僕のヒーローアカデミア~Eの暗号~ Phase2 作:エターナルドーパント
「しかもその後、メンシスランランでも刺突特化スタマイ出たんだっけか?」
『まぁ低ランクだがな』
「運良いなぁお前ホントに」
『あ、今回かなりレミィが酷い目に遭います。覚悟しといて下さい。あと短めです』
(出久サイド)
「ふぅ、片付いたな」
最初に暴れていたカルノタウルスと、更に加わって来たマグマを手早く始末し、俺は変身を解いた。三奈も変身を解除し、装甲服がパリパリと崩れる。
「こっちでも、結構ドーパントいるっぽいね」
「あぁ。都市部でこれなら、紛争地帯はもっと酷いかもな。逆に、兵器の宣伝としてこう言う都市部にばら撒いてるか・・・クソ・・・」
死の商人共は実験と同時にこう言うデモンストレーションも兼ねて、ゴロツキ共に派手なアクションを起こさせる。ガイアメモリなんて、テロリスト共にとっては垂涎モノの玩具だ。こう言ったコマーシャルを、奴等は絶対に見逃さない。
「うーん・・・また手分けしよ。固まってても良い事無いし」
「あぁ・・・済まんが、頼むわ」
「なぁに言ってんの?素直に頼りなさいって!」
「・・・有難う」
「まっかせなさーい!」
そう言って、三奈は街道を走って行った。カルノタウルスとマグマは急行して来た警察に任せ、フッと息を吐く。
「レミリア・・・」
その名を呟けば、溜息が零れると共に、奥歯がギチリと小さく悲鳴を上げた。
レミリアは恩人で、また、この世界で初めて、仮面ライダーエターナルと言う異質を受け容れてくれた人だ。そんな彼女が、敵に身柄を囚われている。あぁ、何と腹立たしい・・・
「絶対に、見付け出す。絶対に・・・」
改めて決意し、沈み掛けた意思を持ち直す。レミリアは、俺達が救おう。
(NOサイド)
「ん・・・んぅ・・・っ!!」
微睡みから目覚め、暫しの放心。しかしそこから完全に意識が覚醒し、レミリアはバシャッと水飛沫を立てながら起き上がる。
「此所って、最初の・・・」
レミリアの認識通り、其処は最初にレミリアが目を覚ました場所。今回も同じく、水に浸されていた。
「くっ・・・やっぱり、何か注入されたみたいね・・・」
首元を擦れば、僅かながら注射痕と小さな瘡蓋があるのが分かる。
「一体、何を・・・!」
例しに全身に力を入れてみると、翼の感覚がかなり鈍い事に気付く。それだけで無く、魔力を錬る事も出来なくなっていた。
「まさか、個性神経への麻酔・・・?でも、そんなの開発されたなんて、聞いた事も・・・これが、彼奴の個性なの?」
「フフフ、流石はスカーレット家の長。鋭いのね」
「ッ!」
背後からの声に、振り返りながら飛び退くレミリア。そこに居たのは、誘拐犯たるリリス・ナクルァーヴィである。
「リリス、ナクルァーヴィ・・・!」
「あら、驚いたわ。まだそんなに気力があるなんて・・・」
「は?何を・・・ぐっ!?」
眉を顰めた直後、膝から崩れ落ち掛けるレミリア。何とか片膝を突く程度で踏み留まるが、頭は薄ら霞掛かったようにぼやけ、力が上手く入らない。
「これって・・・」
「やっと効いたみたいね」
ニッコリと笑い、レミリアの顎を掬うリリス。その頬は妖しく上気し、眼には情慾が滲んでいた。
「あぁ、ダメ。我慢できないわ・・・まぁ、味見ぐらいは良いかしら❤」
「むぐっ!?」
言うや否や、リリスは強引にレミリアを抱き寄せ、その唇の奥まで自分の舌を捩じ込んだ。
無理矢理なディープキスに、レミリアの眼には涙が浮かぶ。
(うそ、嫌!こんな奴と、こんな・・・こんなぁ・・・❤)
最初こそ力の入らない身体でジタバタと抵抗したレミリアだったが、脊髄から脳髄に走る甘い痺れに囚われ、次第にその瞳は敵意では無く快楽に潤み始めた。
(え・・・こんなに、気持ちいいの・・・何で、私・・・わたしぃ・・・❤)
脳髄に土足で踏み込み、彼女の抵抗拒絶をものともせず掻き乱す、ゾクゾクとした快感。その甘美な電流に、薬で抵抗力を削がれたレミリアの意思は塗り潰される。
───レミ姉さん
「ッ!」
「んぐっ!?」
だが、心の全てが飲み込まれる寸前。その脳裏に、1人の男の声が木霊した。
それは小さな、しかし熱い激励に似て、レミリアの意識を叩き起こす。そして誘拐犯に好き勝手させている事の不快感を思い出させ、口の中を弄る異物に牙を立てさせた。
「ペッ!アンタなんかに、私のキスなんて上等すぎるわ!一昨日来なさい!」
口の中に流れ込んだ血を、一滴であろうと飲んでやるものかと吐き出す。岸壁に手を付いて震える身体を必死に支えながら、ギリギリと歯を食い縛りリリスを睨み付けた。
「・・・は?」
─バシッ─
その態度に、リリスの機嫌は急降下。気に入らないとばかりに目を据え、レミリアの頬に平手を見舞った。
「・・・ッ!?う、ぃぎっ・・・ぃいッ・・・!?」
数瞬遅れて、頬に滲む激痛に蹲り掛けるレミリア。
普段ならば耐えられる筈の、只の平手打ち。だが何故か、異常なまでに痛みが大きい。紅い瞳からはボロボロと涙が溢れ、呼吸すらも踏み躙られるように乱される。
それ程の痛みは、当然恐怖を焚き付ける。今やレミリアの身体は奥歯がガチガチと音を起てる程に震え上がり、無意識に洞穴の奥に逃げようとしていた。
「あのね、貴女は抵抗出来ないのよ。なのに調子付いちゃって、それでちょっと叩いたら・・・コレ?あらあら、英国トップランカーも堕ちたモノね」
「ぐっ・・・そ、それを言ったら、アンタなんてそれ以下よ!薬を盛って抵抗出来ない相手を痛め付けて!それで勝ち誇ったつもり!?みっともないったら無いわねッ!」
「ふぅん・・・ッ!」
「ひぃっ!?」
恐怖に耐えて意地で叫んだ罵倒。しかし、リリスが再度手を振り上げると、途端にその虚勢は瓦解する。
呼吸は引き攣り、歯の根も震え、止まり掛けていた涙は再び決壊。
早鐘を打つ心臓は冷静な思考を奪い、拍車の掛けられた恐怖の濁流に、レミリアのプライドと尊厳は容易く押し流された。
「なにも!」
─バシッ─
「いぎぃっ!?」
「出来ない!」
─バチッ─
「うがぁッ!?」
「癖にッ!!」
─スパンッ─
「うぐぅっ・・・う、うぅ・・・っ」
何度も地肌を襲う、焼け付くような痛み。逃げようが無い恐怖に、レミリアは頭を庇うように縮こまり、遂には泣き出してしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ふんっ」
「・・・うぅ・・・ぐすっ・・・うぇぇ・・・」
苛立たしげに鼻を鳴らし、リリスは踵を返して去って行った。残されたレミリアは、自分の身体を抱き締め、嗚咽を溢す。
恐怖と痛みからの涙も勿論あるが、それよりも何よりも・・・情け無かった。
吸血鬼と言う、生まれながらの絶対的強者。傲り高ぶる事はしないよう戒めていたが、それでも己の強さには自信と、そして誇りがあった。
だが、今はリリスの一挙一動に怯え、何の抵抗も出来ず、赦されず、打ち据えられて、幼子のように泣く事しか出来ない。
何より、リリスが此方に興味を失い、振り上げた手を下ろして去って行った時・・・心の底から、安堵した。
身動ぎすら出来ず、唯々、ハリボテに胡座をかき傲った強者の慈悲を望むしか無い。そんな状況は、生まれながらの強者として生きてきた彼女にとっては当然初めての経験であった。
その衝撃は、彼女のプライドをズタズタに切り裂き、踏み躙って尚、余りあるものだった。
(・・・大丈夫。きっと、きっと出久が、助けに来てくれる・・・大丈夫。それまでの、それっぽっちの辛抱よ・・・)
「う・・・ぐっ・・・ふっ、ふぅ・・・ふぅぅ・・・」
歯を噛み締めて涙を拭い、呼吸を落ち着ける。レミリアが折れずに踏み止まれているのは、単に出久と言う規格外の強さを持つ希望が居たからだ。同時に、義理の姉として、女として、格好悪い姿を見せたくないと言う、最後に残った意地の欠片でもある。
(っ!そうだ、スタッグフォン!)
落ち着きを取り戻すと同時に、連絡手段が皆無と言う訳では無い事を思い出す。そして洞穴から抜け出して、小さな小屋に向かった。幸い、リリスの気配は無い。
「・・・よし!電波は弱いけど、入ってはいる!」
圏外で無いならば、まだ光は見える。周囲の写真を撮り、メールに添付して疑似メモリを装填した。
【スタッグ】
「1番電波が入る場所で、コレを送信して!」
【pipipipi♪】
承諾するように電子音を鳴らして、スタッグフォンは飛び立った。これにより、レミリアの心に一筋の希望が射す。
(これで良し・・・と言っても、流石に何か気晴らしが無いと心が保たないわ・・・何か・・・あ)
心を保つ気晴らしを思案するレミリアの脳に、アイディアが湧いた。それは隕石のように降って来て、レミリアの口を突いて溢れ出す。
─────極彩色、纏う・・・狂気の、幕開け。何所にも、逃がさない・・・無条件、牢獄・・・
彼女の口から紡がれたのは、歌だった。作詞作曲でアルバムも出している彼女にとって、心情を唄に紡ぐ事はこの上無い気晴らしであった。
(出久サイド)
「何か、何か無いのか・・・クソッ・・・」
ズキズキと痛む頭を押さえて、ベンチに腰掛け項垂れる。
何所を探そうと、何の手掛かりも見付からない。こんな事をしている間にも、レミリアは恐怖に曝されていると言うのに・・・
【pipipipi♪pipipipi♪】
「っと・・・メール?・・・これは!!」
メールの差出人は、レミリア。『誘拐された。ドーパントかも。地下?箱庭のビーチ』と言う箇条書きと共に、何枚かの写真が貼付されている。木造の小屋に、綺麗なビーチの写真だ。
「地下?そうか!俺のキーメモリの索敵はほぼ平面座標のみ、深い地下には届かない!道理で見付からなかった訳だ・・・発信座標・・・は、不明か。だが、かなりの手掛かりだ・・・」
「なぁ、アンタ」
「ん?」
しばしあたまを回していると、声を掛けられる。そこに居たのは、見知らぬ男だった。
「アンタ、もしかしてイズク・ミドリヤかい?」
「あ、あぁ、そうだが・・・」
「あぁやっぱり!」
質問に答えると、男は嬉しそうに笑った。
「俺、アンタのファンなんだ!仮面ライダーエターナル!息子の学校に敵が立て篭もった時、助けてくれたろ?」
「・・・あー、まぁ、そんな事もあったかもな。心当たりあり過ぎて断定しかねるが」
まぁ、やった事はあるしな。三奈と出逢った時みたいに。
「でさ、アンタが座り込んでブツブツ言ってたから、困ってるのかと思って。何か、助けになれることはあるかな」
「んーっと・・・最近、変な事は無いか?何でも良いんだが」
「変な事、かぁ・・・あ、俺地下鉄で働いてるんだけどさ。近頃電源設備だったり、運行だったりがちょくちょくおかしな動きをするんだよな。調べても原因が分からなくて」
「何!?その話、もっと詳しく頼む!手掛かりになるかも知れない!」
これは思わぬ収穫だ。見逃す手は無い。
「お、役に立つかも知れないか!丁度これから出勤なんだ。ウチのボスもアンタが好きなクチだから、協力してくれる筈だぜ!」
「感謝の極みだ!」
漸く見付かった手掛かり。絶対に、無駄にはしない!
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
緑谷出久
我らが化物主人公。
形骸化仕掛けていたファンクラブ設定がここに来て生きた。
原作のダブルと違い、情報収集と絞り込みを同時にやっているので、ちょっと要領が悪い。
因みに、実はSNSでも出久が駆けずり回っている事は拡散されており、協力してくれた地下鉄駅員もそれで知ったクチである。
フラン&三奈
出久に進展ありと報告を受け、地下鉄で合流する。
レミリア・スカーレット
囚われのお姉ちゃん。
ちょっと(どころじゃない)可哀想な目に遭ってる。だがめげぬ。
こんなゲスなんかに負けな(それ以上はいけない)
歌ったのは、『滲色血界、月狂の獄』。このエピソードの心情にぴったりな曲。
リリス・ナクルァーヴィ
誘拐犯。屑。
レミリアが泣くまで引っ叩いたコイツと比べると、元ネタのあのジジイはほんのちょっぴりマシだったのかな、なんて訳の分からん思考に陥りそうになる。
早急にしばかれるべき存在。