怪人達の冥界事情   作:ヘル・レーベンシュタイン

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更新が遅くなってしまいました。

今回は登場した怪人の順番を飛ばして、阿修羅カブト戦です、


第3撃目 新たな人類を名乗る者

ズシン、ズシンと城の床が振動に揺れる。何か大きな密度を持った生物が玉座へと近付いてくる。

明確な殺意、巨体の所々が血で濡れていた。ここにくる前に、戦闘を何回かしていたことが伺える。

 

「よぉ、ここのボスはアンタってことで良いんだよなぁ?」

「そうだ、しかしお前に聞きたいことがある。その周りについてる血はどうした?」

「あーこれかぁ。ここに来る前に俺に突っかかってくるやつらがいたからよぉ、ちょっと黙らせてやったんだよ。」

 

メンドくさそうに身体に付着した血を拭いながら、この生物はそう答えた。お世辞にも美麗とは言えない顔は、終始ニヤニヤと笑っていた。

 

「ま、そんなことはどうでも良いんだよ。俺は阿修羅カブトってんだ。地上に帰りたいから許可してくれねぇかお嬢ちゃんよぉ。」

「そうか.....貴様は阿修羅カブトというのか。理由を聞かせてもらおう。」

「ぶっ飛ばしたい奴がいるんだよ。俺は学習能力が高いからよぉ〜今度こそは、あのハゲ頭の野郎に負けねぇ。」

「ほう、つまり再戦を望むために蘇りたいのか。少々珍しいな。」

「取り敢えず、俺の現実に戻りたい理由はこれだけだ。ま、今はそんなことは二の次だがなぁ....」

「ほう、他に理由があると?」

「それはアンタだよ、お嬢ちゃん。俺はアンタと戦う事が一番の目的なんだぜ?」

「....私だと?」

 

予想外の返答。彼女と戦うことに興味を持ち出す者は珍しくなかったが、クリームヒルト本人を優先とした来客は過去になかっただろう。

 

「だってよぉ、死を司る奴と対面できるなんてそうそう無ぇ!アンタとの戦闘経験を通せば、死という最強の武器を俺のものにできるかもしれねぇじゃねぇ!ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒ!もぉ我慢出来ねぇ、さっさと戦闘を始めよぉぜ!」

「その戦闘意欲だけは、大したものだな。」

 

筋肉を異常なまで隆起させながら、阿修羅カブトが突撃してきた。クリームヒルトは阿修羅カブトの戦闘に対する熱意に感心しつつ、その特徴的な角を掴んで突進を制止させる。

 

「ヴァ〜〜〜カ、止まったなぁ!おおぉぉぉぉっ!」

 

しかしそれを予測していたのか、阿修羅カブトはツノを頭上へと上げて、まるでプロレスのジャイアントスイングのように大回転をし、クリームヒルトを壁面に向かって放り投げた。

 

「なるほど、腕力だけで押し切るタイプではないのか。」

 

クリームヒルトは空中で体勢を直しつつ、剣を抜いて壁面に足をつけた。そして壁を蹴って跳躍し、阿修羅カブトへと振り下ろす。

 

「 へっ、見えてんだよ!」

 

その巨体に似合わない速度で、振り下ろされる剣の軌道に合わせてクロスカウンターを繰り出してきた。見事、クリームヒルトの頬に直撃し弾け飛んだ。

 

「....まるで先読みされてるかの様に合わされたな。」

「俺は進化の家の最強戦力だぜ?知能も戦闘レヴェルも旧人類とは段違いなんだよ。つまり、アンタの単純な行動パターンなんてお見通しなんだよ、ヴァ〜カ。」

 

侮辱、憐憫、そして傲慢な口調でそう言い放つ阿修羅カブトは自信に満ちていた。まさに勝ちを確信してるかの様に....それを見てクリームヒルトは、瓦礫を払いながら阿修羅カブトの身体を指を指す。

 

「あ?なんだそりゃ....」

「勝ちを確信するのは良いが、少し自分の体を見てみろ。」

「...ッ!何ぃぃっ!?」

 

指された方を見ると、阿修羅カブトの左肩が大きく裂けていた。おそらく、先程カウンターをした時には既に剣が肩の方に届いていたのだろう。つまり、カウンターは成立せず、相打ちという結果になったのだろう。

 

「さて、それだと左腕を動かすことはできまい。」

「て、テメェ、よくもこんな真似をッ!」

 

事実、阿修羅カブトが左腕に力を入れるも、上手く力が入らずピクリとも動かないのだ。怒りを込めて、全力を込めても反応はしない。ならばこのまま右腕だけで死神との戦闘を続行するのか?

 

(....無理だな、こいつはあのハゲ頭ほどじゃないにせよ十分強い。ハンデ背負って勝てるほど甘い相手じゃねぇ!)

 

阿修羅カブトはそのように考えており決して慢心はしていない。現実でサイタマと戦ったことを教訓にしているのだ。しかし、ではこの局面をどう切り抜けるのか?

 

「....どうした、もう終わりか?」

「ぐっ....ふざけたことを言ってるんじゃ.....」

「どうやらここまでのようだな....」

「っ!なめてんじゃねぇぞぉぉぉっ!」

 

クリームヒルトがトドメを刺そうとした瞬間、異様な光景が目に映る。阿修羅カブトが怒り狂ったかと思えば、体が異様な速度で再生が始まり、斬り裂かれて出来た傷があっという間にふさがった。いや、それだけでは収まらなかった。

 

「こ、れは.....」

 

阿修羅カブト自身もこの現象には驚いていた。口の横からアリのような強靭なアゴ、背中にはトンボの様に体よりも大きな羽、そして背後には蜂の様な毒針が出現し始めたのだ。これは最早、再生というより進化といえるだろう。

 

「お?....へへへ、おもしれぇ!」

 

自分でも不思議に思いながらも、阿修羅カブトは跳躍し、トンボの羽を広げて空中を滑空しながら突進した。それを見てクリームヒルトはとっさに背後へ跳躍して回避する。阿修羅カブトは構わず城の床へと激突した。その衝撃で地震が発生したかのように玉座が激震する。

 

「進化か....窮地になると生存本能が覚醒し、生き延びようとするために肉体を進化させたのか。」

「くっくっくっ.....そうみてぇだなぁっ!」

 

阿修羅カブトはクリームヒルトの背後の地面から出現する。そして同時に、巨大なアリのアゴを使ってクリームヒルトを捕まえ、地面へと叩きつける。そして更に強固に固めた拳のラッシュを放って床を粉々にしながらクリームヒルトを殴りつける。

 

「ふぅうううう.....タマラねぇ、ゾクゾクする.....今俺様は、どこまでも進化できる気がするぜっ!」

「....確かに、その進化は興味深いな。」

「っ、まだ生きてたのか....イラつくなぁ。」

 

床の瓦礫からクリームヒルトが出てきた。見たところほぼ無傷、目立った損傷はなかった。その姿を見て、阿修羅カブトの脳裏にはあの男がよぎって苛立ちを感じている。

 

「これでも喰らいな!」

「.....毒針か。」

「な、素手で....グオッ!?」

 

不意打ちとして背後のハチの毒針を繰り出すも、それを素手で受け止められ、そして剣で斬り落とされてしまう。激痛が駆け抜けるも、なんとか歯を食いしばって耐える。

 

(せっかく進化したのに....まだ、勝てねぇのか?ふざけんな、こんな理不尽があってたまるかよ....)

「もう終わりか?」

「....もっとだ、もっともっともっともっとおぉぉぉぉぉッッ!」

 

瞬間、阿修羅カブトにさらなる変化が起きる。元々、クリームヒルトの倍はある巨体が、更に巨大化しているのだ。背後の翼もまるでドラゴンの翼の様で、身体中に無数の目が付いていた。そして、腕にはカマキリの鎌、肩からサソリのハサミ、そしてヘラクレスオオカブトの様なツノが生えてるなど、明らかにカオスさを感じる肉体となっていた。

 

「へへ、へへへへへ.....頭がフットーしそうになったけどよぉ。自分でも驚くくらい強くなったぜ。」

「.....」

 

クリームヒルトも警戒を強めたのか、剣を構えて阿修羅カブトへと視線を集中させている。

「おう、それで正解だぜ。テメェが強いのは知ってるけどよぉ、一瞬でも視線を外したら.....死ぬぜ。」

「___」

 

剣と鎌の形をした腕が交差する。その巨体から似合わないスピードで移動しながら攻撃を仕掛ける阿修羅カブト。それはもはや、神話の化け物の様だった。巨大な翼が、ハサミが、そして角が次々と襲ってくる。

 

「ほう、興味深い....これほどの相手をどうやって人間は倒したのか。」

 

対してクリームヒルトは冷静に一つ一つの攻撃を防御しながら観察し、見極める。しかし明らかに傷が目立ち始めてきた。阿修羅カブトの力量が徐々に上がっていることが見えてくる。

 

「....やむを得んな」

「お?」

 

埒があかない、そう判断したクリームヒルトはその瞬間、身に纏うエネルギーの密度が明らかに増した。いや、寧ろ今まである程度抑えていたのだろう。その様子を見て、阿修羅カブトは歓喜の表情を浮かべる。

 

「ヒヒヒ....そうだそうだよ、それを待ってたんだよぉッ!テメェのフルパワーを、俺に見せてみろおッ」

「....行くぞ。」

 

その瞬間に巨大な拳と剣が交差した。緩急やフェイントのような小細工は一切なく、ただ真っ直ぐと相手に向かった攻撃を放つ。その結果....

 

「....へへっ、今の覚えたぜ。」

「ここまでとは予想外だ....本当に耐えきれるとはな。」

 

死の一撃を喰らっても尚、阿修羅カブトは生きていた。本来ならば死んでもおかしくなかったのだが、一度死んだ経験を活かしたのか、なんとか耐えきったのだ。

 

「くっくっくっ......ああ、最高の気分だ。もうこれで、俺の肉体レヴェルは死を克服するまで進化した!アンタに感謝してるぜェ〜〜〜.....これでもう、俺を止められるヤツは誰もいねェッ!」

「.....」

 

絶頂の表情を浮かべながら、阿修羅カブトは歓喜の声をあげていた。そして更に肉体がボコボコと音を立てながら進化をしている。肉体は綺麗な黒色の光沢を放ち、まるで悪魔と昆虫を混ぜたかのような形へと変貌している。

 

「フゥウウウウウ.....力が溢れる、死を克服したと同時に、俺自身でも計り知れないパワーが秘められてるのが実感できる。こんな俺を、さぁアンタはどう止めるんだ?」

「.....」

「へへへ......ダンマリかい。だったらそのまま黙りこくってポックリ逝っちまいなぁ、お嬢ちゃんよォッ!!」

 

その瞬間だった、阿修羅カブトが豪腕を振るおうとした瞬間、クリームヒルトの眼前で拳と腕が、ひとりでに破裂した。

 

「.....あ?」

「どうやら、肉体に限界がきたようだな。確かに一瞬だけ死を耐えたようだが、まだ人類が死を克服するには、早かったようだな。」

「....そーかい、だったら今この場でさらなる進化をッ.....お、お....オォォォォォッ!?」

 

阿修羅カブトはさらなる進化で肉体の崩壊を止めようとするも、寧ろどんどん肉体の劣化と老化が秒刻みで進行していた。あれほどの光沢を放っていた肉体は、まるで枯葉のよつに脆くなっている。

 

「ふざけんな....俺は.....俺は、新人類の完成型なのに....旧世代の連中の足元にも及ばねぇ性能を.....まだまだ進化させて.....」

「確かに人類には数多の可能性があるのだろう.....だが、過剰な急成長は身を滅ぼすことがあるのだ。それも死を克服することは、今の人類には、きっと早すぎるのだ。」

「.....ヴァ〜カ、そんなつまらねぇ理屈で納得できるかよ。過剰な成長だろうと.....新人類の俺だったら耐えきってその先に絶対行ける、今度こそ.....今度こそな.....」

「......その諦めない意志力も、己自身を人類と貫いたからこそ、なのかもしれんな。」

 

阿修羅カブトは灰燼となってこの場から消えていった。クリームヒルトはその姿を最後まで見届けて、踵を返して玉座へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 




次回のキャラはまだ未定ですが、なるべくボリュームのある戦闘を書けるように頑張りたいと思います。
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