。おぉ、とても危険だな』
「ッ!!ま、まさかッ!?」
フランがチラリと下を見てみると、先程ラブラバが撮影だと誤魔化した老人がずっと見物していた。
『君は仮面ライダー。崩れる鉄骨を、無視出来ない』
「ッ!?ヤバいッ!!」
鉄骨が外れ落下を始めると同時、フランは動く。
身体に絡まっているエアボーラをワンフォーオールで振り払い、脚力と血の触手を使って出し得る速度の限りで鉄骨の真下まで移動。足腰から背筋、肩、そして腕までワンフォーオールを纏わせ、両腕で鉄骨を受け止めた。
「んぐっ・・・んぎぎぎぎぃ・・・」
『ほう、よもや受け止めるとは。てっきり下に行くかと思ったのだがね』
出血の触手も足して支えるフランに、感嘆の声を漏らすジョーカー。下の老人の方を何とかすると思っていたので、予想の斜め上を行ったキヴァに驚いたのだ。
「アンタッ・・・下に、落とそうとしたのッ!?」
『否、君を巻きたかっただけだよ。元より、下に落ちぬよう跳ね返すつもりだった。
心苦しいが、そこで耐え忍んでくれ。私の企画が終わる頃には、誰かが気付いてくれるだろう』
(・・・ダメだ!行かせちゃあ!)
「ちぃ、中々難しい」
呟きながら出久は体育館裏に立てたアンテナに繋いだパソコンのキーボードを叩いていた。その背後には、空間が捩れたような穴が空いている。
「生中継配信の準備は完了。バットショットも3機待機してるし、プロジェクション用のデンデンセンサー2機も所定の位置に付いてる。
後は、
出久がパソコンのエンターキーを叩くと、画面には通信中のリングマークが現れる。そして間も無く、そのディスプレイに男が浮かび上がった。
「ハロー、聞こえてるかい?」
『ん?誰かと思えば、出久君じゃないか。久し振りだな』
『わぁー!出久君久し振りー!』
その男・・・弦十郎はかなり驚いたのか、眼を丸くしていた。割り込んで来た響も元気そうだ。
「おう、久し振り。早速だが、こっちは今文化祭シーズンでな。俺達のステージパフォーマンスをそっちに中継しようと思うんだが、見るかい?」
『おー!見る見る!皆集めてくるね!』
「じゃあ頼む」
そう言って、響は画面から消えた。自動ドアが開閉した音が聞こえてから、出久は弦十郎に向き合った。
「あと、この文化祭が終わった後で、ちょっとそっちに行って良いか?ちょいとメディカルチェックをして貰いたくてな」
『あぁ、歓迎するぞ!』
「良かった。じゃあ、配信開始までのカウントダウン流しとくぜ」
『あぁ、楽しみにしておく』
「特に、ツヴァイウィングに宜しく。じゃあな」
気さくに挨拶を済ませ、カウントダウンを流す。これにて、機材の仕込みはほぼ完了だ。
「無理はするなよ、フラン・・・」
「行かせは、しないッ!!」
キヴァはクレーンを柔軟化してスリングショットのように飛んでいくジェントルを睨みながら、出血の触手を増やしワンフォーオールの出力を25%まで上げる。
そして左腕だけで鉄骨を無理矢理支え、右手に再びブラドトリガーを展開。今度は眼に魔力を流し、より確実に狙いを定めた。
「禁断ッ!
再び撃ち放たれた魔弾は、吸い込まれるようにジョーカーの背中に向かう。しかし今度は勘付かれ、着弾直前に躱されてしまった。
「くっ、あの子もジェントルと同じく、諦めるつもりは無いのね・・・」
『ラブラバ・・・』
「使いましょう、私の個性と・・・メモリを」
覚悟を決め、決意を固めるラブラバ。そしてキヴァは鉄骨を下ろし、2人に迫る。
「やはり、アイツらに渡したのは正解だったみたいだな」
そして、それを今し方までキヴァがいたビルの頂上から眺めるローブの女・・・バーバ・ヤガー。
「良いデータが録れそうだ。さぁ、貴様らの死力を示して見せろ」
ヤガーの眼は細められ、唇はうっすらと弧を描くのだった。
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
フランドール・スカーレット
出久の第二夫人。未熟な真祖。紅蓮に染まる不死の君。
自分の中に無生物を収納する能力を得た吸血姫。その応用で紅蓮のキヴァに変身する事となった。
ぶっちゃけ、キバとサガはスカーレット姉妹にこの上無く似合うと思う。
血液操作能力を応用し、自身の武器にするブラッドウェポンや補助具にするブラッドアタッチメントを習得。定義として、剣や爪など、それそのもので敵を殺傷するものがウェポン。ブラドトリガーのように、攻撃の補助具にするものがブラッドアタッチメント。なのでもしボウガンを作った場合、飛ばす矢が血か魔力かで定義が変わる。
ジェントル・クリミナル
今回のメイン敵。ジョーカーメモリとの高位適合者。
見た目と性格からしても、ジョーカーと相性良さそうと思ったのでジョーカードーパントに。
ドーパント態は、シルエットがほぼ変わらない。頭部がマスク状になるだけ。
高位適合によってブーストドラッグのように個性のグレードが引き上げられ、空気膜の形をある程度操作したり、掴んで投げ付けられるようになった。
ラブラバ
ジェントルのパートナー。
此処までは原作通りだが、彼女もメモリを所持している。
因みに次回、彼女はフランの逆鱗に触れてボロッカスにされる予定。作者が気に入らないからね、仕方無いね。
バーバ・ヤガー
組織の幹部。アダムの直属。
ジェントルとラブラバにメモリを宛がった人物であり、個性とメモリの化学反応に興味が尽きない模様。