今回の話はタイトルの通り、過去最強の強敵との戦闘です。
どうぞお楽しみください。
「お前がこの城の持ち主か?」
「....ああ、そうだ。」
今回も玉座で待機していたら、案の定訪れるものが現れた。
しかし、一瞬で判断できた。目の前の存在は今まで現れてきた怪人とは一線を超えた怪人なのだと。内蔵されているエネルギーの密度が違う。
「ならば話が早い。俺は全宇宙の覇者、ボロスだ。早速だが、その座を奪わせてもらうぞ。」
「ああ、やはりか....私の名はクリームヒルト・レーベンシュタイン。この座を欲するのか?構わんぞ、私に倒せればの話だが。」
「ふふふ....もちろんだ。一度あの男に刺激を求めて敗れたが....まだ俺は満足できなかった。だが今度は、女....お前なら俺を満たせることができるのか、試してやろう!」
瞬間、ボロスは最初から「メテオリック・バースト」を発動させる。かつて自分に引導を渡した男との戦闘を反省し、慢心せず最初から全力で相手を倒すことを優先することにした。発動後、即座に彼女に接近して膨大な熱量を込めた拳を放つ。
「っ!」
「オォォォォォッ!!」
クリームヒルトはとっさに剣を抜き、拳を斬り飛ばして回避する。しかしボロスは即座に拳を再生させて強力なラッシュを放つ。全て被弾しなかったものの、壁面がアイスのように溶けている。
「驚異的な熱量だな、直撃すれば回復が間に合うかわからん....」
「どうした、わざわざ全力で俺も飛ばしているのだ。このまま本気も出さず無様にやられる気か?」
「.....それもそうだ。」
ボロスの言葉に反応して、クリームヒルトはその身に死の概念を纏った。それに構わずボロスは拳を打ち込み、同時にクリームヒルトも全力の刺突を放つ。
「おおおぉっ!」
「っ!」
結果、ボロスの拳が縦に切断され、クリームヒルトの剣も腹の部分から溶けて崩れてしまった。更にそれだけでは終わらない。ボロスは傷を回復しようと腕に意識を集中させるが、まるで虚空に手を伸ばしたかのように腕が反応しない。
(再生できない.....だと?)
「私の夢で紡ぎあげた剣を溶かすとはな....宇宙の覇者と言うだけある。」
ボロスは自身の肉体を再生させることができず、クリームヒルトは自身の剣を折られてしまった。しかし、俯瞰的に見て有利なのはクリームヒルトの方だろう。確かに武器こそ破壊されたものの、未だ彼女自身は無傷。しかしボロスは片腕を失った、この差は大きい。
「まだだ....まだこの戦いを終わらせはせん!」
「まだやる気か....良いだろう。」
そして両者は再び疾走し、交戦する。
ボロスはまだ動く片腕の拳を振り上げる。それに対してクリームヒルトも、同様に拳を突き出す。しかし彼女の拳にも死の概念が纏っている。もし仮にボロスの頭部に直撃すれば、もはや決着はついたも同然だろう。
「ならば、こうするまで!」
「!」
それを悟ってか、あるいは闘争心が生み出した機転かわからない。ボロスは敢えて拳同士をぶつけ合せる。結果、お互いの拳が鈍い音を立ててひしゃげる。
一瞬ボロスは表情が歪むが、それを耐えて強力な蹴りをクリームヒルトの腹部へと差し込んだ。
「両腕を奪えば終わりとでも思ったか?甘い、まだ脚が残ってるぞっ!」
「ぐっ....ふふ、良いぞ私に血を流させるとはな....」
口から血煙を吐きながら不敵な笑みを浮かべるクリームヒルトに向かって、ボロス2発3発と蹴りを放つ。そして体勢が崩れた瞬間、すかさず跳躍して踏みつけるように蹴りのラッシュを放つ。
「オオォォォォォォッッ!!」
「っ....がぁっ....」
両腕ガードをするも、腕には痣や傷だけでなく、火傷跡も付いている。ボロスの身に纏うエネルギーは熱量を帯びており、鉄ですら融解するほどである。単純なパワー押しであったら回復も間に合うであろうが、熱によるダメージは回復に集中しない限り癒すことはできないとクリームヒルトは実感した。
「ならば....」
ガードを解いた瞬間、クリームヒルトは居合斬りのように手動でボロスのラッシュを振り払った。ボロスは一瞬体勢を崩すも立て直して距離を取ってエネルギーを放出する。
「ぐっ、貴様よくも.....ならば喰らえっ!」
「熱量を砲撃のように発射できたのか....」
そう呟いてクリームヒルトはボロスから放出されたエネルギー弾を疾走しながら避ける。そして同時にボロスへと接近しようとしたが.....
「後ろだ!」
「.....っ!」
あくまでもエネルギー弾は囮で、ボロスの真の狙いは頭部だったのだ。頭部を強く蹴られたことでクリームヒルトの脳が激しく揺れ、脳震盪を起こして無防備の状態を晒していた。視界がぼやけ、ボロスの姿をしっかりと認識できていない。聴覚のみ、まだかろうじてハッキリしていた。
「手応えはあった。今の無防備の姿ならば俺の勝利はほぼ確実なものだろう。だが....かつて戦ったサイタマはこんなものではなかった。」
「.....サイタマ?」
「だからこそ俺は慢心せず、貴様へのトドメは確実な手段で終わらせる!俺の全エネルギーを貴様へと放ち、この城ごと貴様の墓標にしてやろう!」
頭上を見上げる。よく見えないが、過去最高のエネルギーがそこに集中しているのがハッキリとわかる。だがそれよりも、ボロスの発した「サイタマ」という言葉が引っかかる。
おそらくボロスを倒した男の名前なのだろう....これほどの強敵を倒した人間は、一体どれほどの人物なのか興味が湧いた。
「この星の塵となれッ!
地球の地表を消し飛ばすほどの光線がクリームヒルトへと放たれる。これがこのまま被弾すればクリームヒルトどころか、最悪は冥界ごと崩壊してもおかしくないだろう。
「.....Deyr fé deyja frændr deyr sjalfr it sama」
「.....何?」
瞬間、ボロスが見た光景は奇妙なものだった。
クリームヒルトが正面へと手をかざしながら不思議な詠唱を唱えた瞬間、放射状に純度の高い死が流出し、光線とせめぎ合う。それでもまだボロスの崩星咆哮砲の方が威力は高い。
「
「.....これは」
「
だがしかし、彼女の背後から現れた漆黒の鎧で身を包んだ巨大な鋼の戦神が現れた瞬間自体が変わった。
ボロスは目の前の存在を見た瞬間、これは死という概念そのものだと理解した。それが手に握っている死槍が投擲され、崩星咆哮砲と激突した瞬間、一瞬にして消滅した。
そう、この死槍は破壊ではなくてあくまでただ静謐な死のみを齎すのだ。
「....これが、死か。」
その光景を見て、ボロスは一言そう呟いた。それはかつてサイタマという男が本気の一撃で崩星咆哮砲を粉砕した攻撃とよく似ていたからそのような感想が出てしまったのだ。
そのまま死槍の神威に飲まれ、ボロスは戦意喪失をしたのだった。
「みご....とだ、冥界の王よ。いや、クリームヒルトと.....呼ぶ、べきかな....」
「どちらでも構わんよ....見事だった、全宇宙の覇者よ。その肩書きに恥じない、強力な戦闘力だった。」
「ふふ、嫌味か?いや....そんなことをする性分でもないか....お前ならば。」
「?」
死闘が終わり、ボロスは首だけの姿となった。無限のような蘇生能力を発揮するエネルギーもないことが伝わってくる。
「最後に、教えて欲しい.....クリームヒルトよ。お前は、俺との戦闘で、満足できたのか?」
「....それはわからない。なぜなら、私には心が無いから。」
「そう、か.....」
「だが、お前との戦闘は実に貴重な体験だった。未知のことが多く、もしもまた機会があれば、と思えたよ。」
「ふ、ふふ....その言葉を聞けたならば、まだマシか。」
そう聞いてボロスは僅かながらも微笑みを浮かべた。そうしてそのままボロボロになった玉座から消えようとした瞬間だった。
クリームヒルトは咄嗟に何かを思い出した。
「ああ、そういえば聞きそびれてた。ボロス、お前が途中で呟いた『サイタマ』といったいなんだ?」
「.....」
その言葉を聞いた瞬間、ボロスの表情が一変する。まるで、脳裏に刻みれたトラウマを思い出すかのように。そして暫くして、重く閉ざしてた口を開いた。
「.....俺に引導を渡した男だよ。宇宙の覇者として君臨していた俺を相手に、決して表情を変化させることがなかった。ああ....まるで戦いになってなかったよ。クリームヒルト、お前とはまた別の意味で、あの男は....強すぎる。」
「.....強すぎる?それは一体....」
急に浮上した疑問。さらに詳しい情報を聞こうとしたが、もはやそこにボロスの姿はなかった。もっとも、聞いたところでボロスの口からそれ以上の情報を聞き出すことはできないだろう。
「ボロスですらまるで戦闘になってないと言ってた。つまり、あまりに巨大な存在すぎて全体像が掴めていないのだろう。いや、もしかしたら本人ですら....」
自分の強さを論理的に理解できていないかもしれない。もしかしたら、その可能性もあるかもしれないと、クリームヒルトはそう仮説を立てた。
「....サイタマか、ますます興味が湧いてきた。もしこの世界....いや、あるいは私がその世界へ行って直接対面するのもありかもしれんな。いずれにせよ、検討してみるか。」
クリームヒルトはそう不敵な笑みを浮かべ、目を伏せた。その瞬間、城はまるで何事もなかったかなように元の姿へと回帰した。
サイタマ....この人物が一体何者かわからない。しかしクリームヒルトのその表情は、無機質ながらもどこか楽しんでるような顔をしていた。
今回の話はいかがでしたでしょうか。
今回の話で一度ワンクッション置いて、次回は少しコミカルなストーリーを出そうと思います。