怪人達の冥界事情   作:ヘル・レーベンシュタイン

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皆さんお久しぶりです。今回のお話は少し短めですが、どうぞお楽しみください。
また、徐々にお気に入りの数が増えており、登録してくださった方には非常に感謝しています。
もっと多くの方が満足のできる話を作れるように、励みにしていきたいと思います。

追加
申し訳ございません、タイトルの記入を忘れていました。


第13撃目 四鬼出現

一方、城内の最奥にある門の前では....

 

「うっ、ぐぅ.....」

「ふん、弱いな。初対面での威勢はどうした人間共?」

 

そこはまさに文字通り、地獄絵図と化していた。キーラの周りには鉄棒や刃物、そして銃などを持った人々が血を流して地面に伏せていた。そして徐々に肉体が消滅しつつある。

そしてキーラの手には、ボロボロに傷付いた男の首を掴んで壁に押し付けている。

 

「おいおい、折角こんなに数がいるのに私に傷一つ付けられてないではないか。」

「ふ、ふざけんなッ....銃やナイフで傷付けたのに、一瞬で無傷になりやがる。こんな化け物いるなんて、聞いてないぞッ.....」

「それは己の無知さを嘆けよ、死からの蘇りをただ脅すだけで獲得できるという考えが浅いのだよ。貴様からは、自身が傷付く覚悟すら感じなかったのだからな。死の覚悟無きものが、死から蘇生できる道理はあるまい。」

 

ミシッと男の首を絞める音が強まる。最早抵抗する力が残っていない男だったが、涙を浮かべながら叫び声をあげる。

 

「いやだ.,...嫌だッ!死にたくない、死にたくないッ!もう死ぬのは嫌だァァァッ!」

「はッ、ここは冥界で一度死んだことを自覚しながら尚もその有様か。無様だな、滑稽だな、そんな様で良くも現世へ生き返ることなんぞを考えたものだ人間.....一つ教えてやる。この世界で死ねば無になるか、別世界へ飛ばされると推測されているらしい。別世界が何かは知らないが、あの世で死ねば無に還ることは確かに道理だろう。」

「嫌だ、無になるのは....嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だッ!あぁッ....あああああああッ!!!」

 

男はキーラの言葉を聞くとブルブルと身震いを始め、阿鼻叫喚の叫びをあげた。人間は基本的に無音な空間に対して不安を覚える生き物である。無の世界は当然ながらあらゆる存在が文字通り「無い」世界だ。物質も無ければ、音や色彩もなく、他人も存在しない世界だ。そのような空間に飛ばされれば、自我を保つことはまず不可能で、次第に自我を失うだろう。その恐怖を、男は次第に実感し始めたのだろう。

 

「貴様のような輩は瞬殺しておくのがお互いのためだったかもしれんなぁ。そうすれば、お前の醜さをわざわざ目にすることもなかっただろうに....私も少しヤキが回ったようだ。」

「....っ!」

「ではさらばだ、もう2度と私の前に現れるで無いぞ.....下劣な人間が。」

「っ!あ、ああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

綺麗な笑みを浮かべながら、キーラは男の喉を潰した。その瞬間男の頭部が破裂し、あたりに肉片と血飛沫が飛び散る。そして暫くすると、徐々に消滅し始めた。キーラは自身に付着した血と肉片を払いながら、その様子を見下ろす。

 

「ふん、ここに来る連中は揃いも揃ってこんな輩ばかりだな。牙を立てて噛み砕く価値もない。数ばかりが多く、力の無い能無しばかりだ。しかしなるほど....あの女が私をこんな役回りにしたのも少し納得した。毎度これほどの人数を相手にしていては、面倒に感じることもあろう。」

 

鬱陶しそうな表情を浮かながら、キーラはそう悪態をついていた。今の団体でここに訪れた人間の数は100人にまで到達するほどが。当然ながら全員キーラの手によって倒されて消滅した。誰一人としてキーラに勝てた者はいない。

 

「ホォー、ここがようやく最奥地のようみたいだなぁ。」

「ここに冥界の王がいるみたいだな。」

「....なんだ?」

 

ふと、廊下の奥の方から声が聞こえた。キーラは廊下の奥を凝視すると、明らかに人外の存在がこちらに近付いて来る姿を見た。数は4体いる。その内の1体は人間よりも一回り大きい巨体で、それ以外は人間とほとんど身長は変わらない大きさだった。

 

「おい、あのガキがその冥界の王なのか?いかにもヒョロいガキで、弱そうだぞ。」

「見た目で判断するな、周りには結構な血の香りが残っているぞ。」

「それが本当だとしたら、あの小娘が一人でかなりの数を始末したことになるな。」

「ほう、怪人とは品性のない連中ばかりと思ったが、なかなかに冷静な奴もいるようだな。面白い、名を名乗るがいい。このキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェナが相手をしてやろう。」

 

キーラがそう言うと、4体の怪人が不思議そうに顔を合わせた。しかしその直後、巨体の怪人が猛スピードでキーラに向かって突進を始めた。

 

「ガキが舐めやがって、このサイレスラー様がその華奢な身体を粉砕してやらァッ!」

「ほう、なるほど....少しはパワーがあるようだな。しかし、あまりに直線的だな。」

「なにィッ!?」

 

キーラはサイレスラーの突進避けることなく、正面から角を片手で掴んで静止させた。その小さな身体から想像できないパワーに、サイレスラーは驚愕の表情を浮かべる。

 

「どうした、粉砕するのではないか?」

「ガッ....グァァァァッ!?」

「サイレスラー!」

 

キーラはサイレスラーの巨体を宙に持ち上げ、そして地面へと振り下ろした。その衝撃で地面が激しく揺れ、サイレスラーに致命的なダメージが入る。

 

「下がってろサイレスラー!小娘、硫酸の雨を喰らって溶けるがいい!」

「チッ....」

 

サイレスラーが下がると、背後から蛇口の頭を持った怪人「シャワーヘッド」が現れる。その頭から大量の硫酸が放たれ、キーラの体を覆う。ジュワッと溶ける音が場内に鳴り響き、白い煙が発生する。

 

「フッ、これほどの硫酸を浴びれば骨も残らな....」

「この程度か?これでは爪先すらも満足に溶かすことができまい。」

「なっ!?グオォッ!」

 

しかし煙が晴れると、無傷がキーラが微笑みを浮かべあげながら現れた。そしてそのままシャワーヘッドの頭部に拳を叩き込む。

 

「こいつ、かなりヤベェぞ....イッカク!」

「おう、俺の世界最硬のツノと最高の知能でコイツをぶっ倒す!」

 

続けて「超マウス」と「イッカク」の2体が前へと立ち塞がる。イッカクは槍のような形状に変化し、超マウスはイッカクをまるで槍のように持って構える。

 

「俺は元実験マウスで数多の実験を生き抜いてきた。実験の中で武器に関する知識も当然含まれている!」

「ほう、それは興味深いな。やってみるがいい。」

「言われなくてもなぁッ!」

 

そう叫びながら超マウスはキーラへ接近し、イッカクを槍のように扱いながら刺突を放つ。正面、下方、上空からの振り下ろしなどまるで槍の達人のようにイッカクを操る。しかしキーラはそれを野生の勘で巧みに回避する。

 

「くっ、ちょこまかと....」

「....なるほど、確かに大した力量と技術だ。人間相手であれば無双できるほどの力量だと実感した。しかし....」

「ッ!?」

「それでは足りんのだよ。」

 

キーラはまとめてイッカクと超マウスを蹴り飛ばした。2体とも粉砕されることはなかったものの、壁面まで飛ばされた。しかし同時に、怪人たちはキーラの言葉に引っかかりを覚えた。

 

「足りない、だと?」

「上から目線でイラつかせる発言だな。確かにお前のパワーは、この俺からしても80点を付けるほど大したものだが.....」

「明らかに手を抜いているな。俺達に一撃を与えた後に幾らでも追撃を出来ただろうに....」

「まるで、こっちの様子を伺ってるように見えたぜ。」

「....この死後の世界を支配している主を倒すための力を求めている。私がお前達を見定めていたのは、その可能性を探っていたからだ。具体的には死を凌駕する程の力の持ち主を探してる。」

「っ!?」

 

キーラの発言に怪人達は驚愕の表情をした。死を凌駕する、それは人間....いや、怪人達からしても無茶な難題といえるだろう。人間でも偶然死から生還したケースもあるが、それでも完全に克服したわけではない。完全に死に到達すれば、2度目はないほど死の概念とは絶対的な存在なのだ。

 

「そ、そんな力を持っていたら今頃死後の世界になんて来ていないぜ.....」

「お前達に限った話ではない。何か伝承やお前達の見知った人物とかでだな....」

「....オロチ様ならあり得るかもしれん。」

「....オロチ様、だと?」

 

ふと、超マウスが呟いた人物の名前にキーラは反応を示した。当然ながら聞きなれない人物の名前だが、そこに可能性を感じたのだ。

 

「俺達は怪人協会という組織にいたのだが、そこの首領としてオロチ様がいる。あの方であればもしかしたら....」

「....それは単にお前達よりも強いからそう思い込んでいるだけではないのか?」

「いや、これはあくまで推測なのだが...オロチ様は天才的な学習、成長能力がある。それは、武術の達人であるゴウケツがやられてしまうほどだ。そんなオロチ様であれば、一度死を体験すれば死を凌駕する程のスペックを獲得できるかもしれない。」

「....ほう、なるほどな。死んでしまえばそこまでだが生還できれば、か.....」

 

オロチの能力を聞いて、キーラは感心していた。生還せずに死滅してしまえば意味がないが、生還できれば死に対する耐性を得て成長できるかもしれないと....その能力であれば、クリームヒルトへの対策になれるかもしれない。

 

「もっとも、オロチ様が死んでこの世界に来ることなんてあり得ないだろうが..,.」

「良いだろう、であれば私がそのオロチとやらの能力を頂くとしよう。」

「は?何を言ってるんだお前は!?」

「私は別に不死など胡乱なものに興味はないが、どうしても復讐したい奴がいるのだよ。その為にはオロチとやらの力を奪う必要がある。その為にはまずはオロチとやらをここにおびき寄せる必要があるなぁ....」

「ふざけたことを抜かすんじゃねぇ!そんなこと、許されるわけねぇだろうが!」

 

キーラの発言を聞いて、サイレスラーは激昂しながら再び突進をした。先程よりも速度も力も増しており、全力の一撃であることが伺える。その一撃をキーラはそのまま受け止めた。サイレスラーのツノが当たった瞬間、キーラの頭部が血飛沫をあげて砕け散るが.....

 

「....パワーは認めるが、それでは私を倒すことは不可能だ。」

「ふ、ふざけんなッ!....ツノが当たった瞬間確かに砕け....ガァッ!?」

 

キーラの頭部は一瞬にして再生した。そしてキーラの目が金色に輝くと、サイレスラーは透明な何かに押し潰された。

 

「な、何が起こった!?まさか、ギョロギョロのような超能力を....」

「いや違う、これは肉の塊だ!透明で普通は見えないが、匂いを感じる!透明な肉の塊がサイレスラーを押しつぶしたんだ!」

「ほう、優秀なマウスだな。実験の影響で嗅覚に優れているのか?お前達は良い情報をくれた事だし、私自らお前達を一撃で楽にしてやろう。」

 

キーラが綺麗な微笑みを浮かべながらそう呟くと、巨大な肉塊の腕をゆっくりと挙げ、そのまま振り下ろそうとする。

 

「な、なんて理不尽な....」

「このままやられてたまるか!あの技をいくぞッ!」

「ああ、勿論だ!『三鬼一体爆速刺し(さんきいったいばくそくざし) 』」

 

それはイッカクの驚愕的な硬度と超マウスの筋力、そしてシャワーヘッドの水流を合わせた必殺技である。その技は災害レベル鬼の中ではトップクラスの威力かもしれないが....

 

「大した技だ、穴を開けられるとは思わなかった。だが、それでもここまでのようだな。」

「止められなかっただと!?」

「くそ、ならば俺の再生能力で....グアァァァァァァッ!」

 

それでもキーラの急段を打ち破れる程ではなかった。3体の合わせた必殺技は肉塊を貫通して半径数m程の穴を開けたものの、結局はそこ止まり。即座に再生されて穴は埋められ、そのままその大質量に押し潰されてしまった。怪人達は再生することなく、そのままゆっくりと消滅した。

 

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