ダンジョンに鎧武がいるのは間違ってるだろうか   作:福宮タツヒサ

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第肆話 戦武将ライダー

いつも通りの普遍な日々……少なくともそう思っていた。走り寄ってくるヒューマンの少女の姿を見るまでは。

ハーフエルフの女性——エイナ・チュールはギルドの窓口嬢をしているが、今日は冒険者の視察も兼ねてダンジョン入口前に来ていた。

 

「エ、エイナさぁああああああああん!!」

 

エイナの耳元に少女の叫び声が届く。

ダンジョン入口から息を切らしながら白髪紅眼の少女——ベルが走ってきた。

ギルドから支給された軽装鎧(ライトアーマー)にヒビが入って全体的にボロボロ姿のベルを見て、エイナは血相を変えてベルに駆け寄る。

 

「どうしたの、ベルちゃん!? 大丈夫!?」

 

「ゴホッ! ハァー、ハァー……ミ、ミノタウロスが、ミノタウロスが五階層に……!」

 

「ミノタウロス!?」

 

ベルの言葉に見開くエイナ。

ダンジョン上層にミノタウロスが出現することなど前代未聞であった。

 

「あれ? コースケ君は一緒じゃないの?」

 

ベルの【ファミリア】唯一の団員であり、自分の担当冒険者でもある幸祐がいないことに気づいた。

するとベルは、今にも泣きそうな表情に染まる。

 

「コースケさんは、私を逃すために囮にっ……」

 

「嘘……!?」

 

一瞬、呼吸が止まった感覚に陥る。

彼の担当になって日は浅いが、幸祐の人間性を知っているエイナ。ベルを逃すために囮になったのだと瞬時に理解し、顔を青ざめる。

 

(もしかして……もう既にコースケ君は……!?)

 

相手はミノタウロス。Lv.1であり冒険者になってから日が浅い幸祐が敵う相手でない。

ミノタウロスにやられてしまったという、最悪の可能性がエイナの頭の中で過ぎる。

とその時、

 

「————エイナさん! ベル!」

 

『コースケさん(君)ッ!?』

 

またもやダンジョン入口付近から声が響いた。

声の方へ視線を向けると、軽装鎧(ライトアーマー)を装備せず、土埃で小汚い服装になっていたが、確かに幸祐がいた。

 

「俺……変身できた」

 

『…………え?』

 

変化球すぎる幸祐の第一声に、その場で二人はポカンとするのだった。

 

 

 

 

 

 

数分後、エイナは無茶振りをする担当冒険者二名を説教するべく、ギルドへ強制連行した。

ギルドのある個室で用意された椅子に座り、幸祐とベルは現在進行形でジト目を向けるエイナと対面している。

ベルと幸祐の【ヘスティア・ファミリア】は普段、二階層までしか通ってないが、エイナに内緒で一気に五階層まで降りてしまい、ミノタウロスに遭遇してしまい、ベルを逃すために幸祐が囮になって……結果、ミノタウロスは幸祐が倒してしまった。

怒ることに慣れていないエイナだが、今回は別。二人の一部始終を聞いて怒りを隠せなかった。

 

「もぉ〜、どうして二人とも私の言いつけを守らないのかな!? ただでさえ団員が少ないから不用意に下層に行っちゃダメじゃない! いつも『冒険者は冒険しちゃいけない』って口を酸っぱくして言っているでしょ!」

 

「は、はいぃ……!!」

 

「いや、そうですけど、経済的に支障が起こるので……あ、いえ、何でもないです。ごめんなさい」

 

エイナの激昂にベルは萎縮してしまう。一方、幸祐は言い訳しようとするが、エイナに鬼のような視線(ハーフエルフなのに)を当てられて、あっさり折れてしまう。

そんな幸祐達の眼前でエイナは溜息を吐く。

無事に生還できたことに嬉しいのには変わりないが、この二人は今一つ常識が欠けているような気がした。

自分の元に問題児ばかりが来るのだろうか、と自分の貧乏くじ体質に本気で頭を抱える。

 

「それで、どうやってキミがミノタウロスを倒せたの?」

 

頭を切り替えて幸祐に事情を聞く。

幸祐の様子を見る限り、嘘をついてる素ぶりはない。だがエイナは信じられなかった。

いくらミノタウロスを倒した証拠品(魔石)があるとはいえ、まだLv.1の駆け出し冒険者が倒せるなどありえない話だ。

 

「ああ、これを使って」

 

幸祐がズボンから取り出して机の上に置いた物体を見て、エイナは身を乗り出して目を見開く。

 

「それ——《戦極ドライバー》じゃない!!」

 

エイナの驚愕ぶりに幸祐も戸惑った。

ヘスティアからも聞いてレアアイテムと知った時、幸祐は売り出そうかと考えた。だが最初の装着者にしか使えない性質故に、一度嵌めてしまえば一ヴァリスの価値もなくなるので断念した。尚、ヘスティアから「君にしか使えないレアアイテムを売ろうとするなぁー!!」と言われた。

 

「オラリオでも少数しかないレアアイテム、コースケ君! そんな高価なものを一体どうやって手に入れたの!?」

 

「手に入れたというか、貰ったんです。見知らぬ人に……」

 

「……コースケ君ほど非常識な人っていないと思うなぁ、私」

 

……嘘は言ってない。

だが非常識なのは幸祐自身も同意した。

美人ハーフエルフの評判で名高いエイナが忘れたくても忘れられない男(悪い意味も含めて)の称号、幸祐は複雑な気分になる。

 

「まったくもぉ、コースケ君が【戦武将(アーマード)ライダー】ならそれに合わせた講義もしたのに」

 

『【戦武将(アーマード)ライダー】?』

 

同時に同じリアクションをするベルと幸祐。新米【ファミリア】の団長と副団長の連携が上手くやれるかどうかの心配は無用の様だった。

 

「そこからか……じゃあ最初から説明するね?」

 

額に手を当てながら、エイナは再び椅子に腰掛けて説明する。

出処や製造過程が謎に包まれた錠前——ロックシード——に秘められた力を利用するために造られたアイテム……それが《戦極ドライバー》。

とある鍛治師が独自の技術で生み出した。ドライバーに関する情報はそれだけで、鍛治師の情報は不明のまま。

最初に腰部に巻きつけた者だけが使用でき、果物を模した甲冑や武器を纏える戦士——【戦武将(アーマード)ライダー】になれる。

曰く、《戦極ドライバー》を装着した者は、神の恩恵とは違った絶大な力を得られる。

曰く、Lv.2以上の冒険者には神々から二つ名の他に【戦武将(アーマード)ライダー】の称号を贈られる。

 

「う〜んと、大体こんな感じかな。【戦武将(アーマード)ライダー】ってだけで、どの【ファミリア】から重宝されるから、話題が尽きないんだよね」

 

実際に変身して分かったが、あの姿になれば、たとえべらぼうに弱い奴でもコボルトやゴブリンの一匹二匹すぐ瞬殺できる。少なくとも、そうやってミノタウロスを撃破できた、と幸祐は思い込む。

 

「なるほど……あ、そうだ! 私、そろそろ換金してきますね!」

 

「はいストップ!」

 

「ッ……!?」

 

説教が再スタートする前に逃げ出そうとするが、エイナに呼び止められてビクンッと跳ね上がるベル。

 

「ベルちゃん。五階層まで来たことを有耶無耶にしようとしてない?」

 

「ッッ……!!?」

 

エイナの言葉に反応し、ベルの身体はビクビクンッと跳ね上がる。

 

「そ、そんなこと………ないですよ?」

 

「どうして疑問形なのかな? と・に・か・く! ベルちゃんにコースケ君、この一週間は二階層より下に潜るのはダメだからね!」

 

「そんな!? でも私、もっと強くなりたいんです!」

 

「ダメ! 今後私の許可がない限り、二階層より下層に行くのは禁止! 異論は認めません!!」

 

確固としてベルの意見を聞き入れないエイナ。

 

「エ、エイナさ〜んッ……!」

 

プルプルと目尻から透明な雫が垂れ落ちそうになるベル。小動物を連想させる姿に、幸祐とエイナは胸がキュンキュンとなる。

 

「ま、まぁ……もうちょっと経験を積んだら許可するから。それまでは一緒に頑張ろ? ね?」

 

エイナの言葉を聞き、輝きを取り戻したように顔色の血色がみるみる明るくなるベル。

 

「エイナさん大好きー!! ありがとー!!」

 

「……えぅ!?」

 

顔を真っ赤にさせたエイナの返事を聞かず、片手に魔石を入れた袋を持って「換金してきますねー!!」と、手を振りながら元気よく走り去るベル。

その部屋に残された幸祐は、生暖かい視線をエイナに送っていた。

 

「……好かれてますな、エイナさん」

 

「も、もぉ〜! コースケ君!! それとさっきの話、忘れてないでしょうね!? コースケ君も二階層から下層に潜っちゃダメだからね、わかった!?」

 

「はいはい。もちろんですよ」

 

顔を真っ赤にしながらプンプン怒るエイナに、口端が釣り上がる幸祐。説教を食らった仕返し、歳上の美人をからかうことにちょっとした悪戯心が生まれていた。

 

「それじゃ、俺もそろそろ行きます」

 

元気に飛び去ったベルに続き、幸祐も退出しようと席を立つ。

 

「あ、待って! コースケ君!」

 

咄嗟にエイナは声を上げて引き止める。幸祐は「はい?」と言ってエイナの顔を見る。

 

「もう二度と、こんな危ない行為をしないって、約束してくれる?」

 

エイナの顔から先程までの可愛らしい印象が消え去って、

職員として貫禄さを出す真剣なものへ変わっていた。

 

「結果的に助かったのかもしれないけど、一歩間違えればキミが死んでいたかもしれないんだよ? ベルちゃんを助けたかったのは分かるけど、キミが死んだら元も子もないんだからね」

 

「…………」

 

ギルド職員ではなく、一人の知人として助言するエイナの言葉に、幸祐は何もいえず黙ってしまう。

出会って数日しか経ってないが、優しく面倒見な性格でエイナは身を案じてくれる。幸祐にとって、自分の身を純粋に心配してくれる良識人の一人であった。

こんな女性が身近にいてくれたら、幸祐は自分の人生が変わって見えたと思う。

だが………

 

「……ありがとう、エイナさん。大好きです」

 

「えうっ!? ……コ、コースケ君! 歳上の女性を揶揄わないの!」

 

先程ベルが叫んだことと似たようなことを呟く。

 

「冗談ですよ……それじゃ」

 

先程ベルが叫んだことと同じ内容を呟き、目論見通り話題をズラすことに成功した幸祐。

これ以上エイナに追求されないよう、何食わぬ顔で荷物を纏めると踵を返さず立ち去った。

 

「あ、ちょっと! 話はまだ……って、行っちゃったか」

 

ズルいなぁ、と声を漏らすエイナ。

彼女の中で幸祐は、少し強引で変わったところがある印象の男の子だった。

 

(コースケ君はこう……どこか放っておけないんだよね)

 

エイナの脳裏に浮かんだのはダンジョンから還って来なかった冒険者達。誰もが名声と栄光を求め、自らの命の危険も顧みず……志半ばで死していった。

顔も拝めずにいなくなった人物達の輪に、幸祐が入りそうで心配になった。

今度会ったら絶対に約束させよう、心の中で深くそう誓った。

 

 

 

 

 

 

換金を終えてギルドから出て、幸祐とベルは街中を歩いていた。

今回は不測の事態だったため、魔石を十分に得られず報酬は少ない結果に終わった。

道中、ベルは歩みを止めて幸祐に頭を下げる。

 

「ごめんなさい、コースケさん……」

 

ミノタウロスの件。ベルはそのことに罪悪感を覚えていた。幸祐は気にもしていないが。

 

「私、団長なのに、団員に迷惑ばかり掛けて……」

 

「………」

 

幸祐は無言のまま、パフッ、とベルの頭に手を乗せて撫でる。当初、妹みたいな心境でしたのだったが、後になってベルの方から求めてくるので、ベルが落ち込むたびに元気付けるための習慣となった。

しかし二人がいるのは多くの人が蔓延る街。ベルも歳頃の少女なので、羞恥心に駆られながら頰を赤くする。

 

「あ、あのっ、コースケさん……?」

 

「…最初にお前が俺を受け入れてくれただろ? お前が団長じゃなかったら、今頃俺はどこかでのたれ死んでたよ」

 

「あ……」

 

遠まわしに「ベルが団長で良かった」と言ってくれたことに気づくベル。

 

「ほら、さっさと帰ろうぜ」

 

うっすらと笑みを浮かべながら幸祐はベルの頭から手を離して再び歩き始める。離れた幸祐の手を名残惜しそうに見つめながら、ベルも再び歩き出す。

 

(やっぱり、すごいなぁ、コースケさんは……お祖父ちゃんが言ってた英雄譚に登場する英雄とは、どこか違う気がするけど……)

 

一緒に街中を歩き、隣でベルは幸祐に視線を向ける。

どこからともなく現れ、貧乏な自分達の【ファミリア】になってくれた、祖父以外で出会った初めての異性。ぶっきらぼうだが優しさを兼ね備えている。もし兄がいたら幸祐みたいな感じなのかも、と思った。

 

(私もコースケさんみたいに強くなりたい……!)

 

自分より強いことを自覚してしまう。

ベルは幸祐に憧れ、尊敬し、信頼を寄せ……そして嫉妬する。

少女の中の願望、憧れ——それが鍵となる。

長い歳月の中、願いを込められた華が種を生み出すように、少女の中でスキル——英雄へと至る最初の力——が息吹を吹き出した。

 

 

 

 

 

 

「神様、ただいまー!」

 

「ヘスティア、帰ったぞー」

 

「おっかえりー!! ベル君にコースケ君!」

 

二人の呼びかけに答え、ソファーからヘスティアが小走りしてきた。

当初、幸祐は外見で判断してヘスティアを歳下と勘違いしていたが、実際には何千年も歳が離れていることを本人から言われる。しかしヘスティアは「馴染む呼び名で構わないさ。ボクと君の仲だろ?」と言ってくれるので、幸祐は遠慮なくタメ口で話すようになった。

 

「今日はいつもより早かったね。何かあったのかい?」

 

「えぇと、ダンジョンで死にかけまして……」

 

「おいおい大丈夫かい!? 君達にもしものことがあればボクはショックで死んでしまうよ!」

 

「天界へ送還されることはあっても死にはしないだろ? 仮にも神様なんだから」

 

「例えの話さ! ノリが悪いぜ、コースケ君?」

 

小さい両手で、ヘスティアは二人の体を触って怪我がないか検証する。

命に別状がないことを知り、部屋の奥に進む。

 

「ベル君にコースケ君、これを見たまえ! 今日の収穫は大量だよ!」

 

自信満々に見せたのは、バイト先で貰ったカゴに入った大量のジャガ丸くん。

ベルは「神様スゴい!」と眼を輝かせているが、その隣で幸祐は「え? これだけ……?」と心の中で呟く。声に出せば目の前の女神が盛大に落ち込むのが目に見えるからだ。

今日はトラブルで稼ぎが少なかったため幸祐も文句はいえず、その日の【ヘスティア・ファミリア】の夕飯はジャガ丸くんオンリーになった。

 

 

 

 

 

 

夕飯を終えた【ヘスティア・ファミリア】一向。ヘスティアが率先して恒例のステイタス更新が始まる。

 

「それじゃあ、ボク達の未来のため、今日もステイタス更新をしようか! まずはコースケ君からだよ」

 

「おう」

 

指名された幸祐は上を脱いで上半身裸になり、奥にあるベッドの上でうつ伏せになる。

 

「え、えへへ。コースケ君の背中……」

 

「変なことするなよ? 仮にも女神なんだから」

 

「なッ!? すすすすすするわけないじゃないか!! ボクを何だと思ってるんだい、君は!?」

 

説得力に欠ける女神、と内心呟く幸祐。

ブツブツ文句を言いながら、ヘスティアは幸祐の尻部に座り込んで手を進める。

 

「そういえばミノタウロスに遭遇したって聞いたけど、他にも冒険者がいたはずだろ。誰にも会わなかったかい?」

 

「いや別に……あ、でも倒した後に女の子に会ったな」

 

『女の子!?』

 

エイナに事情を話した時は省略したため、ベルも知らない事実である。

ベルとヘスティアはハラハラしながら幸祐に尋ねる。

 

「もしかしてコースケさん……その人を好きになったんですか?」

 

「ダ、ダメだぞぉ、コースケ君! ダンジョンなんて物騒な場所に、君が思ってるようなサラサラな生娘なんていないんだからなぁ!!」

 

「……いや、確かに綺麗な容姿だったけど、別に惚れるほどじゃないからな。というか、ヘスティアは言い過ぎだ。女冒険者に恨みでもあるのか?」

 

大方、その女の【ファミリア】へ改宗するのではないのかと心配しているんだろう、と幸祐は推測する。そもそも【ヘスティア・ファミリア】以外は心を穏やかにできないから、移住する気など毛頭なかった。

途中、幸祐の背中に触れているヘスティアの指先が微かに震えた。

 

「……!」

 

ヘスティアが動揺したのを、背中越しで幸祐は察知する。

 

「どうした? 何か不味いことでも記載されていたか?」

 

「い、いや! 何でもないよ!」

 

慌てふためきながら、ヘスティアはステイタスを紙に模写する。

ヘスティアに渡された紙を手にして、幸祐は閲覧する。

 

 

 

サクラバ・コースケ

Lv.1

 

力:I82→H190

 

耐久:I89→H184

 

器用:I79→H157

 

敏捷:H101→H185

 

魔力:I0

 

ーーー:ーー

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

【ーーーー】

・ーーーーーーーーー

・ーーーーーーーーー

・ーーーーーー

 

【ーーーー】

・ーーーーーー

・ーーーーー

・ーーーー

 

 

 

一瞬、見間違いと目を疑った。

冒険者になってから日が浅いせいで、幸祐自身もこの成長速度は凄いのか分からない。今までは多くても精々+8がザラだった。

明らかに異常だった。エイナの言っていた【戦武将(アーマード)ライダー】に変身してミノタウロスを倒したことと関与しているのだと推測する。

相変わらず『スキル』の欄は消した跡があるが、ヘスティアは手元が狂ったと語っている。

だが幸祐は確信している、この『スキル』欄に何かが掲載されていると。

 

「次はベル君だねー」

 

「はい!」

 

一度、幸祐はヘスティアに問い詰めようかとも考えたが、居候の分際で過ぎた真似だと断念する。それにヘスティアは疚しい気持ちで行ってるのではない、幸祐を想っての行為だとも気づいている。

ヘスティア達が話してくれないなら、自分から切り出すわけにもいかない。

どうしたものか……

 

『………』

 

「ん? どうした?」

 

不意に幸祐は、二人の少女がこちらに視線を向けていることに気づく。

 

「……コースケ君、ベル君の裸が見たいならそこにいればいいよ。ただしボクの中の君への好感度が下落するだけだけどね」

 

「あ………悪い」

 

我ながらデリカシーがないと反省する。

ステイタス更新をする際、先程と同じように背中を晒さなくてはならない。つまり、ベルは上半身を裸になる、イコール、男は退場しなくてはならない。

ベルの方を見るが、耳元まで真っ赤になりながら見ていた。

自分のステイタスのことを忘れて、幸祐は「しばらく外に行ってる」と言い残してその場を去った。

 

 

 

 

 

 

その夜、ヘスティアはソファーに寝転がった状態で、ある二枚の紙を眺める。

その一枚にはこう書かれていた……

 

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力:I76→I82

 

耐久:I10→I13

 

器用:I82→I97

 

敏捷:H148→H173

 

魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーぜ)

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈におり効果向上。

 

 

 

(おめでとう、ベル君。念願のスキルが発動したんだね)

 

ヘスティアは心の中でベルに賛辞を送る。

しかし、他の神々がいる手前で、このレアスキルはしばらく伏せるべきだと考える。ベルは嘘を吐けるような性格ではないので、張本人であるベルにスキルの欄を尋ねられた際、『手元が狂った』といっておいて内緒にした。

 

(ベル君はこれでいいとして……問題はこっちだよね)

 

ペラ、ヘスティアはもう一人の眷属、幸祐のステイタスが刻まれた紙を見る。

 

 

 

サクラバ・コースケ

 

Lv.1

 

力:I82→H190

 

耐久:I89→H184

 

器用:I79→H157

 

敏捷:H101→H185

 

魔力:I0

 

戦武将:G

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

 

武将真剣(アーマード・アームズ)

・多種の甲冑や武器の装着及び使用可能。

・一定時間通常より力・耐久・器用・敏捷が向上。

・敵を倒すたびに熟練度が上がる。

 

王族血統(オーバー・ロード)

・自分の出生に反発するほど早熟する。

・激情にかられるほど効果向上。

・魅了にかからない。

 

 

 

ミノタウロスを倒したことと関連してるのか、幸祐のステイタスは飛躍的に伸びていた。加えて【戦武将(アーマード)ライダー】になった故なのか、『戦武将』という発展アビリティまで加算されている。発展アビリティは本来、Lv.2にランクアップして初めて発現が可能になるのだが、その常識を破った幸祐に戦慄する。

幸祐が単身でミノタウロスを倒したのも、ここまでステイタスが向上したのも、おそらく二つのスキルの相応効果によるもの、とヘスティアは確信した。

そしてスキル発生の因果は、幸祐が元いた世界で経験した出来事に関与している。

 

(コースケ君、君の過去に一体何があったんだい……?)

 

眠りに誘われている幸祐の横顔を見ながら、ヘスティアは眷属(こども)の身を案じた。

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