ダンジョンに鎧武がいるのは間違ってるだろうか   作:福宮タツヒサ

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第拾陸話 怪物贈呈

翌日、陽が昇ったばかりの時間帯の【ヘスティア・ファミリア】のホームにて。

幸祐のダンジョン探索が再開でき、ベルと幸祐の装備の新調も終えた今、いよいよ待ちに待ったダンジョン。団長である少女は誰よりも張り切りを見せていた。

新品の軽装鎧を寝床の傍に置き、睡眠をたっぷり取った少女は現在………

 

「ぅぅん……ふぁ〜〜……」

 

ベッドから起き上がれないまま、深〜〜いあくびをした。どう見てもまだ寝足りない様子だ。その姿に、遠足前夜に夜更かしした小学生時代の自分を思い出す幸祐。

 

「ベル、まだ眠いのか?」

 

「ぅ……うぅん…ちょっと待ってぇ……すぐ起きる、から……」

 

「いや、全然起きないじゃねぇか……」

 

目蓋を手で擦りながら起きると言うが、一向に眠気が取れないベル。首をコクンコクンと傾げ、一瞬でも油断すればすぐ夢の世界に突入しそうだ。

そんな容態で、常に命と隣り合わせの場といっても過言ではないダンジョンに行かせるわけにはいかないと、幸祐は判断する。

ベルの眠気が取れるまで待てば良いはずだ。しかし幸祐も、新しく購入した石の刀を早く試したいという思いがある。

幸祐の独断で急遽、その日は単独(ソロ)で探索することになる。

 

「今日は俺だけ潜るから、ベルはまだ寝てな」

 

「で、でも……コースケだけ行かせるわけにはッ……」

 

「心配すんなって、今日はそこまで深く潜るつもりはないから。またエイナさんに叱られるのも嫌だしな」

 

そういって引き止めようとするベルの頭を撫でる幸祐。その行為でベルは益々眠りの世界へ誘われてしまう。

先日モンスターと闘った幸祐が死にかけたこともあり、幸祐一人で行かせることが不安だった。エイナから聞かされた『【戦武将(アーマード)ライダー】は少なからず憎まれている』という忠告を聞き、常に傍にいなくてはならない。そんな使命感に似た衝動を抱えている。

しかし、そんなベルの心情を知らない幸祐は出かける準備を終えてしまった。

 

「じゃあ俺は行ってくる。ちょっと夜遅くなるかもしれないけど、ちゃんと無事に帰るから安静にするんだぞ?」

 

「あ、待って……!」

 

慌てて声をかけると、幸祐はその部屋の扉を開けたところで振り返る。

呼び止めたまでは良いが、眠気が強過ぎて思考力が酷く低下してしまい、何をいえば良いのか思いつかなかった。

そこで……いつも女神(ヘスティア)に言われていることを口走った。

 

「………い、いってらっしゃい」

 

「……おお、いってきます」

 

少しの間があったことに幸祐は怪訝そうにするも、すぐ笑みを浮かべて退出した。

ベルはもっと気の良い言葉があったはずだと反省する。

心配ないとは、とてもいい難い。

しかし、彼はいったのだ……生きて帰ると。ならば、団員の言葉を信じよう。

副団長(コースケ)の言葉を信用し、見送った団長(ベル)は自分以外誰もいないベッドの上で目蓋を閉じる。

それからすぐ——()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、少女は静かに寝静まった……

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、早朝から幸祐は単独(ソロ)でダンジョン七階層まで足を踏み入れていた。

幸祐の次に早起きが得意なベルにしては珍しいと思いながらも稼ぎに専念し、モンスターに向かって支給されたナイフを振るう。幸祐の腰にさしてある石の刀だけでは不安だと、エイナから譲り受けたものだ。もちろん無料で。

因みにエイナからは『無闇に【戦武将ライダー】にならない』ことを約束された。悪目立ちせず、いざという時のために控えておくためだという。

幸祐は居候の身であることを引き目に感じ、少しでも生活の負担を減らそうと稼ぎのため、せっせと魔石を回収する。

その道中、早速あの翁から譲り受けた石の刀を早速試してみたのだが……

 

『グァアアア!』

 

丁度良いタイミングで前方から一体のゴブリンが向かって来る。

何も考えず棍棒を構えてこちらへ突進してくるモンスターと対峙し、幸祐は石の刀を頭上に上げ……思いっきり振り下ろした。

 

「………ふん!」

 

『———グギャッ!?』

 

ずんぐり体型の口から呻き声が耳元を打ち、腐った果物をかち割った感触が掌に伝わる。頭を砕かれ血を吹き出し、棍棒を地面に落としたゴブリンは倒れて動かなくなると、身体が灰と化して魔石だけが残る。

 

「なんか使いづらいな、これ」

 

予想道理……いや、予想以上に切れ味が悪かった。

この階層に来るまで、ゴブリンの他にもパープル・モス、ニードルラビット、キラーアント……なども叩き壊したが、どれも感想は同じだった。切れ味は非常に悪く、剣としてじゃなく棍棒代わりにした方がマシだ。

あの時、どうして大金を注ぎ込んでまでこれが欲しかったのだろう? と今でも思う。

 

「……ま、考えてもしょうがないか」

 

八階層の手前で足を止めてそう呟いた。

この間購入したばかりの魔石入れ用ポーチは、はち切れそうなくらい膨らんでいる。ここまで収穫できたのであれば上出来だろう。

 

『———ジャァアア』

 

『——うおおおッ』

 

外へ戻ろうとした時だ。

奥の巣窟からモンスターの唸り声と、少数のやましい野太い声が耳を打つ。

数分もしないうちに、段々と音や振動が大きくなる暗闇から、計四人の男で編成されたパーティーが現れ、誰もが死に物狂いで走っていた。

その時だ、男達と視線が合ったのは。

 

『ッ———!』

 

「………?」

 

目線が合った途端、男達は嬉々とした表情に早変わり、一斉にこちらへ進路を変えた。

自分の元へ向かってるのは後方の通路口へ目指していると解釈した幸祐は、男達の行動に何の疑問も湧かなかった。

………だが、その油断が、地下迷宮(ダンジョン)では命取りだった。

 

 

 

「——ヒヒ、悪ぃな」

 

 

 

真横を通る間際、四人組と幸祐の視線が交差し、一人の口から謝罪——否、悪意に満ちた言葉が出た。

その四人の笑みを、幸祐は痛いほど見覚えがある。過去にたくさん受けてきた歪み切った視線、他人を陥れる下衆の表情。幸祐が最も嫌いとする醜悪な顔。口では謝罪を述べているも、その顔は罪悪感など一切抱えていない。穢れた悪意に染まった人間(モンスター)そのものだ。

しかし、男達が自分に対して何をやったのかが理解できない。

 

『ジィヤアアアアアアア!!!』

 

男達がやってきた方から無数の音叉が耳を打った。

怪物進呈(パス・パレード)』——他の冒険者からモンスターを押しつけられた——そう気付いた時には、もう遅い。

 

「あれは………蟻?」

 

暗闇の奥からガサガサガサッ! と節足の足音を鳴らしながら、無数の眼光がこちらに標的を変えた。立て続けに壁の隙間から突然、金属並の強度な皮膚で覆われた巨大な蟻——キラーアントが飛びかかる。

節足動物に類似したモンスター特有の鉤爪と顎が、唾液を垂らしながら幸祐に迫った。

咄嗟に躱すが、一匹の鉤爪が幸祐の皮籠手と擦れてしまい、幸祐は体の軸を崩してしまう。

事態は最早、一刻を有していた。一瞬の判断ミスが死を招くことになる。命の危機を察知した幸祐はこの場を退散しようと振り返る。

 

『ジィァアア……!!!』

 

しかし、背後の壁や床から蟻のモンスターが誕生して這い出てきた。

まるで何者かに狙いすまされたように逃げ場を失い、完全に退路を絶たれてしまう。

更に追い討ちをかけるように、四方の壁や天井に地面……あちこちから大量のキラーアントが出現した。

僅かな可能性を信じ、幸祐はキラーアントが少ない通路——ダンジョンの縦穴に通じる道を駆ける。ガサガサガサ!! と無規則な節足の嵐が耳に入り、必死に息を切らす。

その隙を逃さず、後方から更にもう三体のキラーアントが沸いて出て幸祐の足に噛みついた。

 

「うぉッ——ととぉッ!?」

 

スーツ越しなので痛みはなかったが、強度な顎の力で足を固定されてしまい、動きを制限される。

 

『ジィァアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

キラーアント達が見計らったように、一斉に襲いかかる。

自己防衛本能が咄嗟に働いた幸祐は《オレンジ・ロックシード》を取り出し、腰に巻き付けたベルトに装填する。

 

「非常事態だから許してくれよ、エイナさん! 変身!」

 

《ソイヤ!》

 

《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!》

 

紺色スーツとオレンジの鎧が全身を包み、【戦武将ライダー】になったと同時に、《大橙丸》で円を描くように周囲のキラーアントを斬り裂く。

 

『ジィァアアアアアアアアアアア!?』

 

オレンジ色に煌く刃に真っ二つにされたキラーアント達、耳を打つ断末魔と爆発音が鳴り響いて爆炎が飛び散る。ついでに足に噛み付いていたキラーアントも始末し、ある程度の数を片付けた。

 

『ジジッ……!』

 

「ッ、まだいやがる……!」

 

どうやってこの場を切り抜けようか、そう思考を巡らせていると……地面からミシミシ、と音が鳴った。

 

「ん? 何だこの音?」

 

その音は、先程の爆炎が周囲の地面に飛び散ったことで誘爆を起こし、地面がひび割れていく音。幸祐が立っている地点を中心に、亀裂はどんどん広がっていく。

 

「……まさか。この展開って……!」

 

キラーアントに囲まれてる中、止まれ止まれ、と耐久力を失った地面に、意味もなく睨み続ける。

とてつもなく嫌な予感がした………

 

「——うぉおおおおおおおおおおおおおッ!!?」

 

……そして、予感は的中した。

亀裂は幸祐の体を埋め尽くすほどに広がり、足元から一気に崩壊した。

バラバラの破片と一緒に、幸祐の体は真っ逆さまに奈落の底へ墜落()ちていく。

 

 

 

 

 

 

——順調に行ってるはずなのに、事態が急変した。

どうやら本人にとって、予想外の不具合(イレギュラー)が発生したようだ。

まぁ良い、想定内のことだ。この程度ことで慌てる必要などない。むしろ返ってこちらが行動しやすい方へ傾いてくれた。あの連中は手間を省ってくれたという功績を残してくれたのだ。

……だが、自分達【戦武将ライダー】を舐めたことには変わりない。

自分に協力してくれた御礼もしなくては。

直ちに動くとしよう。誰にも明かされないように、ひっそりと。

 

《メロン!》

 

緑柄の錠前が鳴る。

手駒のように扱われるのは遺憾だが、利害が一致したのであれば実行に移そう。

何より、()()()()()()()()()()に命じられたのであれば無視するわけにはいかない。

 

《ソイヤ! メロンアームズ! 天下・御免!》

 

——さて、狩りの時間だ。

白銀の大太刀を携え、白の武者は薄暗いダンジョンに足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

——ピチョン

——ピチョン

雫が垂れる音が響き、髪に水が伝う。

幸祐の意識が起き上がると同時に、全身に漂う痛みに表情を歪ませてしまう。骨折や出血はないが落下の衝撃で伴う痛みは重症だ。視界を開くとダンジョン内にある岩から染み出た水が幸祐の頰へ落下しているのが見えた。

しかし、湧き水が顔にかかったということは変身が解除されたらしい。

 

「……俺は、どこまで落ちたんだ?」

 

全身に漂う痛みに耐えながら体を起こして周囲を見渡す。ベルとダンジョン探索に行ったことを思い返して記憶を探るが、見覚えのない場所であった。

凸凹した岩石がたくさん連なる暗がりの空間、天井に生えた鍾乳洞状の岩はその場の危険さを物語っている。

正確な階層を答えることはできないが、少なくとも六階層より下の階層なのだろう。

一目見れば幸祐は冷静そうに見えるが、実はそうでもない。

この世界に来てから、久しく味わった人間の醜い悪意に晒され、思い出すだけでも腸が煮え繰り返る思いをし、冷静でいられるわけがなかった。

しかし、ここダンジョンでは、頭を冷やす時間すら与えてくれないようだ。

 

『———グォオオオオ』

 

遠方から、モンスターの産声が聞こえた。

地面から、壁から、天井から……ありとあらゆる所から、殻を破るように這い出る。おぼつかない足取りで赤い眼を爛々と輝かせ、自分達の住処であるダンジョンに迷い込んだ『異物』を探している。

幸祐は目の前の現実を受け入れて、一旦地上に戻るべきだと頭を切り替えて《オレンジ・ロックシード》を取り出す。

 

『———ァア?』

 

その時、誕生したばかりのモンスターと視線が合った。それも大量の。

 

「ッ———!!」

 

一瞬、目を疑った。エイナに教えられた記憶が正しければ、モンスターの風貌は七、八階層にはいないはずの中級モンスターだ。

試運転のつもりで軽はずみな気持ちでダンジョンに潜ったことに、幸祐は今更ながらの後悔を覚えた。

 

《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!》

 

「こんなところでッ、死んでたまるか!」

 

『アァアアアアアアアアアッ!!!』

 

《大橙丸》を構え、モンスターに突っ込んで行く。

幸祐の現在地…………ダンジョン()()()()

どんなに勢いよく下層へ落下しようとも九か十階層が限界。普通ならありえない階層まで落ちていた。

彼は知らない。現れたモンスターは七、八階層に出現するものとは比べ物にならない怪物であることを。無我夢中で走り出した先は上層ではなく下層へ続く道だということを。

何の事実も知らぬまま命辛々、走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

見ず知らずの同業者——幸祐にキラーアントの群れを擦り付け、命辛々にダンジョンの上層部まで到達を果たした男達。

生き残ったことへの歓喜に満ちた表情には、恥も後悔も反省の色もなかった。

入り口まであと少しのところで、男達の前に白い光が差し込んだ。

しかし、それは外からの光ではなく、一人の武者が放つ光だった。

薄暗いダンジョン内でより光り輝くその人物は【フレイヤ・ファミリア】所属の【戦武将ライダー】、それも目撃情報が少ない【斬月(ざんげつ)】。

自分達とは別次元にいる存在が、まっすぐ自分達の元へ歩み寄る神秘的な光景に、男達は息を呑んで固まっていた。

動きを見せたかと思えば、徐に左腰の大太刀を抜き。

———男達の視界から消え失せた。

 

「———え?」

 

一人の男——ゲドが最期に見たのは、()()()()()()()()()()()

 

「な、んで……?」

 

男達の眼に映らない速さで距離を詰め寄られ、首を斬り裂かれた。何が起きたのか理解できないまま、残った身体は噴水のように血を噴出しながら倒れる。

ここまで来て、男達は仲間の一人を殺されたことを理解した。

 

「ど、どういうつもりだよ! お前、これ立派な規則違反(ペナルティ)だぞッ!?」

 

「お、俺達が何したっていうんだ!? ま、待てよ! あんたがやったことはギルドに報告しないでおくから、俺達を見逃して——」

 

先程、冒険者の間では禁句とされる怪物贈呈(モス・パレード)を犯した連中が何を言っているのか、と匙を投げられそうな発言をする。

当然、聞き入れる素振りを見せず、残った男達に白の大太刀を振った。

説得を試みた男は首を切断されて胴体から離される。それを見て恐怖に支配され、逃げ出そうと離脱した男は背後から心臓を一突きされる。それぞれの断面から血を噴き出しながら物言わぬ屍と化す。

あっという間に全滅し、一人にされた獣人の男——カヌゥは脂汗をかきながら、その場に跪く。

 

「まままま、待ってくれッ! 何でも言うこと聞くからさ! そ、そうだ!! 俺んとこの【ファミリア】は酒が美味いんだ! 俺と旦那が手を組めば神酒(ソーマ)なんて、あっという間に手に入れ——」

 

頭を下げて媚を売ろうとした時、ブンッ! と白い大太刀が横切った。

恐る恐る手を見ると……腕から先が何もなく、見覚えのある手は地面に転がっていた。

 

「あ……アァアアアアアアアアアアア!!? お、俺の腕がぁあああああああああ!!?」

 

カヌゥの斬れた右腕の先から血が噴き出し、恐怖と激痛に顔が涙や血で体液塗れになる。

腰が抜け、芋虫のように地面を這いずりながら逃れようともがく。生に固着し、仲間だった肉片を見捨て、己が生き残ることだけを考えている。

 

「……神酒とやらに俺は微塵の興味ない。神からの言いつけで、無作法にあの男をあだなす者は——“始末しろ”——と言われてるからな」

 

慈悲を与えず、メロンの絵が施された大盾——《メロンディフェンダー》——を持ったまま這いずり回る男の元へ歩き、片足に突き刺した。

 

「ガァアアアアアアアアアアア!!? 俺の足がぁああああああああ!? いでぇよぉおおおお!!」

 

大楯の切れ端に切断され、片足から先を失った。

カヌゥは体液で顔をグシャグシャに濡らしながら、恐怖の余りに奇声を上げる。明確な殺意をぶつけられ、恐怖と闘争本能が働き、その場を芋虫のように這いずりながら出口へ目指した。

 

「………これで良いか」

 

これ以上は無用だと、大太刀を腰に仕舞うと、白のライダーはその場を後にする。

背後を振り向くと、白い武者は背中を見せて去ろうとする。

自分の醜態さに呆れ、見逃したんだと思い込む。

 

「は、はは…………」

 

助かった……そう胸を撫で下ろすカヌゥだったが、そう思うのも束の間であった。

 

『——ギヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!!』

 

「あぁッ……アァアアアアアアアアアアッ!?」

 

白のライダーがやって来た方向から現れたのは人喰い蟻。この場に漂う血の臭いで引き寄せられた、キラーアントの大群だった。

 

「た、助けてぇッ! 何でもするからさ!! 助けてくれぇええええええええッ!!」

 

カヌゥは自分を殺そうとした白のライダーに助けを求める。だが、必死な命乞いに白のライダーは何の反応も示さず、背を見せたまま下層への歩みを止めない。

そうこうしているうちにキラーアントの群れは男に近づき、屍となった仲間に集まって咀嚼し始める。血肉が飛び交う光景を目の当たりにして、男の恐怖は限界値にまで膨れ上がった。

キラーアントは距離を詰め寄り、歪な顎と口を開いた。

 

「い、嫌だぁ! 止めてくれぇ!? 嫌だぁああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

『ギィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!』

 

誰にも気づかれることなく、哀れな下衆の断末魔と、蟲達が肉塊を咀嚼する音が鳴り続ける。

数分後、何事もなかったかのように、ダンジョン内に静寂な空間が戻った。

 




*補足説明
【斬月】ことラプターが持っている白い大太刀とは、原作における《無双セイバー》の色違いです。イメージ的には無双セイバーの白色バージョンと考えてください。
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