僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2   作:エターナルドーパント

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「なぁ作者。前回、俺ちゃんに出番くれるっつったよな?」
『やったろ?』
「ふざっけんなッ!あれ只の飾り付け要員じゃねぇかッ!やっぱ俺ちゃんの事持て余してんだろッ!?」
『いやぁその通り。済まんな』
「死ね」
『悪いが死んではやれん。ヤーナムの輸血受けてから出直してきな』


第42話・純化するV/祭・事・終・幕

(出久サイド)

 

「ふぅ、片付いたな」

「そ~だねぇ~···っとぉ」

漸く片付けが終わり、ゴキゴキと関節を鳴らす。三奈もグゥ~っと伸びをした。

「さぁてと。そんじゃ、拝みに行きますか!我らが吸血姫の晴れ舞台!」

フランは既に、ミスコン会場に準備しに行った。俺も何時も通りにジャケットを羽織ってハットを被り、三奈の手を引く。

「よぉ!お疲れ~!」

「出久さん!三奈さん!」

「お疲れ様でした~!」

「おー、先輩にエリちゃんに鈴仙」

と、その道中でエリちゃんと保護者組にバッタリ。

どうやら、さっきまで裏方の片付けをしていた俺達を待っていたらしい。

「楽しんで戴けたかな?お嬢様」

「うん!」

大きく頷くエリちゃんの顔には、輝かしい笑みが浮かんでいる。どうやら、治崎の呪縛は晴れたらしい。

「あのね!最初のドッカンはちょっと怖かったけど、その後の歌がものすごくて!ぎゅわーんってなって、キラキラ~ってして!

わーっ!って、言っちゃった」

子供の未熟な語彙を総動員して、感動を表現するエリちゃん。眼には希望が宿っており、精神は限り無くポジティブな方向に動き始めている。

「よし、そんじゃ気を取り直して!ミスコン会場にレッツゴー!」

「「おー!」」

三奈が声を上げて拳を振り上げ、ミリオ先輩と鈴仙もそれに乗っかる。

特に鈴仙はテンションがかなり高い。テロリストの洗脳兵からほぼ直ぐに服軍だったらしいから、地域の祭事への参加経験は多少あれど、こう言った学校のイベントの類いは新鮮なのだろう。

 

――ズキッ――

 

「ッ···」

···限度は、今日か明日一杯、って所か。

「ねぇ、出久···」

「ん?」

不意に、繋いでいた右腕の袖を三奈に引っ張られる。顔を向けると、俺の眼を心配そうに覗き込む三奈の顔があった。

「···何があったの?今···」

「···ハハハッ、敵わねぇな」

《大丈夫?》でも、《どうかしたの?》でも無く。

()()()()()···自分の思い違いじゃ無く、俺に異常がある事を確信しての、誤魔化しの効かない聞き方だ。しかし、表情には出していなかった筈だが···

「···何で分かった?」

「指、ちょっとピクッてなったから。それに、一瞬身体が強張ったし」

「わ、こりゃスゲェ」

流石は、俺と身も心も1つになっただけの事はある。洞察力がもはや狩人のそれだ。

「···命の危険は無いが、明後日までには···俺は弱体化する」

「細かい事は言えない?」

「いや、別に言っても良いんだが···」

「よう出久!」

「ほら来た」

狙い澄ましたようなタイミングで乱入するデップー。まぁ、こう言うシチュエーションならお約束な訳だ。

「いやゴメンて。出番捩じ込むなら此処しか無かったんだよ」

「あぁ分かっている。分かっているさデップー」

相変わらずのメタ発言である。だが、コイツも寂しかったんだろうな。だったら、ちっとは話に参加させてやろう。

「三奈。さっき言った通り、命の危険は無い。今日は楽しもうぜ」

「···じゃあ、約束してね。嘘は吐かないって」

「あぁ、勿論分かってるって。あ、でもサプライズでプレゼントを送る時とかは別な?」

「もぅ···」

ウィンクしながら、ハットを押さえておどけて見せる。三奈は眉を八の字にして呆れたが、それでも小さく笑ってくれた。

「あー良いなー!俺ちゃんも文やんとイチャイチャしたいなー!」

「あー···成る程。最近はシチュエーション的に文やんの方から俺達に接触出来ず、尚且つお前が割り込む隙も無かったからフラグが立たないと」

「分かってきてんじゃねぇか。啓蒙高くね?」

「啓蒙?まぁ少なくは無いだろうが···何の用語だっけ?」

「Bloodborne」

「あーアレ。今度実況動画か考察動画でも観てみよ」

「お、プレイしよって言わないのは懸命だな」

「···成る程、さては作者とやらブラボのプレイ経験が無いな?」

その通りで御座います(イグザクトリー)

やたらと丁寧なお辞儀が逆にムカつくなぁ。あと声が違うんじゃないか?

「ったぁく、出久!あんたの言う通り、今日は楽しんであげるから!ちゃっちゃとエスコートした!」

「っと、すまんすまん。さ、行こうか。お嬢様?」

「もう、キザになれって言った訳じゃ無いよ?」

しょうがないなと言う雰囲気を匂わせつつ、笑いながら腕を組んでくる三奈。少し腰を折って俺の二の腕に抱き付くと、その愛らしい笑顔は必然的に上目遣いになる訳で···

 

―カシャカシャッ―

 

「わっ!?」

唐突に響く電子シャッター音。そして三奈の驚いた顔。此処で俺は、漸く無意識にバットショットで撮影していた事に気付いた。

「ちょっ、何撮ってんのさ!」

「あ、すまん。可愛いなーと思ったら無意識に···」

「おぉ、出久もその境地に達したか。実は先日俺も、風呂上がりでバスローブ姿の文やんの激写に成功してな」

何か水を得た魚のようにイキイキし始めたデップー。

「え?最近はあんまり会えてないんじゃなかったっけ?」

「2人のイチャイチャでフラグが掘り起こされて、未確定だった過去を補完するイベントが生えた!」

「何じゃそりゃ」

今度は俺の口から呆れが溢れる。

「···まぁ良いか。さ、早く行かねぇと」

「そうだよ!さ、レッツゴーゴー!」

すっかり遅くなった歩みを再び早め、俺達は次の目的地に向かった。

 

―――

――

 

―ベキィッ!―

 

『決まりましたァーッ!煌びやかなドレスを裂いての演武ッ!

鋭い手刀での猛々しい板割りすら、美貌とキレによって華となる!素晴らしいパフォーマンスでした!』

 

俺達が着いた時、丁度B組の拳藤の演目が終わった。どうやら木の板を叩き割ったらしい。確かに彼女は、引き締まった肉体美とキレによる機能美が大きいからな。それを活かした、良いパフォーマンスだ。

 

『続いて、3年サポート科のミスコン女王!絢爛崎美々美!高い技術力で、顔面力をこれでもかとアピールしています!』

 

出た、顔面誇示欲全開女。今年もまた、自分の顔面を象ったトンデモ戦車に乗ってのご登場だ。

あの女、このミスコン会場を、新兵器のお披露目パレードだとでも思っているに違い無い。何せあの顔面だけでも、十分敵を威嚇出来るだろうからな。度肝を抜くと言う意味だけならば、既に100点満点である。

少なくとも、女性的な魅力だとか、機能美だとか言うならば、其処らに巣を張ってる女郎蜘蛛の方がまだ美人だろう。

兎に角、俺が感じた事は1つ···あの食品サンプルみてぇな凄まじい顔面を向けられたく無い。

「これは何をする出し物なの?」

「アッハハー。丁度今、それが分からなくなった所だよね」

「少なくとも、精神汚染テロの現場で無い事を願ってる」

「やっぱ飾らない文やんとかヴァネッサってスゲェんだな···」

ガシャガシャとヒト型に変形するトンデモ戦車を見ながら純粋に首を傾げるエリちゃんと、遠い目をする先輩。因みに三奈と鈴仙も、口元をひきつらせて硬直している。ミスコンであんなモノを見りゃそうもなるだろう。そしてデップー。文やんを比べるのは止めて差し上げろ。

とまぁ、かく言う俺も、あぁ言うのは好きの対極に位置する。なので、もうバットショットから転送した三奈の写真を貼り付けたスタッグフォンで眼を塞いでいる。あぁ可愛いな三奈。愛してるぜ三奈。

「あ、次はねじれ先輩だよ!」

「お、もうか」

気付けば、あのトンデモ戦車は片付けられていた。そしてステージの上には、薄いフリルがあしらわれた水色のドレスで身を飾ったねじれ先輩が立っている。

「ほう、風精(シルフ)を彷彿とさせるな」

「ねー。あの人マイペースだし、まさに風って感じ」

そんな事を三奈と呟き合う内に、ねじれ先輩は個性を使ってフワリと浮き上がった。

くるくると、ふわふわと。風と戯れ、空を漂うその姿は、まさに妖精。幼さが残る可愛らしい無邪気さが、その儚げな美しさに拍車を掛ける。

「あぁ···美しいな」

「嫉妬しちゃうなぁ~···」

「大丈夫。俺は三奈とフラン以外の女にも見惚れはするが、酔いはしないさ」

「···ま、見惚れるぐらいは許してやるか」

八の字眉の苦笑いを混ぜつつ、仕方無いなと呟く三奈。

あぁ、全く。1度でもこんな良い女に酔ってしまったが最後、そんじょ其処らの女になんて、酔いたくても酔える訳が無いのにな。

 

『幻想的な(そら)の舞い!引き込まれるように見惚れてしまいました!

さぁお次は、吸血鬼のお嬢様!フランドール・スカーレットさん!』

 

「おっ、来た!」

「フランちゃんだ!」

アナウンスと共に、ステージに登るフラン。真っ赤なジャケットの裾を揺らし、背中のジッパーを開いて翼を伸ばした。

【タブー!】

そして、懐からメモリとドライバーを取り出す。そのスロットにタブーメモリを装填し、自分の腰に装着した。

 

「―――――変身!」

【タブー!】

 

ゆっくりとスロットに指を掛け、たっぷりと間を取ってから展開。真っ赤な蝙蝠のエフェクトに包まれ、鏡面化した表面が砕けて弾け飛ぶ。

ライダーガール、スカーレットキヴァの登場だ。

「禁忌・『フォーオブアカインド』」

閉じていた眼を薄く開き、そう呟くキヴァ。すると、赤黒い幻影のようなものが身体から漏れ出し、3人の分身として固定化する。

終焉極大刃炎剣(レーヴァテイン)···ハァッ!!」

掌に真っ赤な魔力が収束し、一気に燃え上がってレーヴァテインを形成する。

それを大きく、炎を描くように振るい、猛々しくも凛とした剣舞を魅せてくれた。

「更に···こう言うのも、好きでしょ?」

キヴァの本体は剣舞を中断し、左手の人差し指を牙で噛む。滲み出した血は鋭く引き延ばされ、深紅の刀を形作った。

「フッ!ハァッ!」

レーヴァテインと血刀の双剣舞。左手に掴まれた血が空気を切り裂くと共に、刀身からは紅い霧が零れる。其処に右手が炎を振るうと、その血の霧は瞬時に引火し燃え上がるのだ。

その炎に照らされて、キヴァの頬は紅く、首筋の牙痕が艶かしく写し出される。

血が焼ける芳しい香りに、思わず牙が疼いた。

 

―コンッカカンッ―

 

妖しく美しい舞いのラストは、フラメンコのようなステップで締められた。レーヴァテインは握り潰され、輝く火の粉と散る。

「あぁ···匂い立つな···堪らぬ血で誘ってくれる···えずくじゃあないか」

「わっ、出久!眼が真っ赤だし顔がヤバイよ!」

三奈に揺さぶられて、漸く我に返る。気が付けば、口角はこれでもかと吊り上がり牙を剥き出していた。

自分の手で触れて分かるその形相は、手負いの獲物を前にした飢餓状態の肉食獣のそれのようで···

「あぁ···少し、離れよう。血に渇いてきた。目的の吸血姫様も、拝めた訳だしな」

深く息を吐き、俺はその場を後にする。

近い内に、輸血パックでも取り寄せるべきかも知れないな···

 

―――――

――――

―――

――

 

「いやー!楽しかったね!エリちゃん!鈴仙さんも、楽しめたようで何よりだね!」

夕方。俺達は文化祭を堪能し、エリちゃんの見送りに校門まで来ていた。

「ちょっと!射的で俺ちゃんがトップスコア叩き出したのカットされたんだけど。え?この後も出久の個人イベントあるから巻きで?くそったれめ」

またデップーがグチグチと文句を言っている。と言うか、俺がこの後する事はお見通しって訳だ。まぁ当然だな。

「でも、りんご飴、無かった···残念」

と、少し表情が沈むエリちゃん。今回の出し物では、りんご飴が出ていなかったのだ。

「と、そんなエリちゃんにプレゼントだ」

「え?」

俺が言うと、三奈が後ろ手に持っていた紙袋をエリちゃんに差し出す。

「出してみな」

「···!わぁ···」

三奈に促され、袋から取り出したそれは、真っ赤なりんご飴だった。

「材料は、朝イチでフランが買いに走ってくれた。そして俺からは、これだ」

【ボーダー!マキシマムドライブ!】

空間を切り裂き、スキマスペースに保管していた物を取り出す。

「あ、カエルさん!」

俺が渡したのは、カエルの顔をデフォルメした棒つきキャンディだ。ラップに包んだそれを、エリちゃんに渡す。

「これは、帰ってから食べな。まずは、りんご飴だ。今食べて、感想を聞かせてくれるかな?」

「うん!」

カリッと小気味良い音を立てて、りんご飴を齧るエリちゃん。どうやら、気に入って貰えたらしい。

「うふふ···さらに甘い」

「お気に召したようで何よりだ。手をベタベタにしないよう気を付けてな」

「良かったなエリちゃん。まぁ、また近い内に会える筈だ。そん時は、また作ってやってくれ」

「ヤー」

エリちゃんに手を振りながら、相澤先生の頼みを承諾する。

ま、その前にやらなきゃいけない事があるんだがな。

 


 

「ひゅぅ···よし」

夕焼けを背にしながら、右手にエターナルエッジを、左手にシンフォニックメモリを握る。今日の昼間までは、この世界と異世界を電波で繋いでいたメモリ。そのスタートアップスイッチを押し込んだ。

【ギャラルホルン!】

黄昏の始まりを告げる、角笛の名。そのメモリを、エターナルエッジのマキシマムスロットに装填する。

【ギャラルホルン!マキシマムドライブ!】

「三奈、フラン。変身しておけ」

「ん、分かった」

「りょーかい」

後ろの2人に指示しつつ、俺もドライバーを装着。それぞれのメモリを構え、何時ものように叫んだ。

【エターナル!】【ジョーカー!】【タブー!】

「「「変身!」」」

黄金色、紫、深紅のエフェクトが舞い、ガイアアーマーが身体を包む。

 

―――――見上げる星。それぞれの歴史が、輝いて···

 

そして、適合ソングであるJourney through the Decadeを口遊んだ。

すると、逢魔時の紫に染まった空が歪み、真っ黒な孔が開く。しかし、そのままではまだ不安定。故に、俺はまだ歌い続ける。

 

―――――オーロラ揺らめく、時空越えて···飛び込む。迷走する並行世界(parallel World)···

 

時空を越える窓が、完成に近付く。黒い孔の向こうに、微かな極彩色が混じり始めた。

歌もサビに入り、低く、訴えるように、詞を紡ぐ。

 

―――――新しい夜明けへと続く道に、変わるのだろう。

 

「目撃せよ―――Journey through the Decade···」

最後の詞を歌い上げたその時、次元の窓は遂に完成する。ウネウネと不定形に変形し続けていた孔の淵は、安定した真円となった。

「さぁ、行こう」

「ん」

「分かった」

直径150cm程の次元の窓に、俺達は飛び込む。黒い影をはためかせ、この世界から消えるのだ。

 


 

(NOサイド)

 

―ヴィーッ!ヴィーッ!―

 

「···来たか」

シンフォギアの世界、S.O.N.G.の本部。空間異常の反応を示すアラートが鳴り響く中、その組織の司令官···風鳴弦十郎は、然して驚く事も無く腕を組んでいた。

オペレーターの藤尭朔也、友里あおいもまた、何ら危機的意識は無い表情をしている。

 

―ヴォンッ―

 

そして、本部のオペレータールームの中央の空間に、次元の窓が開いた。その中から、3人の人影が出現する。

言わずもがな、エターナル、ジョーカー、キヴァである。

「よく来たな、3人とも」

「済まないねおやっさん。隠し事は無しにするって、約束したからさ。連れて来ちまった」

「構いやしないさ」

弦十郎とエターナルは気さくに挨拶を交わし、ガッシリと握手した。S.O.N.G.では、突然の来客は割と良くある事なのだ。

「皆さん、お久しぶりです!」

「お、エルフナインちゃん!」

其処へ、白衣を着た少女、エルフナインが到着する。

「よぉエルフナイン。ゆっくり寝てるか?」

「勿論です!さっきも4時間仮眠を取りました!体調はバッチリです!」

「あー···まぁ良いか。そんじゃ、メディカルルームに通してくれ」

何か言いたげだったが、それを呑み込むエターナル。そして変身を解除し、ハットを被り直した。

「で、結局さ。出久の用事って、一体何なの?」

「そうそう。向こうで話すとしか、言わないし」

出久に習って変身解除したフランと三奈が、歩き出す背中に追従しつつ訪ねる。出久は、この世界に来た理由を一切言っていなかったのだ。

「んー。ま、簡潔に言うとだな···俺はもうすぐ、()()()()()()()()()()()()()()

「「はぁ!?」」「そ、そうだったんですか!?」

何でも無い事のように、軽く言い放った出久。しかし、割と重要なカミングアウト。故に、三奈とフラン、そして先導しているエルフナインも、大きく声をあげた。

「ど、どういう事!?」

「それを今から説明するよ。治療台(ベッド)の上からな」

丁度メディカルルームに到着し、手術台のようなベッドの上に座る出久。そしてハットとジャケットを脱ぎ、左腕を見せた。

「こ、これはッ!」

「ひっ···!?」

「こ、これって···」

その腕に、3人は息を飲んだ。

左下腕に、どす黒く毒々しい生体コネクタが浮かんでいたのだ。

「ッ···大方、()()()使()()()()()を前提に造られたガイアメモリが、最近の俺の急激な体質変化に追い付かなくなって···拒絶反応を出し始めたんだろう」

ジリジリと痛む腕を擦り、説明する出久。その痛みは、段々と頻度と強さを増してきている。

「で、そろそろ潮時ってな訳だ。だから此処に来た。

俺達の世界は、ガイアメモリなんてオーバーテクノロジーの想定外な反応に、対処なんて出来やしない。そもそも俺らの世界じゃ、ガイアメモリシステム自体が他所から放り込まれたイレギュラーだ。だが、此処ならば···ライダーシステムの運用を行った此処ならば、そのノウハウ分だけ幾らかマシだ」

「···じゃあ、ドーパントじゃ無くなったら、どうなっちゃうの?」

「うーん···」

三奈の問いに、唸る出久。当然、誤魔化す気などさらさら無い。純粋に、どの程度の影響があるか分かりかねるのだ。

「···取り敢えず、地球の本棚へのアクセス権限は無くなるだろうな。後は、超適合体質、言語完全翻訳辺りも無くなるかも知れん。

あ、何よりメモリとドライバー、あと強化アイテムの類いが造れなくなるだろうな。これは確実だ。一応、前もって幾つかはブーストアイテムは造ってあるが···まぁ、生憎ロストドライバーやダブルドライバーじゃ使えない仕様だから、これは今は良いだろう」

出久は帽子を取り、思い付く限りを尽く答えた。これ以上は、出久自身にも分からない。

 

―ズキッ―

 

「ッ···思ったより早いな。早速、準備に取り掛かるとするか」

【ボーダー!マキシマムドライブ!】

ギャラルホルンのマーカーとして置いて来たエターナルエッジの代わりに、ドライバーのマキシマムスロットを外してボーダーメモリを装填。空間に穴を空け、スキマスペースを開く。

「何するの!?」

「創ってきたメモリの中で、特に有用なメモリを、俺の身体から切り離す!このままじゃ多分、全部消えちまうだろうからな!」

そう言いつつ、出久は掌から1本ずつT2メモリを取り出し始めた。それらは出久の手から溢れ、直接スキマスペースに落ちて行く。

「ぐぅッ···!」

1本メモリを排出する毎に、出久の表情はどんどん歪む。左腕の痛みは、最早焼けた火箸で肉を掻き回されているような激痛の域に達していた。

「AtoZ、ラストォ!」

原初のT2は、全て排出し終わった。しかし、まだ休んでは居られない。

「次ッ、シンフォニックッ、メモリ!」

痛む左腕に奥歯を噛み締めながら、今度はシンフォニックメモリを取り出し始める。

「ガング、ニール!アメノハッ、バキリッ!イッチイッ、バルッ!

βに、イガリマッ!シュルッ、シャガナ!アガートラームッ!神ッ獣ッ鏡ッ!

そんでもってェ、ソロモンの、杖にッ!ダウルッダヴラァ!!」

眼を真っ赤に充血させながら、出久はメモリを排出し続ける。仕舞いには、ポタポタと鼻血が垂れ始めた。痛みの大元たる左腕は、赤黒く変色し、熱を放っている。

「クッ、エルフナインッ!!」

「は、ハイッ!!」

「血液型は、何でも良い!輸血パックを、出せるだけ持って来い!ついでに氷嚢もだッ!!」

「ハイッ!ただいま!」

「フランちゃん、手伝ってあげて!出久は私が見てる!」

「分かった!行ってくる!」

フランはエルフナインと共にメディカルルームを飛び出し、物資保管庫へと向かった。

「ぐッ···まだ、だ···」

「出久···ッ」

三奈は治療台の側に跪き、マキシマムスロットを固く握り締める出久の左腕に触れた。

その腕は熱く、火傷するかしないか、そのギリギリの温度だ。

 

―――――誤魔化さないで。貴方に落ちる、冷たい雨を、嗅ぎ分けて···

 

自分に出来る事は何か無いかと思考を巡らせ、三奈は歌う事にした。自分の歌声が、愛しい男の苦痛を、少しでも慰められればと。

「う、うぅッ···はぁッ···はぁッ···」

そして、その想いが通じたのだろうか。出久の呼吸は幾らか整い、脂汗の勢いも少し落ち着いた。

 

―――――軽はずみなフリ。悪戯に、からかい遊んでいる貴方。私は手探りしながら、貴方を想う···

 

左手を出久の腕に重ねながら、右手を出久の頬に添える三奈。その手から緑のスパークが弾け、真っ赤なラインが浮かび上がった。

それに誘われるが如く、出久の身体にもワンフォーオールのスパークとラインが発生する。

 

―――――飛び立つ鳥のように、孤独と、孤高に揺れる、背中···私は此処で待つ只の···とまり樹でしかない!

 

「誤魔化さないでッ!貴方に落ちる、冷たい雨を!嗅ぎ、分けて!両手を空に、翳しているから···

貴方に咲く、菩提樹···」

2人の間に共有された、魂の凝集体であるワンフォーオール。その魂の共鳴により、出久の痛みが三奈にも伝播し始めた。

余りの痛みに、涙を浮かべる三奈。しかし、それは同時に、独りで背負っていた痛みを分割し、半分肩代わり出来ていると言う事。故に、出久の苦しみは確実に減っている。それが三奈には、何だか嬉しかった。

 

―――――凭れ掛かるたび、遠退いてく、冷める貴方の体温。私はどれ程の強さを、纏えば良い···?

 

「夢の先はもっと、過酷で···貴方の胸を、貫く。私は此処に居る。永く···貴方の傍らに!」

 

―――――もう迷わないで!貴方に刺さる、鋭い棘を、抜き取って···その傷口を、抱いていてあげる···貴方が、笑う日まで···

 

力の抜けた出久の左腕を胸元に抱き寄せ、己の痛む手を繋ぐ三奈。その手の甲に頬擦りしながら、出久の力となる為、歌う。

「三奈ちゃ···!!」

 

―――――どうか···貴方が、壊れてしまうのならば···どうか···この身体を、燃やして欲しい···

 

輸血を抱え戻って来たフランは、その光景に言葉を失った。

汗と血に濡れながらも、幾分か穏やかになった顔で治療台に寝そべる出久。そして、閉じた眼から涙を溢しながら、出久の手を抱き、身を捧げるように歌う三奈。

それはまるで、1枚の絵画のよう。美しく、儚く、然れど強い意思が宿ったその姿に、フランは思わず見惚れてしまった。

「···ッ!よし!私も、出来る事を!」

一瞬の後に我に返り、輸血パックに穴を空けるフラン。そして中身を口に含み、己の唇を出久のそれと重ねた。

「っ···」

少しずつ流し込まれる血を、嚥下する出久。1口飲み下す毎に、確実に肌の血色は良くなっていく。

「三奈さん!氷を!」

歌いながら頷き、エルフナインから保冷剤を受け取る三奈。それを出久の腕に当て、更に歌い続ける。

「うゥゥゥゥッ···ウォォォォォッ!!」

眼を見開き、叫んで渇を入れる出久。

三奈が痛みを和らげ、フランは血を飲ませた。それによって回復し、府抜けている場合では無いと己を鼓舞する。

「ッ!腕から、メモリが!」

エルフナインは、三奈に抱かれた出久の腕から、メモリが顔を出している事に気付いた。いよいよ、時間が無い。

「ヴァイ、ラス!ヒー、リング!」

立て続けに、2本メモリを排出。腕のメモリーメモリはますます反発し、半分程が抜け出ている。

 

「これでッ!ラストォォォォッッ!!!!」

 

最後の力を振り絞り、弾き出したメモリ。それは···(アシッド)。最初に三奈に渡したメモリだった。

それを最後に、出久の左腕からズルリとメモリーメモリが抜け、治療台に落ちる。

「ぐぅッッ!?!?」

「がぁッッ!?!?」

その瞬間、出久と三奈の身体を電流のような激痛が貫いた。

「ッッ···ハァ、ハッ、ハァ···ハァ···」

幸い、その痛みは一瞬で過ぎ去る。未だに荒い息を吐きながら、出久は三奈の手を握った。

「···三奈ぁ···ありがとなァ···」

「···どう、いたしまして」

 

―カシャンッ―

 

出久の手に握られていたマキシマムスロットが、指からスルリと落ちる。それを拾い上げたフランは、あれだけの苦痛の中でよく握り潰さなかったな、と思ってしまった。

「出久ッ···!」

「んむっ!」

出久と自分の唇を重ね、貪るようにキスをする三奈。初めは驚く出久だったが、すぐにそれを受け入れ、頬に添えられた手に自分の指を優しく絡める。

「は、はわわわっ!」

一方、こう言った事に耐性が薄いエルフナインは、顔を真っ赤にして両目を手で隠した。それでも気になるようで、指の隙間からチラチラと覗いている。

「アハハ、三奈ちゃんの正妻力には勝てないや」

そう呟いて、フランはホンのちょっぴり哀愁が籠った眼差しを向ける。出久が自分も愛してくれている事は言われるまでも無く分かっているが、それでも一番愛されたがってしまうのが女の性と言うものだ。

「んっ···ぷはぁ」

「んぷっ···ふぅ」

たっぷりと20秒以上、濃厚なキスを交わした2人。銀の糸を引いて離れる唇から、熱い吐息が漏れた。

「···血生臭い」

「ちょ、開口一番にそれ言うか?回復の為にも血は必要だったし、吸血鬼にゃ酷ってもんだぜ」

理不尽な事を言ってむくれる三奈。その頬に付いた自分の鼻血を拭いながら、出久は苦笑いを浮かべた。

そして、治療台の上に転がったメモリーメモリを手に取る。

 

―パキンッ―

 

浅黒く、随分と色褪せたそれは、出久に看取られ爆ぜ壊れた。メモリのエンブレム部分が割れ、火花の散る基盤が露になる。

「世話になったな···メモリーメモリ。今までご苦労さん」

「···あれ?」

メモリーメモリに優しく微笑む出久の顔に、三奈は違和感を覚える。それを確かめるべく、出久の前髪をかきあげた。

「ちょっ、何だよ三奈」

「色、変わってる···」

「は?色?」

「眼の色!」

「ん···ちょっと待て」

スタッグフォンを取り出し、カシャッと自撮りする出久。その写真を確認し、成る程と納得した。

「へぇ、こうなったか」

その写真に写る出久は―――――

 

―――――()()()()が、()()()に変色していた。

 

「ま、吸血鬼だしな。あり得る事だろ」

「大丈夫なのかな···」

心配そうな三奈の頭をポンポンと撫でつつ、出久は新しい輸血パックを手に取る。そして袋の端を牙で噛み千切り、中身を呷った。

「ふぅ。フランも、ありがとな。コレ取って来てくれたり、飲ませてくれたり」

「エヘヘ、どういたしまして♪」

「で、エルフナイン。このメモリーメモリ、此処で保管しといて貰えないか?」

「えっ?」

唐突に話を振られ、メモリを差し出されたエルフナイン。余りに唐突で、頭が付いてこない様子だ。

「何で、ボクに?」

「そいつは簡単。この世界の方が、俺の世界よりもオーパーツの類いの管理設備が整っているからだ。おやっさんにも、話は通しとく。破損してても、危険物には違い無いからな」

「ちょっとそれ傍若無人じゃない?」

「···まぁ、俺もそうは思う。でも仕方無いだろ?

向こうじゃ普通のT1ならまだしも、こんな規格外級のメモリなんて処分したら、どうなるか分かったもんじゃない」

「あー···分かりました。取り敢えず、ロビーに戻りましょう」

 

―――

――

 

「よし!ではこれは責任持って、我々が厳重に保管しよう!」

「ごめんなおやっさん。厄ネタになりかねないモノを押し付けちまって」

結果から言えば、話は驚く程スムーズに通った。それにより、メモリーメモリの残骸はこの世界で保管される事となる。

「なぁ~に、こう言う出所不明の物品を押し付けられるなんて、仁君で慣れているさ!」

「あっ···察した」

「いやー、並行世界からムジョルニアを持って帰って来た時はフリーズしちゃったなぁ~。アハハハ」

「ムジョルニア?マジかよ、北欧神話の雷鎚じゃねぇか」

どうやら仁が既にヤベーイ物を幾つも持ち帰って来ているらしい。傍迷惑にも程がある。

「深淵の竜宮を強化改修した深淵の遺跡(ルルイエ·オブ·アビス)の保管庫も、まだ十分空きがあるしな」

「何ちゅう名前を付けてんだよ」

「まぁそもそもが、《開けたら録でも無い事になるビックリ箱》って意味で呼ばれ始めた名前だからな~。深淵の竜宮」

「ヒッデェ経緯だなぁオイ···そう言えば、響達は?」

と此処で漸くシンフォギア装者がいない事に気付く出久。流石に遅過ぎである。

「え?時計見てみなさい。もう23時よ?」

「マジか!此方じゃまだ夕方5時ちょい前だったから気付かなかった」

「まぁ此処、そもそも潜水艦だしね」

「いやー、こんな時間に申し訳無い」

「別に平気よ。最近は平和で、基本的に暇だし」

「そうそう。君達が来る直前なんか、晩酌のツマミに何作るか、なんて話題だったし」

「アットホームな職場だな」

そう言って、笑い合う一同。何と平和な事だろうか。

「···じゃ、そろそろ帰るわ」

「あぁ。今度はゆっくり、お(もてな)ししよう」

「ソイツは楽しみ。なら、ワインの1本でも土産に持ってくるか」

「おっ!良いねぇ!」

「職務中は飲めないけどね」

あからさまに機嫌が良くなる朔也に、やれやれと言った様子のあおい。そんな和やかな雰囲気に、弦十郎も大きく笑った。

「そんじゃ、世話になった。チャオ♪」

「「さようなら!」」

別れの挨拶を投げ、出久達は次元の窓に消えて行くのだった。

 


 

「ん?この、反応は···―――――

 

―――――()()()()()()()()?」

 

to be continued···




~キャラクター紹介~

緑谷出久
お馴染みの化物主人公。
原作のりんご飴の代わりに、エリちゃんにケロちゃんキャンディをプレゼントした。
今回をもって、6年間連れ添った相棒であるメモリーメモリに別れを告げた。
これにより、出久の体質はヴァンパイアとして純化。過剰適合進化者の義眼も、瞳のデフォルトの色が白から赤に変わった。
シンフォギア世界にとんでもない厄ネタを押し付けて帰ったが、当の押し付けられた側は慣れっこだった。慣れって恐ろしい。

芦戸三奈
出久の正妻。まだ比較的人間。
今回は久々に出久とデート。だがしかしデップーもいた。
元々人の機微が目につくタイプだったが、自分の事(主に痛み)を余り語らないタイプである出久と付き合う内に、人間観察がメチャメチャ得意になっている。
出久の為に歌ったのは《菩提樹》と言う曲。最近YouTubeで聴いた時に「これ三奈だッッッ!!!!」と痺れたので、三奈に歌わせた。
キスの後、開口一番に文句を言ったのは、出久の体温や反応を感じて精神的に余裕が出来たから。

フランドール・スカーレット
出久の第二夫人。ミスコンに出た吸血姫。
金髪のアーマード美少女・炎の剣による剣舞・血の武器と言う男の子の欲張りセットにより、ミスコンでは2位になっていた。尺の都合でカットしたが。
後半では三奈の正妻力に見惚れつつ、出久に口移しで血を飲ませた。

デッドプール
またチョイ役しか出来なかった無責任野郎。
やっぱ戦闘回とかピリピリしたシリアスな空気じゃないと活かせないなこのキャラ。
また、出久と三奈のイチャイチャからフラグを掘り出すと言う隻狼じみた事をした。




『えー私、ついこの間、無事高校を卒業致しました!因みに精勤賞です!』
「マジかよ。学校が嫌だっつって教員振り切って家に帰ってたお前が?」
『小学校低学年の頃の話を掘り出すんじゃないよ』
「で?進路は?ニート?」
『いや、自衛隊だよ。陸自』
「ほざきやがれ、寝言は寝て言えよ」
『いやしっかり激励会も受けたわ』
「どんなカンニングしやがった」
『そんな器用なマネ出来ると思うか?』
「確かに···じゃあマジなのか?」
『納得の材料がコレって酷すぎる···取り敢えず、4月からは小説投稿頻度がかなり落ちると思われます。その報告です』
「うげ、マジかよオイ」
『こればっかりは仕方無いって。じゃ、締めるぞ!』
「久々だなこれ」
『「次回もお楽しみに!」』
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