ダンジョンに鎧武がいるのは間違ってるだろうか 作:福宮タツヒサ
ダイダロス通りに逃げ込んだ幸祐達だが、少しずつ追いつかれている。
理由は言わずとも分かる。ヘスティアを抱えているからだ。
ヘスティアを抱えたまま走る幸祐のペースが落ち始め、シルバーバックとの距離が徐々に短くなっていく。
(どこか、隠れそうな場所は……!?)
視線を巡らせながら、シルバーバックから逃れられそうな場所を探す。
——そして見つけた。
進んだ先に下り坂があり、その先に隧道があった。
シルバーバックからすれば狭くて入れない幅だが、人からすれば充分広い。
隧道の前まで駆け寄り、幸祐はヘスティアを地面に下ろす。
するとベルが何か決心した様子でヘスティアの顔を見る。
「お、おいベル君、どうしたんだい?」
「……ごめんなさい、神様。私が何とかして時間を稼ぎますから、その間にコースケさんと逃げてください」
「ダ、ダメだ! そんなのダメに決まってるじゃないか! ボクは許さないぞ!」
「でも、神様! こうでもしないと——キャ!?」
言い切る直前、ベルは背中を押し出され、小さな悲鳴を上げながら隧道へ放り込まれる。
何が起こったのか分からないまま背後を見ると、そこには幸祐がいた。
「悪いな、ベル。これは俺がやる仕事だ」
囮作戦。シルバーバックを引きつける間に、もう一人が確実に安全なところまで避難させる。
ベルがやろうとしていたことを、幸祐が横取りした。
二人に反論する暇も与えず、幸祐は鉄格子を降ろして外側から鍵をかけて完全に封鎖する。
ヘスティアとベル、幸祐の間に鉄の隔たりができた。
「コースケさん!?」
「団長のお前や
一人なら存分に闘り合える。
何より、死にかけてもベルやヘスティアが無事なら問題ない。
「ダメだ! そんな身勝手な行為、ボクは絶対に許さない! ここを開けるんだ!」
「ダメ! 行っちゃダメ! お、お願い、行かないで!!」
ヘスティアは幸祐の意見を頑なに聞き入れようとしない。
その隣でベルは、今にも泣き出しそうな顔で鉄格子にしがみついて、幸祐に大声を張ってきた。
幸祐は片膝を地面についてベルと視線を合わせ、ベルの頭に手を置いて口を開く。
「そうだな……もしも俺が死んだら、別の団員を探しな。心配すんな、
「……え? 何を?」
「じゃあな。ヘスティアを守ってくれよ」
頭を撫でながら笑みを浮かべる。すぐ手を離すと背中を見せて、その場から全力疾走した。
「ダメっ……お願い! 行かないで!!」
「コースケ君! コースケくーん!!」
背後から二人の女の子の悲鳴に近い声が耳に入ったが、幸祐は一瞬たりとも後ろを振り返らず地面を蹴り出す。
駆け抜けた先、あの猿がいた。
『グォオオオオオオ!!』
幸祐を見つけた途端、シルバーバックは地響きを起こす唸り声を上げた。
自分より何倍も巨大な図体のシルバーバックと対面し、幸祐は気を引き締めて《オレンジ・ロックシード》を取り出す。
「お前の相手はベルでもヘスティアでもねぇ。俺で充分だ……!!」
《オレンジ!》
ドライバーをセットして《オレンジ・ロックシード》のスイッチを押す。
頭上に現れたオレンジの球体を漂わせ、ドライバーの窪みへ施錠する。
(俺の力の使い方は、あのハーフエルフがいう通り間違っているかもしれない……でも、それでも! 俺はベル達を守りたい! 何もできないまま、また『役立たず』と呼ばれるのはゴメンだ!!)
《ソイヤ!》
幸祐はベルトの小刀を傾けた。
オレンジ球体が降ってきて頭を覆い被り、幸祐を【
《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!》
「行くぜぇえええええ!!」
『グォオオオオオオオ!!』
オレンジアームズを纏った姿になり、《大橙丸》を構えてシルバーバックへ走り出す。
△
鉄格子に額を付けて、ベルは自責の念に駆られる。
——まただ……!
——ミノタウロスの時からずっと庇ってもらうばかりだ……!!
自分が身を捨ててまでヘスティアを守ろうとした結果、その役目を幸祐に横取りされて代理を担わせてしまった。
深く項垂れるベルに、ヘスティアが大きな声をかける。
「何をやってるんだ、ベル君! 早くコースケ君の元へ行かなくちゃ! 君がモンスターを倒すんだ!」
「ぇッ……!?」
ヘスティアの言葉にベルは顔を上げた。
同じくらいの身長で自分と歳が変わらない容姿の女神は、普段見られない凛とした眼でベルを見つめていた。
「ここで君の【ステイタス】を更新するから、今すぐ準備をしておくれ」
「で、でも……」
「ベル君。君は前に、コースケ君が自分より強いと思って嫉妬したっていったよね?」
「は、はい……」
ベルの返事に対し、ヘスティア「でもね?」と続ける。
「それは大きな間違いだ。あの子は決して強くなんてない。誰かが近くにいてあげないとダメになる。コースケ君は、全然ちっとも強くない、そんな男の子なんだよ」
「コースケさんが……?」
「だから、ボク達であの子を救わなくちゃいけないんだ。きっと今でも、心の底では独りになりたくないと思っているだろうから」
女神の眼は誤魔化せなかった。幸祐が時折思い浮かべる負の感情を、ヘスティアに見透かされていた。
そこでヘスティアが告げるという手もあったが、女神の自分じゃ説得できないと歯痒く思う。
自分に任せる方が上手く行くという彼の自分勝手な自信をへし折るには、信頼する眷属——ベルに託すしかない。
素直に嬉しかったが、それでもベルは自信がなかった。
幸祐でさえ苦戦するなら、自分では勝てるわけがない。そう諦めかけていた。
「でも……私じゃアイツを倒せません」
「大丈夫、君の攻撃が通用するように、ボクが君を勝たせる」
ヘスティアは手元のケースに収められた荷物を渡す。
ベルは恐る恐る受け取る。
ケースの中を弄って取り出してみると、
「ナイフ……?」
それは、刀身から取手が漆黒に染め上げられた一本のナイフ。
鞘から抜いた瞬間、漆黒の刃が紫色の光を宿す。ベルの意思に呼応するかのように武器が生きている。
その短刀の鞘に刻まれた【
「こ、これって《へファイストス・ファミリア》の武器!? 神様、一体これをどうやって!」
「ごめんね、心配かけて……でも詳しい説明は後さ」
これこそ、ヘスティアが三日間ホームを空けていた理由である。
ベルに力を、自信を持たせるため、神友である鍛治神である女神へファイストスに頼み込んだ。土下座付きで。
どんなボロボロ姿になって帰ってきても、ヘスティアはベルを信じていた。
幸祐が加入する前、運命の出会いを求めてダンジョンという危険地帯へ潜り込んだ。
そんな純粋で真っすぐな女の子だからこそ強くなれる。そして、本当は寂しがり屋な少年の心すら救ってくれる。
ヘスティアは確信している。
この娘とこの
「それでコースケ君に見せつけようじゃないか。モンスター狩りでもあの子に頼ってしまうほど、ボクとベル君は弱くないってさ」
「ッ………はい!!」
真っ直ぐな、屈託のない瞳を向けられる。
ベルは目元に溜まりかけた涙を拭い、決意の眼差しを宿して頷いた。
△
一方、幸祐は執拗にヘスティアを追いかけていたシルバーバックと交戦の真っ最中だった。
『グォオオオオオ!!』
シルバーバックが幸祐を叩き潰そうと巨大な拳を降り落とす。
《ソイヤ! オレンジ・スパーキング!》
幸祐はバックル附属の小刀を三回傾ける。
オレンジの鎧が展開される前の球体に戻って不恰好な盾になり、巨大な拳を受け止める。
頭を覆い被るオレンジ球体を掴み、両手で回転させるとミキサーのように回転速度を増す。
『グォオオオオオオオッ!?』
片手がズタボロにされてシルバーバックは苦痛で顔を歪む。
そして幸祐の狙い通りに、シルバーバックは幸祐から視線を外した。
オレンジ球体を展開させて鎧に戻し、シルバーバックの頭上へ跳躍する。
《ソイヤ! オレンジ・スカッシュ!》
ベルトの小刀を一回傾けると右足にオレンジ色のエネルギーが溜まり、脚力に力が増す。
「セイハァアアアアアアア!!」
超強力になった飛び蹴りをシルバーバックの頭部に繰り出す。
『グァアアアアアアアッ!!?』
頭部を貫かれたシルバーバックは奇声を上げながら爆散する。
「……ふぅ」
一息ついた、と幸祐はやり遂げた感に陥る。
ベルを泣かせる結果になってしまったが、結果的に生還したのだ。それで許してもらうことにしようと二人の元へ足を運ぶと……
『グォオオオオオ!』
いや、よく見たらさっきのシルバーバックと細部が異なる。
生き返ったのではない。最初から二匹いた。
仲間が倒されたのを観ていた別のシルバーバックは勝ち目ないと気づいたのか、屋根伝いでよじ登って逃走を図る。
その方角はちょうど、ベルとヘスティアがいる地点だ。
「あのゴリラ野郎、行かせ——」
『——オオオオオオオオオオオオオ!!!!』
「ッ!? こ、この音は!?」
突如、それは響き渡った。
さっき倒した白ゴリラと比べ物にならない、大地そのものが震え上がるような圧倒的威圧感。聴くだけで膝が震えを隠せない。
その音叉がした方へ向く。
音叉は一枚の分厚い壁の向こう側から聞こえる。 壁を突き破って、
「へ、蛇? ……いや、あれは植物か?」
蛇のようにクネクネ捻る動きを見せる触手。
よくよく見ると、それは巨大な蔦。
蔓が次々と壁の上で咲き、分厚い壁に亀裂を生じさせる。
その蔓の攻撃は壁の耐久力を上回り、壁を粉砕して本体が現れる。
『ギィオオオオオオオオオオオ!!!』
巨大な花。
図鑑で目にしたラフレシアみたいな不気味な植物すら可愛く見える、建物ぐらいある巨大花。
ミノタウロスやシルバーバックとの比じゃない。
今分かった。シルバーバックは幸祐からじゃなく、この巨大花に恐れをなして逃げ出したのだ。
絶対に倒せない。
諦めと恐怖が押し寄せてくる。
「あのモンスター、絶対にヤバ——」
その場から離れようとした時、幸祐の視界に映った。
身を丸める山吹髪のエルフの少女に、その少女の腕の中で怯える獣人の女の子。そして、その二人を刺し殺さんと触手が放たれた光景を。
「ッ———!!」
瞬間——無我夢中で地面を蹴り出した。
△
【ガネーシャ・ファミリア】が調教する用のモンスターが脱走し、そのモンスター達の退治をしていた【ロキ・ファミリア】のティオネ、ティオナのアマゾネス姉妹。そしてエルフのレフィーヤ。
しかし、その途中で植物のモンスターの奇襲に苛まれた。
接近戦が得意なティオネとティオナの後方で、レフィーヤは強力な詠唱を唱える。
だが、詠唱の途中、彼女は見てしまったのだ。ティオネ達からは見えないところ、屋台の下で泣いている獣人の女の子の姿を。
「えぇッ!? レフィーヤ!」
「ちょっと、どこへ行くのよ!?」
考えるよりも先に足が動いた。
詠唱を中断し、二人の声を振り切って、その女の子の元へ走った。
「大丈夫ですか!?」
「うぅ〜、お母さん……」
膝に地を付けてレフィーヤは女の子を見る。
幸いなことに女の子は怪我をしていない。
女の子は母親とはぐれてしまい、泣いていただけのようだった。
レフィーヤは女の子と同じ視線になり、頭を撫でながら微笑む。
「大丈夫ですよ、私が一緒にお母さんを探しますから」
——一緒にいてくれる。
その言葉で女の子はいくらか安心した様子になり、涙ぐみながら「うん……」と頷く。
『ギィ……オオオオオオオオオオ!!!』
突如、食人花はターゲットを、レフィーヤと獣人の女の子に変えた。
石畳の床を砕いて咲かせた四本の蔓を、二人に向けて放つ。
「ッ!?」
石像になったようにレフィーヤの体は動けずにいた。
ティオネ達みたいにモンスター相手に接近戦ができるわけもなく、詠唱を唱えて攻撃を防ぐ時間もない。完全に詰んでいた。
……しかし、後悔なんてしない。
たとえ自分が死ぬことになっても、自分より小さい女の子を守れなくて冒険者を名乗りたくないからだ。
(せめて、この娘だけでもッ……!!)
身を屈めて女の子を覆い被り、両眼をギュッと瞑る。
これから襲ってくる苦痛を少しでも感じたくない。迫り来る死の現実から目をそらしたかった。
———ドスドスドスドスッッ!!!!
肉塊を突き刺す不快音がレフィーヤの耳に届く。
いよいよ自分は刺し殺されてしまったのだと死を予感する。
……だが、しばらく経っても体のどこにも痛みを感じない。
眼を開けて見ると、どこも刺されていない無傷の状態だった。
腕にいる女の子も、どこも血を流していない。
何の音だったのかレフィーヤは困惑を隠せない。
「ひぅっ」
レフィーヤに抱えられてる女の子が小さな悲鳴を上げた。前方の方を見上げて、女の子は明らかに怯えていていた。
——でも、一体何に?
そう疑問を抱きながら前方を見上げる。
「えッ……!!?」
レフィーヤは驚愕せずにいられなくなる。
そこにいたのは紺色のスーツの鎧。自分達が受けるはずだった触手達を全部受け止めた人。自分達を庇って、身体中に鮮血の花を咲かせた鎧武者だった。
▲
「〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
声にならない奇声が、幸祐の口から吐き出る。
咄嗟に飛び出して前に出たが、槍のように先の尖った触手がライダースーツや鎧を突き破り、幸祐の腹部や左肩や右太腿を貫通する。そこからこぼれ落ちる血が地面の上で赤い水溜りを築いていく。
刺された部位へ押し寄せる激痛に兜の下の顔を歪めてしまう。
背後で女の子の小さな悲鳴が耳に入る。
後ろを振り返り、エルフの少女と獣人の女の子の無事を確認した。
ただ、女の子は幸祐を見て怯えていた。眼前で肉体を貫かれて血を噴き出す光景を見せつけられたのだ、この歳の女の子なら怖がっても無理はない。一方、エルフの少女は呆然と戸惑いが混じった感情で幸祐を見た。
激痛に耐えながら、己を突き刺している蔓を掴み取り、エルフの少女に激昂する。
「ッ〜〜、早、くッ……行けよ……!!」
エルフの少女は目が覚めたように自分の役割を気づかされる。
走る間際に「ごめんなさい……!」とこぼし、女の子を抱えてその場から離れ去った。
良かった、と幸祐は綻んだ。
だが、安堵するのも束の間。
「———がッ!!?」
右側の脇腹に衝撃が走る。
巨大な鞭となった食人花の蔓によって、幸祐は真横へ吹っ飛ばされてしまう。
遠方の壁に激突し、人ぐらいのクレーターが出来上がる。
「ガハッ……!!」
《ロック・オフ》
限界に耐え切れず、幸祐は変身解除されて鎧が消失してしまう。その途端、口から血を吐いた。
激痛が伴う。蔓に吹っ飛ばされた衝撃で内臓にまでダメージが及んでいた。
「ぁ、ぉ………」
口が血だらけになり、人語すら発することができない。
瓦礫に囲まれ、頭を強く打った衝撃で意識が朦朧としている。
特に触手を貫かれた部位が酷く、そこから苦痛と共に大量の血が流れ落ちていた。
「………」
幸祐の前に人影。
霧のように急に現れた。
倒れて死人のように動けない幸祐を見下ろし、巨体な体格の
おもむろに小物を取り出し幸祐の方へ落とす。
「貴様があの方の寵愛を受けるに相応しいか判断する。あの方からの選別品を受け取れ……」
そういって
幸祐の眼前に置かれた小物は……『L.S.-05』と中央に刻まれた黄色のロックシード。
△
モンスターが暴れ出す数分前。
フォルトは《戦極ドライバー》を腰に装着した状態で人気がない路地裏に赴いていた。
ふと足を止め、背後に視線を放つ。
「……ここなら姿を見られる心配はない。姿を表したらどう?」
「———チッ、勘の良いクソエルフだ」
建物の影から姿を表す。
悪態を吐きながら現れたのは黒い戦闘服に槍を構えた
「西のストリートから見張っていたようだが、私に何の用?」
「……テメェは出すぎた真似をした。あの方の手を煩わせる真似をした。だから潰すまでだ」
身に覚えがないわけではないが、正直意味不明な言葉だ。
まぁ大方、向こうの女神であるフレイヤが男に目を付けたことに関与しているとフォルトは確信する。先日も
「外で起こってるのもアンタ達の仕業ね。何の利益がある?」
アレンはその問いに答えず、見下すように唾棄する。
「弱者を甚振るのは楽しかったか? ……そのベルトがなきゃ何もできねぇ
——スッ
フォルトの紅眼が鋭い光を放つ。
《バナナ!》
「勘違いするな。私が手にかける者は私より強い戦士とモンスター……そして【
たとえ強者でも弱者でも、熟練者でも駆け出しでも……その者が【
基本的に自分より格下の冒険者には手を出さないが、【
完膚なきまで倒し、偽り武者の牙を削ぐ……
《ロック・オン!》
「それに、女神に牙を削がれた
《カモン!》
ラッパ音声が鳴り響くと同時に、アレンの瞳に殺意が宿った。
《バナナアームズ! ナイト・オブ・スピアー!》
『片耳』と罵られ、フォルトは瞬時にバナナアームズを装着する。
一方、向こうも黙っていなかった。
獣人の矜持を『畜生』と侮辱された。アレンは殺意を露わにする。
「——テメェ、ここで死ぬか?」
鋭い眼光で睨みつけて槍を構えるアレン。
その挑発に対してフォルトも槍——《バナスピアー》の先端を向けて答える。
「——やってみろ。やれるものならな」
——刹那、二人の姿が消えた。
と思えば頭上で目にも留まらぬ速さで二つの風が舞う。
赤と黒の影、
爆風が舞起こったように、その周辺の雑草やチリ埃は彼方へ吹き飛ばされる。
▲
一方、突如発生した食人花。
そこへアイズも参戦して、食人花を対処している。
しかし、いくらアイズが剣に風を纏わせてもキリがなかった。
すると突然、
『——オオオオオオオオッ!!』
「ちょ、ちょっと! 何でそっちの方に行くのさ!?」
ティオナが声を上げて困惑する。
自分達が対峙していたモンスターが突然、奇声を上げて進路を変えたのだから。
食人花はアイズ達を無視して、壊した壁の方へ向かう。
「——うぉらッ!!」
『ギィイイイ!?』
『え……?』
アイズ達は、一瞬何が起こったのか分からなかった。
男の声と共に黄色の鎖鉄球が投げ込まれた。
その鎖鉄球の一撃は食人花に奇声を上げさせて花弁の一部を散らす。
壁の残骸の方から歩いてきて姿を見せる。
「ア、【
ポツリとティオネが呟いた。
ゆっくりと現れたのは黄色の鎧。棘付きに酒瓶ほどの大きさの鎖鉄球を構え、黄色の輝きを放つ重装甲の鎧武者だった。
だが見たことない。自分達の【ファミリア】にも問題児の【
「あれ……あの時の人……?」
双子のアマゾネス姉妹が戸惑う中、唯一アイズだけは反応が違った。
纏う雰囲気も戦う様子も駆け出し感丸出しだったが、ミノタウロスを単独で倒した、あの時の【
『ギィオオオオオオオオオオ!!!』
怒ったように奇声を上げながら襲いかかる食人花。黄色の鎧武者は対面して迎え討つ。