ダンジョンに鎧武がいるのは間違ってるだろうか   作:福宮タツヒサ

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第伍話 オレンジな無双

暗闇——手を伸ばしても何の感触もない果てしない空間。そこに留まるだけで精神が狂いそうになる。

 

『ま、待ってッ……!』

 

果てしない闇の中、まだ幼い男の子が走っていた。

唯一の光を目指して、ひたすら走り続けていた。

——独りになりたくない。

悲痛な願いを胸に抱いて、暗闇でたった一つの光——その中心にいる女性——を追いかける。

 

『待って、おいて行かないで……!』

 

蒼髪の男の子は走る。何度も転び、膝から血を流して炎症を起こしても、足の裏の皮が擦り剥けて血だらけになろうとも、ひたすら走り続けた。目の前で今にも消えそうな女性の姿を見失いたくなかった。

視線の先にいるのは、男の子と同じく透き通るほど蒼く、腰まで届く長い髪の女性。

その時、男の子は盛大に転んでしまい地面に倒れ臥す。

女性は背中を見せたまま、男の子に見向きもしない。

自分から遠ざかる女性を見て、男の子は必死で声を上げた。

 

『ま、待って! いなくならないで!!』

 

悲痛な叫びにも反応せず、無情にも女性の姿は光となって消えていく。

必死に手を伸ばすが、女性の体に触れることなく消え去る。

その暗闇で、男の子は独りぼっちになってしまう。

唯一の光——味方——を失った男の子。

当てもなく頼る者もいない暗い世界で、ただ泣きじゃくることしかできなかった。

 

『お願いだよ……おれを、おれを独りにしないでよぉ!! ………母さん!!!』

 

 

 

 

 

 

「ッ———!!」

 

そこで、パチリと両瞼を開く。

夢から覚めて感覚が戻り、髪が寝汗でぐっしょり濡れていることを自覚する。

 

「…………またあの夢か」

 

朝から男——幸祐は最悪な気分に陥る。

こびりついた汗を拭き取り、長い蒼髪を後頭部で結ぶ。そこらの女性より女子力高い手順で髪結びをしながら、時計を見る。

時刻は午前五時、幸祐が【ヘスティア・ファミリア】に加入してからすっかり定着時となった。

 

「ん……?」

 

ようやく真上に誰かが寝ていることに気付く。

ツインテールを解いて黒髪をさらけ出した少女、女神ヘスティアが幸祐の腹を枕にして眠り込んでいる。

 

(……寝惚けたのか? 少しは警戒心を抱かないのかね、この女神様は)

 

いや、女神だからこそ眷属(こども)に警戒心を抱かないのかもしれない。

普通の男なら我を忘れて暴走状態になるかもしれないが、生憎、幸祐は幼女好きのアッチ系ではなかった。

起こさないようにそっとベッドに下ろして、日課のランニングに出かける。

 

「……コースケ君のいけずぅ…」

 

どこかの女神の寝言が聞こえた気がしたが、幸祐は敢えて聞き流した。

 

 

 

 

 

 

前の世界にいた時も幸祐は鍛錬を絶やさなかった。小学生の頃に剣道部に所属していた経験があり、朝のランニング、軽い筋トレを怠らない。

特に、この世界は力がないと不憫な点もあるので尚更止めるわけにはいかない。

 

「………?」

 

走ってる最中、幸祐は視線を感じ取って足を止める。

憎悪や殺意や軽蔑、そういったものとはまた違った……とても嫌なもの。

まるで品定めをされているような感覚だった。

しかし誰が、何の目的で?

視線の主を探していた……その時だ。

 

「あの……」

 

「ッ———!?」

 

勢いよく背後を振り返る。幸祐は視線の主が自ら参ったのかと肝を冷やした。

だがそこにいたのはヒューマンの少女。

白と若葉色のエプロン姿、薄鈍色の髪を後頭部で丸めて結んだ、幸祐と同い年ぐらいの少女が、大袈裟な反応をした幸祐をキョトンと見つめていた。

 

「あの……どうかなされましたか?」

 

幸祐は自分の状況を再確認する。一般市民の少女に大袈裟な反応を示す……傍から見れば不審者以外の何者でもない。

 

「悪い。こっちの勘違いだった」

 

幸祐が頭を下げると、少女は特に気にもとめない様子で話す。

 

「そうなんですか。それにしても、こんな朝早くからダンジョンですか?」

 

「いや、今は日課の鍛錬をしているだけだ。ダンジョンはその後に行くつもりだけど」

 

これ以上、目の前にいる少女に変な印象を持たれないように幸祐はサッと会話を終えようとする。

だが……

———グゥウウウウウウ

タイミングが悪く、幸祐の腹音が盛大に鳴り響く。

食費を切り詰めようと朝ご飯を抜いたことが仇となってしまったのか。

 

『………』

 

二人は揃って無言になる。

最悪の展開——幸祐はそう思わずにはいられない。少女に間抜けという印象を持たせないのは不可避だ。

 

「ぷっ……お腹、空いていらっしゃるんですか? もしかしてですけど、朝食をとられてないとか?」

 

「……あ、後で食べるつもりだ」

 

笑みを漏らしながら図星をつきまくる少女に、幸祐は苦し紛れの言い分を吐いた。

 

「ちょっと待っててくださいね」

 

そう言い、少女は近くの建物——酒場に入っていく。

数分後、バスケットを片手に抱えて戻ってきた。

 

「これ、よかったら召し上がってください。店の賄いじゃないですけど……」

 

「え? だけどこれ、あんたの朝食だろ? こう言っちゃ悪いけど、見知らぬ人からタダで貰うわけにもいかないからな……」

 

「いいえ、これは利害の一致でもあるのです。私も少し損するかもしれませんが……その代わり貴方には夜、私の働いているお店でご飯を食べなくてはなりません!」

 

「………」

 

これはアレか、と内心呟く。

自分のいた世界にも伝わる『タダより高いものはない』という類の言葉。

少女は可愛い顔を見せるが、それが幸祐には小悪魔の笑みに見える。

しかし、いつも【ヘスティア・ファミリア】でジャガ丸くんを主食にしている幸祐にとって、飲食店の料理は豪華に思えた。

見たところ、少女が出入りした店はそこまでの高級店じゃなさそう。誰でも入れるような下町の酒場なのだろう。

 

「……小悪魔って呼ばれるだろ、あんた」

 

「うふふ、遠慮することはありませんからね」

 

「言っとくけど、俺んとこは貧乏だからそんなたくさん食わないからな。忘れるなよ?」

 

「はーい、お待ちしておりますね」

 

幸祐の言葉に嫌な顔一つ見せず、営業スマイルを浮かべる少女。

バスケットを抱えて少女に見送られる幸祐。

すると、少女はふと思い出したように声をかける。

 

「あ、私はシル・フローヴァです! 貴方の名前は?」

 

「…幸祐。桜庭幸祐だ」

 

振り返って答える幸祐に、少女——シルはすぐに笑みを浮かべる。

 

「ご利用お待ちしていますね、コースケさん♪」

 

その場を幸祐は後にする。

日課の鍛錬をするはずが……朝食の収穫だけでなく思いもよらない約束事を抱えてしまったと思う幸祐であった。

取り敢えず、主神(ヘスティア)団長(ベル)にどう説明しようか……そのことに頭を悩ませながらホームへ戻る。

 

 

 

 

 

 

数時間後、幸祐はベルとダンジョンに訪れていた。

シルから貰ったサンドイッチは二人で美味しくいただいた。事情を話した時、ヘスティアが盛大に拗ねたのはいうまでもない。

 

「はぁあああ!」

 

『ギャンッ!?』

 

ダンジョン内で、ベルは特に張り切っていた。

【ステイタス】が向上して上機嫌なベルはギルドから支給されたナイフで下級モンスター相手に無双する。

一方、幸祐はノルマをこなす業務員の如くモンスターを魔石に還しては回収する。その夜、ウェイトレス少女に飯の招待——ほとんど脅迫に近いが——をされたため、大目に稼いでいる。

我ながら地味な作業だなぁ、内心呟きながら回収に精を出す。

すると、

 

「きゃあああああ!?」

 

『グゥアアアアアッ!!』

 

唐突に少女の悲鳴がした。

幸祐が目にしたのは、八匹の犬頭のモンスター——コボルトの群れに追われているベルの姿。通常コボルトは単独で行動することが多いが、犬の集団的自衛権が備わっているのか稀に群れで徘徊することがある。

突然の奇襲にベルも予想外で逃げ回っていた。

 

「ああ、もう、調子に乗るから!」

 

幸祐はズボンから《戦極ドライバー》を取り出す。腰部に当てると、黄色のスライダーが飛び出て自動で巻き付かれる。

続けて懐からロックシードを取り出す。

 

《オレンジ!》

 

《オレンジ・ロックシード》のスイッチを押し、音声が鳴ったと同時にベルトに装填する。

 

《ロック・オン!》

 

掛け声と共に、ベルトにある小刀の装飾部を傾け、《オレンジ・ロックシード》の断面を切る。

 

《ソイヤ!》

 

《オレンジアームズ! 花道・オンステージ!》

 

頭上からオレンジの球体が降って幸祐の頭を覆いかぶる。

オレンジの球体が鎧状に展開し、幸祐は紺色のライダースーツを着込んだ橙鎧の【戦武者(アーマード)ライダー】に変身を遂げる。

 

「この犬野郎どもが!」

 

右手に《大橙丸》を握りしめて、コボルトに突っ込む。

逃げ惑うベルの横を通り過ぎ、視線をすぐコボルトへ変える。

 

『ギャウッ!?』

 

まず一匹——横腹を蹴り飛ばして壁際に叩きつける。

牙を剥き出しにして飛びかかってくる奴を片っ端から斬りつけ、蹴り付け、ダンジョンの壁に貼り付ける。

三匹は《大橙丸》で真っ二つに斬り裂かれ、一匹は首をへし折られて地面に倒れる。計四匹が魔石に還った。

 

「あ、危ない! コースケさん!!」

 

ベルが悲鳴を上げた。

幸祐の背後から、牙と爪を剥き出しにした二匹のコボルトが襲いかかったからだ。

 

「——ふっ!」

 

『グギャッ!?』

 

『グオッ!?』

 

背後から襲いかかってきた二匹を、幸祐は振り返りながら勢いを付けて斬りつける。

 

「はぁぁぁ……おりゃあっ!!」

 

『ガアアアアッ!!!?』

 

《大橙丸》からオレンジ色のエネルギー斬撃が放たれ、コボルト達は爆散する。

黒焦げた地面に残ったのは魔石二個だけ。

 

《ロック・オフ》

 

「ふぅ〜……大丈夫か、ベル?」

 

ロックシードを折り畳み、変身を解除した幸祐。

小走りでベルの元へ駆け寄る。

 

「は、はい。何とか……」

 

顔に砂がこびりついている程度で、特に目立つ外傷は見当たらない。

ただ、どこか顔色が優れない様子だった。

突然の奇襲で心身共々疲れたのか、浮かれていたことに反省しているのか、先程まで見せていた明るい表情が抜け落ちていた。

 

「今日はもう帰るぞ」

 

「え? で、でも、私はまだ——」

 

「エイナさんも言っていただろ? 『冒険者は冒険しちゃいけない』って。無理して怪我したら元も子もない。それに、充分稼いだしな」

 

幸祐はベルに魔石を入れる袋を見せる。普段より多めにモンスターを倒したため、ギチギチパンパンになっていた。

 

「今日はご馳走を食いにいくんだ。体調は整えておかなくちゃな?」

 

「……はい」

 

ベルは納得してない様子だったが、首を縦に振る。

俯いた状態でベルはボソッと口にする。

 

「コースケさんは………」

 

「ん? どうしたベル?」

 

「あ……いいえ! 何でもないです! さ、早く神様のところへ行きましょう!」

 

ベルは幸祐の前で気丈に振る舞う。

少女の気持ちに気づかないまま、少年は力を行使し続ける。

 

(私、団長なのに……コースケさんの足を引っ張ってばかり)

 

少なくとも今の幸祐では、ベルが抱いてる感情に気づくことができない。

灯が基本ない薄暗いダンジョンの様は、二人の心を表すようだった。

 

 

 

 

 

 

ダンジョンから帰還した後、幸祐とベルはある酒場の前に訪れていた。

『豊穣の女主人』——店員が全員美人揃いだけでなく女将も含んで相当の手練、その上料理も美味いという、オラリオ内でも人気店の一角。

今日のために余分に稼いできた。

ベル達はヘスティアとも行きたかったが、生憎今晩はバイト先で打ち上げがあるので欠席である。その時、ヘスティアは「そのウェイトレスの女の子と、精々楽しくお喋りしてくると良いさ!」と、幸祐にヤキモチを抱いたのは余談である。

 

「ここ、なんですよね……?」

 

「ああ。そうだと……思うが」

 

【ヘスティア・ファミリア】の団長&副団長コンビは、入り口から店内を見る。

カウンターで酒や料理を振る舞う女将らしきガタイのいいドワーフの女性。忙しい様子で注文を運ぶ猫耳を生やした猫人(キャット・ピープル)の女性、肩まで届く金髪エルフの女性……などなど。

シルもいるから、美人揃いとはよくいったものだと、幸祐は圧倒される。

 

「あ、コースケさん!」

 

と、店内にいるシルと視線が合い、店から出て来た。

 

「よう」

 

幸祐は片手を上げて軽く会釈し、ベルに指差す。

 

「紹介する、この娘は連れのベルだ」

 

「べ、ベル・クラネルです! 今夜は、よよよろしくお願いします!」

 

慣れない環境、ベルはガチガチに固まりながらシルに挨拶する。途端に幸祐は微笑ましくなった。

シルも同じように微笑ましくなり、ニッコリと挨拶する。

 

「はい、いらっしゃいませ」

 

シルは「お客様二名入りまーす!」と声を張り上げながら席へ案内する。

店内へ続くシルの後を追い、ベルはビクビク震えながら幸祐の袖にくっ付きながら歩く。

どこまで行っても小心者——というか兎——な雰囲気のベルに幸祐は癒され、ベルに気を遣いながら足取りをゆっくりする。

 

「こちらへどうぞ」

 

「おう」

 

「は、はいぃ……」

 

シルのベルに対する考慮なのか、カウンターの端の席だった。

腰をかけると、目の前に大きなドワーフの女性——女将が現れた。

 

「アンタ達がシルの客かい? 冒険者なのに随分と女みたいな顔だねぇ!」

 

「喧しい、こちとらコンプレックスなんだよ」

 

「アタシ達に悲鳴を上げさせるほどの大食漢だってねぇ? じゃんじゃん食ってくれよぉ!」

 

『………え?』

 

ベルと幸祐の声が重なる。

元凶のシルの方を見ると、明後日の方向に視線を逸らしていた。

 

「シル……いつから俺は大食い男になったんだ?」

 

「……てへ♪」

 

「てへ♪ じゃねーよ!! どういうことだ!?」

 

「大丈夫です! 私、応援してますから! コースケさんなら立派なフードファイターになれますよ!」

 

「そんな称号いらないし微塵も興味ない! ていうか、応援しなくて良いからお前は誤解を解く努力をしろ!!」

 

「ああー、お腹が空いて力が出ないー……朝のサンドイッチを食べなかったせいだー」

 

「下手くそな芝居だな!? やっぱ確信犯じゃねえか!」

 

騙されたー! 状態に陥る幸祐。

あの時感じた視線の正体じゃなかったにしろ、それに近い警戒心を抱くべきだったと、今更ながら後悔を覚えていた。

……だが同時に、久々の感覚でもある。

いつも本音を隠して惨めに生きねばならなかった前の世界と違い、こんなに自分の本音を怒鳴り散らすのは本当に久しぶりだ。

 

「大丈夫です、少し奮発してくれるだけで結構ですので」

 

「……本当、接客上手な店員さんだな」

 

「お褒めに預かりまして♪」

 

落ち着いて溜息を吐く幸祐に、シルはウインクしながら厨房へ戻る。

ずんずん、と足音を鳴らしてドワーフの女将が尋ねる。

 

「で、酒は?」

 

「いや、俺まだ二十じゃないから酒は——」

 

「あん? 酒を飲んじゃいけないってルールがこの都市にあるのかい?」

 

「……あ、そっか」

 

幸祐はまだ十六。当然、酒の類など口にしたことない。そもそも二十歳未満は酒を飲んじゃならないと法律で決まっていた……しかしそれは幸祐のいた世界での話。

この世界、もといオラリオにそんな決まりはない。

 

「まぁでも、金がかかるから結構です」

 

「あ、私も」

 

「んじゃ、料理が来るまでこれでも飲んでおきな」

 

問答無用で女将——ミアはカウンターの上に醸造酒の入ったジョッキを二つ置く。

 

「聞いた意味ないじゃん……」

 

「まぁまぁ、折角だから飲みましょうよ」

 

ベルに窘められながら醸造酒を飲む。

人生初の酒、意外にも美味かったと後に語った。

 

 

 

 

 

 

数分後、幸祐達は無難にパスタを頼んだ。量が多くてかなりの値段かと思えば、意外に安い金額、しかも美味い。お得だった。

 

「えぇっと、シル・フローヴァさんですよね? コースケさんから話は聞いてます。今朝のサンドイッチ、ありがとうございました!」

 

「はい、どういたしまして。ベルさんですね? 私のことはシルで構いませんよ」

 

「はい! シルさん!」

 

二人はそんな会話を成立させていた。仕事の方は、ミアから許可を貰ったらしい。

シルの方が歳上なので、ベルの前でお姉さん振っている。女の子同士、何か通じるものがあるのだろう。幸祐は微笑ましく眺める。

 

「へぇ……それでシルさんはこの店で働いているんですか?」

 

「はい。知らない人と触れ合って、色々お話しして……心が踊るんです」

 

仲睦まじく、そんなガールズトークを繰り広げていた。

——出会いを求めて。

それが、この少女達の共通点なのかもしれない。だから共感しあい、すぐに打ち解けたのかも。

幸祐は周囲を見渡す。男女問わず、屈強な肉体の持ち主達が飲んで笑い、賑やかかつ爽快な空気を作り出している。

 

(……出会いを求めて、か)

 

ベルとシルの会話に入り込めそうにないと、幸祐は一人で酒を飲む。

シルは客との出会いを、ベルはまだ見ぬ将来の仲間との出会いを……それぞれの形で出会いを求めてオラリオに来たのだろう。

……だが自分はどうだ? 不本意でこの地に赴き、流されるように冒険者になった。当然、出会いなど求めていなかった。

 

(……俺は、ここにいてもいいのか?)

 

この地、この世界における異端物(イレギュラー)。急に幸祐は疎外感を抱える。

ベルやヘスティア、エイナ、そしてシルと知り合えたというのに、未だに幸祐はその答えを見つけられない。

ベル達に悟られぬよう曇ってる顔を逸らしていると、十数人の団体が店内になだれ込む。

 

「ミア母ちゃーん、今日も飲みに来たで〜!」

 

視線を向けると、赤髪スレンダーの女性がエセ関西弁で入ってくる。

お得意様らしい、空白のテーブルに座り込んで行く。

 

『おお、えれえ上玉!』

 

『バカ! エンブレムを見ろ』

 

『……ゲッ、【ロキ・ファミリア】!?』

 

『あれが、巨人殺しの【ファミリア】……』

 

周囲にいる客もどよめき始める。

その席にはヒューマンはもちろん、エルフやドワーフ、小人族(パルゥム)、更にはアマゾネスや獣人もいた。多様な種族がいるだけでなく、実力も相当らしい。

隣を見ると、ベルもシルとの会話を止めて【ロキ・ファミリア】を凝視していた。

幸祐も、多くの冒険者から畏怖が込められた集団をぼんやりと眺める。

 

「あ———」

 

幸祐の瞳に、一人の少女が映った。

腰まで届く長い金髪に金色の瞳、月夜に浮かぶ金色の満月を彷彿とさせる少女——アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

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