聖闘士星矢x戦姫絶唱シンフォギア 13番目の黄金聖衣   作:アンドロイドQ14

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4話 亀裂

ハイウェイ

 その頃、星矢達は道路にいるノイズの群れと戦いを繰り広げていた。ところが、ノイズの群れは星矢達の強さを感じ取ったのか、合体して数体の巨大ノイズとなった。

 

星矢「群れて勝てないから、合体して俺達に挑もうっていうのか…!」

 

紫龍「確かに、合理的な判断だ。だが、俺達に勝てはしない!」

 

 星矢達は向かっていった。

 

星矢「こんなにデカけりゃ、あれを使うぜ!ペガサス、ローリングクラッシュ!」

 

 ノイズの1体を掴んだ後、星矢は一気に跳び上がり、錐もみしながら落下して勢いよくノイズを地面に叩きつけた。叩きつけられたノイズはダメージに耐えられず、消滅した。

 

紫龍「ふっ、こんなデカブツにはこのドラゴン紫龍最大の奥義をぶつけるのにうってつけだ!廬山、昇龍覇!」

 

 師の童虎から授けられ、数々の強敵を葬ってきた奥義、廬山昇龍覇で巨大ノイズはあっけなく消滅した。

 

瞬「ノイズには一切手は抜かない!ネビュラストーム!」

 

 普段は優しすぎる性格故に滅多な事ではネビュラストームを使わない瞬だが、ノイズ相手には何のためらいもなく使用し、複数の巨大ノイズを消滅させた。

 

氷河「この氷河最大の拳を受けるがいい、オーロラサンダーアタック!!」

 

 猛烈な凍気で巨大ノイズをあっけなく完全に凍らせ、消滅させたのであった。そして、翼の方も蒼ノ一閃などの技でノイズを蹴散らし、あっという間に戦いは終わった。

 

響「(凄い…。星矢さん達はとっても凄い…!)」

 

 星矢達の戦いぶりをみた響は星矢達に近づいた。

 

響「星矢さん、戦いぶりはとっても凄かったですよ!私もペガサス流星拳をいつか習得したいです!」

 

星矢「できないわけじゃないけど、習得の道のりはかなり険しいぜ」

 

響「翼さーん!私、今は足手まといかも知れませんけど、一生懸命頑張ります!だから私と一緒に戦ってください!」

 

翼「そうね……。あなたと私、戦いましょうか」

 

 翼は返事をしたものの、その言い方や音色に違和感を感じた星矢達は警戒した。それに気づかない響は喜んだが、振り向いた翼は響の喉元に剣を突きつけた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 その様子は二課本部でも映されていた。

 

弦十郎「何をやってるんだ、あいつらは!?」

 

了子「青春真っ盛りって感じね♪」

 

 様子を見かねた弦十郎は指令室を出ようとした。

 

沙織「弦十郎さん、急いで行ってください。このままだと、星矢達は手加減なしの制裁を翼さんに与える可能性が高いです!」

 

弦十郎「わかってる!誰かがあのバカ共を止めなくてはな!」

 

 そう言って弦十郎は現場に向かった。

 

了子「こっちも青春してるな♪でも、気になる子よね。放っておけないタイプかも」

 

 そう言っている了子には怪しい光が走ったが、それには沙織と美衣以外は気づかなかった。

 

 

 

ハイウェイ

 突然の出来事に響は戸惑っていた。

 

響「え?そういう意味じゃありません。私は翼さんや星矢さん達と力を合わせて…」

 

翼「わかっているわ、そんな事」

 

響「だったらどうして?」

 

翼「私があなたと戦いたいからよ」

 

響「え?」

 

 翼の言葉に響はおろか、星矢達さえ驚いていた。

 

翼「私はあなたを受け入れられない。力を合わせあなたと共に戦うなど、風鳴翼が許せるはずがない!」

 

星矢「紫龍、氷河、どうす」

 

 ところが、星矢は紫龍と氷河に声をかけようとしたものの、怒り狂う寸前の龍のような紫龍とクールを装いながらも激怒している氷河の様子に声をかけられなかった。

 

翼「あなたもアームド・ギアを構えなさい。それは常在戦場の意思の体現。いや、あなたが『何者をも貫く無双の一振り ガングニール』を纏うのであれば胸の覚悟を構えてみなさい!」

 

響「か、覚悟とかそんな…。私、アームド・ギアなんてわかりません。わかってないのに構えろなんて!そんなの全然わかりません!」

 

翼「覚悟を持たずにのこのこと遊び半分で戦場に立つあなたは、奏の…奏の何を受け継いでいるというの!?」

 

 遂に敵意を露わにした翼は行動に移そうとした。しかし、突如として拳圧に吹っ飛ばされてしまった。

 

翼「くっ、何を…!?」

 

紫龍「いい加減にしろ、翼!」

 

 拳圧で翼を吹っ飛ばしたのは紫龍であった。しかも、紫龍の目は逆鱗に触れ、怒り狂った龍の目をしていたのであった。

 

翼「紫龍、なぜ私を吹き飛ばした!?」

 

紫龍「簡単な事だ、まだ響は覚悟はおろか、戦い方さえわかってないんだぞ!覚悟や戦い方を知らないのなら、お前や俺達が響に教えるしかないだろ!それなのにお前はそれをしないどころか、大儀なきつまらん怒りを響にぶつけているだけのバカだ!」

 

翼「バカ…つまらん怒り…!?お前達まで…彼女に味方するのか!!奏を失った私の気持ちを否定するのか!?」

 

紫龍「響にもいくらかは非はあるだろう。だが、今の時点ではお前の非の方が大きい!それに、いつまでも死んだ奴に未練がましく縋るな!!」

 

翼「何だと!?」

 

 紫龍の響を庇う態度と『死んだ奴に縋るな』を翼は『奏を忘れろ』と解釈し、激怒して斬りかかろうとした翼だったが、『千の落涙』や『蒼ノ一閃』を放っても紫龍に軽くあしらわれ、逆に紫龍からの制裁のパンチを腹に受けた。

 

翼「うわっ!!」

 

 怒りに任せて翼は立ち上がり、再び紫龍に斬りかかろうとしたが、今度は氷河の凍結リングで動きを封じられた。

 

翼「なんだ、この氷の輪っかは…!?」

 

氷河「凍結リングだ。お前の力では破る事はできん。そして甘ったれるな、翼!俺達だって大切な人を失っている。お前は、奏が敵になったら討てるのか!?」

 

翼「お前達が…大切な人を失った…!?」

 

 氷河の言葉に翼は動揺した。

 

氷河「俺は…修行地のシベリアで俺を聖闘士にしてくれた先生、水晶聖闘士と、十二宮での戦いで我が師カミュと、海底神殿で兄弟子アイザックと戦わなければならなくなり、3人を自分の手で葬った…。あの3人とは戦いたくなかった…。だが、俺は迷いぬいた末、己の使命を果たすためにクールに徹し、戦い抜いた…。お前は奏と戦わなくてはならなくなったら、迷いながらもクールに徹して討つ事ができるのか?」

 

 実際に師や兄弟子との辛い戦いを潜り抜けて成長し、カミュに母親の遺体が安置された沈没船を更に深く沈められた事もあって海に潜って最愛の母親の遺体の元にも行かず、母親との思い出も師や兄弟子の思い出と共に胸の奥にしまっている氷河の言葉に翼はまともな反論さえできなかった。

 

翼「そんなの…」

 

氷河「翼、世の中はお前の経験した出来事以上に残酷な出来事だっていっぱいあるんだ。そして頭が冷えないのなら、永遠に溶ける事のない氷の棺にぶち込んでやろうか?」

 

響「氷河さん…」

 

 自分の思っていた以上に修羅場を潜り抜けていた星矢達に響は驚くのと同時に、永遠に溶けない氷の棺を聞いてぞっとした。そして、奏が敵になったら戦う覚悟は翼にはなかった。そんな折、弦十郎が来た。

 

弦十郎「どうやら、星矢達がこの場を鎮めてくれたようだな」

 

翼「叔父様…」

 

弦十郎「じゃ、この氷の輪っかを壊すぞ。うおおおおっ!!」

 

 そう言って弦十郎は凍結リングを破壊し、翼を解放した。

 

瞬「(あの人、聖闘士じゃないのに凍結リングを破壊するなんて…。多分、白銀聖闘士ぐらいの強さはあると思うな。小宇宙を扱えたら、確実に黄金聖闘士になれそうだ…)」

 

弦十郎「ありがとな、紫龍、氷河。お前達が止めてくれたおかげで靴を台無しにする事がなくなった上、何本も映画を借りられるからな」

 

紫龍「いえ、俺達は当然の事をしたまでです」

 

氷河「(この人、映画を見るのが好きなのか…?)」

 

 どうでもいい事を疑問に思う氷河だったが、翼の方は顔を伏せていた。その様子は星矢達も察していた。

 

弦十郎「らしくないな、翼。紫龍に対して怒りに任せてぶっ放したのか?それとも…、お前泣いて」 

 

翼「泣いてなんかいません!涙なんて流していません。風鳴翼はその身を剣と鍛えた戦士です。だから…」

 

響「翼さん…」

 

 その場の面々の雰囲気は静かに、重々しくなった。

 

響「私、自分が全然ダメダメなのはわかってます。だからこれから一生懸命頑張って、『奏さんの代わり』になってみせます!」

 

紫龍「な…!」

 

 響の発言に星矢達は驚いた。そして、翼は響をひっぱたこうとしたが、星矢に止められた。

 

星矢「それくらいで止めたらどうだ?」

 

 星矢は止める際、紫龍達や響と共に翼が泣いていたのを目撃した。翼は弦十郎に連れていかれ、暗い様子で星矢達も帰還する事となった。

 

 

 

リディアン

 星矢達は帰る支度をしていた。

 

星矢「響、帰る前に言っておくぜ」

 

響「何ですか?」

 

星矢「『奏の代わり』になろうとするなよ」

 

響「どうして…ですか…?」

 

沙織「簡単な事です。人は、別の人の代わりになどなれはしないからです。あなたはあなた、奏さんは奏さんです。だからこそ、あなたは奏さんの代わりとしてではなく、あなた自身としてノイズと戦うのです」

 

響「私は私…」

 

星矢「それと、響は何のため、誰のために戦う?それをはっきり決めるんだぞ」

 

 星矢と沙織に言われた事は響にはわからなかった。そして、星矢達は城戸邸に帰ったのであった。

 

 

 

風鳴邸

 翼は胴着を着て真剣の前に座って瞑想し、2年前の惨劇を思い出していた。

 

回想

 そう、それは奏が最後の手段を使って己の命と引き換えにノイズ達を全滅させた時の事だった。

 

翼「奏!」

 

奏「どこだ?翼…。真っ暗でお前の顔も見えやしない…」

 

翼「奏!」

 

奏「悪いなぁ…、もう一緒に歌えないみたいだ…。」

 

翼「どうして…、どうしてそんな事言うの…?奏は意地悪だ…」

 

奏「だったら翼は…、泣き虫で弱虫だ」

 

翼「それでも構わない!だから…、ずっと一緒に歌ってほしい!」

 

奏「…知ってるか?翼。思いっきり歌うとな…、すっげえ腹減るみたいだぞ…。」

 

 そう言って奏は涙を流した後、塵となって消えていった。

 

翼「奏~~~っ!!!」

 

 

 

 瞑想を終えた翼は目を開けて真剣を抜き、ろうそくの火を斬りつけたが、火は消えなかった。

 

翼「(全ては、私の弱さが引き起こした事だ…)」

 

 新しい仲間だと思っていた星矢達と響の件での衝突もあり、翼の心は再び孤独と闇に覆われていた。

 

 

リディアン周辺

 それから1か月経っても響と翼の関係は一向に良くならず、バラバラに戦っていた。そして、翼は一度は星矢達を仲間と認めたものの、響の一件で星矢達は響に味方したため、信用しなくなった。

 

翼「(所詮、聖闘士などただの助っ人。ノイズを倒すのは私がやらなければならないのだ…!)」

 

 翼の戦いを紫龍と氷河は見ていた。一方、響は星矢と瞬に助けられていた。

 

星矢「やっぱり、響には出撃を休ませて修行させた方がいいんじゃないか?」

 

瞬「僕もそう思うよ。戦い方がわからないようなら、誰かに指導してもらって戦い方を学ばないと」

 

 まともな戦いができない響の様子を見た星矢と瞬は響には修行が必要なのではと思っていた。

 

 

 

???

 星矢達がノイズと戦いを繰り広げていた頃、一輝は『フィーネ』についての手掛かりを求めて世界各国の聖遺物の研究所を手当たり次第に訪ねていた。しかし、どこを当たってもフィーネに関する手掛かりは得られなかった。そんな中…、一輝はある場所を訪ね、少女2人と対峙していた。

 

一輝「お前達、切歌と調と言ってたな。ここの責任者はいるか?」

 

切歌「何なのデスか!?あいさつもせずに急に入り込んできて!」

 

調「怪しい奴だから、許さない…!」

 

一輝「ふっ、貴様ら2人で俺に勝てるとでも思うのか?」

 

調「切ちゃん、あんな奴は私達2人なら倒せるよ!(で、でも…怖い…)」

 

切歌「そうデス!根拠もない自信を持ってる奴は弱いのデス!(口ではそう言っても、あの男には勝てる気がしないのデス…!)」

 

 口では強気な事を言っていたものの、一輝の威圧感に押しつぶされそうであった。

 

???「2人共、その人と戦ってはダメ!!」

 

 睨み合いの中、大人の女性がやってきた。

 

調「マリア!」

 

切歌「どうしてデスか!?」

 

マリア「マムからの伝言よ!その人は私達じゃ絶対に勝てない伝説の青銅聖闘士、フェニックス一輝なのよ!」

 

 その言葉に調と切歌は驚いた。

 

調「せ、聖闘士!?」

 

切歌「初めて見るデス!」

 

一輝「どうやら、俺の名を知ってるようだな。そのマムとやらはここの責任者なのか?」

 

マリア「そうよ。話があるのなら、ついてきて(…この人、聖衣とかいう鎧を纏っていないのに威圧感が凄まじすぎる…!!ネフィリムがまるで赤子同然と思える程だわ…!)」

 

 マリア達は小宇宙を知らないものの、一輝の凄まじい実力を本能で感じ取っていた。そして、一輝は研究所の責任者、ナスターシャ教授と対面した。

 

ナスターシャ「あなたがあの伝説の青銅聖闘士、フェニックス一輝ですね?私はナスターシャ。マリア達にはマムと呼ばれています」

 

一輝「用件を言う。フィーネに関して何か知らないか?」

 

ナスターシャ「残念ながら、フィーネに関する情報は何もありません」

 

一輝「そうか…。さっきは騒がせて済まなかったな。俺はここで帰る」

 

ナスターシャ「ですが、数年前から日本のとある科学者が所有している13番目の黄金聖衣、蛇遣座の黄金聖衣を盗もうとしたり、調べようとした人間の変死事件が相次いで起こっています。もしかすると、それがフィーネの手掛かりになるかも知れません」

 

一輝「何!?13番目の黄金聖衣だと!?」

 

 13番目の黄金聖衣がある事に一輝は驚いた。

 

ナスターシャ「私が以前、ギリシャ旅行に行った時に13人目の黄金聖闘士に関する伝説を聞いた事があります。その黄金聖衣が見つかった以上、伝説は本当なのでしょう。それと、近頃はアメリカ政府の動きも活発になっています。日本へ行けば、フィーネに関する手掛かりが見つかるでしょう」

 

一輝「わかった。今から日本へ向かう」

 

 一輝は目的地を日本に決めた。そして、研究所を出る際にマリアと遭遇した。

 

一輝「マリアと言ったな。恐らく、今後俺とは戦場で巡り会う事になるだろう。生半可な覚悟では生き残れはせんぞ」

 

 自分の心を一輝に見透かされてしまい、マリアは衝撃を受けた。

 

一輝「図星だったようだな。俺はここで…」

 

 帰ろうとした一輝だったが、マリアとマリアにどこか似た少女が写った写真を見つけた。

 

一輝「写真に写っている奴は誰だ?」

 

マリア「…セレナよ。私の妹で、何年も前に死んだわ…」

 

一輝「そうか…。マリア、今の妹分達を大切にしろ…」

 

マリア「待って!さっきは覚悟とか言ってたのに、何でセレナの事になったら私に対して『妹分達を大切にしろ』って言ったの!?」

 

一輝「……俺には弟がいる。俺と違って泣き虫だが、誰よりも心優しい弟がな。お前は妹がいた身だから、俺もシンパシーを感じてしまったのだろうな…」

 

 一匹狼でクールぶっていながらも、マリアにシンパシーを感じて労いの言葉をかけ、一輝は去ったのであった。

 

マリア「あの人にも…弟が…?」

 

 威圧感溢れる一輝に泣き虫の心優しい弟がいた事にマリアも一輝にシンパシーを感じ、驚いたのであった。

 

 

 

リディアン 寮

 その頃、響は未だに翼の件で落ち込んでいた。そんな折、突然の二課からの招集を受けた。

 

未来「何?まさか、朝と夜、間違えてアラームセットしたとか?」

 

響「いやぁ、えっと…」

 

未来「こんな時間に用事?」

 

響「えへへ…、星矢さんと沙織さん達に呼ばれて…」

 

 未来に図星を突かれて響は笑う事しかできなかった。

 

未来「夜間外出とか門限とか…」

 

響「沙織さんが連絡を入れてくれるだって。ごめんね…」

 

未来「こっちの方は何とかしてよね?」

 

 そう言ってパソコンで流れ星の動画を見せた。

 

未来「一緒に流れ星を見ようと約束したの、覚えてる?山みたいにレポートを抱えてちゃ、それもできないでしょ?」

 

響「うん、何とかするから…ごめん…」

 

 それから、着替えに手間取っている響の着替えを未来は手伝った。

 

響「私、このままじゃダメだよね…」

 

未来「ん?」

 

響「しっかりしないといけないよね…。今よりも…、ずっときっともっと…」

 

 その様子に未来は何とも言えなかった。そして、星矢達が迎えに来た。

 

未来「それでは、響の事をお願いします」

 

沙織「わかりました」

 

 そう言って響を車に乗せ、星矢達は二課本部へ向かった。

 

特異災害対策機動部二課

 

 響を連れ、星矢達も到着した。

 

響「すみません、遅くなりました!」

 

了子「うん。では、全員揃った所で仲良しミーティングを始めましょう♪」

 

 翼は星矢達とは目も合わせなかった。そして、メインモニターにこれまでのノイズ出現ポイントが表示された。

 

弦十郎「どう思う?」

 

響「……いっぱいですね」

 

沙織「うふふっ、その通りですね」

 

弦十郎「これはここ一か月にわたるノイズ発生地点だ。ノイズに関して響君が知ってる事は?」

 

響「テレビのニュースや学校で教えてもらった程度ですが、まず無感情で機械的に人間だけを襲う事。そして襲われた人間が炭化してしまう事。時と場所を選ばずに突然現れて周囲に被害を及ぼす『特異災害』として認定されている事」

 

美衣「意外と詳しいですね」

 

響「今、まとめているレポートの題材なんです」

 

了子「そうね。ノイズの発生が国連の議題に上がったのは今から13年前だけど、観測そのものはもーっと前からあったわ。それこそ、世界中に太古の昔から」

 

弦十郎「世界中に残る神話や伝承に登場する数々の異形は全てとは言えないが、ノイズ由来のもそれなりにあるだろうな」

 

了子「ノイズの発生率は決して高くないの。でも、近頃のこの発生件数は誰の目から見ても『異常事態』。だとするとそこに何らかの『作為』が働いていると考えるべきでしょうね」

 

響「作為…。という事は、誰かの手によるものなんですか?」

 

紫龍「その可能性の方が高い。問題はノイズを使っている何者かの目的だ」

 

翼「中心点であるここ、私立リディアン音楽院高等科。笑われの真上です。『サクリストDデュランダル』を狙って何らかの意志がこの地に向けられていると照査となります」

 

響「あの…」

 

星矢「デュランダルって何だ?そんなに敵が欲しがる代物か?」

 

紫龍「(確か、デュランダルは英雄ローランが使っていた聖剣だと、老師から聞いた事があったな…)」

 

あおい「ここよりもさらに下層、『アビス』と呼ばれる最深部に保管され、日本政府の管理下にて我々が研究している『ほぼ完全状態の聖遺物』それがデュランダルよ」

 

朔也「翼さんの『天羽々斬』や響ちゃんの胸の『ガングニール』のような欠片は『奏者』が歌って『シンフォギア』として再構成させないとその力を発揮できないけど、『完全状態の聖遺物』は一度起動すれば常時100%の力を発揮し、更には『奏者』以外の人間も使用できるであろうと最近の研究でわかったんだ」

 

氷河「要するに、完全状態の聖遺物は一度起動させれば誰でも扱える聖衣のようなものか…」

 

了子「氷河君達にはそっちの例え方がわかりやすいわよ。それが私が提唱した『櫻井理論』!だけど、『完全聖遺物』の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよね。もしくは…」

 

 了子は怪しげな視線で星矢達を見た。

 

了子「黄金聖闘士なき今、黄金聖闘士クラスの強大な小宇宙を扱える伝説の青銅聖闘士である星矢君達ぐらいね」

 

 そんな了子の怪しげな雰囲気を星矢達は感じ取り、紫龍は表には出していないものの、警戒していた。

 

紫龍「(あの女は油断のできない女だ…。呪われた聖衣と言われている蛇遣座の黄金聖衣を傍に置いているのに、なぜ不可解な死を遂げないんだ…?)」

 

弦十郎「あれから2年、今の翼の歌であればあるいは…」

 

あおい「そもそも、起動に必要な日本政府からの許可って下りるんですか?」

 

朔也「いや、それ以前の問題だよ。安保を盾にアメリカが再三のデュランダルの引き渡しを要求してるそうじゃないか。起動実験どころか扱いに関しては慎重にならざるを得まい。下手を打てば国際問題だ」

 

星矢「全く、国のお偉いさんはとんだバカだな!」

 

沙織「アメリカ政府の目的としては、デュランダルを軍事利用しようとしているのでしょう。今はそんな事を言っている時ではないというのに…!」

 

瞬「僕だって許せないよ。強大な力を自分達のためにしか使わないなんて」

 

 デュランダルを軍事利用しようとするアメリカ政府の態度に星矢達は不満だった。

 

紫龍「了子さん、あなたが個人で所有している蛇遣座の黄金聖衣に関しても引き渡しは…」

 

了子「アメリカ政府でもそれはできないわよ。蛇遣座の黄金聖衣は盗もうとしたりした人間はみんな死んでしまう呪いの聖衣だし、大国だって教皇にすり替わっていたサガが配下を使い、各国でやらかした事で聖闘士が牙を向いたらどれほど恐ろしいのかを改めて胸に刻んでいるの。だから、アメリカ政府も聖闘士に関しては手を出せないってわけ」

 

星矢「他の国から聖遺物を求めても、聖闘士の報復を恐れて聖衣に手が出せないってのは、アメリカのお偉いさんもとんだへっぴり腰だぜ。ざまあみろってんだ!」

 

紫龍「言い方は悪いが、星矢の言ってる事は間違いではない。政治家の大半は己の欲と面子ばかり優先し、己が傷つくのを恐れる臆病者に過ぎん」

 

 聖遺物を軍事利用しようとする反面、聖闘士の報復を恐れて聖衣の引き渡し要求ができないアメリカ政府を星矢達は『へっぴり腰』、『臆病者』と罵ったのであった。

 

あおい「まさかこの件、米国政府が糸を引いてるなんて事は…?」

 

 その言葉に一同は沈黙した。

 

美衣「グラード財団の調査部と二課調査部の報告によると、ここ数か月の間に1万回に及ぶ二課本部コンピューターへのハッキングを試みた痕跡が認められているそうです。アクセスの出どころは不明なので、短絡的にアメリカ政府の仕業とは断定できませんが…」

 

弦十郎「だが、痕跡は辿らせている。本来こういうのこそ、俺達の本業だからな」

 

 そんな中、慎次が前に出た。

 

慎次「風鳴司令」

 

弦十郎「ああ、そうか。そろそろ…」

 

慎次「今晩はアルバムの打ち合わせが入っています」

 

星矢&響「「は?」」

 

 星矢と響は疑問に思った。

 

慎次「表の顔では、アーティスト風鳴翼のマネージャーをやってます」

 

 そう言って慎次は眼鏡をかけ、名刺を響に渡した。

 

響「おぉ、名刺もらうなんて初めてです!これは結構なものをどうも」

 

 名刺を渡した後、慎次と共に翼は出ていった。

 

響「私達を取り囲む脅威はノイズばかりではないんですね」

 

星矢「ノイズがいたって、あのバカ共にはわからんだろうぜ」

 

 星矢のいうバカ共とは、アメリカ政府を始めとする大半の各国の政治家達の事であった。

 

響「どこかの誰かがここを狙ってるなんて、あんまり考えたくありません」

 

了子「大丈夫よ♪なんたってここはテレビや雑誌で有名な天才考古学者、櫻井了子が設計した人類守護の砦よ。先端にして、異端なテクノロジーが悪い奴等なんか寄せ付けないんだから♪」

 

沙織「それに、今は私達も二課の手伝いをしているので、アテナの聖闘士も護衛についています」

 

響「よろしくお願いします」

 

 別の通路では、慎次が翼の仕事の確認をしていた。

 

慎次「次に月末に予定しているライブですが、あまり時間がありません。後でリハーサルの日程表に目を通しておいてください。それから、例のイギリスのレコード会社からのお話しですが…」

 

翼「その話は断っておくように伝えたはずです。私は剣、戦うために歌っているにすぎないのですから」

 

慎次「翼さん、怒ってるんですか?」

 

翼「怒ってなどいません!剣に、そんな感情など備わってません…!」

 

 そんな事を口にしてても、慎次にはわかっていた。

 

慎次「感情がなかったら、歌を歌えないと思うんだけどな…」

 

 慌てて慎次もついていった。そんな中、響はある事を口に出した。

 

響「どうして私達はノイズだけじゃなく、人間同士でも争っちゃうんだろう?どうして世界から争いがなくならないんでしょうね…」

 

 響の言葉に星矢達はサガの裏切りに端を発した聖闘士同士の争いを思い出したのであった。

 

了子「それはきっと……人類が呪われているからじゃないのかしら?」

 

 了子は響の耳元で囁き、軽く耳を噛んだ。

 

響「ひゃああああっ!!」

 

了子「あ~ら、おぼこいわね。誰かのものになる前に私のものにしちゃいたいかも」

 

 了子のからかいに響は悲鳴をあげ、星矢達もそれに苦笑いした。

 

 

 

リディアン

 そして翌日、星矢達は再びリディアンに来た。

 

星矢「この歌って…」

 

沙織「響さんの通っている学校の校歌だそうです」

 

星矢「音楽メインの学校とだけあって、通っている子達の歌声はいいもんだな」

 

沙織「そうですね。聞いてるだけで心が癒されます…」

 

 歌声に癒される星矢と沙織であったが、突如として歌が止まり、それから怒鳴り声がした。

 

氷河「きっと、響が怒られたんだな…!」

 

美衣「あの子はおっちょこちょいですからね…」

 

 推測通り、怒られたのは響であった。そして昼休み…。

 

響「人類は呪われている!むしろ私が呪われている!」

 

 課題をやっていた響は友人の創世と弓美にご飯を食べさせてもらっていた。

 

未来「ほら、おバカな事やってないで、レポートの締め切りは今日の放課後よ」

 

響「だからこうして限界に挑んでるんだよ」

 

弓美「まぁアニメじゃないんだし、こんな事して捗るわけないしね」

 

 そう言って弓美は立った。

 

響「え?手伝ってくれたんじゃないの?」

 

 未来以外の友人は次々と立った。

 

詩織「これ以上お邪魔するのも忍びないので、屋上にてバトミントン等どうでしょう?」

 

創世「お、いいんじゃない!ヒナはどうする?」

 

未来「うん。今日は響に付き合う。レポート手伝うってそう約束したし」

 

響「おお!」

 

創世「仲がよろしい事で♪ビッキー、あんた男とかいないの?」

 

響「男…?」

 

 男と聞いて、響の頭には恩人である星矢の姿が思い浮かんだ。

 

弓美「もしかして、星矢さんかなぁ?」

 

創世「あり得るよ。それに、ビッキーって年下好きだったのね」

 

響「いやいやいやいや、私が年下好きだなんて…」

 

 からかわれ、顔を赤くした響をよそに弓美達はどこかへ行ってしまった。

 

響「ありがとう、未来」

 

未来「ん?」

 

響「一緒に流れ星でも見よう」

 

 そして放課後、教室から響が出てきた。

 

未来「先生、何って?」

 

響「……壮絶に字が汚いって…。まるで、ヒエロ何とかって言ってた…」

 

未来「そうじゃなくて、時間過ぎてたけど、レポート受け取ってもらえたの?」

 

響「……今回だけは特別だって!イェーイ!」

 

 ようやく流れ星を見られると浮かれる響であった。

 

未来「響はここで待ってて。教室から鞄取ってきてあげる」

 

響「いいよ、そんなの」

 

未来「響は頑張ったから、そのご褒美!」

 

 そう言って未来は鞄を取りに行った。

 

響「未来は足が速いなぁ。流石、元陸上部」

 

 ところが、ノイズ出現の連絡が入り、響は向かおうとした。そこへ、星矢達が来た。

 

星矢「響、ノイズは俺達が片付ける。だから、友達との約束を優先してくれ」

 

響「私、行くよ」

 

瞬「だけど、君はまだ」

 

響「ノイズを放置できないし、放置したら翼さんに…」

 

 どうしても行くという響の態度に星矢達は行かせる事にした。

 

紫龍「…仕方がない、行かせよう」

 

氷河「星矢、瞬、お前達は響についてやってくれ。俺と紫龍は翼の方へ行く」

 

 頷いた後、星矢達は響と共に出撃した。しかし、今回は恐ろしい事が待っているとも知らずに…




これで今回の話は終わりです。
今回は響の件での星矢達と翼の対立、そして不穏な動き等を描きました。
一輝がフィーネについて迫っている途中でまだ1期目では出ていないマリア達もゲスト出演させました。
次の話はクリスが再登場します。
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