聖闘士星矢x戦姫絶唱シンフォギア 13番目の黄金聖衣 作:アンドロイドQ14
リディアン
フィーネとの戦いが終わり、金色の竜が爆散した場所に星矢達は集まっていた。
一輝「ふっ、あのような悪党に対しても分かり合えると考えている響は相変わらず甘いな」
瞬「でも、それがあの子のいい所でもあるんだよ、兄さん」
一輝「お人好しな瞬に言われると納得せざるを得ないな…」
瞬の言葉には一輝も納得して微笑んでいた。
響「了子さん、もう終わりにしましょう。それに…何で沙織さんと星矢さんをあんなに」
フィーネ「アテナとペガサスを憎んで何が悪い!?奴等は…私のあの方への愛を否定し、自分達は神と人間の愛を育んでいたのだぞ!神話の時代でも…現代でも…」
憎しみと怒りを露わにしながらも、フィーネは泣いていた。そんなフィーネの手を響は握った。
響「私、恋なんてよくわからないけど…このように手を取り合う事はできるはずですよ」
フィーネ「ノイズを作り出したのは先史文明期の人間。統一言語を失った我々は手を繋ぐ事よりも相手を殺す事を選んだ。そんな人間が分かり合えるものか…」
響とフィーネの手を今度は沙織が握った。
沙織「分かり合える可能性はゼロではありません。あなたの言う通り、バラルの呪詛によって統一言語を失った人類は古来から今に至るまで憎み合い、争い続けてきたでしょう。しかし、平和を愛し、分かり合うため、争いを止めるために尽力してきた人達も歴史の中に多数いたはずです。そうでなければ、人類は争いの中で死に絶えていたのですから」
フィーネ「統一言語がなくても分かり合える可能性がゼロではないだと?楽観的な神だな…」
響「でも、沙織さんの言ってる事は間違ってないですよ、了子さん。統一なんとかがなくても分かり合おうとする人達は必ずいますから」
フィーネ「その代表的な存在がお前か…」
星矢「人付き合いも初めの頃は仲が悪いってのもよくあるもんだぜ。何しろ、聖闘士としての戦いが始まった当初は俺と沙織の仲なんて最悪だったからな。けど、ぶつかり合ったり、気遣い合ったりするうちに今みたいになったって事さ。分かり合うのは難しいかも知れねえけど、諦めたらそれこそ叶わない夢じゃないのか?」
フィーネ「諦めたら…叶わない夢…?」
沙織「それに…、あなたの胸の内は痛い程わかります。私も星矢が傷つく度に心を痛めていたのですから…。本来でしたら私と星矢は神と人間である以上、隔たりがある上にいつかはあなたと同じような出来事が訪れるのかも知れません」
星矢「だけど、俺は例えどんな事があっても沙織さんの傍にいたい。それは沙織さんが女神アテナだからじゃない、神様である以前に俺の大切な人だからだ。結ばれない運命であっても、俺はそれに抗って沙織さんの傍に居続けようと思う」
フィーネ「お前達は…結ばれないのではとわかっていても傍に居続けようと思っているのか…」
幾多の衝突や戦いを乗り越え、神と人間の間に隔たりがあるとわかっていても相手の傍に居続けたいと思っている星矢と沙織の互いの想いが通じ合った強い愛にフィーネは自分の『あの方』への想いが片想いである事、勝手に嫉妬した自分の身勝手さ、弱さを痛感したのであった。
沙織「そして、本当はあなたの恋を応援したかったのですが、『神に恋心を抱いている上、神になろうとしている愚か者の蛇遣座の黄金聖闘士を殺せ』というゼウスを始めとする神々の命令もあったとはいえ、あなたを裏切って殺してしまい、何千年も私を恨み続ける原因を作った事をお詫びします…」
フィーネ「…他の神々からの…。あれは本音ではなかったのか…。そう言えば、私を抹殺する際にアテナは泣いていたな…」
フィーネは激しい憎しみで自分の心の奥底に押し込めていた過去の記憶を思い出していた。自分の恋を否定し、ペガサスを差し向けて抹殺しようとした際にアテナが涙を流していた事を。アテナが他の神からの命令とはいえ、自分の恋を否定してペガサスを差し向けて殺した事を謝罪した事にフィーネは自分を裏切り、自分の恋心を否定した事はアテナの独断ではなく他の神から命令されて立場上そうせざるを得ず、押し込めていた過去の記憶でも涙を流していて本音を隠していなかった事を知り、響が手を取り合い、沙織と星矢の2人と想いをぶつけ合った事で二人を許したのであった。
氷河「星矢の奴、いつの間に愛を語る柄になってるんだ?」
紫龍「氷河こそ、フレアとかにモテモテじゃないか」
氷河「そういう紫龍だって春麗というかわいい彼女がいるじゃないか」
恋バナに盛り上がる紫龍と氷河であった。ところが、ネフシュタンの鎧とデュランダルに異変が起こった。
瞬「ネフシュタンとデュランダルが!?」
フィーネ「完全聖遺物同士が対消滅を始めたのだ。ネフシュタンと一体化している私の体も…」
しかし、フィーネの体には何も異変は起こらなかった。
響「何も起きませんよ」
クリス「ボケたんじゃねえか?」
フィーネ「なぜだ!?なぜ、私の体は…」
一輝「その答えがあれじゃないのか?」
一輝が指差した方向には解放された双子座の黄金聖衣と乙女座と同じく取り込まれてからネフシュタンの鎧の中で元通りになった獅子座の黄金聖衣、そして砕けた蛇遣座の黄金聖衣があった。
フィーネ「蛇遣座の黄金聖衣が…」
紫龍「恐らく、あの聖衣がフィーネを対消滅させずに守るためにデュランダルの攻撃が来た際に最後の力を振り絞ってフィーネとネフシュタンの鎧を分離させたのではないのか?」
星矢「神話の時代から主人を待ち続け、主人に危害を加えようとしたら襲い掛かってくるほどとんでもなく主人想いな聖衣だな」
フィーネ「…最後まで私を守ってくれたんだな…」
神話の時代に離れ離れになってからずっと自分を待ち続け、幾度となく自分を守り、そして自分とネフシュタンの鎧を分離させて対消滅から免れさせてくれた蛇遣座の黄金聖衣にフィーネは感謝の気持ちでいっぱいだった。そんな中、とある連絡が来て、美衣は驚いていた。
美衣「沙織様、NASAより緊急連絡です!このままだとカ・ディンギルによって砕かれた月の破片が地上に落下するそうです!」
沙織「何ですって!?」
フィーネ「どうする?このままだと…ごほっ!」
突如としてフィーネは血を吐いた。
響「了子さん!?」
フィーネ「気にするな…、この体の命が尽きようとしている…。だが、ここで死んで眠りについたとしても、私の血を引く者がアウフバヘン波形に触れれば何度でも復活できる…。だから…、そう悲しむ事はない…」
響「了子さん、死ぬ前に沙織さんと分かり合えてよかったですね…」
フィーネ「そうだな…。今思えば、お前達と過ごした日々も悪くなかった…。お前達が生きている間にまた会えるかどうかはわからんがな…。それからアテナよ、蛇遣座の黄金聖衣は修復したらそれを纏うのに相応しい者が現れた時、その聖衣を与えてくれ。そして、これから様々な困難が待ち受けているかも知れないが…ペガサスと末永く幸せにな…」
そう言ってフィーネの命は尽きた。しかし、その表情は神話の時代に殺された時の憎しみや悲しみに満ちたものではなく、憑き物が落ちた安らかなものだった。
翼「フィーネの命が尽きたのか…」
響「でも、了子さんの表情、とっても安らかですよ…」
沙織「何千年にも及ぶ憎しみから解放されたのでしょう。氷河」
沙織に呼ばれ、氷河が出てきた。そして、フィーネの遺体を氷漬けにしたのであった。
弓美「ねえ、あれってアニメのような幻想的な光景だよね?」
未来「うん。自分がああされるのは嫌だけど…」
弦十郎「これは…?」
氷河「フリージングコフィン。特殊な方法でなければ砕く事ができず、自然では永久に溶けない氷の棺だ」
翼「(氷河の言っていた永久に溶けない氷の棺というのはこの事だったのか…)」
フリージングコフィンを見て、響との仲が悪かった頃に氷河の言っていた事がようやく理解できた翼であった。
クリス「これって…いわゆる氷葬って奴か?」
氷河「その通りだ。後は墓の下に埋めればそれで終わりだ」
美衣「それよりも、月の破片を破壊しなければなりません」
響「それ、私達にやらせてください!」
未来「響…」
響「心配しないで、未来。光速で向かって、素早く壊してくるから!」
紫龍「月の破片の破壊に行くなら、これを持っていけ!」
紫龍は響達に天秤座の武器を渡した。
翼「これは…?」
紫龍「天秤座の武器だ。本来、聖闘士は武器の使用が禁じられているが、アテナや天秤座の聖闘士の許しがあった時だけこの天秤座の武器を使用できる。今回は月の破片の破壊だから、それを使って破片の破壊してこい!」
クリス「ありがとな!」
響「それじゃあ、行ってくるよ!」
そう言って響達は光速で月の破片へ向かい、未知の小宇宙の力や天秤座の武器であっという間に月の破片を破壊して戻ってきた。
未来「ほんとにあっという間に破壊して戻って来ちゃった…」
響「未来、これで約束の…うわっ!」
突如として響達の体が光り、ギアから黄金聖衣が分離して去ってしまい、ギアはエクスドライブの状態になった。
クリス「おい、何で黄金聖衣は分離したんだよ!」
一輝「あくまでもあの黄金聖衣は力を貸しただけだ。お前達を持ち主とは認めていない」
翼「そう言えば、そうだったな…」
弦十郎「これにて、一件落着だな」
一連の事件が終わり、一同はほっとした表情になった。
城戸邸
翌日、フィーネとの戦いでボロボロになったペガサス、ドラゴン、キグナスの3つの聖衣を見た貴鬼はため息をついた。
貴鬼「はぁ、せっかく直した聖衣をまたこんなにも壊したなんて…」
紫龍「すまんな、貴鬼。敵が強すぎてせっかく直してもらった聖衣をまたこんなにも壊してしまった」
貴鬼「でも、きちんと直すから安心しな」
氷河「それと、俺と星矢と紫龍は沙織さんから黄金昇格を認められた。その3つの聖衣は直した後に新しい世代に継がせたいと思う」
貴鬼「新しい世代か…。わかった、オイラが責任を持って直してやるからな」
星矢「それと、蛇遣い座の黄金聖衣の修復も頼むぜ」
星矢の頼みに貴鬼は頷いて修復を引き受けたのであった。
野原
そして数日後、響は未来、星矢、沙織と共に琴座流星群を見る事となった。
響「やっと未来と一緒に見れたね」
未来「うん。それに、星矢さんと沙織さんも一緒に見に来てくれたし」
星矢「それにしても、流れ星の眺めがいい特等席を見つけてるとはな」
未来「いえ、そういう訳じゃ…」
響「私の守護星座は乙女座だったけど、未来も守護星座があるのなら、何がいい?」
未来「私は…琴座がいい!」
その発言に星矢達は笑ったのであった。
沙織「星矢、私は家庭を持ってみたくなりました」
響「ええっ!?沙織さんが家庭を持ちたい!?」
星矢「けど、無理に人間と交わろうとすると他の神様が黙っちゃいないぜ」
沙織「子供を産みたいのではありません。私は…特別な運命の元に生まれた孤児の母親になりたいのです」
星矢「特別な運命か…」
沙織「そして、その子に星矢が今まで使っていたペガサスの聖衣を継がせようと思います」
未来「その子って現れるのかな?」
響「きっと現れますよ」
沙織のささやかな今後を響は肯定したのであった。
城戸邸
同じ頃、一輝はまたいつもの単独行動をとろうとしていたが、突如として一輝と瞬の前に乙女座の黄金聖衣が現れ、シャカの幻影が出た。
一輝「シャカ!」
瞬「死んでいるのにどうして?聖衣の宿る魂が」
シャカ『死後の世界から私が纏っていた黄金聖衣を通して話しかけているのだよ』
一輝「では、あの時喋っていたのはあの世にいるシャカ本人だったのか!?」
シャカ『いかにも。初めはフィーネを利用してから傍観する予定だったが、私と同じ守護星座を持つ立花響の特異な小宇宙に興味が湧いて彼女に力を貸す事にした。それに、彼女には私のある技を授けた。聖遺物の力を使わない技だから、例え聖遺物に有効な攻撃が来ても防げるだろう』
瞬「その響達の特異な小宇宙って何?」
シャカ『そこは私にもよくわからない。だが、もしかするとあの3人が覚醒した特異な小宇宙は噂に聞いた究極の小宇宙、Ωなのかも知れない』
一輝「Ωだと?」
シャカ『実際はあの3人の特異な小宇宙がΩなのかどうかは私にもわからん。それと、立花響と小日向未来には目を光らせておけ。あの2人は何やら過酷な宿命がいずれ訪れるようなのだからな』
瞬「過酷な宿命?」
シャカ『私の神に最も近い男としての勘なのだが、立花響と小日向未来は神に最も近い女になるばかりか、神そのものになりかねないような気がしてな』
瞬「神そのものに!?」
シャカ『だからこそ、目を光らせておくのだ。頼んだぞ』
そう言ってシャカの幻影は消え、乙女座の黄金聖衣は聖域へ戻って行った。
一輝「あの2人が…神そのものになるだと…?」
シャカの勘に2人は衝撃を受けていた。
聖域
月の欠片を破壊してからしばらくした後、そして、聖域では正式に星矢、紫龍、氷河の黄金聖闘士昇格の式典が執り行われており、特別に響達も聖域に来ていた。
響「ここが聖域かぁ…。そう言えば、あれから小宇宙が使えなくなっちゃった。光速で動けたら遅刻なんかしないで済むのに~~!!」
美衣「響さん、あの時は奇跡が起きたからこそ、あなた達はとてつもなく大きな小宇宙が使えたのです。本来であれば、小宇宙を扱えるようになるには数年もの厳しい修行が必要なのですよ。力は楽して身に付くものではありません」
響「そんな事言われても~!」
未来「何だか古代のギリシャに来たみたい…。私達も来てよろしかったのですか?」
美衣「沙織様からあなた達も来てよいとおっしゃっていたので、呼びました」
クリス「わざわざこんな事をしなくてもいいんじゃねえのか?」
翼「雪音、形式においてもきちんと執り行わなければならない事だってあるのだぞ」
そんな所へアテナとしての正装をしている沙織と射手座の黄金聖衣を纏っている星矢が来た。
沙織「私の招待に応じていただき、ありがとうございます」
響「おおっ、沙織さんのこの恰好はまさに女神様そのものだよ!」
とても14歳とは思えない美貌とスタイルの良さ、そしてそれらを引き立たせるアテナとしての正装に響達は釘付けだった。翼の方は年下の沙織と自分のある部分の大きさの差を気にしていたが。
響「そう言えば、瞬さんと一輝さんも黄金聖闘士に昇格するのですか?」
星矢「いや、2人は昇格の話は蹴った。言い分はどっちも『今の聖衣の方が気に入ってるから、黄金聖闘士に昇格しなくてもいい』ってさ」
翼「確かに、あの二つの聖衣は星矢と紫龍と氷河の聖衣と比べても特殊だ。だからこそ、愛着があるのだろうな」
星矢「それじゃあ、指定の場所で式典を見てくれよ」
翼「心得た」
響達は指定の場所へ行き、式典が執り行われる事となった。
沙織「星矢、紫龍、氷河、あなた達は幾多の戦いの中で邪悪な敵を打ち倒していき、そして力をつけて黄金聖衣に認められました。よって女神アテナの名において、3人の新たな黄金聖闘士の誕生をここに宣言します!」
沙織の宣言にあちこちから歓声が飛び交った。
邪武「星矢の野郎、お嬢様のハートを射止めた挙句、黄金に上り詰めるなんてな…」
魔鈴「(流石だよ、星矢。まさか黄金にまで上り詰めるとはね。私もお前の師匠になれたのを光栄に思うよ)」
魔鈴は仮面の裏は弟子が黄金にまで上り詰めた事に微笑んでいるのをシャイナは察していた。
氷河「(我が師カミュ、あなたの聖衣は俺が受け継ぎます)」
紫龍「(老師、あなたからすれば俺はまだヒヨッコでしょう。ですが、全身全霊で取り組んでいきます…)」
???A『私もお前が継いでくれて嬉しいぞ、氷河。これからも地上の愛と平和のために戦うのだ』
???B『紫龍、わしだって黄金になりたての頃はお前みたいだったぞ。だから、色々経験を積むのじゃ』
突如、懐かしい声がして紫龍と氷河は見回していたが、どこにも声の主はいなかった。
沙織「これからも地上の愛と平和のために、その力を振るって邪悪と戦ってください」
星矢「ああ!」
その星矢の返事に周囲は拍手し、響達も新しい黄金聖闘士誕生に喜んでいたのであった。
これで今回の話は終わりです。
今回はフィーネとの和解と星矢と紫龍と氷河の黄金聖闘士昇格を描きました。
シンフォギア本編とは別の変化球を加えるため、フィーネは体が消滅せずに遺体が残るという変化球を加えました。
途中のシャカが一輝と瞬と話すシーンはシンフォギア二期での響と未来の戦い、そして4期の最終話で明らかになった事実が近いうちに起きるだろうと示唆されている内容となっています。
最期の星矢達の黄金昇格はやってみたかったシーンでした。これで今小説は終わりで、しばらくしてから今小説の続きのシンフォギアXDの小説を執筆します。