怪人達の冥界事情   作:ヘル・レーベンシュタイン

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個人的にですが、村田版のゴウケツとサイタマの戦闘シーンは少しでもいいから描写して欲しかったですね。pixivで描いてくださってる物も見ましたが、やはり村田先生のも見たいって気持ちが強いです。


第9撃目 武術

「なるほど、あれが鋼牙の首領....キーラか。圧倒的な兵力と、パワーを備えているな。」

 

身体を透過させながら、キーラとバクザンの戦闘を見ていたクリームヒルトは、感嘆の声を上げた。シンプルに言えば、両者ともほぼ単純な暴力のぶつけ合いで、まさに怪人同士の激突とも言えるだろう。しかしキーラには大量の兵士と、キーラ本人の高いスペックが勝敗を決定させたと解釈した。

 

「そして、トドメの一撃は....わざと見えないように隠蔽しているのか。」

 

そしてバクザンへとはなった一撃の正体も看破していた。あれはキーラが意図的か、あるいは無意識に見えないようにしている。とりあえず戦闘が終了したと判断し、透過を解除した。

 

「ほう、あの子娘は見たことねぇが、まるで生まれながらの怪人だなぁ。」

 

その時、突如背後から男の声が聞こえた。振り返ると、バクザンよりもやや体格の大きな怪人が立っていた。服装も空手の胴着を着ており、明らかに武術を精通した怪人であることがうかがえる。

 

「しかしバクザンの奴はやられたか.....せっかく冥界の乗っ取り計画に連れて行こうと思ったのによぉ。しょうがねぇ奴だ。」

「......」

「で、テメェが冥界のボスってことで良いのか?明らかに他の連中とは違う気を纏ってるからよぉ。」

「ほう、そんなことがわかるのか?」

「ああ、修行を積んでるうちになんとなく感じられるようになった。俺はゴウケツ、今は怪人となったが、これでも元は武術家だったのさ。」

 

ゴウケツと名乗る怪人の複数の目が、クリームヒルトを捉える。筋肉が肥大化し、闘気が溢れ出てる。明らかに殺す気だ。

 

「アンタには特別恨みはねぇが、ここで殺らせてもらうぜ。俺が最強の生物となるためになぁ。」

「やはりお前も私を狙うのだ....構わないが。」

「ああ、何せ生きてた時に変なハゲ頭に油断したところでやられたからな。今度こそキッチリと仕留めるためにもパワーアップは欠かせねぇんだよ。」

 

そう言いながらゴウケツは指をゴキゴキと鳴らした後、武術家らしく腕を顔の近くにあげ、肩幅に足を開いた構えをした。その構えはシンプルながらも静謐さを感じ、重々しい雰囲気が漂う。

 

「なるほど、武術を駆使して私と戦うのか。良いだろう、ならば私も....」

「へぇ、アンタも格闘技を知ってるのかい?」

「これでも軍に所属していたのでな。」

「ふふふ....良いぞ、面白い。」

 

そしてクリームヒルトも剣をあえて抜かず、徒手空拳の状態でファイティングポーズをする。それを見て、ゴウケツは不敵な笑みを浮かべる。

 

「剣を使った方が楽だろうになぁ...良いだろう。アンタを殺し、この冥界ごと世界を怪人だけの世界にしてやろう!」

 

ゴウケツはそのまま豪快な正拳突きを放つ。単純な拳の一撃だが、拳から放たれる風圧は、まるで台風が起きたかのように壁面を粉砕し、廊下の奥まで衝撃が響き渡る。

 

「ほう、凄まじい威力だ。」

 

そう言いながらクリームヒルトはゴウケツの正拳突きを片腕のガードで防御する。そしてお返しとばかりにゴウケツの顔まで跳躍しストレートのパンチを放つ。

 

「無駄だ。」

 

しかしゴウケツはその巨体からは信じられない繊細な動きをする。パンチが届く前に空いていた手の手刀でパンチの軌道を逸らし、顔の横へと受け流す。

 

「っ!」

「砕けちまいな。」

 

そしてゴウケツはパンチが受け流されて無防備な状態のクリームヒルトへ踵落としを繰り出す。床は踵落としの衝撃でひび割れて粉砕し、砕け散ると虚空の空間へと消えていく。ゴウケツは咄嗟に床のある場所へと退避する。

 

「おっと危ねぇ....しかし、冥界の王もこの程度か?パンチがヤバい威力なのはすぐにわかるが.....動きがあまりに単純で読みやすい。パワーとスピードがあれば勝てるほど、武術も怪人も甘くねぇぜ?」

「.....無論、それは承知してるとも。私もかつて武の勝負で挑んだ友も相手に、負けてしまった経験があるからな。」

「っ!?」

 

ゴウケツは驚愕の表情をする。消滅したはずのクリームヒルトが、虚空の穴から出てきたのだ。同時に、ゴウケツが粉砕した床は彼女が城の内部へ戻ると同時に修復されていく。まるで、主人が戻ってきたことでエネルギーを取り戻したかのように。

 

「....フン、武の勝負で負けた経験があるだと?ならば尚更、俺の勝ち筋が見えたな。アンタは同じ理由で二度敗北をするわけだ。」

「さっきも言ったが、私もそれが原因で敗北する可能性は覚悟してる。だからこそ、前に進む。私自身が学び、成長するためにも。」

「このゴウケツを舐めるなよ、成長する余裕なんぞ与えたりしない!」

 

そう叫びゴウケツは駆け出すと同時に拳をクリームヒルトへ向けて振り下ろす。しかし一方でクリームヒルトは、今度は防御せず逆に振り下ろされる拳に合わせて、こちらからもパンチをぶつける形で放った。

 

「なにッ、グオォォォッ!?」

「.....考えてみたら、ミズキの様なカウンターの技術を実現するのは難しいな。やはり私は正面からの撃ち合い方が適正はあるようだ。」

 

と、クリームヒルトは苦笑しながらそう言った。しかし拳が少し傷を負ってるクリームヒルトに対し、ゴウケツは肩まで粉砕されて右腕全体が血塗れになっていた。ゴウケツはあまりの痛みと理不尽さに表情を歪め、怒りの顔となっている。

 

「クソッ、何が成長だ.....こんなのただの開き直りじゃねぇかッ!」

「うむ、言われてみればその通りだな。なあ、ならば私の場合はどうしたら成長できると思うか?」

「敵に聞いてるんじゃねェよクソッタレがァッ!」

 

ゴウケツはそう叫びながら正面蹴りを放つ。急な一撃だったのか、クリームヒルトは先程と同じ様な迎撃をせず、跳躍して正面蹴りを回避する。そして壁を蹴ってゴウケツに接近し、脇腹へ向けて回し蹴りを放つ。

 

「相打ちには驚いたが、アンタの普通の攻撃は俺には届かねェ事がまだ理解できないか!」

「ふむ、確かにその様だな。」

 

ゴウケツの言う通り、クリームヒルトの蹴りはゴウケツの繊細な受け流しによって、無力化されていく。しかしクリームヒルトは試すように、2度3度と空中でパンチや蹴りを繰り返す。それでも何度も受け流すゴウケツだが、その時違和感を覚える。

 

(何だこれは....徐々に俺の手が痺れ始め....違う!1発ずつ、威力も速度も上がっていってる!)

「どうした、もうそろそろ限界のようだぞ。」

 

そう、現状は拳も蹴りも流され続けているが、少しずつゴウケツの処理も追いつかなくなってくる。しっかりと流されず掠る蹴り、そして続いて放たれた拳も頬骨に僅かに当たって衝撃が走る。このままではゴウケツの処理が破綻し、クリームヒルトの一撃で勝負は決まるだろう。

 

「お、おのれっ....俺も受け続けるだけだと思うなよ!」

「?」

 

ゴウケツがクリームヒルトの手足を弾いて無防備状態にする。そしてゴウケツは負傷した片腕を無理矢理動かして拳を握り、その両拳をまるで山突きをするかのように突きつける。

 

龍虎砕牙拳(りゅうこふんがけん)

「っ!」

 

ゴウケツが技を発動した瞬間、クリームヒルトの肉体が内側から粉砕された。ゴウケツほどの巨体から放たれる粉砕の衝撃波は、例え巨大な鋼鉄の鎧であろうとも、砂のように粉微塵にする奥義。クリームヒルトの肉体がミンチにならず、まだ肉体が保たれているのが不思議な方だろう。

 

「....挽肉にはならなかったが、俺の奥義を直接体に食らえば、まあ生きてはいないだろうが.....」

「.....なるほど、内部破壊の技術なのか。ヨシヤでも、ここまでの真似事は出来ないな。」

「な、テメェまだ生きてやがるのか!?」

「少し応えたが、何.....まだ私の気力は折れておらんよ。」

 

しかしクリームヒルトはまだ生きていた。血塗れの体を動かし、不敵な笑みを浮かべてゴウケツを見つめる。その意思を断たない限り、人の代表者に敗北の兆しは現れない。

 

「くそ、あのハゲ頭みたいな不死身な体しやがって!ならばもう一発....」

「とはいえ、流石に2度も無防備に受けるつもりはない。返礼として、この拳の一撃で応えるとしよう。」

「オオッ.....オォォォォォッ!!」

 

ゴウケツはもう一度クリームヒルトに向けて奥義を放とうとする。しかしそれよりも早く振り抜かれる拳の一撃。その拳はまさに一撃必殺....そこに破壊は無く、解法(キャンセル)も纏ったその一撃はまるで浄化されるようにゴウケツの腕、頭部、そして最終的には肉体が目の前から消滅した。

 

「なるほど、あれが武術というものか.....貴重な経験にはなったが、参考にはならなかったな。しかし、バクザンはキーラをまるで怪人だと言ってたが、まさか....」

「誰が、怪人だと?」

 

クリームヒルトがそう呟いた瞬間、背後から声が聞こえた。振り返ると、そこには冷淡ながら憤怒の表情を浮かべているキーラがこちらを睨んでいた。




次回、ついに鋼牙戦です。
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