怪人達の冥界事情   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回は、あの巨人の怪人との対決です。


第2撃目 強さを求め続けた者

 

敗北した。

まず、殴り倒されて俺が感じた思いはそれだった。兄さんから授かった力を得てから、俺は最強の男になったのだと信じて疑わなかったのに。事実、その時には俺を止められるものなんでどこにもなかった。警察も、軍隊も、ヒーローも、誰も俺を止められなかった。

 

ーー圧倒的な力ってのは、つまらないもんだ。

 

....この言葉を言った男が来るまでは。最強だったはずの俺が、たった一発のパンチを喰らって倒されてしまった。

当然、その事自体もショックだったが、それだけじゃない。最強の俺を倒した、俺よりも最強の男が、その力に悲観的だったのに驚いたのだ。

 

「おかしいだろ、普通なら嬉しいはずだろうに....」

 

目の前に広がる、よくわからない城の廊下を歩きながら、俺はそう呟いた。だけど、改めて振り返ると、俺も本当は嬉しかったのだろうか?

自分でも、心から何かが湧き上がるような気持ちはなかった気がする。ただ最強の力を手に入れた、そう自覚してただけ。兄さんがあまりに喜んでいたから、俺は冷めてしまってたのだろうか?今となっては、もうわからない。ただ一つ、思い出す方法があるとしたら.....

 

「よく来た、異界の人間よ。確認として聞くが、お前の望みはなんだ?」

「言うまでもない、現実へと蘇ることだ。」

 

俺は胸を張って、玉座に座る女にそう答えた。本音を言えば、このまま死んだままでも良かった。最強の男である資格をすでに失った俺に、生きる意味なんてない。だけど....このまま死んだままじゃ納得できない理由がただ一つ残っていた。

 

「なぜ蘇りたいのだ?」

「それは、俺は納得したいからだ。」

 

そう、納得すること。俺はまだ、確かに納得できなかった。確かに俺はあの男の一撃で敗北した。その結果にぶつかって、俺は最強じゃないことに気付いた。だけど、その結果だけを見て、全てを投げ捨てることは違うと、死んでから思い始めた。

 

「....あんたには知らねェ事なんだろうけどよ、俺は最強の男ではないかった。だが、もしかしたら強い男なんじゃないのかって思い始めたんだよ。俺を倒した男にさ、せめて現実でそう聞きたかったんだ。それが、俺にとっての後悔なんだ。だけど聞く前に死んじまったから、それをもう一度確かめるために俺は生き返りたいんだ!」

「....なるほど、理解した。」

「あんたはこれを聞いて、笑うか?それとも憐れむか?どっちにせよ、これが俺の生き返る目的だよ。」

「まさか、私はその手の感情は持ち合わせてない。故に、存分に力を振るって私の屍を超えていけ。そうすれば、望みは叶えられるだろう。」

「っ.....オォォォォォッ!!!」

 

湧き上がる気持ちのまま叫ぶと、かつて拳の一振りで街を壊滅させた巨体の姿へと変貌した。体の大きさに合わせて、城の空間も広くなっていてなんとも不思議なところだと思えたが、そんなことはどうでもいい。これが生き返って自分自身を見つめ直す最後のチャンス、なのかもしれない。そう考えると体から力が滾ってきた。

 

「俺は、強いんだァァァァァ!」

 

俺は強い、強いんだ。その気持ちを拳に纏わせて何度も女に向かって何度も殴りつける。城の城壁が砕けた、床を殴り壊した。だけど、あの女を殴った手応えがない。どこだ、どこに行った?

 

「下は履いてないのだな。」

「っ!」

 

背後から声が聞こえ、振り返った。女には傷一つ付いてなかった。避けたのか?何にせよ腹が立ち、奥歯がギチギチと鳴り響く。そして怒りを乗せて拳を女の方へと向かって振るう。しかしその瞬間.....

 

「っ!?」

 

なんと女の方も拳を握りしめて、俺の拳を殴り返した。結果は、俺の腕が砕け血塗れになって使い物にならなくなった。

 

「.....」

 

俺は呆然としていた。決して痛くないわけではないのだが.....不思議と俺の心は怒るどころか静かだった。なんでだろう....そう考えると、俺の脳内はかつて一発で殴り飛ばされた瞬間のことを思い出した。

 

(ああ、そうか.....あの時とよく似てるんだ。)

 

奇しくもあの女と男は格好もそれなりに似ている。そして今回は....一発では終わらなかった。向こうが手加減してるかもしれないってのもあるんだろうが....とにかく、チャンスが来た。

 

(そうだ、ここだ.....俺が変わるのはこのチャンスしかない!)

 

そして俺は.....考えて、考えて、そして考えるのをやめた。そして無心のまま、女から距離をとって、クラウチングスタートのポーズをした。もっとも、片腕を怪我してるから完全な形でポーズはできてないが.....まあこんなものだろう。

 

「.....」

 

俺はこの時、なにも考えてない。にも関わらずこの手段を選んだのは、今まで筋トレや色んなスポーツを続けたから、無意識にやってたのかもしれない。こんな時に役立つとは....我ながら皮肉で少し笑えてしまうよ。

 

「.....ほう。」

 

女は興味深そうにこっちを見てきた。ああ、そこで見ていな.....これが俺の最後の悪あがき、捨て身の特攻をかます。防御や受け身なんて一切考えない。

 

(全力突進(フルスロット・タックル))

 

脳内で無意識にそんな技名が浮かび上がった。実際、技なんて呼べるものではない。単に巨体を生かして全力でタックルをしているだけだ。しかし、あの男や、目の前にいる女に対して殴る蹴るといった小技は効かない。なら、全力の一撃を当てるしかないだろう

 

(そうだ、これしかないんだ!)

 

だからやる、とことんやるんだ。音を置き去りにし、床を踏み砕き、目の前の女を吹き飛ばすために肩に全力に力を込める。そのまま勝利へと突き進むんだ。

 

「っ!」

 

直撃した。今まで俺が殴ってきたものよりも硬かった気がするが、関係ない。当たった、そして確かにダメージを与えた感触を実感した。勝った、勝ったんだ!念のために殴ってトドメを刺そうと拳をあげる。

 

「え?」

 

しかし、その時だった。肩から腹にかけて何かが通り抜けた気がする。直視できない、おぞましいナニカが俺の体を貫通して、そして....俺の上半身が分離して床に落ちていったのを理解した。ああ、俺はまた負けたんだな.....

 

「どうだ、納得のいく戦闘はできたか?」

「ああ....そう、だな.....満足は、したよ.....」

 

そう答えながら、俺は感じた。この人はまさに死神だな.....と、そう思えた。死人とはいえ、あんなおぞましい武器を使って、なおかつこんなことを聞けるなんてな普通はできないと思う。

 

(だけど、そんな人だからこそ、俺の相手を出来たのかもしれねぇな....)

「念のために聞くが、他に何かやり残した事はないか?」

「....そうだった。最後に聞きたかったんだ....なぁ、俺は強かったか?」

「ああ.....強かった、私にとってもそう実感できる相手だったよ。」

 

よく見たら、服の袖から血が滴ってるのが見えた。そうか、あの手応えも偽りのものではなかったのか.....そう思えて、自然と微笑みを浮かべた。

 

「知ってると思うが、私に敗れた以上もうお前は現実に蘇ることはできない。」

「別に良い、もう後悔はないからな....まずは兄さんを探して、ここであったことを話そうと思う。まずはそれから始めようと思う。」

「そうか、私もお前が兄に会えることを願っておこう。さらばだ、強さを求め続けた男よ....」

「.....ありがとう、じゃあな。」

 

そう言い残して元怪人のマルゴリは、このヘルヘイムの元から消失していった。もう二度と、彼がこの場所に来ることはないだろう。クリームヒルトはそれを見届けて、再び玉座の元へと戻っていった。

 

 

 




次回登場する怪人は未定ですが、なるべく原作で死んだキャラの順に登場させていこうかと思っています。
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