戦士は剣を手に取り胸に一つの石を抱く
消えゆく記憶をその剣に刻み
鍛えた技をその石に託す
物語は剣より語られ石に継がれる
今、その物語を語ろう…
The "Zodiac Brave Story"
『バカナ……コンナコトガ……』
聖天使アルテマは驚愕していた。
復活したばかりとはいえ、ルカヴィの頂点に位置する自分が追い詰められていたのだ。
『ソウカ……貴様ハ……、カツテ…コノ私ヲ倒シタ者ノ…末裔カ……モット……チカラヲ……』
すると聖天使アルテマから強烈な光が放たれ、その身体が崩壊していく。
同時に辺り一面大爆発を引き起こした。
「アルマ……ッ!!」
ラムザは近くにいた妹アルマに手を伸ばす。
今まで離れ離れになっていた妹。
やっと助け出した妹。
それをなくすのはとても嫌だった。
「兄さん……!」
アルマも同じ気持ちだ。大切な兄妹をなくすのは嫌だ。
だからであろうアルマはラムザの元に駆け寄る。
瞬間。大爆発はラムザ達を飲み込んでいった。
「うッ……ここは……?」
目が覚めたラムザは起き上がり辺りを見回す。どうやら廃墟となった協会のようだ。
「アルマ……? みんな……!?」
ラムザは妹と今まで一緒に戦ってきた仲間を探す。妹のアルマはすぐに見つかった。
自分が倒れていた場所から少し離れていた場所にアルマは倒れていたのだ。
「アルマ…! しっかりして!」
「…兄さん…ここは……?」
アルマはラムザの声を聞き、目を覚ますと起き上がる。そして辺りを見渡した。
「わからない…。オーボンヌ修道院ではないことは確かだ…」
ラムザはそう言い、とりあえず妹が無事であることに安堵した。
「でも、僕ら以外は誰もいない…。どうやら逸れてしまったようだ。はやく皆のところに合流しないと。でも―――」
ラムザはそう言うと、ふと今自分がいる場所を見渡す。
廃墟の協会。埃だらけでボロボロの祭壇。
とても人が住んでいるとはいえないこの場所ではあるが、休息するには問題ないだろう。
ラムザはそう思い、アルマに今日はここで休もうと言おうとした矢先――――。
「まったく…僕の家で何をやっているんだい? 君たちは?」
協会の入り口から知らない少女の声が聞こえた。
ラムザ達は少女を見る。
背は少し低い。しかし胸は大きく、長いツインテールが特徴の可愛らしい少女であった。
「君は……?」
ラムザは少女に声をかけた。
「僕かい? 僕の名前はヘスティア。こう見えても女神なんだぜ?」
「女神だって…?」
ラムザは少女の言葉に少々の疑問をもった。というか疑問をもたないほうがおかしいだろう。
突然自分が女神だなんて言っても信じられるわけがない。
「ムッ……。信じられないって感じだね。まあ無名の女神だからしょうがないけどさ…」
ヘスティアはムスッとした表情をしながらそう言った。
「でも女神なのは事実だぜ? 神の力は下界にいたら使えないけど―――。
でも神様には嘘はつけない。試しに何か言ってごらん?」
ヘスティアは自信満々にそう言ってきた。
「…僕は努力をすることが嫌いだ」
ラムザは嘘を言うことは苦手だが、とりあえずありったけの嘘を言ってみた。
「…君、それ嘘だね。というか嘘をつくのが下手だね」
「目の前にいる少女はとてもブサイクだ」
「誰がブサイクだ! でもそれも嘘だね!! 逆のことを考えてくれたんだ! どうもありがとう!!」
「ゴメン。でも嘘を見破るのは確かのようだ」
ラムザはそう言うと微笑んだ。
「むぅ……で話は戻すけど、君達は何故僕の家にいるんだい?」
「それは……」
ラムザはこれまでのことをヘスティアに話した。
教会との争い。オーボンヌ修道院での出来事。
ルカヴィの事。そしてルカヴィの頂点に立つ聖天使アルテマとの激闘との事。
そして気がついたらここにいた事。
ヘスティアはそれらを聞き、何やら難しい表情をしていた。
「まず、君が言った事は事実だということは認めよう。でも君が言ったルカヴィ―――そんな化け物は聞いたことがない」
「しかしルカヴィは実在する。確かに伝説でしか存在しない怪物だが、この目で見たし、今まで戦ってきた」
「それだよ」
「?」
「君は今伝説でしか存在しない怪物と言った。けどここの世界に――――オラリオにそんなものは存在しないんだよ」
「どういうことだ?」
「これは僕の考えだけど、もしかしたら君達は違う世界から来たのかもしれない」
「違う世界だって? ここはイヴァリースではないのか?」
「そういうことになるね。そんな国見たことも聞いたこともない」
「聖石やグレバドス教会のことも?」
「うん、知らない」
「ゾディアックブレイブのことも?」
「全然」
「そんな……では本当に君が女神だというのは―――?」
「ムッ…! まだ信じてなかったのかい!? 僕は神だよ!!」
ヘスティアはムキになりながら言った。
そんなヘスティアに戸惑いながらもラムザは改めてヘスティアを見た。
確かに彼女から感じる雰囲気は他の人とは感じが違う。
今まで自分が戦ってきた邪悪な者とは逆の神聖な雰囲気をラムザは感じ取った。
このような神聖な雰囲気を纏った者は今まで見たことがない。
居るだけでその場を神聖にするこの少女は神と名乗ってもなんら違和感がない。
不思議とラムザはそう感じ取った。
それはアルマも同じ思いであった。
自身が修道院で暮らしていた影響もあるのだろう。この少女は何か特別であると本能で感じ取った。
ラムザはアルマを見る。するとアルマは頷く。どうやらラムザと同じ事を考えていたようだ。
するとラムザ達はヘスティアの前で跪き、こう言った。
「神ヘスティアよ。今までのご無礼どうかお許しください」
「な、なんだい? 急に改まって…とりあえず顔を上げてくれよ」
「ですが…」
「こうゆうことには余りなれていないんだよ。だから大丈夫だよ」
ヘスティアの言葉にラムザ達は立つ。
「ありがとうございます」
「さて、じゃあこれからどうするんだい? 元いた世界に帰るのかい?」
ヘスティアはラムザに向かってそう尋ねた。
「ええ…元いた場所では僕は異端者なんですが、それでも仲間がいます」
「異端者…? 君は何か悪さでもしたのかい? とてもそうは見えないけど―――」
「それは……」
ラムザは今まで自分に起こった出来事をヘスティアに説明した。
イヴァリースの神話ゾディアックブレイブの話。
そして聖石。清い心を持った者には奇跡を。しかし悪しき心を持ったものにはルカヴィを呼び寄せる事。
自身はそのルカヴィに変貌した教会のドラクロワ枢機卿を倒したら異端者扱いされた事。
全て包み隠さずヘスティアに話した。
「君は…とても苦労してきたんだね…。それでも元いた世界に帰りたいんだ」
「ええ」
ヘスティアは腕を組んで唸りながら考える。
「まず率直に言って、君達を元の世界に行くことはとても難しい。現状まったく方法がわからないからね。もしかしたら他の神に聞けばその方法はわかるかも知れないけど、それは余りオススメ出来ない」
「何故ですか?」
アルマがヘスティアに聞いた。
「神は常に刺激を求めているからさ。天界が暇で下界に降りるくらいね。君達は知らないだろうけど、ここオラリオには様々な神が降り立っている。そんな神に君達のことが知れ渡ったら確実におもちゃにされるだろう。もしかしたら一生元の世界に戻れないかもしれない」
「ヘスティア様はどうなんですか? 貴方も同じ神ではないですか」
アルマはそうヘスティアに言う。
「僕はそんな事しないさ。困っている子供を見たらほっとけないのさ」
ヘスティアは胸を張って言った。
「でも困ったな…これじゃあどう帰ればいいのかわからない」
ラムザは腕を組み考え込む。それを見ていたヘスティアはあることを提案する。
「―――もしかしたらダンジョンに手掛かりがあるかもしれない…」
「ダンジョン…?」
ラムザはヘスティアが言った言葉にそう呟いた。
「そう、この迷宮都市オラリオには何階層あるのかわからないダンジョンがあるんだ。そこに行けば、何か手掛かりが掴めるかもしれない」
「わかりました。では――――」
「おっと。言っておくけどダンジョンに入るには条件がある。それは冒険者ギルドに行って冒険者として登録をしなければならないんだ。でもただでは登録できない。登録するには『ファミリア』に入らなければならないんだ!」
「『ファミリア』?」
「そう『ファミリア』! 下界に降りた神が組織するものさ! そして君達は運が良い!今なら僕の『ファミリア』に入ってもいいぜ!! どうだい? にゅ、入団するかい?」
ヘスティアは胸が高まりながら言った。実を言うとヘスティアの『ファミリア』には一人として入団者がいないのだ。下界に降りて今まで入団者を勧誘してきたが、悉く失敗してきたのだ。
そんな彼女がラムザ達を勧誘するのは当然の出来事なのかもしれない。
一方ラムザは今の現状を考えていた。
とりあえず今の状況を打破するにはダンジョン攻略することが良いのかも知れない。
そしてダンジョンに入るには『ファミリア』に入団しなければならないことも。
それならば――――。
(う……考え込んでいる……。やっぱりそうだよね…こんな一人もいない弱小『ファミリア』に入る訳ないよね…)
ヘスティアは考え込んでいるラムザを見て一人落ち込みだす。
そんな中ラムザは答えを見つけたのだろう。ヘスティアに向かってこう言った。
「わかりました。ヘスティア様の『ファミリア』に入団します」
「そうだよね…他の『ファミリア』もあるんだ…僕は気にしない―――て、いいの!?」
「はい。これからよろしくお願いします」
その言葉を聞いたヘスティアは天にも昇る気持ちになった。
「ほ、本当に良いのかい!? 僕の『ファミリア』には誰一人いないんだよ?」
「大丈夫です。これも何かの縁です。こうしてヘスティア様に会えたのは運命なのかもしれません」
「君……泣かせることを言ってくれるじゃないか……!!」
ヘスティアは歓喜し涙目になりながらもそう言った。
「そう言えば自己紹介はまだでしたね。僕はラムザ・ベオルブ。そして妹の――――」
「アルマ・ベオルブです。これからよろしくお願いします。ヘスティア様」
「こちらこそよろしく!!」
ラムザ達と女神ヘスティアの出会い。これからどのような運命が待ち構えているのか。
それは誰にもわからない。物語は始まったばかり――――。